不動産投資
2026.06.29

ビルの解体費用はいくら?構造別の相場・見積もり内訳・安くする方法を解説

ビルの解体費用はいくら?構造別の相場・見積もり内訳・安くする方法を解説

老朽化したビルの解体を検討する際、まず気になるのが費用の全体像です。ビルの解体費用は構造・規模・立地条件によって大きく異なり、数百万円から数千万円を超えるケースまで幅があります。

アスベストや地下構造物の有無など、追加費用が生じる要因も多いため、事前に相場感を把握しておくことが重要です。

この記事の目次

老朽化したビルの解体を検討する際、まず気になるのが費用の全体像です。ビルの解体費用は構造・規模・立地条件によって大きく異なり、数百万円から数千万円を超えるケースまで幅があります。

アスベストや地下構造物の有無など、追加費用が生じる要因も多いため、事前に相場感を把握しておくことが重要です。

ビルの解体費用の相場はいくら?

ビルの解体費用は、「坪単価×延床面積」を基本に算出されます。坪単価の中には本体の解体工事費と廃材処分費が含まれており、建物の構造によって単価の水準が変わります。まずは構造別・階数別の目安を確認したうえで、費用シミュレーションに進みましょう。

構造別の坪単価相場

ビルに用いられる主な構造は、鉄骨造(S造)・鉄筋コンクリート造(RC造)・鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の3種類です。使われている素材の強度が上がるほど解体の難易度も高まり、坪単価は上昇する傾向にあります。

鉄骨造(S造)の解体費用相場

鉄骨造(S造)の坪単価相場は3万5,000〜5万円程度です。

3種類の構造の中で廃材量が最も少なく、比較的コストを抑えやすい構造です。耐用年数は50〜60年に設定されています。老朽化に悩む既存ビルの多くがS造であることも、この構造の解体事例が多い理由の一つです。

鉄筋コンクリート造(RC造)の解体費用相場

RC造の坪単価相場は4万〜8万円程度です。

鉄骨とコンクリートが一体化した構造のため、解体時には鉄筋の本数や状態が外部から把握しにくく、解体費用が当初の見積もりより増減しやすいという特徴があります。中低層のビルやマンションに多く用いられており、RC造は明治期から導入されていましたが、1923年の関東大震災を契機に耐火・耐震性能が評価され、日本で広く普及しました。税法上の法定耐用年数は47年に設定されているため、近年になって老朽化が問題になるケースが増えています。

鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の解体費用相場

SRC造の坪単価相場は4万5,000〜9万円程度です。

鉄骨とコンクリートを組み合わせた最も強固な構造であり、高層マンションや大規模ビルに採用されます。解体時には特殊な重機や工法が必要になるケースが多く、業者によっては料金を公開せず、現地調査のうえで個別見積もりとしているところも少なくありません。

階数別の解体費用の目安

解体費用は延床面積に比例するため、階数が増えるほど総費用は大きくなります。重機の搬入経路の確保や廃材の搬出に要する手間も、高層になるほど増加します。階数別のおおよその費用感を把握しておくと、資金計画の精度が上がります。

3階建てビルの場合

3階建てのビルは比較的小規模なケースに分類され、延床面積は60〜100坪程度が多い水準です。S造であれば200万〜500万円、RC造であれば300万〜800万円程度が目安となります。重機も標準的なサイズで対応できるケースがほとんどで、工期は1〜2カ月程度です。

5階建てビルの場合

5階建てになると延床面積も150〜250坪規模になることが多く、S造で500万〜1,200万円、RC造で700万〜2,000万円が目安です。廃材の量が増えることに加え、足場・養生の規模も大きくなるため、仮設費用も相応に発生します。工期はS造で1〜2カ月、RC造で1.5〜3カ月程度が一般的です。

10階建て以上のビルの場合

10階建て以上の高層ビルになると解体費用は数千万円〜数億円規模に達します(参考:優伸コーポレーション https://www.yuushin-kaitai.com/price/yc/y-building/yb-building )。廃材や瓦礫が大量に出るため重機やダンプカーの手配も複数台必要になるうえ、杭抜き工事が発生するケースも多く、費用は個別条件によって大きく変わります。SRC造の場合は特に専門的な解体工法が求められるため、必ず複数業者から個別の現地調査付き見積もりを取得することが重要です。

延床面積ごとの解体費用シミュレーション

以下は「坪単価×延床面積」で試算した目安です。あくまで参考値であり、立地・アスベストの有無・地下構造物の状況などによって実際の費用は大きく変動します。

構造 坪単価の目安 延床50坪 延床100坪 延床200坪
S造 3.5〜5万円 175〜250万円 350〜500万円 700〜1,000万円
RC造 4〜8万円 200〜400万円 400〜800万円 800〜1,600万円
SRC造 4.5〜9万円 225〜450万円 450〜900万円 900〜1,800万円

ビルの解体費用を左右する6つの要因

坪単価はあくまでも基準値に過ぎず、実際の費用は現場の状況によって上下します。以下の6つの要因が、見積もり金額に直結する主な変動要素です。

建物の構造

前節で触れたとおり、構造の強度が上がるほど解体の難易度は高まります。

RC造やSRC造はコンクリートと鉄筋が強固に一体化しているため、専用の重機や手間が増え、廃材の処分費用も割高になります。RC造では、コンクリート内部の鉄筋の配置や状態を外部から確認しにくいため、工事中に想定外の作業が発生し、追加費用につながる場合があります。

建物の規模・階数

延床面積が大きくなれば廃材量も増え、費用は比例して上昇します。加えて、高層ビルでは廃材の搬出方法や重機の設置に特別な配慮が必要です。

クレーンで廃材を吊り下げる作業や、上層階から下層階へと段階的に取り壊していく工程が加わることで、工期も延長されます。

立地条件や重機搬入のしやすさ

隣接する建物との距離が狭い場合や、前面道路の幅員が限られる場合は、大型重機の搬入が制限されます。

こうした現場では手作業の工程が増えるため人件費がかさみ、必然的に費用は上がります。都市部では地代や交通整理員の手配費用も発生しやすく、地方物件より割高になる傾向があります。

アスベストの有無

2006年以前に建設された建物では、アスベスト含有建材が使用されている可能性があります。特に1975年以前の建物では、吹付けアスベストが使用されていたケースもあるため、事前調査が重要です。

通常の解体費用に加えて除去費用が上乗せされ、飛散性のレベルに応じて費用は大幅に増加します。アスベストが確認された場合には必ず適切な処理が求められるため、事前調査の結果を踏まえた見積もりが不可欠です。

地下構造物・杭の撤去

地下室や基礎杭が存在する場合、その撤去費用が別途発生します。特に杭は地中深くまで打ち込まれているケースが多く、大型建築物ほど撤去作業が大規模になります。

地下構造物の撤去は地上部の解体費用と同程度、あるいはそれ以上の費用がかかることもあるため、見積もり依頼の際には地下の状況も必ず伝える必要があります。

残置物や設備の処分量

テナントが使用していた什器・OA機器・厨房設備などが残っている場合、産業廃棄物として別途処分費用が発生します。エレベーターや空調設備などの大型設備は特に処分コストが高く、事前に撤去しておくことで費用を抑えられる場合があります。

ビル解体で発生する追加費用の内訳

解体工事の見積書には「本体工事費」以外のさまざまな費用項目が含まれます。追加費用の内訳を事前に理解しておくことで、見積もりの比較がしやすくなり、後からの想定外の請求も防ぎやすくなります。

アスベスト除去費用

アスベスト処理面積 除去費用
300㎡以下 2.0万円/㎡ ~ 8.5万円/㎡
300㎡~1,000㎡ 1.5万円/㎡ ~ 4.5万円/㎡
1,000㎡以上 1.0万円/㎡ ~ 3.0万円/㎡

アスベストの除去費用は、飛散性のレベルによって異なります。国土交通省の公開データによると、処理面積300㎡以下の場合で1㎡あたり2万〜8.5万円が目安とされています(参考:国土交通省「アスベスト対策Q&A」 )。処理面積300〜1,000㎡では1.5万〜4.5万円程度と、面積が広くなるほど単価は低下する傾向があります。事前調査費用として4万〜13万円程度が別途かかることも想定しておく必要があります。

地下埋設物の撤去費用

地下に埋設された配管・浄化槽・貯水タンクなどの撤去費用は、規模や材質によって異なります。比較的小規模なものであれば数十万円程度ですが、大型の地下タンクや配管が多い場合には100万円を超えることもあります。解体着工後に想定外の埋設物が発見されるケースもあるため、事前の地盤・地下状況の確認が重要です。

杭抜き工事費用

基礎杭の撤去費用は、杭の種類・本数・深さによって大きく変わります。

一般的な鋼管杭や既製コンクリート杭の場合、杭の種類や深さによって異なりますが、数万円~数十万円程度/本が目安となり、大規模建築では総額が数百万円以上になるケースもあります。なお、杭を地中に残置する方法を選択する場合には撤去費用を抑えられることもありますが、その後の土地利用に制約が生じる場合があるため、売却や再建築の計画と合わせて判断が必要です。

残置物処分費用

建物内部に残された什器・設備・廃棄物は、産業廃棄物として適切に処分しなければなりません。残置物の量・種類・重量によって費用は変わりますが、数十万〜数百万円程度が想定されます。事前に施主側が残置物を処分しておくことで、この費用を抑えることができます。

足場・養生費用

解体工事中の粉塵・騒音・廃材の飛散を防ぐために、足場と養生シートの設置が義務付けられています。費用はビルの規模によって異なり、小規模なビルで数十万円、大規模になると100万円以上かかるケースもあります。

各種申請・届出費用

解体工事には複数の行政手続きが伴います。書類作成を業者に代行依頼する場合には、代行費用が加算されます。届出の種類と費用については次章で詳しく解説します。

ビル解体工事の流れと工期の目安

ビルの解体工事は、現地調査から最終的な整地・引き渡しまでいくつかのフェーズを経て進みます。全体の流れを把握することで、工事開始から完了までのスケジュールを見通しやすくなります。

事前調査

解体に先立ち、建物の構造・アスベストの有無・地下埋設物の状況などを確認する事前調査が行われます。アスベスト調査は2023年10月以降、有資格者(一般建築物石綿含有建材調査者等)による実施が義務化されています。

この調査結果をもとに、具体的な解体工法や追加工事の範囲が決定されます。

見積もり取得

事前調査の結果を踏まえ、解体業者から正式な見積もりを取得します。

見積書には本体工事費・廃材処分費・追加費用の各項目が明示されているかを確認しましょう。断面図や設計図がある場合は業者に提供することで、より精度の高い見積もりが得られます。複数の業者から相見積もりを取ることが費用節減の基本です。

各種届出

解体工事を開始するには、法令に基づく各種届出が必要です。建設リサイクル法に基づく届出は工事着工の7日前までに、アスベスト除去が伴う場合は14日前までに関係機関への届出が必要になります。詳細は次章で解説します。

解体工事

工事は内装の撤去から始まり、上層階から順に解体していくのが基本的な流れです。廃材は素材ごとに分別され、産業廃棄物として適法に処分されます。S造の解体期間は小〜中規模のビルで半月〜2カ月程度、RC造では半月〜3カ月程度、SRC造では1〜3カ月程度が目安です。

整地・引き渡し

解体工事が完了したら、敷地の整地(地面を平らに均す作業)を行い、施主に引き渡されます。整地費用は解体費用に含まれているケースと別途計上されるケースがあるため、見積書の確認が必要です。引き渡し後は建物滅失登記の申請(解体後1カ月以内)が必要になります。

ビル解体前に必要な手続き

ビルの解体工事は着工前に複数の法的手続きを経る必要があります。手続きを怠ると工事停止や罰則の対象となる場合があるため、スケジュールを逆算して早めに準備を進めることが重要です。

建設リサイクル法の届出

床面積の合計が80㎡以上の建築物の解体工事は、建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)に基づき、工事着手の7日前までに都道府県知事への届出が必要です。届出書には工事の概要・解体方法・廃材の処理方法などを記載します。

アスベスト事前調査と報告義務

2022年4月の大気汚染防止法改正により、解体部分の床面積が80㎡以上の解体工事については、アスベストの有無に関わらず事前調査の結果を行政機関に報告することが義務化されました。

報告は原則として電子申請(石綿事前調査結果報告システム)を通じて行います。2023年10月以降は有資格者による調査が義務化されており、調査者の資格要件にも注意が必要です。アスベストが確認された場合(レベル1・2)には、工事着手14日前までに労働基準監督署および都道府県への別途届出も必要になります。

ライフライン停止手続き

解体工事に先立ち、電気・ガス・水道・通信などの各ライフラインの停止手続きを行う必要があります。各事業者への連絡は工事開始の数週間前から行うのが一般的です。特にガスの閉栓は専門業者による作業が必要なため、早めに手配しておきましょう。

近隣住民への説明と挨拶

法的な義務ではありませんが、工事開始前に近隣住民や施設への説明・挨拶を行うことが不可欠です。解体工事は騒音・振動・粉塵が避けられないため、事前に工事期間・工事内容・連絡先を丁寧に伝えておくことがトラブルの防止につながります。

一般的には隣接地や工事車両の通行経路沿いの住民・事業者を中心に挨拶を行います。ビルの規模によっては、より広い範囲への説明が必要となる場合があります。

ビル解体費用を安く抑える方法

ビルの解体費用は適切な準備と業者選びによってある程度抑えることができます。費用削減に効果的な方法を4つ紹介します。

複数業者から相見積もりを取る

解体費用は業者によって大きく差が出ます。同じ条件の建物でも、業者の得意とする工法や設備・処分ルートの違いによって、見積もり金額に数十万〜数百万円の差が生じることがあります。最低でも3社以上から相見積もりを取り、金額だけでなく工事内容の詳細や業者の実績も比較することが重要です。

残置物を事前に処分する

建物内部の残置物(什器・設備・廃棄物など)を施主側で事前に処分しておくことで、解体業者への処分委託コストを削減できます。産業廃棄物として処理が必要なものと一般廃棄物として処理できるものを分類し、適法な方法で処分することが前提ですが、業者に一括依頼するよりコストを抑えられるケースがほとんどです。

補助金・助成金を活用する

老朽化建築物の除却やアスベスト除去工事を対象とした補助金・助成金制度が、一部の自治体で設けられています。たとえば東京都内では、アスベスト除去工事に関する助成制度が各区市でそれぞれ設定されており、文京区では1,000㎡以上の集合住宅を対象に除去等工事費の6分の5・上限500万円が補助されます(参考:東京都市整備局「東京都内アスベスト補助制度一覧(除去等工事)」 )。制度の内容は自治体ごとに異なるため、工事前に管轄の自治体窓口に確認することをお勧めします。

解体専門業者へ直接依頼する

ゼネコンや不動産会社を介してではなく、解体を専門とする業者に直接依頼することで、中間マージンを省いたコストでの工事が可能になります。

専門業者は解体工事に特化した機材・ルート・ノウハウを持っているため、工事品質を保ちながらコストを抑えられるケースが多くなります。業者選びの際は、解体工事業の許可(建設業許可)を有していること、過去の実績が確認できることを必ず確かめましょう。

解体前に確認。売却した方が得なケース

費用をかけて解体することが必ずしも最善の選択とは限りません。場合によっては、解体せずに売却する方が経済的なメリットが大きいケースもあります。解体前に売却の可能性を検討することも重要な判断の一つです。

解体せずに現況のまま売却できるケース

一定の耐用年数が残っており、内部の状態も比較的良好な場合は、現況のまま売却できる可能性があります。買主が自らリノベーションや用途変更を希望しているケースでは、解体せずとも売却が成立することがあります。解体費用の負担を避けながら売却益を得られる点で有利です。

収益物件として売却できるケース

テナントが入居中、もしくは一定の稼働率を維持している状態であれば、収益物件として投資家に売却できる可能性があります。空室率が高い場合でも、立地や建物の規模次第では収益物件としての需要が見込めるため、不動産会社に査定を依頼してみる価値があります。

古ビル付き土地として売却するケース

解体費用を「値引き要素」として売却価格に織り込み、建物付きのまま売却する方法もあります。買主が自ら解体・建替えを行う場合、解体費用相当額を差し引いた価格で取引が成立するケースがあります。この方法では解体費用の直接支出を避けられるため、手元資金の負担を軽減できます。

再開発エリアで高値売却できるケース

大規模再開発が進むエリアでは、土地の需要が高まり、老朽化したビルであっても高値での売却が期待できる場合があります。再開発事業への参画を求めるデベロッパーや、隣接地との一体開発を狙う買主からの引き合いが強い場合は、解体前に売却の可能性を不動産会社や再開発事業者に相談することで、より有利な条件を引き出せることがあります。

 

この記事を書いた人

著者写真 TERAKO編集部
小田急不動産
二本松 敏

小田急グループの総合力を活かしながら、これまで幅広く不動産実務を経験して参りました。現在は、本社営業センターの責任者を務めております。私たちの発信が人生100年時代の選択肢を広げるきっかけになれれば大変うれしく思います。 著者の記事一覧はコチラ
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