不動産投資ビギナーの大きな不安「税金」。節税の可能性も。税のしくみを徹底解説
不動産投資をこれから始めようとしている方は「不動産投資にどのくらい税金がかかるのかがわからない」と、漠然と不安に思っていませんか。普段、会社勤めをしている方なら、会社が自分の代わりに税金を納めてくれるので、税金について知る機会は意外に少ないことでしょう。税金についても、あらかじめ知識を蓄えてから不動産投資を始めませんか。不動産投資にかかる税金について学びながら、節税する方法もインプットしていきましょう。
この記事の目次
不動産投資を始めたらかかる税金と税率
不動産投資を始めると、さまざまな税金がかかってきます。投資用物件の売買に関する税金もあれば、物件が生み出す収益に課される税金もあります。その中でも税額が非常に大きく、投資用物件を購入し賃貸経営を始めたら毎年課される税金である「所得税」と「住民税」について解説します。
所得税
これから行う不動産投資が本業であっても、会社勤めの方の副業であっても、不動産投資で利益を出した場合にはその利益に所得税が課せられます。所得税の税率は、累進課税の方式を採用しており、所得金額が高ければ高いほど、納める税金も高くなるよう税率が設けられています。会社勤めの方の場合は、どの程度の税金を納めるのか気になるところでしょう。
所得税の税率は、以下のように所得金額により7段階に分けられています。
- 195万円以下の税率5%/控除額0円
- 195万円超え330万円以下の税率10%/控除額9万7,500円
- 330万円を超え695万円以下の税率20%/控除額42万7,500円
- 695万円を超え900万円以下の税率23%/控除額63万6,000円
- 900万円を超え1,800万円以下の税率33%/控除額153万6,000円
- 1,800万円超え4,000万円以下の税率40%/控除額279万6,000円
- 4,000万円超えの税率45%/控除額479万6,000円
所得金額が上がるほど、税率は上がりますが、控除額(所得金額から除く金額)も大きくなる仕組みです。所得税額は、所得金額に税率を乗じ、控除額を差し引くことで算出できます。
具体的には、以下のように計算します。
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〈例〉扶養家族のいない会社勤めの方が副業で不動産投資を始めた場合
- 給与所得(給与所得控除後の金額) 450万円
- 不動産所得(経費を差引後の金額) 100万円
- 基礎控除(2,400万円以下の場合) 48万円※
- 社会保険料控除 (仮定・当該年の金額)30万円※
- 青色申告特別控除(簡易簿記を選択)10万円※
※印は控除額
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給与所得450万円+不動産所得100万円−控除額88万円=控除後の所得金額462万円
控除後の所得金額は462万円のため「330万円を超え695万円以下の税率20%/控除額42万7,500円」に当てはまります。
よって、所得税額は462万円×20%−42万7,500円=496,500円となります。
住民税
住民税は、自治体が行政サービスを行うために使われる税金です。
税率は、ほとんどの地域で所得金額の一律10%となっており、1,000万円の所得があれば100万円を住民税として納付します。
所得税同様、以下のようにさまざまな控除があり、控除額を差し引いた金額で算出します(以下は埼玉県の場合)。
- 基礎控除 上限43万円
- 配偶者控除 上限33万円
- 扶養控除 33万円
- 障害者控除 26万円
- ひとり親 30万円
- 勤労学生控除 26万円
- 社会保険料控除
- 医療費控除
- 生命保険料控除
- 青色申告控除(簡易簿記10万円、複式簿記65万円)
上記以外にもさまざまな控除額があるため、住まいのある自治体に問い合わせることをおすすめします。住民税は、税金として納めるだけでなく、保育所の保育料などを算出するベースとなるものです。会社勤めの方が不動産投資を行って収益を得て、その分だけ住民税が高くなれば、保育所に通う子どもがいる場合、支払う保育料も上がる可能性があります。
不動産投資にかかる税金が経費になる
税金は課されたら納税するだけと思っている方はいませんか。不動産投資にかかる税金は、実は、投資に必要な経費として計上できます。それぞれの税金の内容についてまず内容と、税金が課されるタイミング、また、頻度についてもチェックしましょう。
固定資産税
固定資産税は固定資産を所有している人が市町村などに対して支払う税金です。毎年1月1日現在に該当する土地や建物を所有している方に課税されます。固定資産税の計算式は「固定資産税評価額×1.4%」です(固定資産税は地方税のため税率が異なる場合あり)。固定資産税評価額は、一定の基準で評価されたもので、土地・建物ともに時価ではありません。毎年、固定資産税は課される税金ですので、支払いは免れません。ただし、不動産投資にかかる経費として、毎年、計上できます。
不動産取得税
不動産取得税は、土地や建物の購入、贈与、建物の建築などで不動産を取得したときに、取得した方に課される税金です。贈与の場合は不動産税の課税対象ですが、相続は課税対象ではありません。不動産を購入後、おおよそ4カ月から1年6カ月くらいの間に各都道府県から不動産取得税の納税通知書が届きます。納税通知書に税額が記載されており、その額を金融機関に納付します。不動産取得税の税額は「不動産の課税標準額×税率」で算出されます。課税標準額とは実際の不動産購入価格ではなく、原則、固定資産台帳に登録されている価格です。税率は、住宅でない家屋が4%、土地および家屋が3%(2024年3月31日まで)です。不動産を課税標準額よりも大幅に安く購入した場合、不動産取得税額が想像以上に高く感じられるようなこともあり得ます。不動産取得税は、その名の通り、不動産を取得した時に課される税金で、毎年、かかるものではありません。経費として計上するのも、不動産を取得し税金が課された時だけです。
登録免許税
登録免許税とは、登記を行う時に課される税金です。この登記とは、建物の詳細や所有者の氏名、住所を掲載することで、権利関係を明確にし取引の安全性を保つという目的があります。登記ができていれば、不動産の所有者であることを主張できるようになります。登録免許税は「固定資産税評価額 × 税率」で算出できます。
税率は、中古物件が0.3%(所有権の移転の登記)、新築物件が0.15%(所有権の保存登記)です。登記内容を変更することがなければ、1度しか課されない税金です。
印紙税
印紙税は、印紙税法に定められた「課税文書」が対象で、印紙を購入して文書に貼り付けることで納税します。不動産投資では「売買契約書」や「仮契約書」などが課税対象の文書です。印紙税も、課税文書を作成する場合に税金が課せられますので、毎年課される税金ではありません。
不動産投資で節税できる?
不動産投資は節税になると聞いて始めようとしている方もいることでしょう。一方で「不動産投資では節税にならない」という情報を耳にしたことがある方もいるかもしれません。不動産の営業マンが投資用物件を売りたいがためのセールス文句でしかないのでしょうか。具体的にどのような仕組みで節税ができるのか、ビギナー向けに税金の特徴を押さえながら解説します。
所得税や住民税が確定申告で軽減
確定申告をすることで、所得税や住民税を軽減できます。「減価償却費」や「青色申告の控除」などの費用を所得金額から差し引くことができるため、所得金額を元に課せられる所得税や住民税を減らすことにつながります。所得金額から差し引くことができるそれぞれの内容については、次項から詳しく説明していますので確認しましょう。
青色申告なら控除が受けられる
確定申告には青色申告と白色申告の2種類あり、青色申告で申告すると、青色申告特別控除が受けられます。青色申告をすることができるのは、不動産所得や事業所得、山林所得がある方です。さらに、65万円または55万円の控除を適用できるのは、事業的規模の不動産所得がある、または事業所得のある方に限定されています。条件として複式簿記で記帳していること、貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付していることを満たしていれば最大65万円(電子申請をした場合、しないばあいは55万円)、基準を満たしてなくても10万円の控除が受けられます。白色申告にはこのような控除はありません。控除額が大きくなれば、所得を減らせるため、節税したい方は青色申告をおすすめします。ただし、青色申告は記帳に手間がかかるため、時間がかかるので、その時間と手間を考慮しても利用すべきかどうか、判断が必要です。また、税務署に「青色申告承認申請書」を提出していないと、青色申告はできませんので注意しましょう。
減価償却で経費計上
不動産投資をすることで、所得税や住民税を確定申告時に軽減することが可能です。投資用物件の購入費用を数年間「減価償却費」として計上することで、所得から差し引くことができるからです。減価償却費とは、高価格で長年使えるものを単年度だけでなく、何年間も費用計上していく仕組みです。不動産投資ローンの返済金額のほかに、手持ちのお金が動いていなくても会計上は減価償却費も経費として差し引くことができるため、大幅に所得金額を減らせます。
相続税対策もできる
不動産投資をすることで、相続税の税金対策も可能です。なぜなら、現金を不動産に換えておけば、現金や預金よりもその評価を下げることができるからです。現金や預金は、額面通りの金額で相続税が計算されますが、不動産は建物であれば固定資産税評価額、土地であれば路線価など、市場で売買される価格よりも低い金額を元に相続税が計算されます。さらに、不動産投資で賃貸経営などをしていれば、さらに減額される可能性も残されています。不動産投資で相続税対策ができるというのは、不動産価値の評価方法を使って行う税金対策です。
サラリーマンでも節税できる
不動産投資で、サラリーマンでも、先述した損益通算と青色申告により節税ができます。不動産収入が赤字の時には、給与所得と損益通算することで、所得金額を減らすことができるのです。課税対象額が減れば、給与所得のみと比較した場合、所得税や住民税が減額されることになります。帳簿上の損失である減価償却費を差し引くことができれば、所得金額から差し引けるので、節税効果はさらに大きくなるでしょう。確定申告は、サラリーマンにはなじみの薄い存在ですが、自分で申告できます。複式帳簿を作成するなど基準を満たせば最大65万円、基準を満たさなくても10万円の青色申告控除が受けられます。働きながら複式帳簿をつけ続けるのは大変なことですが、大きい節税効果が得られます。
全員が不動産投資で節税できない
不動産投資をするのなら、家賃収入などのほかにも節税ができれば、一石二鳥ではあります。しかし、不動産投資をする方全員が節税できるかというと、そうでもないようです。節税のできる人・できない人の条件を自分と照らし合わせて、節税ができるのか確認しましょう。
節税ができるのは所得の高い人
不動産投資で節税ができるのは、所得の高い人で、具体的には課税所得が900万円を超える方です。なぜなら、冒頭に記した通り、課税所得が900万円を超えると所得税率が23%から一気に33%に跳ね上がるからです。所得金額を節税して下げられれば、税率を33%から23%に下げられる可能性があります。
所得の低い人は節税効果が少ない
課税所得が900万円以下の所得の低い方は、税金対策を行っても効果が少ないといえます。なぜなら、課税所得が695万円を超え900万円以下の税率は23%ですが、1段階下げても税率20%(課税所得が330万円を超え695万円以下)で、その差は3%です。そのため、不動産投資による節税効果は限定的といえます。ただし、青色申告をした場合には最大65万円の特別控除を受けることは可能となります。
節税ができる・できない不動産投資物件
物件によっても節税効果は異なります。ここからは、不動産投資物件に注目して節税方法をチェックしてみましょう。
木造の古い物件がおすすめ
節税方法の1つとして、減価償却費を紹介しました。減価償却費は、物品や設備によって償却期間が異なります。もちろん、住宅も構造や築年数によって償却期間が変わってきます。
減価償却を使った節税をするのであれば、木造がおすすめです。木造は、ほかの構造と比較しても法定耐用年数が22年と短いため、減価償却費は同じ築年数で同価格のほかの構造の建物と比較すると、減価償却費が大きくなります。さらに、法定耐用年数が切れている場合、法定耐用年数×20%の年数で減価償却できます。
築浅マンションは節税しにくい
築浅マンションを区分所有している場合、減価償却期間が長いため、1年当たりの減価償却費は少額になります。築浅マンションの区分所有は、減価償却費による節税はしづらいと考えていいでしょう。
まとめ
不動産投資を始めると、さまざまな税金が課せられることが分かりました。支払った税金を経費に計上できたり、税金の仕組みを知ることで節税できたりすることも同時に知ることになりました。
不動産投資に課せられる税金を知ることで、投資をスタートする不安を1つ取り除けたでしょうか。税金のことも頭の片隅に置きながら、不動産投資への歩みを一歩ずつ進めていきましょう。
この記事を書いた人
TERAKO編集部
小田急不動産
鈴木 和典
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