不動産売却に譲渡所得税はいくらかかる?計算方法や特例もご紹介
不動産の売却を初めて行う場合、どのくらい税金がかかるのかと不安や疑問を感じる方も多いと思います。不動産売却では、「譲渡所得税」という税金がかかり、この金額が大きな幅を占めています。しかし、特例を利用することでその譲渡所得税を減税することも可能です。こちらの記事では、不動産売却を予定している方に向けて、譲渡所得税の計算用法や減税するための特例についてご紹介していきます。ぜひ参考にしてみてください。
この記事の目次
不動産売却時にかかる譲渡所得税とは?
「譲渡所得税」とは、不動産の売却によって得た利益にかかる税金のことをいいます。2037年までは、東日本大震災の復興を目的とした「復興特別所得税」もあわせて徴収されます。税率は所得税の2.1%です。
譲渡所得税の計算方法
譲渡所得税を計算する方法は「譲渡所得」の金額から計算していきます。譲渡所得税は不動産売却の金額ではなく、売却によって得た利益に対してかかる税金です。計算式は以下になります。
譲渡所得 = 不動産の売却価格 −(取得費+譲渡費用)
譲渡所得は不動産の売却金額から、その不動産を取得・譲渡するためにかかった費用と売却時に使える控除額を引いて算出します。「取得費」とは、売却した不動産を取得した時にかかった購入代金の費用です。「譲渡費用」とは、不動産の売却時に支払った費用のことです。
不動産売却の「譲渡所得」については、特例として特別控除を受けることができる場合があります。売却した物件や、売却した人が一定の条件を満たしている場合に利用が可能です。控除を利用することで、譲渡所得額が少なくなり、結果として譲渡所得税を低く抑えることができます。特別控除については後述します。
不動産の取得費の計算方法
取得費の主な費用は、売却した不動産の購入代金です。購入時に不動産会社に支払った仲介手数料、購入時に支払った「印紙税」「登録免許税」「不動産取得税」といった税金、司法書士に支払った登記手数料、購入時の家電製品の納入や設置費用、増改築費も取得費に含まれます。
売却した不動産の購入代金は、土地と建物にわけて計算します。土地は購入額、建物は購入額から減価償却費を控除した価額のことです。減価償却費とは、取得から売却までの間に経年劣化した価値のことをいいます。
「建物取得費」の計算式は以下になります。
建物取得費 = 建物購入価格 − 減価償却費相当額
「減価償却費」の計算式は以下です。
減価償却費 = 建物購入価額 × 0.9 × 売却率 × 経過年数
売却率は建物の構造によってそれぞれ数値が異なります。また、事業用かそれ以外かでも変わってきます。
建物が木造だった場合、非事業用は売却率0.031%で耐用年数は33年です。事業用の売却率は0.046%で、耐用年数は22年です。木骨モルタル造の場合、非事業用は売却率0.034%で耐用年数は30年です。事業用の売却率は0.050%で、耐用年数は20年です。
鉄骨の場合は骨格材の厚さによってそれぞれ変わってきます。骨格材の肉厚が3mm以下の場合、非事業用は売却率0.036%で耐用年数は28年です。事業用の売却率は0.053%で耐用年数は19年です。骨格材の肉厚が3mm以上4mm以下の場合、非事業用は売却率0.025%で耐用年数は40年です。事業者用の売却率は0.038%で耐用年数は27年です。
骨格材の肉厚が4mm以上の場合、非事業用は売却率0.020%で耐用年数は51年です。事業用の売却率は0.030%で耐用年数は34年です。鉄筋・鉄骨コンクリート造の場合、非事業用は売却率0.015%で耐用年数は70年です。事業用の売却率は0.022%で耐用年数は47年です。非事業用資産の耐用年数は、事業用資産1.5倍で計算しています。
なお、経過年数は建物の築年数ではありません。建物を購入してから売却するまでの所有期間のことをいいます。経過年数を計算する際、端数月がある場合は6ヶ月以上であれば1年と計算します。6ヶ月未満の端数月は切り捨てます。
不動産の譲渡費用の計算方法
「譲渡費用」とは、売却(譲渡)した時にかかった費用のことをいいます。譲渡費用に含まれるものは、売却時に不動産会社に支払った仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代、借主への立ち退き料、土地を売却する時に建物を壊した場合の取り壊し費用などのことをいいます。
譲渡所得税率は不動産の所有期間で変わります。不動産を所有していた期間が5年以内だった場合は「短期譲渡所得」、5年以上の場合は「長期譲渡所得」といいます。「短期譲渡所得」の税率は39.63%で、「長期譲渡所得」の税率は20.315%です。どちらも2037年までは所得税に対して2.1%の復興特別所得税が加算されます。
所有期間の判断は、不動産を売却した年の1月1日時点に5年以上であるかどうかで判断します。
不動産の譲渡所得税以外にかかる3つの税金
譲渡所得税以外にも、不動産の売却には税金がかかります。その3つの税金について、こちらでご紹介していきましょう。
印紙税
まずは「印紙税」です。印紙税とは、不動産を売却する際の不動産売買契約書に貼る印紙のことです。印紙税は不動産の売買金額によって変わり、売買金額に比例して納税額も上がります。
登録免許税
「登録免許税」とは、不動産の所有者が変更になる際に発生する税金です。売買による所有権移転登記の場合、以下の数式で費用が発生します。
固定資産税評価額(当該年度の価格)× 2%
この数式は土地・建物共通となりますが、土地に関しては2025年3月31日まで1.5%での計算となります。これは、租税特別措置法第72条の適用期間が2022年3月31日から2年延長されたことによるものです。
登記の手続きを司法書士に依頼する場合は、上記に加えて司法書士に支払う報酬が発生します。司法書士の手数料は各自で設定できるため、人によって異なりますが相場は60,000円前後といわれています。自分でも行えますが、手続きが複雑なため司法書士に依頼するケースが一般的です。
売却する物件に不動産ローンが残っていた場合は、抵当権を抹消するために登記費用が発生します。売主が負担することが一般的です。
抵当権を抹消するには、不動産1件につき1,000円かかります。土地と建物それぞれに付き1件とカウントされます。そのため、土地と建物それぞれを売却する時は2件とカウントされ2,000円が必要です。
不動産の所有権の移転や抵当権を設定するための登記費用です。こちらは買主が負担することが一般的です。
仲介手数料の消費税
一般的には、不動産会社を通して物件を売却することがほとんどです。その際、不動産会社に仲介手数料を支払うことになりますが、それに対する消費税はもちろん発生します。仲介手数料の上限は法律で定められていますが、売却価格に応じて手数料が異なり、以下の計算式で算出されます。
取引額が200万円以下の場合
売買価格 × 5%
取引額が200万円以上400万円以下の場合
売買価格 × 4% + 2万円
取引額が400万円以上の場合
売買価格 × 3% + 6万円
以上の計算式に消費税10%が加算されます。仲介手数料とは、不動産会社による営業活動による報酬のため、消費税が発生します。もし物件価格が1,000万円だった場合、仲介手数料36万円に消費税が加算されるため、仲介手数料は39万6,000円です。
不動産譲渡の時に使える税金控除・特例
不動産の譲渡は高額になるため、税金の控除や特例が用意されています。こちらでは、どのような措置があるのかご紹介していきましょう。
マイホームを譲渡した場合
自分が居住していた家「マイホーム」を譲渡した場合、所有期間に関係なく控除を受けることができます。一定の要件に当てはまれば、「長期譲渡所得の税額」よりも低い税率で計算されます。
最高3,000万円まで控除され、これを「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」といいます。自分が居住していたマイホームであり、居住しなくなってから3年目の12月31日までに譲渡することという条件があります。
また、控除の対象にならない要件もあります。住宅ローンの控除を受けていないこともその一つです。他にもこの控除を目的としての売却や別荘のように利用したい物件は対象外です。
マイホームの買換えをした場合
同じく自分が居住していた家「マイホーム」を買換えした場合の特例もあります。元の不動産を売却した価格より、高い価格の不動産に買い換えた場合、譲渡所得への課税を次回の売却時まで繰り延べられる制度です。
これは「特定の居住用財産の買換えの特例」といい、2023年12月31日までにマイホームを買い換えた方に適用されます。
譲渡損失の繰越控除を利用するための要件
マイホームを2023年12月31日までに新しい物件に買換え、以前居住していた物件の譲渡による損失が発生したとします。その際、一定の要件を満たしている場合はその損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除することができます。その要件とは、以下になります。
- 自分が居住していたマイホームであり、居住しなくなってから3年目の12月31日までに譲渡すること
- 売却した前年と前々年に3,000万円の特別控除や、10年以上所有した場合の軽減税率特例、買換え特例、譲渡損失の繰越控除を利用していないこと
- 売却するマイホームの所有期間が5年以上であること
- 合計所得金額が3,000万円以内であること
他に、買換えの場合や売却の場合に該当する要件もあります。
買い替えの場合
買換えの場合の要件は、以下となります。
- 売却した住宅の敷地面積が500平方メートル以内であること(500平方メートル以上の部分の譲渡損失は適用外)
- 買換えた物件の床面積が50平方メートル以上であること
- 物件を売却した年の前年1月1日から翌年12月31日までに新しい物件を購入し、そこに翌年の12月31日までに入居または入居見込みであること
- 住宅ローンの返済期間10年以上のものを借りて新しい物件を購入すること
売却のみの場合
売却のみの場合は、以下の要件となります。
- 売却をする前日に住宅ローンの返済期間10年以上あり、売却価格が住宅ローンの残高を下回っていること
- 売却した翌年に確定申告を行うこと
相続した居住用財産(空き家)を売った場合の特例
相続や遺贈によって得た居住用財産(空き家)を2023年12月31日までに売却し、一定の要件に当てはまると適用される「譲渡所得の特別控除の特例」があります。譲渡所得の金額から、最高3,000万円まで控除することが可能です。
適用されるための要件とは、相続や寄贈していることはもちろん、耐震基準を満たしているか、売却代金が1億円以下であるか、相続をした日から3年目の12月31日までに売却することなどがあります。
譲渡所得税の計算例
譲渡所得税や計算方法について説明してきました。こちらでは、例を出して実際に計算してみましょう。
例えば、新築で購入したマンションに14年居住したとします。そのタイミングで売却を考えると築14年経過していることはおわかりいただけると思います。マンションの構造は、鉄骨コンクリート造で4,000万円で購入しました。そのうち、建物費用は2,500万円です。売却価格は6,000万円とします。取得にかかった諸費用が200万、譲渡にかかった諸費用は300万円です。
取得費用の計算からはじめます。減価償却を差し引いて算出するため、まずは減価償却費用を出すところからとなります。
建物購入価格(2,500万円)× 0.9 × 鉄骨コンクリート造の償却率 0.015 × 14年 = 減価償却費(472.5万円)
不動産購入価格(4,000万円)+取得諸費用(200万円)− 減価償却費(472.5万円)= 取得費用(3727.5万円)
次に譲渡所得です。
売却価格(6,000万円)− 取得費用(3727.5万円)譲渡諸費用(
300万円)= 譲渡所得(1972.5万円)
この計算で譲渡所得税は1972.5万円となりますが、売却する不動産は居住住宅(マイホーム)であったため「特定の居住用財産の買換えの特例」が適用されます。そのため、最終的には以下の計算となります。
譲渡所得(1972.5万円)− 特別控除(3,000万円)× 長期保有税率 20.315% =−208.736625万円
このようにマイホーム控除が適用されたことにより、譲渡所得税がマイナスとなりました。その場合は譲渡所得税は発生しないことがわかります。
まとめ
不動産売却にかかる譲渡所得税や特例、それを利用した計算方法をご紹介してきました。譲渡所得税は不動産の売却を行う際、一番幅を占める税金です。しかし、控除の特例条件を満たすことで、大きく減額できることをご理解いただけたと思います。条件を満たすためには、所有年数が大きく左右するため、損のない不動産売却が行えるようにしっかりと下調べをすることがおすすめです。
この記事を書いた人
TERAKO編集部
小田急不動産
横溝 浩由
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