一棟買いしたアパートに自分で住むのは問題ない?メリットとデメリットも紹介

アパート一棟を購入後、自分で住もうと考える方は少なくありません。その際、自身が運営する賃貸物件に住むことができるのか、不安に思う方もいるはずです。
投資用物件であっても、自分が住むことで住宅ローン控除や相続対策といったメリットを得られます。
賃貸経営と居住を両立させるための要点や注意点を理解し、後悔しない判断を行いましょう。
この記事の目次
一棟買いしたアパートに自分で住む方法
結論からお伝えすると、一棟買いしたアパートに住むことは可能です。実際、多くのアパート経営者は自身の物件に住みながら賃貸経営を行っています
ここでは、一棟買いしたアパートに自分で住む2つの方法を紹介します。
賃貸併用住宅としてアパートに住む
1つ目は、「賃貸併用住宅としてアパートに住む」方法です。
賃貸併用住宅とは、建物内に賃貸部分と自宅部分が共存している住宅を指します。賃貸併用住宅の最大のメリットは、「住宅ローン」を利用できる可能性がある点です。
ローンの種類 | 使用用途 | 金利 |
---|---|---|
住宅ローン | 居住用不動産を購入する場合 | 1.5~3.6%(フラット35) |
不動産投資ローン | 投資用不動産を購入する場合 | 2~6% |
投資用不動産を運営する場合、投資用ローンを利用することになりますが、住宅ローンと比較して金利が高くなります。
一方、賃貸併用住宅は住宅ローン控除が利用できるため、総返済額を大きく抑えられるのが利点です。
アパートの一部を改装して住居にする
投資用として購入したアパートの一室を改装し、自らの住居として活用する方法もあります。
この場合、不動産投資ローンで購入した物件を自分で使用することになるため、事前に金融機関へ相談し、許可を得ておくことが必要です。
投資用ローンは「自己使用しない」という条件で融資されているケースが多く、無断で住み始めると契約違反とみなされ、ローンの一括返済を求められる可能性があります。
ただし、アパートの空室が一時的に発生し、あくまで仮住まいとして短期間だけオーナーが入居する場合は、許容されることもあるようです。
長期間の空室が続き、賃貸併用住宅として運用する際は、金融機関に相談のうえ判断することをおすすめします。
一棟買いしたアパートに自分で住むメリット
一棟買いしたアパートに自分も住む場合、生活面だけでなく、不動産投資としての収益や管理の効率化の点でもメリットがあります。
ここでは、一棟買いしたアパートに自分で住む主要なメリットを4つ紹介します。
家賃収入を毎月得られる
最大のメリットは、自宅に住みながら家賃収入を得られる点です。これは、マイホーム購入では実現できない、賃貸併用住宅ならではの強みといえます。
例えば、4戸のアパートを購入して1戸に自分が住み、残り3戸を家賃7万円で賃貸に出した場合、毎月21万円の家賃収入を得ることができます。
マイホーム購入では給与からローン返済や固定資産税、修繕費を支払わなければなりません。しかし、賃貸併用住宅の場合、入居者からの家賃収入で返済が可能です。
住宅ローンの控除が利用可能になる
賃貸併用住宅として建築・購入する場合、条件を満たせば住宅ローンの活用ができ、住宅ローン控除が適用される可能性があります。
住宅ローン控除とは、年末時点での住宅ローン残高の0.7%が所得税から控除される制度です。最大13年間にわたって適用され、控除しきれなかった分は、翌年の住民税から控除されます。
具体的に説明すると、3,000万円の住宅ローンを組んだ場合、年間最大21万円(3,000万円×0.7%)の税額控除を受けられます。そのため、13年間で合計273万円もの節税効果が期待できるのです。
ただし、住宅ローン控除を活用するには、以下の条件を満たさなければなりません。
- 建物全体に対して自宅部分の床面積が50%以上
- 新築または買取再販の物件で、床面積が40㎡以上
- 合計所得金額が2,000万円以下であること
不動産投資ローンの場合は控除や特例制度がないため、住宅ローンが適用できる場合は積極的に活用していきましょう。
参考:国税庁「No.1212 一般住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)」
相続税対策として活用できる
一般的に相続で分配される場合、現金と比較すると不動産は相続税評価額が下がる傾向があるため、節税効果が高いとされています。
不動産による相続税評価額の軽減効果は以下のとおりです。
- 土地:更地の約8割の評価額(貸家建付地評価)
- 建物:固定資産税評価額の7割の評価額(貸家評価)
加えて、自分で住んでいる場合は「小規模宅地等の特例」が適用されるケースもあるため、相続税の軽減幅がさらに広がる可能性があります。
「ご自身の財産を相続させたい」と考えている方にとって、アパートの一棟買いは有効な手段といえるでしょう。
参考:「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
入居者トラブルに対応しやすい
オーナーが同じ建物に住んでいることで、入居者トラブルに迅速に対応できるメリットがあります。
通常のアパート経営の場合、騒音トラブルや設備故障などが発生した場合、管理会社からの連絡を受けて現地に向かう必要があります。
一方、オーナーが同じ建物に住んでいれば、入居者同士の問題を即座に把握し、適切な対応を取ることが可能です。
特に以下のような場面に遭遇した場合、すぐに駆け付けてトラブル対応ができます。
- 夜間や休日の緊急トラブル対応
- 入居者同士のトラブル仲裁
- 設備の不具合確認や業者手配
- 共用部分の清掃や維持管理
さらに、入居者も「オーナーが見ている」という意識が働くため、騒音問題やゴミ出しルール違反などのトラブルが減少する傾向があります。
一棟買いしたアパートに自分で住むデメリット
一棟買いしたアパートに住むことにはメリットがある一方で、デメリットも存在します。投資判断を行う前に、リスクを十分に理解しておくことがアパート経営を成功させるポイントです。
ここでは、一棟買いしたアパートに自分で住む主要なデメリットを4つご紹介します。
家賃収入が安定して得られないことがある
アパート経営において最も大きなリスクが空室と家賃の滞納リスクです。空室期間が長引いたり、家賃収入が入ってこなかったりすると、ローンの支払い負担が増加してしまいます。
アパートで空室が発生する要因は以下の通りです。
- 物件の立地面
- 競合物件と比較した際の家賃帯
- 物件の築年数が古い
満室を想定して資金計画を立てていると、1部屋でも空室が出た瞬間に計画が崩れてしまいます。
総戸数が少ないアパートの場合、1部屋でも空室が出ると収益全体に与えるインパクトは非常に大きくなるため、空室リスクも考慮して収支計画を立てるとよいでしょう。
自分が住むため利益率が下がる
アパートの一室を自宅として使用すると、賃貸に回せる部屋数が減り、必然的に利益率が低下します。
全4戸で家賃7万円、購入価格が3,000万円の物件を全戸賃貸に出した場合と、1戸だけ自宅に利用した場合を比較してみました。
運用方法 | 賃貸戸数 | 年間収入 | 表面利回り |
---|---|---|---|
賃貸 | 4戸 | 336万円 | 11.2% |
自宅利用(1戸) | 3戸 | 252万円 | 8.4% |
表からわかる通り、自宅として利用することで投資効率が低下します。さらに、住宅ローンを利用するために自宅部分を50%以上にする場合、賃貸部分がさらに限られてしまうでしょう。
純粋な投資目的で考えると、自分で住むことは機会損失につながる可能性があります。
入居者とトラブルを起こす可能性がある
オーナーと入居者が同じ建物に住むことで、逆にトラブルが発生することがあります。
通常、大家と入居者は適度な距離感が保たれていますが、同じ建物に住むことで距離感が近くなり、以下のような問題が生じる可能性があります。
よくあるトラブル事例は以下のとおりです。
- 生活音に関する苦情の言い合い
- プライバシーの侵害と感じられる行為
- 入居者の生活スタイルへの過度な干渉
- 家賃値上げなどを交渉する際にばつが悪い
また、入居者側も「オーナーに監視されている」と感じてストレスを抱えることがあり、退去の原因となるケースもあります。
適切な距離感を保ちながら良好な関係を築くためには、適切なコミュニケーション能力が求められるでしょう。
一棟買いしたアパートに自分で住むときのポイント
一棟買いしたアパートに自分で住む場合は、事前準備と適切な運営が不可欠です。メリットを最大化し、デメリットをできるだけ抑えるための重要なポイントを解説します。
立地が良いアパートを購入する
アパート経営を成功させるためには、立地選定が欠かせません。なぜなら、立地が良ければ長期的に安定した賃貸需要が見込め、空室リスクを大幅に軽減できるからです。
特に賃貸併用住宅の場合、一般的な賃貸物件よりも入居者に敬遠される傾向があるため、立地条件の良さで差別化を図る必要があります。
以下のような条件を満たすアパートであれば、空室リスクを抑えて、資産価値も維持されやすくなります。
- 最寄り駅から徒歩10分以内
- 複数路線が利用可能
- 商業施設や病院などの生活利便施設が充実
- 治安が良く住環境も整っている
また、ターゲットとする入居者層を明確にすることも重要です。学生向けであれば大学の近く、ファミリー向けは学校や公園が近い立地を選ぶなど、需要に合わせた立地選定を行いましょう。
修繕費も考慮して返済計画を立てる
アパート経営では、ローン返済以外にも修繕費や固定資産税といったさまざまな維持費用がかかります。
特に修繕費は突発的に発生することが多いため、事前に資金計画に組み込んでおくことが重要です。
ローン返済以外にアパート経営で発生する主な費用を表にまとめました。
費用項目 | 年間目安額 | 備考 |
---|---|---|
修繕積立金 | 家賃収入の5~10% | 大規模修繕に備える |
管理費 | 家賃収入の3~5% | 管理会社委託の場合 |
固定資産税・都市計画税 | 固定資産税評価額の1.7% | 毎年発生 |
火災保険料 | 年間数万円~60万円 | 物件規模により変動 |
例えば、年間家賃収入が300万円の物件の場合、年間60〜90万円程度の維持費用を見込んでおく必要があります。
特に築年数が経過した中古アパートを購入する場合は、修繕費が高額になる可能性があります。購入前に建物診断を実施し、今後10年間の修繕計画と費用を具体的に算出しておきましょう。
この記事を書いた人
TERAKO編集部
小田急不動産
横溝 浩由
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