不動産投資での節税対策とは?3つの税金対策を徹底解説
不動産投資には節税効果が期待できますが、中には節税目的の不動産投資が向いていないケースや節税の効果を得にくいケースもあります。
この記事では、不動産投資でできる税金対策や不動産投資で注意すべきこと、節税効果が高い物件の特徴についてお伝えします。不動産投資を考えている方はぜひご一読ください。
この記事の目次
不動産投資における節税とは?
「節税」とは、控除や非課税制度などを用いることで、税法の範囲内において支払うべき税金をなるべく低く抑えることをいいます。節税には主に「税金を軽減する」効果と「税金の支払いを先延ばしにする」効果の2つの効果があります。不動産投資における節税について説明する前に、まずは節税の仕組みについて理解しておきましょう。
適法に税金額を軽減する
節税には税金を軽減する効果があります。悪意をもって納税義務を怠る、いわゆる「脱税」は違法行為ですが、適法に税金額を軽減することは禁じられていません。控除や非課税制度などを活用して課税対象を軽減することで、合法的に税金額を抑えることが可能です。不動産投資においても、正しい知識があれば税金額を軽減できます。どの税金を節税できるかは後ほどくわしく解説します。
税金の支払いを先延ばしにする
節税には単に税金額を減らすだけでなく、税金の支払いを先延ばし(繰り延べ)にする効果もあります。「結局課税されるのであれば節税にならないのでは?」と思う人もいるかもしれません。
しかし、税金の支払いを先延ばしにできると、その年のキャッシュに余裕ができます。余ったキャッシュを資金繰りやそのほかの費用にあてることもできるでしょう。このように課税時期を調整できれば、資金をコントロールしやすくなるのです。
不動産投資に関連する税金
不動産の購入時には、土地や建物に関する費用のほかに、仲介手数料や登記費用などもかかります。諸費用の目安は不動産購入価格の5〜10%程度とされています。不動産購入の際はこれらについても頭に入れ、シミュレーションしておくことが必要です。
ここからは、不動産を新規で購入する際にかかる主な費用や税金について確認してみましょう。
仲介手数料
不動産会社を通して物件を購入した際、条件の調整や契約事務などを行う仲介会社に支払うのが仲介手数料です。
仲介手数料の上限は宅地建物取引業法で定められており、取引額によって異なります。
- 取引額200万円以下:取引額の5%
- 取引額200万円~400万円:取引額の4%+2万円
- 取引額400万円以上:取引額の3%+6万円
不動産登録免許税
不動産登録免許税は、所有権保存登記や移転登記など、不動産の登記にともなって国に納める税金です。税額は、土地や建物の評価額(固定資産課税台帳に登録された価格)に所定の税率をかけて計算されます。建物と土地を購入した場合は、それぞれについて登録免許税が課されます。
不動産登記手数料
不動産登記手数料とは、司法書士に不動産の登記をしてもらう際に支払う報酬のことです。
不動産の登記をする際に必要な実費と、司法書士に不動産の登記を依頼した際に支払う報酬を合わせて不動産登記費用といいます。不動産登記手数料は司法書士が独自に決めているため、依頼する司法書士によって料金が異なります。
固定資産・都市計画税
不動産を所有していると毎年課税されるのが、固定資産税と都市計画税です。固定資産税は、毎年1月1日時点で土地や家屋などの固定資産を所有している人全員に課されます。一方都市計画税は、市街化区域内に固定資産を所有している人のみに課されます。不動産の慣行では、契約者間で日割り計算して清算するのが一般的です。
火災保険などの保険料
不動産を購入する際、火災保険などの保険料も必要です。火災保険は火事のみならず洪水や雷、大雪などの自然災害や、盗難などの人災にも備えられる保険です。また、火災保険とあわせて地震保険に加入すると、地震や津波などの損害にも備えられます。
万が一所有する物件が火災などにあってしまった際に、経済的なダメージを受けないよう火災保険には必ず加入しておきましょう。
不動産取得税
不動産取得税は、不動産を取得した際に課される税金です。不動産を取得したあと自治体から送付される納税通知書をもとに納税します。税額は取得した不動産の評価額(固定資産課税台帳に登録された価格)に所定の税率をかけることで算出可能です。
2024年3月31日までに土地と住宅を取得した場合は標準税率が3%となっており、従来よりも引き下げられています。
不動産投資でできる3つの節税対策
不動産投資では所得税や住民税、贈与税、相続税の節税が期待できます。ここからは「不動産投資で節税できる税金」と「節税の仕組み」について詳しくみていきましょう。
所得税・住民税の節税
所得税が1年間の所得に対して課される税金であるのに対し、住民税は前年の所得に応じて課される税金です。いずれも税額は所得額に応じて決定します。企業に勤めている人であれば、あらかじめ所得税や住民税を控除した額が毎月の給与として支払われるのが一般的です。
所得税・住民税の節税とは
所得税と住民税の節税において重要なのが「減価償却費」です。減価償却とは、不動産投資に必要な費用を建物の購入時に一度に計上するのではなく、毎年少しずつ計上することをいいます。不動産投資では減価償却費を使って会計上の赤字を作り、その赤字と給与所得を合わせて課税対象となる所得を圧縮(損益通算)することで節税が可能です。
所得税・住民税を節税するには?
所得税と住民税を節税するには、さきほど紹介した「減価償却費」をうまく活用することがポイントです。例えば、2,400万円の不動産を購入して1年につき200万円ずつ経費計上できるとすると、12年間にわたって課税所得を減らせます。
ただし、減価償却費を経費計上できる償却期間は、建物の構造によって決められています。また土地は減価償却の対象ではないので注意しましょう。
贈与税の節税
次に贈与税の節税についてみていきます。
贈与税は、財産を他人から無償で譲り受けたときにかかる税金で、受け取った側に課されます。110万円の基礎控除が設定されているため、年間合計110万円までの贈与であれば税金はかかりません。
贈与税の節税とは
財産を贈与する場合、不動産を贈与する方が現金で贈与するよりも節税になります。不動産の贈与額を算出するには、実際の購入価格ではなく、国税庁が定める「相続税評価額」が使用されます。この方法で算出される不動産の評価額は、実際の不動産購入価格より2〜3割ほど低い金額になるため、不動産の形で贈与する方が節税になるのです。
贈与税を節税するには?
贈与税の課税方法には、110万円の基礎控除を引く「暦年課税」のほかに、「相続時精算課税」という方法があります。この制度は、60歳以上の父母または祖父母が18歳以上の子や孫に生前贈与すると、贈与税が軽減されるものです。
固定資産税評価額が2,500万円以下の不動産であれば非課税で贈与できるため、現金で贈与する場合に比べて節税効果が期待できます。ただし、相続時精算課税制度を選ぶと贈与者の存命中は継続して適用され、暦年課税に変更できなくなることに注意しましょう。
相続税の節税
不動産投資では相続税の節税も可能です。相続税は、故人から財産を相続する際に相続人が支払わなけらばならない税金で、相続する額が多いほど税率は高くなります。
相続税の節税とは
相続税の算出にも相続税評価額が使用されます。ですので、贈与税の場合と同様、不動産の形で相続する方が現金で相続するよりも節税になります。
例えば1億円の財産を現金で相続すると、その金額がそのまま相続税の課税対象です。一方1億円の不動産を相続する場合は、相続税の対象(相続税評価額)が8割程度に下がります。つまり同じ額の財産を相続する場合でも、現金をそのまま相続するよりも、不動産を購入してその不動産を相続する方が、評価額を下げられるため節税が期待できるのです。
相続税を節税するには?
相続税の額は、相続する財産の評価額によって算出されます。不動産の場合、建物は主に「固定資産税評価額」が、土地は主に「路線価」が相続の評価額となります。これらは実際の購入価格よりも低く設定されており、固定資産税評価額は実際の購入価格の約7割、路線価は約8割です。自分の居住用ではなく、第三者に貸していた場合や借地や借家を相続する場合は、さらに相続税評価額が下がることも覚えておきましょう。
不動産投資で注意すべきこと
不動産投資が節税につながるとお伝えしてきましたが、中には節税目的での不動産投資をおすすめできないケースもあります。ここからは不動産投資で注意すべきことを紹介します。不動産投資と節税についてしっかりと理解しておきましょう。
課税所得が900万を超える人は節税すべき
不動産投資で節税効果が高いのは、課税所得が900万円(年収目安1,200万円)を超える人です。課税所得が900万円を超えると、所得税・住民税率は3割以上となります。不動産の売却益に対して課せられる所得税・住民税の割合(譲渡税率)との差が大きくなるため、減らせる税金額も大きくなります。
一方、課税所得が900万円以下の人は、不動産投資のリスクに対して節税効果が小さいため、節税目的での不動産投資はあまりおすすめできません。
法人化することで節税できる?
節税のための不動産投資を考えている人の中には、法人化を検討したことがある人もいるかもしれません。法人化することで、所得税や住民税を節税できるケースもありますが、法人化には会社設立費用をはじめさまざまな運用コストが発生します。メリットやデメリットをよく理解しておきましょう。
税金対策における法人化のメリット
法人にかかる法人税率が最大23.2%なのに対し、個人に課せられる所得税・住民税の税率は累進課税制度によって最大55%と定められています。よって、所得が多い人は法人化した方が税金を抑えることが可能です。個人の場合と法人の場合で年間50万円以上の差が出るのであれば、法人化を検討してみてもよいでしょう。
税金対策における法人化のデメリット
法人化には、会社設立費用や会社を維持するためのランニングコスト、社会保険料などさまざまな費用がかかります。それに加え、書類の準備や事務手続きなどには手間もかかります。法人化にかかる費用や手間などを加味して、判断する必要があるでしょう。
不動産投資は確定申告が必要
不動産投資で収入を得た場合、確定申告が必要になります。企業で年末調整を実施している場合は確定申告の必要はありませんが、副業などでの収入が20万円を超えると確定申告の義務が生じます。つまり不動産投資で得た収入が20万円を超える場合は、確定申告が必要になるのです。
期限内に確定申告書を提出しなかった場合、本来納付すべきだった額の15%ないし20%の追徴課税を支払わなくてはなりません。こうしたトラブルを防ぐためにも、不動産投資をはじめたら契約書や領収書を整理し、正しく確定申告をするようにしましょう。
節税効果が高いのは新築マンション?中古マンション?
不動産投資では、購入する物件の種別や築年数によっても節税効果に違いが出ます。不動産投資における節税のポイントは、減価償却費で会計上の赤字を作り、給与所得と損益通算すること。つまり、減価償却費の金額が大きい物件を選べば、高い節税効果が期待できます。
ここからは、節税効果が出やすい物件とそうでない物件を具体的に解説します。
節税効果が出やすいのは木造×中古物件
節税効果が出やすいのは「木造の中古物件」です。木造建物の法定耐用年数は22年で、コンクリートや鉄骨などのほかの構造に比べて短くなっています。そのため、減価償却費をより大きくとることが可能です。また中古物件の場合は、法廷耐用年数が切れてからも「法廷耐用年数×20%の年数」で減価償却できます。
これらを踏まえると、木造の中古物件なら大きな減価償却費をとれ、高い節税効果が期待できることがわかるでしょう。同じ価格帯の不動産なら、木造の中古物件を選ぶことでより節税効果が見込めるのです。
節税効果が出にくいのは新築区分マンション
節税効果が出にくいのは「新築の区分マンション」です。新築区分マンションは償却期間が長く、1年間に計上できる減価償却費が少ないため節税には不向きです。
初年度には登記費用や金融機関の手数料などの諸経費がかかり、高い節税効果が得られるかもしれません。しかし収益が安定して黒字化すると、課税所得が増えて税金も増えます。節税目的で新築区分マンションに投資をする場合は、収益とのバランスをみて上手に経営しましょう。
まとめ
今回は、不動産投資でできる節税についてお伝えしました。節税は仕組みを理解していれば誰でも税金を軽減できる合法的な行為です。
不動産投資は将来の安定収益獲得や資産形成が主な目的ですが、ケースによっては高い節税効果を得ることが可能です。また、課税所得900万円以下の人であっても、損益通算や確定申告など制度をうまく利用することで節税が期待できます。判断に迷う場合は、専門家に相談してみてもよいでしょう。
この記事を書いた人
TERAKO編集部
小田急不動産
横溝 浩由
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