不動産投資
2023.12.25

賃貸物件の立ち退きにかかるスケジュール|基本からわかりやすく解説

賃貸物件の立ち退きにかかるスケジュール|基本からわかりやすく解説

賃貸経営で問題となるのが、入居者の立ち退きです。特にオーナーの都合で退去してもらうには、入居者に納得してもらう必要があるため簡単ではありません。

退去にはどれくらいの時間がかかると見ておくとよいのでしょうか。入居者に退去してもらう方法と、かかるスケジュールについて解説します。

この記事の目次

入居者に退去してもらう方法

建て替えなどの事情から入居者に立ち退いてもらいたいときは、どうすればスムーズに話を進められるのでしょうか。まず入居者に立ち退いてもらう際の、いくつかの方法を紹介します。

条件交渉して退去の合意を得る

立ち退きの多くは入居者に合意を得て賃貸借契約を解除したうえで、退去をお願いすることになります。

その際にはまずオーナーから解約の申し入れを行い、さらに提示する立ち退きにかかる条件に対して入居者の了承が必要です。提示する条件の項目としては「立ち退きまでの期間」「立ち退き料」「敷金などの取り扱い」「転居先の斡旋」などが考えられます。

このような項目で入居者と合意できれば、大きな問題なく立ち退きが進みます。しかし、条件が折り合わない場合はさらに交渉が必要となり、双方で合意形成しなければなりません。

定期借家契約なら再契約しない

賃貸借契約が普通借家契約ではなく定期借家契約であれば、当初から賃貸借期間が決まっているため立ち退きの交渉が必要ありません。

契約期間を越えて入居者が住み続けるには、期間満了後に再契約が必要です。しかし、オーナーに再契約の義務がないため、再契約しなければ入居者は立ち退くことになります。

入居者に問題があると強制退去が可能

賃貸借契約を遵守しないなど入居者に問題があり、賃貸借契約の解除理由に相当する場合は、契約解除を理由に退去を求めることが可能です。例えば、家賃を滞納していたり、無断で第三者に又貸ししていたり、明らかに近隣に迷惑をかける行為などが解除理由として挙げられます。

ただし、問題があれば即座に契約解除できると考えるのは早計です。

裁判になると家賃を本当に支払う意思があるのかないのか、日頃からのオーナーと入居者の関係性などが問われることがあります。また、契約解除しても、入居者が強制的な退去に応じないことがあります。その際も勝手に入居者の荷物を処分したり、部屋から閉め出したりすることはできません。

オーナーと入居者双方の合意のもと、円満に解決するのが最善の手法であることは念頭に置いておきましょう。

立ち退きにかかるスケジュール

立ち退きを円満に進めるためには、どのようなスケジュールで入居者との折衝を進めるのがよいのでしょうか。

ここでは、明け渡しまでの立ち退きにかかるスケジュールを解説します。

6カ月~1年前|解約の申し入れ

立ち退き、つまり賃貸借契約の解除の申し入れは、最低6カ月前には行う必要があります。「借家借地法」には「賃貸人が賃貸借の解約の申し入れをした場合では、建物の賃貸借は、解約の申し入れの日から六月を経過することによって終了する。」と明記されており、解約申し入れから6カ月経過が契約終了要件となっています。

ただし、条件交渉などすぐに合意できるかわかりませんので、できるだけ早く通知するのがおすすめです。入居者にとっても通知は早いほうが転居の準備を進めやすいため、余裕を持って1年ぐらい前からお知らせすることも検討しましょう。

また、正式な申し入れは必ず書面で通知する必要があるため注意が必要です。書面には立ち退きが必要な理由に加え、退去時期、立ち退き料など具体的な立ち退きの条件を明記しておきましょう。

4カ月~6カ月前|退去の条件交渉

立ち退きの条件に入居者が納得し、そのまま退去してもらえれば、交渉の必要はありません。しかし、入居者の人数が多いと条件に納得せず、条件交渉になることも増えます。

立ち退き料以外にもスケジュールや、立ち退きそのものに納得しない入居者がいることもあります。

交渉が難しい場合や、トラブルに発展する可能性がある場合は、早めに不動産会社や弁護士などの専門家に相談するのも一つの方法です。

3カ月~4カ月前|転居先の斡旋

立ち退きにおいて、入居者が気にする大きなポイントは新たな転居先です。転居先のメドがないと、入居者が転居したくてもできないケースもあります。

探す主体はあくまでも入居者ですが、積極的に斡旋しないと最終的に転居先が見つからずに困るのはオーナーです。あらかじめ不動産会社と相談して転居に適した物件を紹介するなど、入居者を全面的にサポートして早期の転居につなげましょう。

明け渡し

同じ時期に解約を通知したとしても、入居者の明け渡し時期は個々人の都合によってさまざまです。本来は原状回復後に明け渡しを受けますが、スムーズな転居を優先して原状回復費用は免除することなども検討しておきましょう。

立ち退きのスケジュールは余裕も持って組むことが大切です。長期的な視点で立ち退きを進めましょう。

立ち退き交渉を進めるときのポイント

立ち退き交渉はこじれてしまうと、いたずらに立ち退きに要する期間が長引き、心身両面で大きな負担になります。どうすればうまく立ち退き交渉を進められるか。ポイントを解説します。

良識的な誠意ある対応を心がける

オーナーには入居者に対して、立ち退きの手続きや交渉において良識的な誠意ある対応が求められます。

オーナーが「建物の所有者は自分」と、入居者が高圧的あるいは唐突と感じるような行動を取ってはいけません。ちょっとした行き違いでも信頼関係がなくなり、問題をこじらせて、解決を長引かせてしまいます。

十分な期間を確保して解約の通知をしたり、条件交渉でも良識的な条件を提示したりするなど、入居者の立場に立った誠意ある慎重な対応が重要です。

転居先の斡旋も含め、退去を迫られる入居者を丁寧にサポートして無用なトラブルを防ぎ、円満かつ穏便な立ち退きを心がけましょう。

「正当な理由」を説明する

立ち退きで最も重要なポイントは「正当な理由」です。法律では入居者の権利が強く保護されており、オーナーの申し出による賃貸借契約解除は、「建て直さないと倒壊するおそれがある」「再開発で建物の移転が必要になった」など社会常識として通用する程度の「正当な理由」がなければ認められません。

「正当な理由」なのかどうかは、さまざまな状況を勘案して正当性が判断され、争いになった場合は裁判で結果を出すことになります。

立ち退きを行う際は、理由を論理的に整理して入居者に理解してもらえるよう心がけましょう。

立ち退き料を支払う

オーナー都合による立ち退きでは、補償として立ち退き料の支払いがあります。賃貸借契約の解約が認められるケースは「借地借家法」で「財産上の給付をする」と明記されており、立ち退き料は解約申し入れの「正当な理由」を補完する材料の一つなのです。

立ち退き料の相場は、法律に明記されていません。一般的には賃貸マンション・アパートなどの住居の場合、家賃の3~6カ月分が相場となっています。

立ち退き料には引っ越し費用や、転居先の確保にかかる費用、転居先との家賃差額、さらに「迷惑料」的なものも含まれるとされます。しかし、諸事情や入居者の意向などにも左右されるため、3~6カ月分の家賃はあくまでも目安の一つにすぎません。

専門の弁護士に依頼する

どのように誠意をもって対応しても、うまく進まないこともあります。「交渉のテーブルについてくれない」「強く権利主張される」などの場合は、専門の弁護士に相談するのもよいでしょう。弁護士に依頼することで、法的な根拠を持って交渉に臨め、安心感にもつながります。

また、入居者との長い交渉は精神的・肉体的に負担が大きいだけでなく、多くの時間が必要です。弁護士に代行してもらうことで、そういったオーナーの負担を軽減できます。

弁護士費用の問題や、相手の態度が硬化するなどデメリットもあるため、事前に弁護士事務所や不動産会社に相談のうえで検討しましょう。

交渉が不調ならオーナーチェンジ物件として売却する

誠意をもっていろいろな方法を試みても、立ち退き交渉がうまく進まないこともあります。そのような場合は、賃貸借契約を引き継いだまま、オーナーだけを変える「オーナーチェンジ物件」として売却するのも一つの方法です。

賃貸運営を継続するか迷っている方などは、有力な選択肢となるでしょう。

この記事を書いた人

著者写真 TERAKO編集部
小田急不動産
飯野一久

「一期一会」がモットーです。これまでの投資不動産の売却・購入・資産の入れ替えの実務を通じて得られた知見を、少しでも、皆様に、わかりやく、丁寧にお伝え出来たらと思っております。 著者の記事一覧はコチラ
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