アパートのリフォーム費用は減価償却する?基礎知識を解説
アパートのリフォーム費用は、減価償却の仕組みで経費にできます。リフォームなどによって建物の価値が向上した場合は、新築と同じ耐用年数で減価償却を行う必要があります。
この記事の目次
わが家のアパートリフォームは減価償却の対象になる?
賃貸物件のリフォーム費用は、減価償却の仕組みを使って経費計上できます。減価償却とは物件の価値が年数とともに下がっていくことを前提に、取得費などを一括でなく数年にわたって経費として計上する方法です。
減価償却の対象となるのは建物や設備など、時間の経過とともに価値が下がる資産です。建物の取得にかかった費用は分割で計上できます。一方で土地は通常、時間の経過により価値が下がらないため対象となりません。また減価償却の期間は法定耐用年数で定められており、構造や用途により以下のような違いがあります。アパートでよく用いられる軽量鉄骨造は、ミリ単位でも法定耐用年数が変わります。
構造 | 用途 | 耐用年数 |
---|---|---|
木造・合成樹脂造のもの | 事務所用 | 24年 |
店舗用・住宅用 | 22年 | |
鉄骨鉄筋コンクリート造 鉄筋コンクリート造 |
事務所用 | 50年 |
住宅用 | 47年 | |
金属造のもの (軽量鉄骨造) |
事務所用 | 38年(4㎜を超えるもの) 30年(3㎜を超え、4㎜以下) 22年(3㎜以下) |
店舗用・住宅用 | 34年(4㎜を超えるもの) 27年(3㎜を超え、4㎜以下) 19年(3㎜以下) |
リフォームを行った場合、その規模によっては耐用年数が変化する可能性があります。たとえばクロスの貼り替えなど小規模なリフォームであれば減価償却は不要です。しかし大規模な増改築などによって建物の価値が向上した場合は、新築と同様の耐用年数で減価償却を行う必要があります。ただし、新たに減価償却を行うのはリフォーム費用の部分であり、もともとの建物の耐用年数や残存年数が変化するわけではないので気をつけましょう。
また、減価償却の計算方法には「定額法」と「定率法」があります。定額法が毎年同じ額を減価償却するのに対し、定率法は毎年一定の割合で計上するという違いがあります。ただし2016年4月1日以後に取得した建物附属設備および構築物の償却方法は定額法のみになるので、注意が必要です。
減価償却の詳しい計算方法などは、後ほど解説します。
リフォームが減価償却になるか判断するポイント
リフォームが減価償却の対象となるかどうかを判断する際の重要なポイントは、そのリフォームが「資本的支出」か「修繕費」なのかを見極めることです。資本的支出とは、建物の価値を高めたり耐久性を向上させたりする支出を指します。たとえば断熱性能を大幅に向上させる工事や、耐震補強工事などです。
一方で修繕費は現状を維持するための支出で、壁紙の貼り替えや小規模な補修工事などがこれに当たります。資本的支出は減価償却の対象となりますが、修繕費は発生した年度の経費として処理されます。ただし、資本的支出と修繕費の区別には厳密な定義がなく、判断が難しいケースも多々あるので税理士などの専門家に相談するのがおすすめです。
専門家のアドバイスを受けることで適切な税務処理ができ、将来的なトラブルを避けられます。
自分も住む場合でも減価償却できる?
アパートの一部に自分も居住している場合、減価償却の取り扱いが少し複雑になります。賃貸部分は通常通り減価償却の対象となりますが、自己居住部分は減価償却の対象となりません。なぜなら自己居住部分は事業用資産ではなく、個人的な資産とみなされるからです。
また、建物全体のリフォームを行った場合、費用を賃貸部分と自己居住部分で按分(あんぶん)して計算しなければいけません。たとえば4部屋のアパートのうち1部屋に自分が住んでいれば、リフォーム費用の3/4が減価償却の対象となる可能性があります。ただし処理が複雑になるケースもあるので、税理士など専門家に相談するのがおすすめです。
リフォーム費用を減価償却する2つの方法と計算式
リフォーム費用を減価償却する方法には「定額法」と「定率法」の2つがあります。定額法は毎年同じ金額を償却していく方法で、計算が簡単で分かりやすいのが特徴です。一方で定率法は残存価額に一定の率を掛けて毎年の償却額を算出する方法で、初期の償却額が大きくなります。それぞれの計算式は以下です。
定額法 | リフォーム費用×定額法の償却率 |
---|---|
定率法 | (リフォーム費用−償却累計額)×定率法の償却率 |
たとえば100万円で木造アパートの外壁リフォームをした場合の違いを見てみましょう。木造アパートの耐用年数とそれぞれの償却率は以下です。
耐用年数 | 定額法の償却率 | 定率法の償却率 |
---|---|---|
22年 | 0.046 | 0.091 |
出典:主な減価償却資産の耐用年数表/減価償却資産の償却率等表|国税庁
定額法だと以下のような計算式になり、毎年46,000円を減価償却費として計上します。
100万円(リフォーム費用)×0.046(償却率)=46,000円
定率法だと以下の計算式になり、1年目の減価償却費は91,000円です。
100万円(リフォーム費用)×0.091(償却率)=91,000円
また、定率法の2年目の計算式は以下の通りで、減価償却費が82,719円となります。
(100万円(リフォーム費用)−91,000円(償却累計額))×0.091(償却率)=82,719円
建物付随部分では「定額法」と「定率法」のどちらがおすすめ?
定額法と定率法のどちらがおすすめなのかは、状況によって異なります。それぞれのメリット、デメリットは以下です。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
定額法 | 計算が簡単 | 資金回収に時間がかかる |
定率法 | 早く手元に資金を戻せる | 計算が面倒 |
定額法は初年度の減価償却費が定率法より少ないため、初年度の利益をより多く計上できます。固定資産を取得した年の利益が少ない場合などは、定額法がおすすめです。一方、定率法は初期の減価償却費が大きいため、節税対策として購入したものに適用されるケースが多いです。
古いアパートは、リフォームより売却したほうがいい場合もある
アパート経営においてリフォームは重要な投資ですが、常にリフォームが最善とは限りません。特に古いアパートの場合、リフォームよりも売却を検討したほうがいい場合もあります。なぜなら建物は、どれだけメンテナンスを行っても、老朽化が進むからです。
また、周辺環境の変化によっても資産価値が低下します。たとえば近隣に新しいマンションが建設されたり、交通の利便性が変化したりなどです。さらに築年数が経過するほどに、修繕費用は増加する傾向にあります。このような状況ではリフォームを行っても十分な効果が得られないので、売却を検討するのもおすすめです。
空室が続くとキャッシュフローが悪化し、ローン返済が難しくなる
古いアパートは設備の老朽化や時代遅れの間取りなどにより、入居者を確保しにくい場合もあります。空室が続くと家賃収入が減少し、キャッシュフローが悪化しローン返済が難しくなります。アパートローンの返済は通常、家賃収入を原資としているからです。特にローン返済額が家賃収入を上回るような状況になると、オーナーの財政状況に大きな負担がかかります。このような状況が続くとアパート経営自体が赤字になり、個人の生活にも影響を及ぼすので注意が必要です。
持ち出しが発生すると節税効果も実感しにくい
アパート経営で持ち出しが発生すると、減価償却による節税効果も実感しにくくなります。持ち出しとは、収支のマイナスを補完するために自己資金から負担するお金です。税金を節約できても実際の現金の流出が大きければ、経営的にはマイナスとなるからです。たとえば年間100万円の減価償却費を計上できたとしても、空室による収入減少や修繕費の増加により200万円の赤字が出ている場合、節税効果よりも実際の損失のほうが大きくなってしまいます。このような状況では、リフォームよりも売却を検討する価値があるでしょう。
古いアパートの売却は不動産会社選びが重要
古いアパートを売却する際は、不動産会社選びが重要です。不動産会社によって売却価格や、販売戦略が異なるため、信頼できる不動産会社を選びましょう。地域の市場に精通した不動産会社であれば、適正な売却価格を提示してもらえる可能性が高くなります。
また、今すぐに売却を考えていなくても、アパートが今いくらで売れるのか一度確認しておくのもおすすめです。売却価格を確認しておくことで、将来の選択肢を広げることができ、リフォームや売却のタイミングを戦略的に判断できます。
この記事を書いた人
TERAKO編集部
小田急不動産
鳥塚 正人
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