なぜ収益物件をオーナーチェンジするのか?購入するときのポイントを解説
投資用の不動産物件を探していると「オーナーチェンジ」という言葉を目にします。オーナーチェンジ物件は、すぐに収益が得られることから、不動産投資初心者向けとして紹介されることが多いです。投資物件を選ぶ際はメリットに目がいきやすいですが、オーナーチェンジ物件には気をつけるべきポイントもあります。この記事では、オーナーチェンジの基本や物件を購入する際のポイントを紹介します。収益物件をオーナーチェンジする理由もお伝えしますので、参考にしてください。
この記事の目次
オーナーチェンジとは?
「オーナーチェンジ」は、その言葉の通り、不動産のオーナー(所有者)がチェンジ(変わる)することです。どのような物件も売主から買主に売り渡されるとオーナーが変わりますが、オーナーチェンジという言葉は、賃貸入居者がいる場合にのみ使用されます。
オーナーチェンジは、入居者がいる状態で所有者が変わるため、空室物件などの一般的な不動産売買とは異なります。物件・入居者とともに、旧オーナーと入居者が結んだ賃貸借契約を引き継ぐことになるのです。
不動産投資を成功させるには、入居者の存在が必要不可欠です。オーナーチェンジ物件はすでに入居者がいるため、「入居者が決まらない」という空室リスクを回避できます。物件購入後はスピーディーに収益化でき、賃貸契約もそのまま次のオーナーに引き継がれるので、不動産投資初心者向けとも言われています。
オーナーチェンジのメリット、デメリットは?
不動産投資用に物件を購入する場合、なるべく早く収益を得たいと考える方がほとんどでしょう。すでに入居者がいる状態で購入できるオーナーチェンジ物件は、収益面で魅力的に感じる方も多いようです。
オーナーチェンジ物件にはメリットが目立ちますが、気をつけるべきデメリットがあることも忘れてはいけません。より収益につながる不動産投資をするためには、オーナーチェンジのメリットだけでなく、デメリットについても正しく理解しておきましょう。
メリット
オーナーチェンジ物件のメリットとしてまず挙げられるのは、すぐに家賃収入が得られることです。いくら利回りの良い物件を購入しても、入居者がいなければ収益にはなりません。購入後、タイムラグなく家賃収入を得られるオーナーチェンジ物件なら、安定した不動産投資をスタートできます。
また、最初から入居者がいるため、入居者募集の手間や広告費用などもかかりません。特に不動産投資初心者にとって、投資をはじめる際の初期費用を抑えられることはうれしいメリットと言えるでしょう。
それに加え、利回り計算がしやすいのもメリットのひとつです。すでに運営実績がある物件なので、過去の年間収益や経費なども参考にでき、投資計画が立てやすいでしょう。
デメリット
オーナーチェンジ物件は入居者がいるため、自分の目で室内を確認できません。外観や書類上でしか室内状況を把握できないので、構造に問題があったり、後にトラブルが判明したりすることもあります。この点はオーナーチェンジ物件のデメリットです。
さらに、オーナーチェンジ物件のデメリットには、条件変更ができないことも挙げられます。オーナーチェンジ物件では、入居者と旧オーナーとの間で交わしている賃貸借契約を引き継ぐため、基本的に条件を変更することはできません。
「ペット可からペット不可にしたい」「家賃の支払い方法を変えてもらいたい」など条件を変えたい場合は、退去時や契約更新時などに行います。タイミングを待つ必要があることをあらかじめ理解しておきましょう。
収益物件をオーナーチェンジするときの引き継ぐ「権利と義務」って何?
オーナーチェンジ物件では、オーナーが変わっても入居者はそのまま住み続けるため、旧オーナーと入居者との間で結ばれた賃貸契約を引き継ぐ必要があります。
引き継ぐ「権利と義務」には、どのようなものがあるのでしょうか。オーナーとなった以上、たとえ不動産投資初心者だとしても、果たすべき義務を知らなかったではすまされません。予期せぬトラブルを避けるためにも、引き継ぐ「権利と義務」について理解しておくことが大切です。
引き継ぐ権利
旧オーナーから引き継ぐ「権利」は3つあります。
- 入居者から家賃を受け取る権利
- 退去する際に部屋(建物)を返還してもらう権利
- 退去する際に入居者に原状回復をしてもらう権利
賃貸借契約をそのまま引き継ぐため、旧オーナーに変わり、新オーナーに家賃を受け取る権利が発生します。入居者が退去する際には、部屋(建物)を返還してもらうことも権利のひとつです。
オーナーには、入居中に傷つけてしまった箇所を、原状回復してもらう権利もあります。ただし、通常の住み方で生じた傷や汚れ、畳の日焼けといった経年変化などの原状回復はオーナー負担となることも、あわせて覚えておきましょう。
引き継ぐ義務
旧オーナーから引き継ぐ「義務」も3つあります。
- 部屋(建物)を入居者に使用させる義務
- 部屋(建物)を修繕する義務
- 入居者の退去時に敷金を返還する義務
引き継ぐ「義務」と聞くと難しいように感じますが、どの義務も不動産賃貸では基本的なことばかりです。入居者からするとオーナーが変わったのみなので、その他のことに変化はありません。旧オーナーが受け取った敷金は、新オーナーが返還する義務があります。
なぜ収益物件をオーナーチェンジするのか?
入居者がいて家賃収入のある収益物件を、なぜオーナーチェンジするのか疑問に思う方もいるのではないでしょうか。不動産投資の世界では、入居者がいる状態での物件売買は珍しいことではありません。
ここでは、収益物件をオーナーチェンジする理由について解説します。正当な理由によるオーナーチェンジは問題ありませんが、理由によっては購入を検討し直した方が良い場合もあります。売主はどのような理由や目的によって、オーナーチェンジするのでしょうか。さまざまなケースをみていきましょう。
不動産価格の上昇
不動産投資で収益を得る方法は大きくわけて2つあります。ひとつは定期的に利益が得られる家賃収入、もうひとつは不動産を売却することによって得られる売却益です。不動産を所有していることで得られる家賃収入は「インカムゲイン」、不動産の売却で得られる収益は「キャピタルゲイン」と呼ばれています。
不動産の価格は常に一定ではなく、金利やニーズなどさまざまな条件により値上がり・値下がりするものです。物件の価格が値上がりし、購入したときよりも価格が上昇している場合は、「キャピタルゲイン」を目的としたオーナーチェンジを行うケースが多く見受けられます。
より高い収益が得られる物件を見つけた場合は、いま所有している物件を手放し、その売却した代金を元手に、不動産投資などの新たな投資をスタートさせる投資家も多くいます。
他の収益物件への買い替え
ステップアップを目指す投資家の中には、他の収益物件への買い替えを目的としたオーナーチェンジを行う方もいます。
一棟マンションやアパートは、多くの家賃収入が得られるため、満室状態に近い方が高く売却できる傾向があります。あえて空室が多い一棟マンションを安く購入し、空室を埋めてから、高値でオーナーチェンジをすることも収益を得る方法のひとつです。
物件の所有期間が5年を超えると、売却時の税金が安くなることから、計画的に売却しているケースもあります。不動産を売却した際の利益は「譲渡所得」となり、「譲渡所得税」を納めることが必要です。譲渡所得税は、売却した不動産の所有期間によって税率が変わり、所有期間が5年を超えるかどうかがポイントとなります。
税金が高いにもかかわらず、5年以下で売却しようとしているオーナーチェンジ物件は、なにか他の理由があると考えた方がよいでしょう。
まとまった資金が必要になった
株などの短期的な投資とは異なり、不動産は長期的な投資と考えている方が大半です。5年以上の所有期間で「譲渡所得税」が安くなることから、不動産は5年以上所有しているケースが多く見受けられます。基本的には自分の好きなタイミングで売却できますが、収益を得るために長く所有するケースがほとんどでしょう。
投資用として所有していた物件でも、まとまった資金が必要になった際に、オーナーチェンジを行う場合があります。マイホーム購入のための頭金、ローン返済や損失の補填など、まとまった資金が必要になる理由は人によってさまざまです。
すぐにまとまった資金が必要な場合は、不動産を早急に売却したいと考える売主が多いでしょう。このような場合、売主は資金調達のためにオーナーチェンジを急いでいるため、買う側としては価格交渉がしやすいと言えます。
売主にとって都合の悪いことがある
物件を所有していく上で不都合なことがある場合にも、収益物件をオーナーチェンジをすることがあります。
入居者の家賃滞納やマナー違反など、オーナーと入居者との間でトラブルが発生することは珍しくありません。中には、入居者と裁判中というケースもあります。そのようなオーナー物件はトラブルに巻き込まれるリスクがあるため、気をつけた方が良いでしょう。
アパートやマンションなどの一棟物件の場合は、大規模修繕による修繕費がかかる前にオーナーチェンジを考える売主もいます。建物の規模が大きいほど修繕費もかさむため、購入を避けた方が無難です。
入居者の賃貸借契約の満期が近づいているタイミングでのオーナーチェンジにも、注意しましょう。入居者が契約を更新する可能性もありますが、退去が見込まれる場合は売却のタイミングと考える投資家もいるようです。購入後すぐに退去されては収益が見込めません。
商業施設の撤退や大学の移転など、物件の周辺環境が悪くなると、賃貸物件としての人気が下がる傾向があります。そうなると物件が値下がりすることが予想されるため、オーナーチェンジされることもあります。
オーナーチェンジ物件の売却理由を確認する方法は?
収益物件をオーナーチェンジする理由は、他の収益物件に買い替えるなど正当なケースから、売主にとって都合の悪いケースまで多岐にわたります。
売却理由によっては、購入を控えた方が良い場合もあるため、オーナーチェンジ物件を購入する場合は、なぜ売却するのかを売主に確認した方が良いでしょう。とはいえ、売却に不利な理由がある場合は、本当の理由を教えてもらえないことも想定されます。
売主の言葉を鵜呑みにするのではなく、自分自身で売却理由を確認できると安心です。ここでは、オーナーチェンジ物件の売却理由の確認方法を解説します。
懸念事項を不動産会社に確認する
「重要事項説明書」には、賃料や更新料金、備えつけの設備など基本的な概要は記載されていますが、入居者とのトラブルなどについては記載されていません。重要事項説明書に記載されていない懸念事項に関しては、自分で売主や不動産会社に問い合わせ、確認することが必要不可欠です。
入居者とのトラブルと言っても、家賃滞納や騒音、マナー違反などさまざまなケースがあります。不動産会社に懸念事項を確認する場合は、「入居者にトラブルメーカーはいないか」「賃料の減額を交渉されていないか」など、なるべく具体的に確認しましょう。しっかりとした賃貸借契約が取り交わされていたとしても、入居者に守られていないと意味がありません。
確認すべき懸念事項が複数ある場合は、確認漏れのないようあらかじめリストアップし、まとめて不動産会社に確認すると良いでしょう。
必要な資料を不動産会社にもらう
物件を正しく管理するためには、さまざまな書類が必要です。オーナーチェンジ物件がきちんと管理されていたかどうかを確認するためにも、不動産会社に必要な資料を要求しましょう。
必要最低限の書類は、下記の6つです。
- 登記簿謄本
- 固定資産税納税通知書
- レントロール(不動産の賃貸条件を一覧表にしたもの)
- 建物の損害保険料に関する資料
- 管理費に関する資料
- 修繕履歴
どれも基本的な書類であるため、不備が目立つ場合や資料が不足している場合は、管理状況に不安があると考えて良いでしょう。いくら利回りが良い物件でも、きちんと管理されていない物件は、購入後トラブルに発展する可能性もあります。少しでも不安を感じた場合は、焦らず検討し直すようにしましょう。
収益物件をオーナーチェンジするときのポイント4つ
オーナーチェンジ物件は魅力的なメリットがあると同時に、注意しなければならないデメリットやリスクがあることをお伝えしました。では、安心して購入できるオーナーチェンジ物件を見つけたい場合、どのようなポイントに気をつければよいのでしょうか。
ここでは、収益物件をオーナーチェンジで購入する際の、4つのポイントを紹介します。買ってから後悔しないためにも、チェックすべきポイントを頭に入れておきましょう。
物件を直接見に行く
オーナーチェンジ物件を購入する場合は、不動産広告や資料だけで判断せず、必ず自分の目で物件を見にいきましょう。オーナーチェンジ物件には入居者がいるため、中を見ることはできません。しかし、建物の外観を見るだけでも確認できることは多数あります。
物件を見にいった際は、物件の外観を確認するだけでなく、周辺を歩くこともおすすめです。スーパーや病院への利便性は地図で確認できますが、治安の良し悪しや騒音などは、実際に足を運んでみないとわかりません。「自分が住みたいかどうか」の視点で、周辺環境を確認するのも良いでしょう。
物件を手放す理由を確認する
不動産投資家の中には、良い物件をなるべく安価で購入したいと考えている方もいるでしょう。オーナーチェンジ物件は、売主が手放す理由によっては、価格交渉がしやすいケースもあります。
まとまった資金が必要になったためにオーナーチェンジを行う場合は、売却を急いでいることも多く、値下げ交渉がしやすい可能性があります。一方、不動産の売却で得られる収益を目的としたオーナーチェンジは、値下げ交渉が難しいかもしれません。価格交渉をしたい場合は、売主に物件を手放す理由を確認しておきましょう。
謄本の所有者履歴、抵当権の銀行を確認する
収益物件をオーナーチェンジで購入する際、今までどのようなオーナーが所有していたのかを知るために、謄本の所有者履歴や抵当権の銀行を確認すると良いでしょう。
謄本の所有者履歴を見れば、今までの物件所有者を確認できます。地主が売る物件や地主の相続人が売る物件は、きちんと管理されている場合が多いため、優良物件と考えても良いでしょう。
一方、何度もオーナーが変わり売買が繰り返されている物件は、修繕が適切に行われていない場合もあります。特に5年以内に転売されている物件には気をつけた方が良いでしょう。
修繕履歴を確認する
買うべきオーナーチェンジ物件かどうかを判断するには、修繕履歴を確認することもポイントです。修繕履歴とは、いつ、どのような修繕がされたかを確認できる資料です。築年数の古い物件は、大規模修繕の履歴があるかどうかも必ず確認しましょう。オーナーチェンジ物件はすぐに収益が得られるとはいえ、購入後すぐに修繕費がかかる場合は検討すべきです。
修繕履歴は売主に要求しても、出してもらえないケースがあります。また、修繕履歴がない物件はずさんな管理がされているリスクも考えられるため、慎重に検討した方が良さそうです。
可能であれば、室内の付帯設備の交換・補修履歴がわかる書類の有無も確認しましょう。繰り返しになりますが、オーナーチェンジ物件は入居者がいるため、室内の確認ができません。そのため、室内の状況を把握できる資料を確認しておくと安心でしょう。
まとめ
この記事では、オーナーチェンジの基本やオーナーチェンジ物件を購入する際に確認すべきポイント、注意点などを紹介しました。
オーナーチェンジ物件は入居者がいる状態で購入できることから、すぐに収益が得られる点で人気です。しかし、デメリットやリスクがあることも理解しておく必要があります。収益物件をオーナーチェンジで購入する場合は、メリットとデメリットをしっかり確認し、投資を成功させましょう。
この記事を書いた人
TERAKO編集部
小田急不動産
鳥塚 正人
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