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2022.11.24

収益物件の査定方法とは?査定を依頼する際のポイントを解説

収益物件の査定方法とは?査定を依頼する際のポイントを解説

不動産の売却を検討している方が、まずすべきなのが「不動産会社に物件の査定を依頼すること」です。
不動産は金額が大きく、売買において専門用語も多く使われるため、物件の査定や売り時の見極め方などに難しさを感じる方もいるでしょう。本記事では、収益物件の査定方法や査定を依頼する際のポイントなどについて詳しく見ていきます。収益物件を高く売るためのコツも解説しますので、不動産の売却を考えている方はぜひ参考にしてみてください。

この記事の目次

収益物件(投資用物件)とは?

収益物件(投資用物件)とは、不動産の所有者が自ら利用するのではなく、第三者に貸して毎月一定の家賃収入を得るために所有している物件のことです。

住居系では賃貸アパートやマンション(区分マンションを含む)、事業系では賃貸事務所やビル、倉庫などがあります。借地権が付いている土地や駐車場用地なども収益物件に含まれます。

収益物件を所有する際は、その不動産から毎月どのくらいの賃料を得られるのか、物件を管理・運営するための修繕費や管理費、固定資産税などがどれくらいかかるのかを理解しておくことが重要です。

収益物件の価格の種類と算出方法

収益物件を売却する際、どのくらいの価格で売れるのかがわかれば、今後の不動産投資や資産形成にいかせます。そこで、ここからは収益物件の価格を算出する方法について解説します。算出した価格の捉え方や特徴についても、あわせて見ていきましょう。

価格算出方法

中古市場における価格査定では、主に3つの価格算出方法が用いられます。それぞれどのように物件の適正価格を算出するのか、具体的にご説明します。

収益還元法

「収益還元法」は、不動産の収益力にもとづいて収益物件の価格を算出する方法です。算出方法には「直接還元法」と「DCF(ディスカウントキャッシュフロー)法」の2通りがあります。

直接還元法では、その物件の年間賃料収入を還元利回り(エリアや物件ごとに投資家が想定する利回り)で割ることで、収益物件の価格を算出します。

収益物件の査定額=年間の賃料収入÷還元利回り

一方、DCF法は、将来予測される収益と売却価格から現在の価値に割り引き、それらを合計して価格を査定する方法です。直接還元法よりも精度の高い評価が可能です。

現在価値=(X年後の合計収益)÷(1+年間割引率のX乗)

取引事例比較法

「取引事例比較法」は、類似物件が取引された過去の事例のデータを集め、それらを判定基準として物件の査定を行う方法です。もちろん、査定対象の物件とまったく同じ物件は存在しません。しかし、同じエリアや同程度の築年数など条件が近い物件のデータを集め、必要に応じて事情補正や時点修正を行うことで、査定額の参考にします。

事情補正とは、対象物件の個別の事情を考慮して価格調整を行うことです。投機目的で高く買われるなど、特別な事情を考慮します。また、時点修正とは、常に変動する不動産価格に鑑み、時価や市場価格の変動を考慮して価格の修正を行うことを意味しています。

原価法(積算価格)

「原価法」は、再調達価格を算出し、それをもとに築年数分の減価調整を行うことで収益物件の価格を求める方法です。再調達価格とは、すでに建っている建物を取り壊し、再び建て直した場合にいくらかかるかを算出した金額のことを指します。

原価法は以下の計算式で算出されます。
収益物件の価格=再調達価格×延床面積×(残存耐用年数÷構造ごとの法定耐用年数)

法定耐用年数とは、物件の構造ごとに法律で定められている耐用年数のことです。例えば、木造であれば22年、鉄筋コンクリート造であれば47年となっています。なお、原価法で求められる物件価格を「積算価格」と呼びます。

価格査定の基本は収益還元法

中古市場における価格査定では、主に収益還元法が用いられます。収益還元法は、物件の現時点での稼働率を反映させられるので、取引事例比較法や原価法に比べ正確な価格を算出できるからです。

もちろん、取引事例比較法や原価法で査定を行うのも間違いではありません。ただ、これらの方法で査定する場合、好立地の物件は収益還元法に比べて価格が高く出る傾向がありますので、知っておきましょう。

金融機関には積算価格

収益物件の購入にはローンを利用する人も多いため、査定の段階で金融機関の担保評価を確認しておくことが必要です。金融機関の多くが、収益物件の担保力を評価するにあたって、積算価格を重視しています。その上、収益還元法で求める価格と原価法で求める積算価格との間に差が出ることもめずらしくありません。収益物件を売却する際は、収益還元法で求める価格に加え、原価法で求める積算価格も知っておくと安心です。

とはいえ、どちらの価格を重視するかは不動産会社や金融機関によって異なります。事前に確認しておくと良いでしょう。

「適正価格は購入者の目的で決まる」

居住用物件の場合は、立地や築年数、間取りなどで不動産の価格が決まります。一方、収益物件の場合は、居住を目的としている方ではなく物件を購入する投資家がターゲットです。その物件を所有することでどのくらいの利益が得られるか、自分の目的に合う物件かが、購入時に重視されるポイントになります。

例えば、キャッシュフロー重視の資産形成が目的であれば、利回りを重視するのが良いでしょう。相続税対策が目的であれば、相続税評価額の低減効果を重視するのもひとつの方法です。収益物件の適正価格は一概にいくらと言えるものではなく、購入者の目的によって決まることを頭に入れておきましょう。

収益物件査定のチェックポイント

不動産会社に収益物件の査定を依頼する際、基本的な不動産の知識がないと不利益を被るリスクがあります。正しい査定がなされているかを判断できるよう、不動産会社が収益物件査定でチェックするポイントを知っておきましょう。

入居率

物件の査定において、入居率は重要なポイントです。入居率とは、物件の全部屋数に対して、どのくらいの割合が入居しているかを表したものです。収益物件の場合、多くの部屋に入居者がいて空室が少なければ、その分家賃収入が見込めます。つまり、入居率が高い物件は査定額も高く算出されるのです。

築年数

物件を査定する際、築年数もチェックされます。一般的に、築年数が浅い物件の方が、古い物件よりも査定額が高くなりやすいです。これには入居率や経年劣化が影響しています。築年数が古い物件の場合、たとえ内装などに目立った傷がなくても、建物の構造部分は経年劣化が進んでいると考えられるため査定額も低くなります。

設備

物件査定において、設備もチェックポイントのひとつです。トイレや浴室、キッチンなどの水回りに最新の設備を備えている物件は人気が高く、査定額が高くなる傾向があります。反対に、設備が老朽化していたり古かったりすると、入居者が集まりにくく査定額も低くなってしまいます。

修繕積立金(区分マンション)

区分マンションの場合は、修繕積立金の積立率もチェックしておきたいポイントです。修繕積立金の積立率が低いと、大規模修繕が必要になったときに積立金での対応が難しくなることから、査定額は低くなってしまいます。

不動産のAI査定とは?

近年さまざまなジャンルで活用されているAI(人工知能)ですが、不動産業界でもAI技術を活用した「AI不動産査定」が注目されています。AI不動産査定とは、インターネット上の類似物件や過去の売却データなどをもとに、AIが査定額をスピーディに算出するシステムです。ここでは、AI不動産査定を利用するメリットとデメリットを紹介します。

AI不動産査定を利用するメリット

AI不動産査定のメリットは「手軽さ」です。AI不動産査定は、Web上で必要項目を入力するだけですぐに査定結果が表示されます。不動産会社に査定を依頼する手間が不要なので、いつでも気軽に査定額を知ることが可能です。情報登録をしておくと、価格の変動を知らせてもらえるサービスもあり、売却するタイミングの参考にもなるでしょう。
また、AI不動産査定は基本的に匿名で利用できるため、個人情報を不動産会社に知らせる必要がありません。個人情報を知られたくない方や営業電話などにわずらわしさを感じる方にとっても魅力的と言えるでしょう。

AI不動産査定を利用するデメリット

AI不動産査定のデメリットとして「査定の精度が高いとは言えないこと」が挙げられます。AI不動産査定には、不動産業界最大のデータベースである「レインズ」のデータが使用できません。そのため情報量が十分とは言えず、実際の売却価格とAI不動産査定で算出される査定額に誤差が生じることも考えられます。

加えて、AI不動産査定では、日当たりや室内の損耗といった物件の個別事情が考慮されないので、実際の査定額と差が生じることも少なくありません。

収益物件の査定を依頼する際のポイント

不動産取引の経験が少ない場合、査定依頼と言ってもまず何をすれば良いのか、依頼する場合に何に気を付ければ良いのかわからないこともあるでしょう。

そこでここでは、収益物件の査定を依頼する際のポイントとして、以下の3つを紹介します。

  • 査定に必要な書類を揃えておく
  • 複数の不動産会社に査定を依頼する
  • 居住目的と投資用では考え方が異なる

収益物件の売却で損をしないためにも大切なことですので、しっかりと理解しておきましょう。

査定に必要な書類を揃えておく

不動産会社に収益物件の査定を依頼する際は、必要な書類を揃えておくことが大切です。

不動産の査定を依頼する場合に必要な書類は、次の6つです。

  • 登記簿謄本
  • 公図
  • 土地の測量図あるいは建物の図面
  • 登記権利証または登記識別情報
  • 身分証明書
  • 印鑑証明書

これらの書類は査定段階では提出しなくて良い場合もあります。けれども契約時には必須となりますので、早めに揃えておくことをおすすめします。なお、AI不動産査定の場合は、基本的に書類提出は必要ありません。

複数の不動産会社に査定を依頼する

収益物件の査定を依頼する際は、必ず複数の不動産会社に相談しましょう。物件の価値や想定利回りの評価方法は不動産会社によって異なります。1社だけの査定では情報や強みに偏りが生じることもあるでしょう。

同じ物件でも、不動産会社が異なるだけで査定額が2〜3割変わることもめずらしくありません。「不動産一括査定サイト」を使えば、大手から地元密着型まで幅広い不動産会社に査定を依頼できますので、活用してみるのもひとつの方法です。

居住目的と投資用では考え方が異なる

収益物件の査定を依頼する際、居住目的と投資用では考え方が異なることを頭に入れておきましょう。これらの物件は購入者が重視するポイントが異なるため、査定における考え方にも違いがあります。
居住目的の物件は、間取りや周辺環境など、実際に住んだときの住みやすさを査定に反映させます。それに対し、収益物件は家賃下落や空室のリスクが低いなど、収益につながる見込みがあることが査定額に直結するのです。

収益物件を高く売るには

収益物件の売却を検討している方の中には、売却で損をしてしまわないか不安に感じている方もいるでしょう。不動産の売却は、タイミングを見計らうことで高額売却につながるケースもあります。ここからは、収益物件を高く売るためのポイントと考え方を紹介します。

AI不動産査定を活用する

収益物件を高く売るには、AI不動産査定を活用することが有効です。不動産会社に査定を依頼する場合、査定を依頼してから結果が出るまで1週間前後かかります。また、Web上で依頼できる不動産一括査定の場合も、結果が出るまで約1日必要です。

一方、AI不動産査定であればその場で査定額がわかります。情報を登録しておくだけで査定額の変動を知らせてくれるサービスを活用すれば、高く売れるタイミングを逃すことなく売却できるでしょう。

高く売れる時期を見極める

収益物件を高く売りたいなら、売却の時期を見極めることが大切です。同じ収益物件でも、売り出すタイミングによって相場より高値で売却できることがあります。例えば、満室時や大規模修繕の直前、景気回復などで物件価値が上昇しているときなどは高く売れるタイミングです。築年数が20年を迎える前や、減価償却が終了するときも売却におすすめの時期と言えるでしょう。

利回りを上げておく

収益物件を高く売るには、利回りを上げておくとよいでしょう。先ほどもお伝えしたように、収益物件は利回りを基準にした収益還元法で売却価格を決定するのが基本です。設備を定期的に新しくしたり、物件のリフォームを行ったりして利回りを上げておくと、査定額も高くなります。定期的なメンテナンスが査定額に影響することを知っておきましょう。

収益物件の売買が得意な不動産会社に依頼する

不動産会社によって「マンションは得意、戸建は苦手」など、得意とする物件種別が異なります。収益物件を高く売るには、売却したい物件の売買を得意とする不動産会社を選ぶことが大切です。

不動産会社がどのような物件を得意とするのかを探るには、ホームページを確認しておくと良いでしょう。ホームページに掲載されている取扱物件を参考に、得意とする物件の傾向を確認するとよいでしょう。

査定額はあくまで目安

収益物件の売却を検討する際、査定額はあくまで目安であることを頭に入れておきましょう。実際の売却価格は、査定額がそのまま反映されるものではなく、買い手との交渉で決まります。

買い手との交渉によっては、査定よりもプラスになることもあります。査定額はあくまでも目安であることを前提に、交渉を進めましょう。

まとめ

収益物件の査定は、売却のファーストステップです。収益物件の売却を考えている方は、査定についてくわしく理解しておきましょう。売却する際には、査定方法や不動産会社などを自分で選ぶことになります。納得できる査定額なのか、信頼できる不動産会社なのかを判断するためにも、いろいろな知識をもっておくことが大切です。あらかじめ入念に調べ、納得した上で収益物件の売却に踏み切りましょう。

この記事を書いた人

著者写真 TERAKO編集部
小田急不動産
飯野一久

「一期一会」がモットーです。これまでの投資不動産の売却・購入・資産の入れ替えの実務を通じて得られた知見を、少しでも、皆様に、わかりやく、丁寧にお伝え出来たらと思っております。 著者の記事一覧はコチラ
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