不動産物件のAI査定。導入のメリット・デメリットと注意点を解説
近年さまざまな業界で活用され、急速に浸透しているAI。不動産業界においても、AI技術を取り入れる企業が増えています。不動産物件の売却を検討している方の中にも「AIによる不動産査定が気になる」という方もいるのではないでしょうか。本記事では、AI不動産査定とはどういうものなのかを解説します。AI不動産査定のメリットやデメリットに加え、利用する際の注意点についてもお伝えします。AIによる不動産査定に興味をおもちの方は、ぜひご一読ください。
この記事の目次
不動産のAI査定とは?
人間が膨大な量のデータを処理しようとすると、手間も時間もかかり、ミスも起きやすいです。その点、AIであれば瞬時に正確な答えを導き出すことができます。不動産業界にも多くのAIサービスが進出しており、さまざまな場面で活用されています。中でも、不動産の売却において非常に有用です。そもそもAIとはどういった技術なのか、不動産業界におけるAIにはどのようなものがあるのかなどについて、詳しく見ていきましょう。
AIとは?
AIは、人工的に作られた知能をもつコンピューターシステムやソフトウェアのこと。テクノロジーの発展とともに現代社会に急速に普及し、さまざまな分野で活躍している技術です。「Artificial Intelligence」という言葉を略したもので、日本語では「人工知能」と訳されます。AIの特徴は、自ら学習することで、物事を認識したり理解したりできることです。そのため、従来型のコンピューターでは処理できなかった業務を幅広く行うことができ、スピードアップやコストダウン、人手不足の解消に貢献しています。
身近な活用例として、以下のようなものをイメージするとわかりやすいでしょう。
・スマートフォンや家電機器の音声アシスタント機能
・人感センサーを搭載したエアコン
・お掃除ロボット
不動産業界におけるAIの種類
膨大なデータを扱う不動産業界においても、AIによるサービスの数が増加しつつあり、今後ますますの活躍が期待されています。
不動産に関連するAIには、以下の3種類があります。
・営業型:物件を顧客に提案する
・投資型:不動産の投資を予測・提案する
・アフターフォロー型:顧客に対してフォローを行う
ここからは、3種類のAIの役割についてくわしく紹介します。
営業型AI
今まで不動産業界では、スタッフが顧客に対面で営業を行う対面営業がほとんどでした。しかし近年は、スマートフォンなどのアプリからその場で物件を探す人も増えています。それを受け、AIに物件の提案を任せる「営業型AI」を導入する企業も増加中です。AIであれば、膨大な量の物件データから、顧客のニーズに合うものを瞬時に提案できます。さらに、顧客の趣向や要望、頻繁に寄せられる質問などの情報を蓄積できるため、そのデータを活用して今後の営業に役立てることも可能です。
投資型AI
前述したようにAIには、人間では処理しきれないデータ量を瞬時に計算できるという強みがあります。しかし、AIの強みはそれだけではありません。蓄積された膨大なデータから、収益性を予測できることも大きな強みのひとつです。そのようなAIは「投資型AI」とよばれています。投資型AIを活用すれば、データから5年後や10年後の収益性を予測し、瞬時に提案してくれます。今まで不動産投資は、投資家の物件に対する嗅覚や目利きの資質が問われる分野でした。それがAIよって、より簡単に投資プランをシミュレーションできるようになっています。AIの活用により、売買価格や賃料などの相場が掴みやすくなるだけでなく、より効率的な投資が可能になるのです。
アフターフォロー型AI
「アフターフォロー型AI」は、機器の故障や物件に関する問い合わせなど、入居者に対してアフターフォローを行うAIです。問い合わせ内容によって、入居者が自分自身で対応すべきなのか、専門のスタッフが対応すべきなのかを瞬時に判断して回答してくれます。トラブルは曜日や時間に関係なく起こり得るものです。365日24時間人が対応するのは難しいですが、AIであればどのようなタイミングでも対応できます。業務効率化の観点だけでなく、顧客ニーズに応えるという意味においても有用です。
AIを用いた投資物件査定の仕組み
不動産査定というと、不動産会社の担当者が実際に物件を訪問し、詳細に確認した上で価格を提示するのが一般的でした。しかしAI技術の導入によって、インターネット上で簡単に物件の査定ができるようになっています。AI不動産査定を用いると、不動産の査定価格をスピーディーに算出することが可能です。これには、AIに蓄積された膨大な量の取引データが関与しています。
AI不動産査定を用いる場合、投資物件の査定を行いたい人は、物件に関する以下のような情報を入力します。
- 物件の所在地
- 物件の種類
- 物件の用途
- 物件の面積
- 物件の構造
- 物件の築年数
するとAIが、これらの情報と今までに蓄積された取引データを比較し、不動産の査定価格を瞬時に算出してくれるという仕組みです。上に挙げた情報は、人が行う従来の査定でも必要です。つまりAIによる査定を依頼するとしても、従来の方法に比べ顧客の負担が大きくなることはありません。
AI不動産査定のメリット・デメリット
最新技術を駆使したAI不動産査定に興味はあっても、「人の手で行う査定の方が正確なのではないか」「 AIで本当に不動産を査定できるのか」と不安に感じる方もいるかもしれません。もちろんAI不動産査定にも、メリットやデメリットが存在します。より効果的に活用するためにも、AI不動産査定のメリットやデメリットを知っておきましょう。
AI不動産査定を利用するメリット
顧客がAI不動産査定を利用するメリットとして、ここでは以下の5点を紹介します。
・不動産投資のハードルが下がる
・シミュレーションが容易
・査定結果がすぐわかる
・匿名で査定を行える
・不動産会社から営業されない
ここからは5つのメリットについて詳しく見ていきましょう。
不動産投資のハードルが下がる
AI不動産査定を利用すると、不動産投資のハードルが下がります。その理由には以下のようなことが挙げられます。
・無料で利用できるサービスが多い
・情報を登録するだけで提案してもらえる
・いつでも物件の査定をしてもらえる
・自分の知りたい情報を簡単に探せる
「これから不動産を売却したい」と考えている方や「現在使っていない不動産を活用したい」と考えている方にとっても、AI不動産査定を活用すれば不動産投資のハードルが下がるでしょう。
シミュレーションが容易
AI不動産査定のメリットとして、シミュレーションが容易であることが挙げられます。計算はAIの得意分野です。複数のシミュレーションをしてみたい場合でも、AIが瞬時に答えを導き出してくれます。不動産会社の担当者に、いくつものパターンの投資シミュレーションを依頼するのは気が引ける……」という方も、AI不動産査定なら気軽に依頼できるでしょう。AI不動産査定で算出される査定額は、膨大な量の蓄積データに裏打ちされているため、ある程度信頼できる数字です。シミュレーション結果を活用すれば、不動産投資におけるリスク回避にも役立つでしょう。
査定結果がすぐわかる
査定結果がすぐわかることも、AI不動産査定のメリットです。不動産査定には、実際に人が訪問して行う「訪問査定」や、インターネット上で申込みを行う「不動産一括査定」があります。訪問査定の場合、査定申込から結果が出るまで、訪問日時の調整を含めて1週間前後かかるのが一般的です。不動産一括査定でも、結果が出るまで約1日かかるとされています。一方AI不動産査定は、インターネット上で必要項目を入力すると、すぐに査定金額を知ることができます。物件の価値を知りたいと思ったときに、気軽に査定をしてもらえるのです。
匿名で査定を行える
AI不動産査定では、個人情報をほとんど入力することなく査定できます。この点も大きなメリットと言えるでしょう。サービスによって多少異なるものの、基本的には、アカウント作成のためのメールアドレスだけで利用できます。ただし、査定する物件の住所は、詳細に入力しないと正しい査定結果が得られません。もし物件の詳しい住所を登録したくない場合は、最寄り駅からの所要時間や物件種別、面積のみで査定できるサービスもあるので、検討してみましょう。
不動産会社から営業されない
不動産会社に不動産査定を依頼すると、その後営業されることも少なくありません。不動産会社からの営業を煩わしいと考える方もいるでしょう。AI不動産査定であれば、電話番号などの個人情報の登録が不要なため、営業電話がかかってきたり担当者とやりとりしたりする必要はありません。このような理由から、「物件の査定だけしてほしい」「自分のペースで不動産売却を考えたい」という方にもAI不動産査定はおすすめです。
AI不動産査定を利用するデメリット
AI不動産査定のデメリットとして、ここでは以下の4点を紹介します。
・査定額の精度が低い
・エリアや物件種別によっては査定しにくい
・マンションの特徴を査定価格に反映させにくい
・依頼する不動産会社を選べない
AI不動産査定を上手に活用するためには、デメリットを把握しておくことが大切です。
ここからは、AI不動産査定のデメリットについて具体的に説明します。
査定額の精度が低い
AI不動産査定のデメリットのひとつが、査定額の精度がほかの査定方法に比べて低いことです。AI不動産査定には、不動産取引における最大のデータベース「レインズ」のデータは使用できません。そのため、開発元の不動産会社が所有するデータや、インターネット上で集めたデータが元になっています。つまり、参照情報量が十分とは言えず、売出価格と成約価格に大きな差が出ることもあります。査定額の正確性といった意味では、訪問査定や不動産一括査定の方が信頼度が高い場合もあるのです。
エリアや物件種別によっては査定しにくい
AI不動産査定には、エリアや物件種別によっては査定しにくいというデメリットがあります。
AI不動産査定の査定額には、過去の取引データが大きく影響します。そのため、不動産の取引事例が少ないエリアでは、査定の正確性が下がる恐れがあるでしょう。
また、マンションか戸建住宅かといった物件種別も、AIによる査定に影響します。
規格や構造などが不動産業者によって統一されているマンションは、物件ごとの違いが小さく、AI不動産査定に向いています。
対して戸建住宅は、建売や注文住宅など販売方法も多様です。その上、眺望や日当たり、道路の方角など個別性が高く、データベースからの参照には限界があります。そのため、AI不動産査定には不向きとされています。
マンションの特徴を査定価格に反映させにくい
マンションの特徴を査定価格に反映させにくいことも、AI不動産査定のデメリットです。AI不動産査定では、同じ間取りの物件であれば、日当たりや室内の損耗など物件の特徴を査定に反映させることが難しいのです。査定額は、基本的なデータだけから算出されるものではありません。リフォーム歴や物件の管理状況、周辺環境などの情報によっても大きく左右されるものです。AI不動産査定にはこのような情報を反映させることが難しいため、算出される査定額はあくまでも相場価格であると認識しておきましょう。
依頼する不動産会社を選べない
AI不動産査定における4つ目のデメリットは、依頼する不動産会社を選べないことです。不動産査定には、売却予定物件の売出価格を決めること以外に、売却を依頼する不動産会社を選ぶ側面もあります。例えば、複数の不動産会社に訪問査定を依頼する場合は、それぞれの査定額や対応などを比較し、より信頼できる不動産会社を選べます。しかし、AI不動産査定を利用すると不動産会社を選ぶことはできません。「信頼できる不動産会社の担当者と売却について相談したい」と考えている方には、AI不動産査定は不向きと言えるでしょう。
AI不動産査定を利用する際の注意点
AI不動産査定を利用するには、知っておくべき注意点があります。ここでは以下の2点についてくわしくお伝えします。正確な査定額を知るためには複数のサービスを併用する不動産会社にコンタクトを取る場合は自ら連絡する
「不動産査定にAIを活用したい」と考えている方は、しっかりと頭に入れておいてください。
正確な査定額を知るためには複数のサービスを併用する
AI不動産査定を利用する際は、特定のサービスだけを使うのではなく、できるだけ複数のサービスを使うようにしましょう。正確な査定額を知りたい場合は、AI不動産査定の査定額を参考にしながら、訪問査定や不動産一括査定などと併用するのもおすすめです。無料で利用できるのがAI不動産査定の強みでもありますが、中にはサービスを提供する会社の宣伝が含まれていることもあります。査定額の妥当性を検証するためにも、複数のサービスを併用しましょう。
不動産会社にコンタクトを取る場合は自ら連絡する
AI不動産査定では不動産会社との接点がないため、サービスを通して不動産会社にコンタクトを取ることはできません。「実際に売却を依頼したい」「物件の売却方法について質問したい」など、不動産会社と連絡をとりたい場合は、自分で不動産会社を探して連絡する必要があります。不動産会社のあてがない場合は、不動産一括査定で査定を依頼してみてはいかがでしょうか。査定してくれた不動産会社の中から、信頼できる相手が見つかるかもしれません。
まとめ
AI不動産査定には、不動産投資のハードルを下げたり、査定額をすぐに知ることができたりといった多くのメリットがあります。しかし便利な反面、物件ごとの状況による査定額の精度には不安が残ります。不動産の売却でAI不動産査定の活用を考えている人は、AI不動産査定とそのほかの査定方法を組み合わせて査定額を出すのがおすすめです。AI不動産査定に頼りすぎるのではなく、不動産会社の専門性などもうまく活用し、効率的に不動産投資を行いましょう。
この記事を書いた人
TERAKO編集部
小田急不動産
横溝 浩由
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