「大家業が儲からない理由」サラリーマンが知るべき対策

大家業は儲からないとは言えず、稼げる可能性があります。サラリーマンであれば金融機関の融資審査が通りやすいなどのメリットがあります。
大家業は辞めたほうがいいといわれる理由や対策を解説します。
この記事の目次
大家業は本当に儲からないのか
大家業は儲からないといわれていますが、本当に儲からないのでしょうか。国税庁が公表している申告所得税標本調査によると、不動産所得者の平均所得金額は年々上昇しています。
平均所得金額(千円) | |
---|---|
平成25年 | 5,117 |
平成30年 | 5,181 |
令和4年 | 5,425 |
令和5年 | 5,471 |
(上記参照)平成25年には511万7,000円でしたが、令和5年には547万1,000円と約35万円増えています。
所得階級 | 所得金額(億円) | 割合 |
---|---|---|
100万円以下 | 456 | 0.8% |
100万円超200万円以下 | 2,957 | 5.1% |
200万円超300万円以下 | 4,414 | 7.7% |
300万円超500万円以下 | 9,932 | 17.2% |
500万円超1,000万円以下 | 17,090 | 29.6% |
1,000万円超2,000万円以下 | 12,553 | 21.8% |
2,000万円超5,000万円以下 | 7,355 | 12.8% |
5,000万円超1億円以下 | 1,854 | 3.2% |
1億円超 | 1,045 | 1.8% |
上記の表は、令和5年の不動産所得者の所得階層別所得金額と割合です。所得金額1,000万円を超える所得者は全体に対し39.6%を占めています。
このことからも、大家業は儲からないとはいいきれず、稼げる可能性があります。
不動産投資のメリット
大家業が該当する不動産投資は主に下記のようなメリットがあります。
- 家賃収入によるインカムゲインが得られる
- 不動産所得が赤字になった場合、他の所得と合算して損益通算できる
- インフレに対するヘッジ効果がある
- 相続税の節税対策になる
投資物件の空室率をおさえることで、毎月安定した家賃収入が得られます。また、修繕等で費用がかさみ、赤字になった場合でも事業所得など他の所得で黒字になっている部分と損益を通算すると赤字額を減少させることが可能です。
そして、資産を現金で保有している場合は、インフレにより手元の現金額が変わらなくても物の価格が上昇するため、資産価値としては目減りしてしまいます。
しかし、物価の上昇により不動産価格も上昇するため、不動産で保有している場合は資産価値が目減りしません。加えて、相続時には不動産の評価額は実勢価格の約7〜8割程度になるため、相続税をおさえられます。
サラリーマンが大家になるメリット
サラリーマンが大家になるメリットとしては、下記の3点が挙げられます。
- 給与所得もあるため、金融機関の融資審査が通りやすい
- 副業収入として、安定した収入が得られる
- 老後の資産形成として活用できる
不動産投資を始める際には、物件を購入するところから始まりますが、全額を自己資金で準備するのは困難です。自己資金のほか、金融機関からの借入で物件購入するサラリーマンが多いでしょう。
サラリーマンは本業の給与所得があり、金融機関の融資審査では安定した収入があるとみなされる可能性が高いため、比較的通りやすいといえます。
また、給与所得とともに、不動産投資から得られる家賃収入を副業収入として得られるため、所得を増やせる点もメリットです。加えて、定年退職後で年金収入になった際にも不動産収入が得られるので、老後の資産形成にも役立つでしょう。
賃貸住宅の所有者のうち約4割が会社員
では、サラリーマンで大家業を営んでいる人はどのくらいいるのでしょうか。
国土交通省で実施した賃貸住宅管理業務に関するアンケートでは、賃貸住宅の所有者の約4割は会社員が占めており、副業収入として大家業に携わっている人が多いことが分かります。次いで専業主婦(専業主夫)、無職、会社経営・役員と続きますが、いずれも10%前後の割合となっています。
また、同アンケートによると回答者の年齢層は60歳以上が34.3%、50〜59歳が24%と中高年層が過半数を占めていますが、30〜39歳も19.8%となっており、資産形成層でも大家業を営んでいる人が一定数いるのが現状です。
大家業は辞めたほうがいいといわれる理由と対策
大家業は辞めたほうがいいといわれる理由としてはさまざまありますが、主に下記の5点が考えられます。
- 借入金が多くなる
- 家賃の値下げで収入がなくなる
- 入居者が集まらない
- 入居者トラブルの対応が大変である
- 失敗した投資物件は売却(損切り)も検討する
それぞれの理由と対策方法について、詳しくみていきましょう。
借入金が多くなる
先に挙げた国土交通省で実施した賃貸住宅管理業務に関するアンケートによると、大家業を営む人の賃貸物件の所有形態としては、アパートやマンションの所有が8割を占めています。アパートであれば1棟まるごと所有する人が多く、マンションであれば部屋単位で所有する人が多いです。
これらの賃貸物件を購入する際に、自己資金のみで調達するのは困難な場合は金融機関からの借入を活用するケースが多いですが、膨大な借金を抱えてしまうとイメージを抱きやすいでしょう。大家業で借入する場合は返済資金が家賃収入になるため、生活資金が減少してしまうことはないでしょう。
そもそも借入の審査時には収入などから返済能力があると認められて初めて借入ができます。そして、入居者から家賃が毎月安定して支払われるような仕組みができれば家賃収入が得られるので、返済が滞る心配はないでしょう。
家賃の値下げで収入がなくなる
所有物件の経年劣化や周辺環境の変化などにより、今までの家賃では入居者が集まらないといった状況になった場合は、家賃の値下げも必要になります。
しかし、物件をこまめにメンテナンスして新築とできる限り変わらない状態を保つことや、築古でも立地などによっては満室経営することも可能です。
大幅に値下げすることがない限りは空室率をおさえることで一定の収入が得られるため、収入が全くなくなる心配はないでしょう。家賃の値下げを行う場合には同じエリアの同条件の物件がどのくらいの家賃相場なのか、どのくらいの家賃収入があれば赤字にならずに経営できるか、あらかじめ損益分岐点をシミュレーションするのも対策の一つです。
入居者が集まらない
大家業を始めたものの入居者が集まらず費用ばかりがかさんでしまうと、大家業は辞めたほうがいいといわれるでしょう。物件の立地によっては環境の変化や入居ニーズの変化で入居者が集まりにくくなってしまうケースもあります。
そのため、物件を購入する際には学校や駅近といったアパートやマンションの入居ニーズがあるエリアを選んだり、単身者や家族連れなどニーズの高い属性に適した間取りの物件にしたりすると入居者が集まりやすいでしょう。
このように、物件の立地や入居者ニーズは重要ですので、購入を検討しているエリアに詳しい信頼できる不動産会社へ相談することをおすすめします。
入居者トラブルの対応が大変である
大家業を経営していると、入居者同士のトラブル発生につど対応するのが大変なイメージがあるのも辞めたほうがいいといわれる理由の一つです。
複数の住民がいるとトラブルはつきものですが、トラブルを放置していると退去者が増え、空室率の増加にもつながりかねません。
入居者同士のトラブルが発生した場合は早期に対応し、解決することが重要で、契約している管理会社と連携をとって対応したり、入居者の審査内容を見直したりといった対応でできるだけ入居者トラブルをおさえましょう。
失敗した投資物件は売却(損切り)も検討する
立地が悪く入居者が集まらなかったり、思ったよりも修繕費がかかったりしてある程度の収入が得られない場合は売却も検討しましょう。
入居者を集める対策方法を試してみても効果がみられず、収益が出ない物件を長く持ち続けると費用ばかりがかかってしまい、赤字を増やす原因になります。その場合は売却して損切りするのもよいでしょう。
売却のタイミングなどで迷ったときは不動産会社に相談してみましょう。
大家業を始める方法
大家業を始めるためには、まず大家とはどのようなもので主にどのような業務があるのかを知ることが重要です。
そして、大家になるための方法や必要な資格があるのかについて知ることで、具体的に大家業を始めようとアクションしやすくなります。ここでは、大家業を始める方法について詳しくみていきましょう。
大家とは?日々の業務内容も解説
そもそも大家とは、不動産物件を賃貸に出している貸主を指します。戸建て住宅のほか、マンションやアパートの1棟ごとまたは部屋単位で所有する場合も大家業に該当します。大家業の主な業務内容として、入居者の入退去に関連する業務と所有物件の維持管理業務があります。
入退去に関連する業務には、入居者の募集・審査、問い合わせ対応、家賃入金管理、契約手続き、退去後の原状回復などが挙げられます。また、所有物件の維持管理業務は、共有部分や空室になっている部屋の清掃、経年劣化や故障による損傷部分の修繕対応、設備や装置の点検などです。
大家業の業務は多岐にわたるため、不動産会社や管理会社に一部分を委託するケースもよくみられます。大家業に自身がどの程度携わるのか、委託するならどの程度コストが発生するのかをある程度見積もっておくとよいでしょう。
大家になる方法
大家になるためには、主に下記の6つのステップで進めていきます。
- 不動産投資に関する知識を身につける
- 業務を開始するための資金を準備する
- 資金計画を立案する
- 物件を探す
- 売買契約を締結する
- 入居者を募集する
まずは、不動産投資に関する知識を身につけるところからスタートします。不動産投資は収益を得るための物件探しのポイントから物件購入・所有・売却に関連する税金関係など、幅広い分野の知識が求められます。
これらの知識を身につけることで問題点の把握や改善、安定したキャッシュフローの実現につながるでしょう。次に、所有物件を購入するための資金を準備しましょう。アパートやマンションの1棟買いとなると、多額の資金が必要です。購入資金の1〜2割程度は自己資金を充当する必要があります。
物件購入資金が貯まったら、所有物件の資金計画を立案し、物件を探します。物件探しの際は希望のエリアの不動産会社へ相談してみるとよいでしょう。
希望の物件がみつかったら売買契約を締結し、入居者募集に至ります。大家業の開始時点から知識を身につけたり、資金計画を立案したりすることで大家業の経営が安定してくるでしょう。
必要な資格はあるのか?
大家業を始めるためには、特に必要な資格はありません。
ただし、業務が多岐にわたるため、賃貸不動産経営管理士や宅地建物取引士、管理業務主任者、簿記などの資格があると業務がスムーズに進められるでしょう。また、判断が必要な場面でも自身で決められるようになります。
この記事を書いた人
TERAKO編集部
小田急不動産
飯野一久
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