築古アパートはリノベーションと売却どちらが得?費用対効果・判断基準を解説
築古アパートは築年数の経過とともに空室や家賃下落に悩まされやすく、リノベーションと売却のどちらを選ぶべきか迷うオーナーは少なくありません。リノベーションの判断基準と費用相場を整理して解説します。
この記事の目次
築古アパートは築年数の経過とともに空室や家賃下落に悩まされやすく、リノベーションと売却のどちらを選ぶべきか迷うオーナーは少なくありません。リノベーションの判断基準と費用相場を整理して解説します。
築古アパートはリノベーションすべき?確認すべき判断基準
築古アパートの改善策を検討する際は、まず建物の状態や立地条件を見極めることが出発点になります。同じ築年数でも、収益改善の余地があるかどうかは物件ごとに大きく異なるためです。
築古でも収益改善が期待できるケース
駅から近い、周辺の賃貸需要が安定しているといった立地条件がそろっている場合、リノベーションによって収益を大きく伸ばせる可能性があります。総務省統計局が公表した「令和5年住宅・土地統計調査」によると、全国の住宅の空き家率(賃貸・売却用・別荘等すべて含む)は13.8%とされていますが、駅近など好立地の物件であれば、内装や設備の刷新だけで平均を大きく下回る空室率まで改善した事例も見られます。
柱や梁などの構造体に大きな劣化がなく、給排水管や電気系統の交換で対応できる状態であれば、リノベーションによる収益改善の余地は十分にあると考えられます。
リノベーションでは改善が難しいケース
一方、賃貸需要そのものが縮小しているエリアでは、内装をどれだけ刷新しても入居率の改善につながりにくい場合があります。
国立社会保障・人口問題研究所の「日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)」によると、2025年の人口指数(2020年を100とした場合)は東京都で102.9とされる一方、秋田県では78.3にとどまり、2050年には58.4まで低下する見通しです。
人口減少が進むエリアでは、リノベーションの効果よりも構造的な需要不足の影響が上回ることも珍しくありません。土台のシロアリ被害や旧耐震基準の建物である場合も、補強費用が想定以上にかさみ、投資回収が難しくなるケースがあります。
リフォーム・リノベーション・建て替えの違い
リフォームは老朽化した部分を新築時の状態に戻す工事を指すのに対し、リノベーションは既存の建物に新しい価値を加え、現代のニーズに合わせて間取りや設備をつくり替える工事です。
建て替えとの違いは、柱や梁といった構造体をそのまま活用する点にあり、解体して一から建て直すよりも費用を抑えられます。工事の規模や目的に応じて、どの手法が最適かを見極めることが重要です。
築古アパートをリノベーションするメリット
判断基準を踏まえたうえで、実際にリノベーションを行うとどのような効果が見込めるのか、具体的なメリットを見ていきます。
空室率の改善につながる
老朽化した外観や設備は、木造・軽量鉄骨造のアパートで空室が長期化する要因になりやすいとされています。
内装や共用部を刷新することで内見時の印象が改善し、空室率の低下につながる可能性があります。特にエアコンや宅配ボックスなど、入居希望者が重視する設備を優先的に導入することで、比較的短期間で成約につながるケースもあります。
家賃アップが期待できる
築年数の経過にともなって家賃相場は下がりやすくなりますが、リノベーションによって内装や設備を一新すれば、築年数が近い競合物件よりも高い家賃設定が可能になります。
周辺相場との比較を踏まえたうえで、適正な家賃アップ幅を見極めることがポイントです。
物件価値・競争力が向上する
外観や共用部を含めた一棟リノベーションを行えば、建物全体の印象が変わり、周辺の競合物件との差別化を図ることが可能です。
老朽化が目立っていた物件でも、新築に近い状態まで再生できれば、資産としての評価額を維持しやすくなります。
長期入居につながりやすい
設備の使い勝手や住環境の快適性は、入居者が退去を検討する大きな要因のひとつです。水回りや収納スペースの改善によって満足度が高まれば、入退去のサイクルが緩やかになり、空室期間の短縮や募集コストの削減にもつながります。
築古アパートのリノベーション費用相場
リノベーションの効果を確認したところで、実際にどの程度の費用がかかるのか、工事の範囲別に相場を整理します。
一室リノベーションの費用
一室単位のリノベーションでは、工事箇所によって費用の幅が大きく異なります。主な工事内容と費用相場は次のとおりです。
| 工事内容 | 費用相場 |
|---|---|
| キッチン(セパレートタイプ) | 15万円〜30万円 |
| キッチン(システムキッチン) | 30万円〜80万円 |
| 浴室のリノベーション | 50万円〜150万円 |
| 洗面台の交換 | 20万円〜30万円 |
| トイレの改修 | 10万円〜20万円 |
和室から洋室への変更は、畳の張り替えだけでなく押入れのクローゼット化や建具の交換も含めると、1部屋あたり50万円〜80万円程度が目安になります。
一棟リノベーションの費用
一棟まるごとリノベーションする場合、1戸あたり120万円〜400万円程度が相場とされ、10戸のアパートであれば1,200万円〜4,000万円ほどの費用がかかります。
延床面積300〜400㎡程度で設備や間取りを現代風に一新する中程度の工事であれば、3,000万円前後を目安とする例もあります。木造や鉄骨造など建物の構造によっても、間取り変更のしやすさや費用に差が生じる点に留意が必要です。
外壁・共用部リニューアル費用
外壁塗装は建物の第一印象を左右する工事であり、一般的な2階建てアパートで150万円〜300万円が目安になります。共用廊下の床材変更や自転車置き場の整備なども、比較的少額で内見時の印象アップにつながる施策です。
設備交換費用の目安
給排水管や電気系統といった目に見えない設備は、老朽化が進むほど交換費用が高額になります。着工前のインスペクションで劣化箇所を正確に把握しておくことが、想定外の追加費用を防ぐポイントになります。
費用を抑える方法
費用を抑える工夫としては、次のような方法が挙げられます。
- 空室になった部屋から順次工事を進め、立ち退き料の発生を避ける
- 耐震補強や省エネ改修に対する自治体の補助金制度を活用する(補助率1/2〜2/3程度の例もあり)
- 複数の施工会社から見積もりを取り、同条件で比較する
- 入居者自らが改修できるDIY型賃貸借を取り入れる
補助金の内容は自治体によって異なるため、事前に窓口やホームページで確認しておくと安心です。
入居率アップにつながる人気のリノベーション事例
費用相場を踏まえたうえで、実際にどのようなリノベーション内容が入居率アップに結びついているのか、具体的な事例を紹介します。
和室から洋室への変更
畳の部屋は家具やベッドを置くと凹みが生じやすく、退去時の原状回復費用が高くなるイメージから敬遠される傾向があります。フローリングの洋室に変更することで内見時の印象が良くなり、検討候補として選ばれやすくなります。
2DK・2Kから1LDKへの間取り変更
築年数が古いアパートでは、2Kや2DKといった和室中心の間取りが現代のライフスタイルに合わなくなっているケースが少なくありません。水回り設備や内装もあわせて1LDKへ改装することで、部屋の使い勝手が向上し、成約までの期間短縮が期待できます。単身者向けからファミリー層向けへとターゲットを変更できる点も、間取り変更の大きな利点です。
独立洗面台・バストイレ別
風呂とトイレが共同だった古いアパートでも、各居室にトイレとシャワーを設置することで、モダンな住まいへと生まれ変わらせることができます。洗面台を独立させることで、朝の身支度が重なる時間帯でも使い勝手が良くなり、入居者の満足度向上につながります。
無料Wi-Fi・宅配ボックス
インターネット無料や宅配ボックスは、比較的低コストで導入できるうえに、入居希望者の設備選びで重視される項目でもあります。既存の周辺物件との差別化を図るうえで、優先度の高い投資先といえます。
スマートロック・防犯設備
スマートロックをはじめとする防犯設備の導入は、単身女性やファミリー層からの評価が高く、内見時の安心材料としても訴求力があります。鍵の受け渡しが不要になることで、管理業務の効率化にもつながります。
外観・エントランスの刷新
外壁塗装や共用部のリニューアルによって建物全体の印象を良くする施策は、内見時の第一印象を左右する重要な要素です。エントランス周りを含めた刷新は、家賃アップの根拠としても説明しやすい投資になります。
築古アパートはリノベーションと売却どちらが得?

費用対効果の観点から、リノベーションと売却のどちらが有利になるかは物件の状況によって変わります。それぞれの判断基準を整理します。
リノベーションがおすすめのケース
構造体に大きな劣化がなく、立地条件が良好で賃貸需要が見込めるエリアであれば、リノベーションによって収益性を回復できる可能性が高いでしょう。空室率が年単位で10%を超えている場合は、リノベーションを検討するひとつの目安です。
長年その土地で賃貸経営を続けてきたオーナーは、周辺環境やターゲット層の変化を把握しやすい立場にあり、この強みを活かせる点もリノベーションのメリットです。
売却がおすすめのケース
賃貸需要が構造的に縮小しているエリアや、建物の劣化が進みすぎて改修費用が投資回収を上回ると見込まれる場合は、早期の売却を検討したほうが資産を有効に活用できることがあります。将来的な維持管理コストの増加を見込んだうえで、売却額とリノベーション後の収益見込みを比較する視点が欠かせません。
建て替えとの違い
建て替えは構造体ごと解体して新築するため、耐震性や間取りの自由度は最も高くなりますが、費用も最も高額になります。リノベーションは構造体を活かせる分コストを抑えられる一方、耐震基準や用途変更の制限を受ける場合がある点に注意が必要です。
売却も含めた3つの選択肢を、費用・工期・将来の資産価値の観点から比較検討することが望ましいといえます。
収益性・将来性で比較するポイント
比較の際は、リノベーション後に見込まれる家賃収入とローン返済・運用コスト・空室率を含めたシミュレーションを行うことが重要です。
金融機関の融資条件や利回りにも直結するため、具体的な数字をもとに検討する姿勢が求められます。売却する場合は、現在の資産価値と将来の値下がりリスクを踏まえたうえで、タイミングを見極める必要があります。
売却を検討した方がよい築古アパートの特徴
最後に、リノベーションよりも売却を優先したほうがよいと考えられる築古アパートの特徴を整理します。
大規模修繕費が高額になる
給排水管や電気系統の全面交換、耐震補強、外壁・屋根の防水工事など、複数の大規模修繕が重なると、費用が数千万円規模に膨らむことがあります。修繕費が今後見込める収益を上回ると判断される場合は、売却によって資産を現金化したほうが合理的な選択になる場合があります。
空室が長期間改善しない
内装や設備を改善しても入居率が回復しない状態が続く場合、立地や賃貸需要そのものに問題がある可能性があります。リノベーションによる改善効果よりも構造的な需要不足の影響が大きいと考えられ、売却による出口戦略を検討する時期にきているといえます。
賃貸需要が低下しているエリア
国立社会保障・人口問題研究所の推計では、全国の世帯総数は2030年の5,773万世帯をピークに減少へ転じ、2050年には5,261万世帯まで減少する見込みとされ、都市部以外では賃貸需要が構造的に縮小していく傾向にあります。
人口1万人以下の市町村では空室率20〜30%が常態化しつつあるエリアも見られ、こうした地域ではリノベーション費用の回収が難しくなりやすい点に注意が必要です。
相続・資産整理を検討している
相続や資産整理のタイミングが近い場合、リノベーションによる収益改善よりも、売却によって資産を分割しやすい形に整えるほうが合理的な場合があります。将来の相続人にとって、老朽化した建物の管理負担を引き継がせるよりも、現金化された資産のほうが扱いやすいケースは少なくありません。
今後も維持管理コストの増加が見込まれる
築年数が経過するほど、修繕や設備更新の頻度は高くなる傾向にあります。今後10年、20年というスパンで見たときに維持管理コストが収益を圧迫し続けると見込まれる場合は、早めに売却を選択肢に入れておくことで、資産価値の目減りを防ぎやすくなります。リノベーションと売却、それぞれのメリットとリスクを数字で比較しながら、自身の物件に合った判断を下すことが大切です。
この記事を書いた人
TERAKO編集部
小田急不動産
二本松 敏
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