アパート経営は本当に儲からない?やめたほうがいい人の特徴も紹介
アパート経営はしばしば「儲からない」といわれます。
きちんと経営することで十分な利益を上げられますが、アパートオーナーに向いていない人もいます。不向きなままアパート経営を行うと、利益が出ないばかりか地獄を見るリスクも生じます。
アパート経営のリアルな収益性と、成功の鍵を握るポイントについて詳細に解説していきます。
この記事の目次
アパート経営は本当に儲からない?
アパート経営がしばしば「儲からない」と語られる背景には、いくつかの理由がありますが、実際には適切な管理と戦略で十分な利益を上げることが可能です。
最大の障壁は空室リスクです。新築時は入居率が高くても、時間が経つにつれて空室が増える傾向にあります。特に築15年以上経過すると、空室率が上がることが多いです。
家賃収入にも波があります。総務省の調査によると、多くの地域で家賃が下降しており、直接的な利益減少につながっています。生産年齢人口の減少に伴い、将来的には家賃の下降傾向が加速する可能性も否定できません。
加えて、アパート経営には大きな初期投資が必要で、多くの場合、その資金のほとんどがローンによるものです。ローン返済の負担は経営を圧迫し、軌道に乗るまで財政的に厳しい状況が続くことが一般的です。
アパート経営が「儲からない」とされる多くの事例は、上記のようなリスクを適切に管理できていないケースから生じています。適切な知識と戦略をもって臨めば、アパート経営は有利な投資になり得ます。
ここからはアパート経営が利益を上げられると推測できるデータと、経営に必要な情報を紹介します。
アパートオーナーの年収は増加傾向にある
アパート経営の主な収入源は入居者からの家賃です。アパート経営から得られる年収について、国税庁の申告所得税標本調査からのデータをもとに見てみましょう。このデータによれば、令和2年度のアパート経営による平均年収は約540万円と報告されています。以下は近年のデータ比較です。
年度 | 平成28年 | 平成29年 | 平成30年 | 令和元年 | 令和2年 |
---|---|---|---|---|---|
平均収入額 | 5,120,638円 | 5,170,151円 | 5,181,407円 | 5,207,633円 | 5,399,575円 |
この数値は年々わずかに増加しており、アパート経営が一定の収益を上げていることを示しています。
これらの数字は不動産所得全体の平均を示しているため、戸建て賃貸の収入なども含まれています。必ずしもアパート経営での年収の平均額とは言えないものの、そこまで外れていないと推測できます。
不動産投資市場の今
最新の市場調査によると、日本の不動産投資市場はコロナ禍を乗り越え、依然として活気づいています。ニッセイ基礎研究所が2023年7月18日に公表したレポートには、収益不動産の資産規模やその用途別、エリア別の内訳が詳細に分析されています。
調査結果によると、日本の収益不動産全体の資産規模は約289.5兆円と推計されており、前年比で13.9兆円(約5.1%)の増加を見せています。また、投資適格不動産の資産規模は約179兆円で、前年比7.2兆円(約4.2%)の増加です。
用途別に見ると、「オフィス」が約103.1兆円(市場占有率36%)で最も大きなシェアを占める一方で、「賃貸住宅」が約77.1兆円(27%)、「商業施設」が約67.7兆円(23%)と続きます。「物流施設」は約31.7兆円(11%)、最後に「ホテル」が約10兆円(3%)の市場規模を有しています。
比較すると、賃貸住宅は前年比で7%増、「物流施設」は13%増と著しく拡大しています。商業施設も9%の増加を示しており、ホテル市場も6%の成長が見られます。一方で、オフィス市場は1%の縮小が見られ、市場の動向に変化が見られる部分もあります。
このようなデータは不動産投資を検討する際の重要な指標となるため、投資対象を選ぶうえでの参考になるでしょう。興味のある分野に応じて、戦略的な投資判断が求められます。
アパート・マンション経営の利益率
不動産投資において、物件の「利回り」表示は収益力を把握する重要な指標ですが、表示されている利回りがそのまま利益とは限りません。通常、物件の利回りは「表面利回り」または「単純利回り」として表示され、以下のような計算式で求められます。
表面利回り=(年間家賃収入÷物件の購入価格)×100
しかし、実際の投資判断をする際には、この数値だけでは不十分です。地域や物件の築年数、周辺環境、空室率、さらには売主の状況など、多くの要因が利回りに影響を与えます。
また、目標収入や返済計画、投資額によって「安心できる利回り」は異なります。物件を選ぶ際には、目標地域の平均利回りや空室率をもとにした独自の計算も必要です。例として、東京都心の一般的な利回りは6〜7%、空室率は10〜20%の範囲で推移しています。
投資の成功は、単に物件の質だけでなく、運用戦略にも左右されます。実際の利益率を把握するためには、これらの要因を総合的に考慮し、詳細な計画を立てることが推奨されます。
不動産投資と債券投資の違い
不動産投資と比較される投資方法に「債券投資」があります。
債券とは、国や企業などが資金調達を目的に発行する有価証券の一種です。投資することで、発行元からの定期的な利息収入と、満期時の本体返済を期待できます。一方、不動産投資は、物件を購入してその使用権を貸し出すことにより家賃収入を得るか、資産価値の上昇を見込んで売却利益を得ることを目指します。
以下の表では、債券投資と不動産投資の特徴やメリットを比較しています。
比較項目/2種類の投資方法 | 債券投資 | 不動産投資 |
---|---|---|
特徴 | ローリスク・ローリターン | ミドルリスク・ミドルリターン |
メリット | ・預金よりも高い利率で利息が得られる。 ・債権者としての権利が保障され、満期時の返済が見込まれる。 ・国債などは市場での流動性が高く、売却も比較的自由。 |
・安定した家賃収入が見込める。 ・レバレッジ効果により、投資対効果が高まる可能性がある。 ・税制面での優遇措置を受けられる場合が多い。 ・生命保険代わりの資産形成として利用可能。 |
デメリット | ・発行企業が経営破綻すると元本割れのリスクがある。 ・市場の金利変動により売却時の価値が下がる可能性がある。 |
・常時満室とは限らず、空室リスクがある。 ・経済動向・社会情勢によっては家賃や物件価値が下がる可能性がある。 |
不動産投資には、「レバレッジ」効果を利用できるメリットがあります。少額の自己資金で大きな物件を手に入れ、それを活用することで、高いリターンを目指す戦略です。加えて、税制優遇を受けられたり、資産としての価値を生命保険代わりにすることも可能です。
債券投資はより安定した投資を求める人に適していますが、リターンは限定的です。また、金利の変動や発行企業の信用リスクも考慮する必要があります。
土地持ちの資産家でないと儲からない?
アパート経営において、土地を所有している人はスタートラインが有利です。土地を購入する必要がないため初期費用を抑えることができます。また、土地を担保にローンを借りやすくなるなどのメリットがあります。
しかし、土地を所有していない場合でもアパート経営は可能です。
土地ありは立地を選べないデメリットがあり、賃貸需要がない場所でアパートを経営すれば、高リスクな投資になります。土地なしの場合は、賃貸経営に適した立地が選べます。
土地を持っていなくても、適切に準備し計画を立てて進めることで、アパート経営は成功させることが可能です。
土地所有者と非所有者との間でスタート時点の条件は異なりますが、どちらも利益を出すチャンスは存在します。専門家に相談しながら、一歩ずつ前進していくことが重要です。
アパート経営をやめたほうがいい人とは
アパート経営は、適切に行えば大きな収益をもたらす可能性がありますが、高いリスクも伴います。経営を成功させるには、市場調査や厳密な財務計画が必要です。
しかし、これらの重要性を理解せずに始めてしまうと、空室の増加や借入金の返済に苦しむことになりかねません。ここでは、アパート経営が向かないといえる人の特徴をいくつか挙げてみましょう。
管理会社に任せきりな人
アパート経営において、管理会社への業務委託は一般的な選択肢です。管理会社は入居者募集からクレーム対応、さらにはメンテナンスまで、日常の運営をサポートします。非常に便利に思えますが、全てを任せきりにすると、思わぬデメリットが生じる場合があります。
たとえば、管理会社に完全に依存すると、自身でのチェックがおろそかになりがちです。その結果、建物のメンテナンスが不十分になることや、不適切な入居者の選定につながることがあります。これらは最終的に収益性の低下や資産価値の減少を招くリスクを伴います。
アパートの運営を管理会社に委託するサブリース契約も、オーナーにメリットがある一方で賃料減額をめぐるトラブルが多発しています。
管理会社に任せきりで、必要な市場調査を行わずアパート経営をスタートするのも、空室率を増加させる原因です。入居者の属性やニーズなどはリサーチしておきましょう。
必要な市場調査を怠る
アパート経営は、適切な立地選びが成功の鍵です。特に、通勤や通学を主目的とする層をターゲットにする場合、「交通アクセスの良さ」は欠かせない要素です。また、日常生活に必要な「スーパー」「病院」「学校」などの施設が近隣にあるかも重要な判断基準です。
建築設計も成功の鍵を握ります。たとえば、女性専用アパートを計画する場合、セキュリティの強化や水回りの充実が必要です。こうした特長は女性からのニーズを捉え、退去率を減少させる効果が期待できます。
しかし、多くのハウスメーカーでは、プレデザインされたプランが基本となるため、必ずしも個々のニーズに合致しないこともあります。このため、アパートの設計時には以下の点を検討すべきです。
- 間取りや設備のカスタマイズ
ニーズに合わせた間取りや、利便性を考慮した設備の選定が必要です。これにより、ほかのアパートとの差別化を図れます。
- 複数のハウスメーカーとの相談
一つのメーカーだけでなく、複数の意見を聞くことで、より良い条件での建築が可能です。設計変更が難しいメーカーもあるため、選択肢を広げることが重要です。
アパート経営を成功させるには、これらの市場調査と設計の検討を怠らないことが非常に重要です。立地と建物の魅力が、入居率を高め、持続可能な収益を生み出す鍵となるでしょう。
安易なサブリース契約をする
アパート経営において一括借り上げシステム、通称「サブリース」は魅力的に思える選択肢ですが、多くの落とし穴が存在します。
サブリース契約では、管理会社がアパートの部屋を一括で借り上げ、オーナーは手数料を支払いながら定期的な家賃収入を得ることができます。通常、この手数料は家賃の10〜15%程度とされています。この制度の最大のメリットは、空室リスクが少ないことにあります。「満室」でも「空室」でも一定の収入が見込めるため、収入が安定しやすいといえます。
また、アパートの運営を管理会社が行うため、オーナーは手間を省くことができます。
デメリットもあり、一般的な契約よりも、オーナーが受け取れる賃料が低くなる傾向にあります。家賃保証の相場も80〜90%程度と、全額オーナーのものになりません。
また、2年ごとに家賃保証の見直しができるため、オーナーは賃料減額に応じなければなりません。
サブリースの契約前には専門家の意見を聞くことをおすすめします。
事前の収支シミュレーションを面倒くさがる人
事前の収支シミュレーションは必ず実施するべきです。アパート経営は家賃収入のほかにも、メンテナンス費用や管理費、そして借入金の返済などさまざまな注意すべきシミュレーションの項目があります。
適切なシミュレーションを行わないと、予測できない出費に直面し、アパート経営が失敗する可能性が高まります。
たとえば空室で家賃収入が減っても、月々の返済や管理費は必ず発生します。このようなリスクに備えて初期費用は十分に用意しておきたいです。
経営を成功させるためには、事前の計画とシミュレーションが欠かせません。事前のシミュレーションを面倒くさがる人は、アパート経営はやめたほうがいいでしょう。
安易なフルローンは危険
物件取得費用のすべてをローンで補う「フルローン」は安易に組まない方が良いです。
アパート経営において、多額のローンは不安要素となり得ます。そのため、自己資金の割合を高くすることが重要です。ローンを少額に抑えることで、返済額を抑えキャッシュフローを確保できます。
一般社団法人「全国住宅産業協会」によると、近年、建築費の上昇に伴い必要な借入金も増加しています。しかし、借入金が多すぎると、返済に圧迫されて利益がほとんど生まれません。可能な限りローンを減らし、自己資金で経営できるよう努めることが重要です。
収支計画が甘いと危険
収支計画が甘いアパート経営者は、経営をやめたほうがいいでしょう。収支計画を甘く見積もることはリスクを招きます。
アパート経営の初心者は、表面上の利回りだけを見て収支計画を立てがちで、空室率や賃料の下落リスクなどを考慮しないことがあります。しかし、適切な収支計画を立てるためには、少々厳しい見積もりが必要です。
定期的に収支シミュレーションを行い、計画が本当に持続可能かを確認することが重要です。慎重な計画を立てることで、不測の事態にも対応できます。
アパート経営が儲からない場合は売却も検討する
アパート経営は、適切な管理と運営が行えれば安定した収入源を確保できる一方で、さまざまな要因により思うように利益を得られない場合もあります。
入居者の確保に苦戦したり、維持管理費用の増加、地域の状況変化などが収益性を損なう原因になり得ます。
利益を得られない状況が続く場合、アパート経営の継続が困難と判断され、売却が賢明な選択肢となることもあります。
損切りが早いほど損失額を抑えられるため、売却で得た資金で新しい黒字物件を購入すると、損失を補えます。
アパートを売る際には、まず複数の不動産会社に相談することをおすすめします。売却を成功させるには、信頼できる不動産会社との連携が不可欠ですので、パートナー選びが重要です。
オーナーの気持ちに寄り添いつつ、市場動向をつかんでいると感じられる不動産会社との二人三脚で売却に臨みましょう。
この記事を書いた人
TERAKO編集部
小田急不動産
飯野一久
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