不動産投資物件の査定と売却。高く売るためのコツとは
不動産投資物件を売却するのであれば、できるだけ高く売って利益を大きくしたいと考えるのは当たり前のことです。投資用物件は金額が大きいだけに、「売り時や不動産会社選びでの失敗は避けたい」と考える方も多いでしょう。本記事では、収益物件の価格の種類や算出方法、査定の手順などについて詳しく見ていきます。投資物件を高く売るためのポイントもお伝えしますので、「不動産をなるべく高値で売却したい」と考えている方は参考にしてください。
この記事の目次
不動産投資物件のAI査定・売却のコツ
収益物件の価格の種類と算出方法
不動産投資物件の査定についてお話しする前に、収益物件の価格の種類について解説します。
中古市場で流通する不動産の価格査定には、居住用物件で一般的な「取引事例価格」に加えて、「積算価格」と「収益還元価格」といった方法があります。このうち投資用物件の査定では、居住用物件を売却する場合とは異なり、賃料収入などの収益をもとに算定する「収益還元価格」が重視されやすいです。このことについて詳しく解説します。
価格査定は収益還元価格で行う
「収益還元価格(収益還元法)」は、想定利回りから逆算することで売却価格を査定する方法です。
その物件の年間賃料収入を、還元利回り(エリアや物件ごとに投資家が想定する利回り)で割ることで求められます。中古市場の価格査定では、主にこの方法が用いられます。例えば毎月の家賃が15万円のマンションで、表面利回りを4%と想定する場合、査定額の計算方法は以下の通りです。
15万円×12ヶ月÷4%=4,500万円
しかし、ここで求められた4,500万円という金額が、過去の取引事例と比較して高すぎる場合もあるでしょう。そのような場合は、収益還元価格を参考にしながら、周辺相場に合わせた額が提示されることになります。このように、過去の事例と比較して物件を査定する方法を「取引事例比較法」と呼びます。
金融機関には積算価格
投資用物件の買手にはローンを利用する人も多いため、査定の段階で金融機関の担保評価を確認しておくことが必要です。
物件の担保力を評価するにあたって、積算価格を重視する金融機関も多いため、収益還元価格とあわせて積算価格(原価積上法)も計算しておくと良いでしょう。積算価格は、土地と建物の原価をもとにそれぞれの価格を割り出し合計して求めます。土地の積算価格は、金融機関と不動産会社で算出方法が異なります。金融機関の場合は路線価から算出するのが一般的です。不動産会社の場合はより実際の価格に近い公示地価で計算され、必要に応じて取引事例価格も考慮します。
それに対し、建物の積算価格は再調達原価や築年数に応じ、減価償却して計算されます。なお、収益還元法価格と積算価格との間に差が出ることはめずらしくありません。どちらを重視するかは不動産会社や金融機関によって異なります。
投資用物件の査定と売却の手順
ここからは、実際に投資用物件の査定方法と売却の手順について見ていきたいと思います。
投資用物件の媒介契約を結んでから売却が完了するまで、一般的に3ヶ月から半年ほどかかるとされています。相場が高いタイミングで売ろうと思っても、準備ができていなければチャンスを逃してしまうかもしれません。不動産売却で損をしないためには、しっかりと準備期間を設け、希望の時期に売却できるよう早めに動きましょう。
投資用物件の査定方法
投資用物件の査定で使われる収益還元法は、収益力にもとづき、その不動産が将来的にどれぐらい稼ぐ力があるのかを査定する方法です。投資用物件の売却を考え始めたら、管理会社に早めに資料をもらっておくことをおすすめします。売却にあたり、物件購入時の売買契約書や重要事項説明書のほか、入居状況や家賃収入、必要経費などをまとめたレントロールが必要です。入居中の物件の場合は、入居者との間で締結している賃貸借契約書なども必要になります。
必要な資料が揃ったら、不動産会社に査定を依頼しましょう。
投資用物件を売却する手順とかかる費用
投資用物件を売却する手順としては、まず不動産会社に売却を考えている旨を相談するところからスタートします。その後、情報を集めて査定を依頼し、査定結果をもとに不動産会社と媒介契約を結びます。購入希望者が見つかったら、物件の内覧を行う段階です。購入希望者と条件のすり合わせをし、双方が合意できたら売買契約が成立。購入者から手付金が支払われます。後日残金の支払いが完了した時点で、売却物件に関する書類や鍵などを引き渡し、所有権の移転登記をもって売却の手続きが完了となります。
投資用物件の売却には仲介手数料や印紙税、不動産売却にかかる税金などの費用が必要です。これらを合計すると、売却金額のおよそ5〜7%になります。高額な不動産売買では、手数料や税金の額も大きくなるので注意しましょう。
不動産のAI査定とは?
人間は、膨大な量のデータを処理して答えを出すのに大変な時間がかかります。一方、AI(人工知能)であれば瞬時に答えを出すことが可能です。
近年さまざまなジャンルで活用されているAIですが、不動産業界においてもAI技術を取り入れる企業が増えています。今まで、不動産の査定というと、専門家が物件を訪問して詳細に確認した上で価格提示をするのが一般的でした。しかしAI技術の導入によって、インターネット上で簡単に物件を査定できるようになりつつあります。
ここからは、AI不動産査定のメリットとデメリットを見ていきましょう。
AI不動産査定を利用するメリット
AI不動産査定の大きなメリットとして、手軽さが挙げられます。AI不動産査定を活用すれば、Web上で必要項目を入力するだけで、すぐに査定結果が表示されるのです。
AI不動産査定サービスの中には、情報登録をしておくだけで、定期的に変更価格を知らせてもらえるものもあります。このサービスを活用すれば、値動きの激しい投資物件でも、最適な売却のタイミングがわかります。さらに、AI不動産査定は匿名で利用できるため、不動産会社から営業電話がきたり、他人に知られたりする煩わしさがない点も魅力です。
AI不動産査定を利用するデメリット
AI不動産査定のデメリットとして、査定額の精度があまり高くないことが挙げられます。AI不動産査定には、最大のデータベースである「レインズ」のデータが使用できず、情報量が十分とは言えません。実際の売却価格とAIによる査定額との間にギャップが生まれる可能性があります。それに加えAI不動産査定では、同じ間取りの物件であれば、日当たりや室内の損耗など物件の個別事情が考慮されません。この点にも注意が必要です。
投資用物件の売却における注意点
投資用物件の売却で損をしないために、注意したいポイントを3点お伝えします。注意点を押さえ、納得できる不動産投資を目指しましょう。
複数の不動産会社に査定を依頼する
査定を依頼する際は、必ず複数の不動産会社に相談するようにしましょう。1社だけでは情報や強みに偏りが生じることがあるからです。同じ物件の売買でも、不動産会社が異なるだけで、査定額が2〜3割変わることもめずらしくありません。不動産一括査定サイトを使えば、一括で簡易査定を依頼できます。全国展開する大手からその土地に根付いた企業まで、幅広い不動産会社に査定を依頼できるので、さまざまな観点から査定してもらえるでしょう。
居住目的と投資用では考え方が異なる
居住用物件と投資用物件の売却の売却では、買い手が重視するポイントが異なるため、査定方法に違いがあります。居住用物件の売却の場合に重視されるのは、物件の向きや収納の多さなど、実際に住んだ場合の住みやすさです。それに対し投資用物件の場合は、運用でどのくらいの利益を出せるかという数字が重視されます。利回りが高い物件であればあるほど、買い手が付きやすくなるのはこのためです。
顧客ターゲットによって適正な利回りは異なる
利回りは、顧客ターゲットによって異なるものです。投資用物件の売却価格は利回りの影響を大きく受けるため、物件の売却価格も顧客ターゲットによって異なります。
例えば、東京23区内の投資用マンションを売却する場合、一般的に国内の投資家であれば表面利回りは4%が下限です。しかし、都心に立地する港区や中央区などの物件であれば、外国人投資家もターゲットになるため、利回りが2~3%台でも購入に至る場合があります。
都内の投資用物件を購入する外国人投資家の多くは、中国系外国人です。その中には「海外市場と比較して、東京の物件は魅力的だ」と考えている投資家も多くいます。物件によっては、外国人投資家に向けた営業の方が効果的な場合もあると認識しておきましょう。
投資用マンションを高く売るには
投資用マンションの売却を検討している方の中には、売却によって損をしてしまわないか不安に思う方も多いでしょう。しかし、厳しい市況でもタイミングを見計らうことで、高額売却につながるケースもあり得ます。投資用物件を少しでも高く売るには、どういった点に着目すれば良いのでしょうか。
ここでは、売却におすすめのタイミングとAI不動産査定の活用についてお伝えします。
AI不動産査定を活用する
訪問査定の場合、査定申込みから結果が出るまで1週間前後かかります。インターネットから申し込める不動産一括査定の場合も、結果が出るまで約1日必要です。一方AI不動産査定は、その場で査定金額を知ることができるため、知りたいと思ったその場で気軽に査定を行うことができます。前述したように、サービスによっては査定額の変化を知らせてくれるものもありますので、高く売れるタイミングを逃したくない方には便利なサービスと言えるでしょう。
売却におすすめのタイミング8選
同じ投資用物件でも、タイミングによっては通常より高値で売却することが可能です。反対に、タイミングを見誤ると損をしてしまうパターンもあります。できる限り高く売るために、おすすめのタイミングを8つ紹介します。
大規模修繕の前
マンションは、築10〜20年の間に大規模な修繕を行うのが一般的です。修繕積立金で修繕費をまかなえない場合は、不足分をオーナーが負担するケースもめずらしくありません。また、大規模修繕のタイミングで修繕積立金が値上がりすることもあります。大規模修繕や修繕積立金の値上げは、オーナーにとって負担が大きいものです。そのため、大規模修繕の前に売却することをおすすめします。
家賃が近隣の相場よりも高いとき
投資用物件は入居者がいる状態でも売却可能です。しかし、入居者がいることや内覧ができないことを理由に、空室時の相場よりも売却価格が下がる恐れがあります。所有物件の家賃が近隣の相場よりも高いタイミングを狙うことで、強気の価格設定でも買い手が付きやすくなり、高値で売却できるでしょう。
物件が空室のとき
物件が空室の場合は、オーナーチェンジ物件と異なり内見を行うことができます。買い手が自由に扱えるメリットがあるため、高額売却が期待できるでしょう。空室というとマイナスのイメージがあるかもしれません。しかし近々売却を検討している場合、家賃を下げて埋めるより売りに出した方が功を奏する可能性もあるでしょう。
路線価が上昇しているとき
路線価とは、国税庁が定める「相続税評価額」のこと。毎年その土地の現状をふまえて決定されます。路線価は、国税庁のWebサイトに掲載されている路線価図・評価倍率表から調べられます。路線価が上昇しているときは不動産を高値で売却しやすいので、参考にしてみると良いでしょう。
月々の収支がマイナスになったとき
投資用物件は家賃が毎年値下がりするのに対し、管理費や修繕積立金は築年数の経過とともに値上がりします。そのため入居者がいる場合でも、毎月の収支がマイナスになることもあります。キャッシュフローが悪化し、赤字になったタイミングでなるべく早く売却できるよう、月々の収支を定期的に確認しておきましょう。
減価償却費用がローンの元金返済額を上回ったとき
「減価償却費用」とは、固定資産の取得にかかった費用を、耐用年数に応じて配分し計上される費用のことを言います。減価償却費用が年間のローンの元金返済額を上回ると、超えた分は経費に計上できません。実際の手元資金はマイナスとなりますが、そのタイミングで売るのもひとつの方法です。
築年数20年を迎える前
投資用物件は居住用物件と同様、築年数が20年を超えるあたりから売却価格が下がります。築20年以内の物件は評価額が高く、35年ローンでの借り入れが可能です。月々の返済額が少なくてすむため、低利回りでも高く売れる可能性があります。築年数が20年を超えるとローンが組める期間が短くなり、月々の返済額が大きくなります。よほど利回りの高い物件でなければ、築20年を経過する前に売り出すのがおすすめです。
引っ越しシーズンの直前
引っ越す人が多い春と秋は、不動産業界にとって繁忙期です。この時期は物件の需要も高く、多少価格を高めに設定しても売却しやすいとされています。投資用物件を高く売るには、春や秋を狙って少し早い段階で売り出すのがポイントです。
査定額はあくまで目安
AI不動産査定や不動産会社の査定でおおよその査定額は出るものの、最終的な売出価格は売主が決めることになります。売主としてはなるべく高く売却したいのが本音でしょう。ですが、売出価格があまりに高いと買い手が付かず、タイミングを逃して損をしてしまうリスクがあります。査定金額はあくまで目安です。不動産会社とよく相談し、市場の動向やほかの売り物件も考慮しながら売出価格を決定しましょう。
まとめ
不動産の売却は専門用語が多く、投資や不動産に関する知識も必要なため、不安に感じる方も多いと思います。投資用物件の売却においては、信頼できる不動産会社を見つけることが高額売却への近道です。
今はAI不動産査定や不動産一括査定など、投資用物件の売却に役立つサービスも数多くあります。投資用物件の売却を検討している方は、まずはどのような方法で物件の査定を行うのか考えてみましょう。そして算出された査定額を参考に、納得できる価格で物件を売却してください。
この記事を書いた人
TERAKO編集部
小田急不動産
鳥塚 正人
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