老朽化したアパートから立ち退きを依頼する方法は? 立ち退き料の相場や交渉のポイントを紹介
アパートが老朽化すると、耐震性が劣化したり入居率が下がってしまったりするので、建て替えを検討するオーナーが多いです。しかし、アパートの取り壊しや建て替えなどオーナー側の都合は立ち退きをさせる「正当事由」とならないので、入居者と交渉する必要があります。今回は、アパートからの立ち退きを依頼する方法や手順、立ち退き料の相場、交渉のポイントをご紹介します。
この記事の目次
老朽化したアパートからの立ち退きを依頼する方法・流れ
老朽化したアパートからの立ち退きを依頼する方法や流れについて、ここでは下記4点について解説します。
- 契約満了の6カ月~1年前には依頼をする
- 立ち退いた後に住む引っ越し先の提案をする
- 立ち退き料の交渉をする
- 立ち退き料を支払う
契約満了の6カ月~1年前には通知をする
アパートの入居者に立ち退きを依頼する場合は、まず口頭や書面で賃貸借契約を更新しない旨を通知します。通知は、契約満了期限の6カ月から1年前までに行うのが一般的です。
通知書面は自分で制作したり、弁護士や不動産会社に依頼したりしても構いません。立ち退きを依頼する理由を説明したうえで、退去に協力いただきたいと誠心誠意伝えることが大切です。また、書面で通知した証拠を残すために内容証明郵便を利用するのも方法の一つですが、いきなり通知だけが来ると気分を害してしまう方もいるので、事前に口頭で説明をしてから通知を送るのが望ましいです。
立ち退いた後に住む引っ越し先の提案をする
口頭で立ち退きの依頼や理由について説明した際、入居者が退去に納得しない場合は、立ち退きについて交渉を始めます。
まずは、現在の住まいの代わりとなる物件を提案してみましょう。あらかじめ不動産会社などに相談し、近隣物件で価格帯が近いアパートなどをピックアップします。入居者の希望に近い物件を提示できれば、新しい物件を探す手間や負担が軽減できるので、立ち退き交渉がスムーズに進む可能性が高まります。
立ち退き料の交渉をする
立ち退き料とは、オーナーが入居者に対して物件の明け渡しを求めた場合、その代償として入居者に支払う金銭のことです。立ち退き料について、詳しくは後述しますが、引っ越し代や新しい住居の敷金・礼金などが賄えるくらいの金額であれば、入居者の理解を得やすいです。ただし、金額について個別の項目ごとに決めていては時間がかかってしまうため、基本的には総額で交渉するようにしましょう。
退去の手続きを進める
立ち退き料についてオーナー・入居者双方が金額に納得できれば、立ち退き料が確定します。賃貸借契約の解除についての合意書を交わして、双方が合意したこととその詳細について文書に残しましょう。立ち退き期日までに退去したことが確認できたら、立ち退き料を支払います。
立ち退き費用の相場
建て替えなどを理由に入居者に対して立ち退きを求める場合は、立ち退き料を支払うのが一般的です。ただし立ち退き料の金額については、法律で定められてはいません。そのため、アパートのオーナーと入居者で決めることになります。
立ち退き料の一般的な相場は、アパートの賃料の6カ月分に引っ越し料金を加えた金額です。この金額は、立ち退いた後に移り住む物件の契約や引っ越しにかかる費用の実費に相当するとして考えられています。
また、アパートの一室を店舗やオフィスとして貸し出していた場合は、移転に伴う営業上の損失を加味する必要があるので、注意しましょう。
関連記事:立ち退きの相談はどこにする?立ち退き料の相場や抑え方も解説
立ち退き料の内訳
立ち退き料には、入居者が新たな物件を契約するための費用が含まれます。敷金や礼金、先払いする1カ月分の家賃の他、仲介手数料や火災保険料などが該当します。また、引っ越しにかかる費用も含まれます。アパートがある地域によって金額は異なりますが、近隣への引っ越しの場合なら7万円から10万円程度を想定しておくとよいでしょう。
さらに、入居者への迷惑料・慰謝料を立ち退き料に含める場合もあります。
たとえば家賃が8万円のアパートに引っ越す場合を例に、立ち退き料の内訳を見てみましょう。
- 敷金(家賃の2カ月分):16万円
- 礼金(家賃の1か月分):8万円
- 仲介手数料(家賃の1カ月分):8万円
- 引っ越し代:10万円
- 迷惑料:10万円
合計金額は52万円となります。この項目や費用はあくまでも一例なので、迷惑料などの適性価格は、弁護士や建て替えを依頼する不動産会社に相談してください。
自身で立ち退き交渉する際のポイント
アパートのオーナーが自分で立ち退き交渉を行う場合に重要なポイントについて、4つ解説します。
立ち退き理由を明確にする
アパートの立ち退き交渉において重要なのは、立ち退き理由を入居者にきちんと説明することです。日本の賃貸借契約は、生活環境を保護する観点から入居者に有利な法律になっています。入居者の同意が得られず立ち退きが難航すれば、肝心のアパートの建て替えがとん挫しかねません。そのため、「耐震性を高めたい」「排水管の寿命が近く、水漏れの恐れがある」など、立ち退き理由を明確にして入居者にきちんと納得してもらいましょう。
立ち退きまでの期間を長めに確保しておく
アパートの立ち退き交渉では、立ち退きまでの期間を長めに確保しておくことも大切です。
衣食住の一つを担う住環境を失いかねない立ち退き要求は、入居者に大きなストレスを与えます。それが急な依頼であるほど、入居者から反発されるリスクは高まります。交渉に十分な期間を設ければ、新居を探したり引っ越しの準備に余裕ができたりするので、入居者の不安を軽減して立ち退きの同意を得やすいでしょう。
丁寧な説明や対応をする
アパートの立ち退き交渉では、丁寧な説明や対応を心がけることが重要です。真摯に対応すれば、入居者と信頼関係を構築しやすくなり、立ち退き交渉や立ち退き料の決定をスムーズに進められます。
また、複雑な事項や手続きについて分かりやすく丁寧に説明すれば、入居者が誤解したり混乱したりするのも防げるでしょう。
交渉の記録を残しておく
アパートの立ち退き交渉では、入居者と交渉した記録を残しておきましょう。
記録を残すことで、進捗状況を管理しやすくなる他、文書化することで口頭でのやりとりで発生しやすい誤解や行き違いを防止できます。また、万が一裁判になった場合にも、重要な証拠として利用できるのでおすすめです。
交渉記録を残す場合は、日時や参加者、議論の内容、合意事項などを詳細に記載しておき、可能なら入居者にも確認してもらいましょう。
アパートから立ち退いてもらえない場合の対処法
立ち退き料の値段交渉や近隣物件の紹介など、入居者に寄り添った立ち退き交渉を行っても入居者が退去に納得しない場合があります。
まずは立ち退き料を上乗せして、早期の解決を目指しましょう。ただし、特定の人だけ立ち退き料が増えることを他の入居者に知られてしまうと、不信感につながりかねないので、他言しないよう覚書を交わすのが望ましいです。他言した場合は「立ち退き料を支払わない」と明記しておくと抑止効果が高まります。
立ち退き日を過ぎても入居者が居座っている場合は、裁判所に提訴します。裁判で勝訴すれば、判決に基づき強制執行することが可能です。
スムーズに立ち退いてもらうには不動産会社に依頼しよう
オーナーの負担なく入居者に立ち退いてもらいたい場合は、不動産会社に交渉を依頼するのがおすすめです。不動産会社によっては立ち退きのノウハウを有していたり弁護士と協働していたりするので、ご自身で行うよりもスムーズに進められるでしょう。
アパートの建て替えを依頼する不動産会社であれば、手数料がかからず立ち退き対応をしてもらえる可能性もあるので、相談してみてください。
どうしても立ち退き交渉がうまくいかなければ売却も視野に
アパートの建て替えなどを理由に立ち退きを求めているものの、どうしても交渉が進まない場合は、アパートの売却も検討しましょう。
アパートの売却なら、立ち退きや裁判にかかる費用や手間がかかりません。売却益を元手に他の土地を購入して、アパート経営や駐車場経営を行うことも可能です。立ち退き費用に思った以上のコストがかかっていると感じたら、売却も視野に入れて不動産会社に相談してみましょう。
この記事を書いた人
TERAKO編集部
小田急不動産
飯野一久
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