アパートの売却価格はいくら?自分でできる計算方法と高く売るコツ
アパートの売却を検討する際、自分の物件が「いくらで売れるのか」は最も気になるポイントです。不動産会社に査定を依頼する前に、大まかな売却価格を把握しておくと、提示された査定額が妥当かどうか判断しやすくなります。
アパートの売却価格は、自分でもおおよその金額を算出できます。また、立地や築年数、利回りなど複数の要因によって決まるため、その仕組みを理解しておくことで、より適切な価格設定ができるでしょう。
この記事の目次
アパートの売却価格を自分で計算する方法
所有するアパートの売却価格を自分で把握しておくと、不動産会社が算出した査定額の妥当性を判断したり、売却計画を立てたりする際に役立ちます。
不動産の価格を査定する方法は以下の3つです。
- 収益還元法
- 原価法
- 取引事例比較法
それぞれわかりやすく解説します。
収益還元法
収益還元法とは、不動産が将来生み出す収益を基に価格を算出する方法です。投資用物件であるアパートの査定でも活用されており、収益から現在の価値に還元して不動産価格を見積もれます。
収益還元法には2種類あります。
- 直接還元法
- DCF法
直接還元法は、1年間の純収益を還元利回りで割って価格を求める方法です。
【直接還元法の計算式】
- 評価額=1年間の純利益 ÷ 還元利回り
この計算における純利益とは、家賃収入から管理費や税金などの支出を差し引いた金額です。還元利回りは、不動産に投資した場合に、投資家が期待する年間利回りを指します。アパートなどの賃貸用住宅の場合、5〜8%程度が目安です。
賃貸アパートや区分マンションなど、収益が比較的安定している物件では、売却価格を計算する際に直接還元法が多く用いられます。
もうひとつのDCF法(ディスカウント・キャッシュフロー法)は、将来の収益を年ごとに予測し、現在の価値に換算して積み上げる方法です。

引用:国土交通省|不動産鑑定評価基準
再開発地域や将来的に賃料の上昇や下落が見込まれるエリアなど、収益が将来変動する前提がある場合は、DCF法のほうがより実態に近い評価が求められます。より精緻な分析が可能ですが計算が複雑なため、不動産鑑定士などの専門家に依頼して算出してもらうケースが一般的です。
このように、物件の状況によって2つの計算方法を使い分けます。賃料が安定している物件は直接還元法、将来の収益変動が見込まれる物件はDCF法を使用するとよいでしょう。
原価法
原価法は、建物そのものの価値に着目した査定方法です。「今と同じ建物を現在新築した場合にいくらかかるか」という再調達価格をベースに、築年数による価値の減少(減価修正)を考慮して算出します。
【原価法による建物の計算方法】
査定額=再調達価格×残存年数÷耐用年数
※再調達価格=㎡単価 × 延床面積
再調達価格とは、対象となる建物を現在新しく建築した場合の費用です。構造別の標準的な㎡単価に建物の延床面積を掛けて計算します。ただし、構造別単価は不動産会社や金融機関によって基準が異なるため、実際の査定額と差が出ることがあります。

参考:国税庁| 建物の標準的な建築価額表
延床面積は建物全体の床面積を指し、残存年数は、耐用年数から築年数を差し引いた値です。
この計算における耐用年数は、不動産などの固定資産において会計上の資産価値が残る期間を指します。建物が経済的に利用できる期間の目安であり、建物の構造や用途に応じて変動します。

引用:国税庁|主な減価償却資産の耐用年数表
原価法の計算方法
具体例を挙げて、原価法で木造アパートの評価額を算出します。
【具体例】
- 建物の構造:木造住宅アパート
- 築年数:10年(平成28年完成)
- 延床面積:140㎡
- 平成28年の木造建築の1㎡単価:165,900円
- 木造の耐用年数:22年
【原価法の計算式】
評価額=165,900円×140㎡×12年÷22年=12,668,727円
原価法は、建物の構造や延床面積、築年数がわかれば簡単に算出することが可能です。
取引事例比較法
取引事例比較法とは、実際に売買された類似物件の価格をもとに、対象物件の価格を算出する方法です。市場で成立した価格を参考にするため、実勢価格に近い水準で把握できるという特徴があります。
計算する場合は、成約した類似物件の㎡単価を基準に、売却する予定の延床面積をかけて算出します。
【計算するときの流れ】
- 類似アパートの成約価格を調べる※同じエリア内が望ましい
- ㎡単価を算出する(成約価格 ÷ 延床面積)
- 対象のアパートに当てはめて算出する
実際に以下の設定で取引事例比較法を用いて計算します。
【具体例】
- 近隣で成約した木造アパート
- 成約価格:18,000,000円
- 延床面積:120㎡
- 売却する物件の延床面積:140㎡
始めに㎡単価を求めます。
18,000,000円 ÷ 120㎡ = 150,000円/㎡
次に、売却する物件の延床面積に㎡単価をかけて算出します。
150,000円 × 140㎡ = 21,000,000円
類似物件は築年数が同等だった場合、より正確な査定金額を算出することが可能です。ただし、駅からの距離や空室の有無などのマイナス要因が多くなれば減額補正され、逆に角地や満室経営などのプラス要因があれば増額されることがあります。
取引事例比較法は、市場の相場観をつかむのに適した方法ですが、収益面の細かな違いまでは反映しにくいため、アパート売却では収益還元法とあわせて検討されることが多いです。
アパートの売却価格を決める重要な要素
アパートの売却価格は、さまざまな要素が複合的に絡み合って決まります。特に影響が大きいものについて詳しく解説します。
事前に把握しておくことで、売却前に価値を高める対策を取ることができるでしょう。
立地条件
立地条件は、アパートの売却価格に最も大きな影響を与える要素のひとつです。最寄り駅からの距離や交通アクセスの良し悪し、病院・学校などまでの距離も価格を左右するポイントとなります。
特に賃貸需要の高い都市部や大学の周辺、オフィス街があるエリアのアパートは、安定した入居率が見込めるため、売却価格は上昇しやすい傾向です。一方、郊外や地方、駅から遠い物件は、賃貸需要の低下とともに価格も下がりやすくなります。
築年数
築年数が経過するほど建物の劣化が進み、修繕費がかさむため、一般的に売却価格は下がる傾向があります。
特に木造アパートの場合、22年の法定耐用年数を過ぎると建物の帳簿上の価値はゼロとなり、金融機関の融資評価に影響します。融資が通りにくくなると買い手が限定されるため、売却価格は下がりやすくなるのです。
ただし、大規模リフォームや耐震補強工事を実施している場合は、築年数の影響をある程度緩和できるケースもあるので、売却戦略の一つとして考えられています。
利回り
アパートの売却価格は、利回りが売却価格を左右する要素のひとつです。利回りとは、投資金額に対する年間収益の割合のことです。数値が高くなるほど収益性が良い物件と評価されるため、売却価格にも大きく影響します。
利回りには、主に「表面利回り」と「実質利回り」の2種類があります。
- 表面利回り…年間家賃収入 ÷ 物件価格
- 実質利回り…(年間家賃収入 − 年間諸経費)÷ 物件価格
※諸経費は税金・管理料などを含む
一般的に、売却時の目安として広く使われるのは表面利回りですが、投資家は手残り金額を重視するため、実質利回りでも確認しておきましょう。表面利回りが良くても、実質利回りが悪ければ買主の間口が狭くなるためです。
実質利回りの計算方法は、購入時にかかった諸費用を含めて計算する方法もありますが、不動産の売却価格を計算するのであれば、実質利回りは上記の式を使用するほうが確実です。
空室が多い物件や家賃が相場より低い物件は、投資家から収益力が低いと判断され、売却価格が下がりやすくなります。そのため、売却前に家賃の見直しや入居率の改善を図ることが大切です。
設備・建物の修繕状況
建物の外壁や屋根、廊下などの共用部分の状態、各部屋の設備の劣化も売却価格に影響します。外壁はひび割れやコケなどの汚れが目立つと、買い手が修繕費を考慮して値下げ交渉をしてくる可能性が高いためです。
一方、オートロックや宅配ボックス、インターネット設備など入居者が求める設備が整っていると賃貸需要が高まり、利回りの向上を通じて売却価格アップにつながります。アパート内の設備や外観の老朽化が目立つ場合は、売却前に費用対効果を考慮したうえで、部分リフォームを検討することも選択肢のひとつです。
入居状況(稼働率)
アパートの売却価格は、現在の入居状況によっても左右されます。満室に近い物件は、安定した家賃収入が見込めるため価格が高くなります。
一方、空室が多い物件は将来の収益に不安があると判断され、価格交渉で減額される可能性も高いのです。特に長期間空室が続いている場合は、賃料設定や管理体制に問題があると見られることもあります。
そのため、売却前に空室対策を行い、可能な限り稼働率を高めておくことが、価格アップにつながる要素といえるでしょう。
アパートの売却価格をできるだけ高くするコツ
アパートを少しでも高く売るには、買主目線で物件の魅力を最大化し、有利な条件で売却活動を進めることが大切です。アパートの売却価格をできるだけ高くするコツを紹介します。
競合物件の売却価格を把握する
売却活動を始める前に、同じエリア内にある類似アパートがどの程度の価格で売り出されているかを把握しておくことが大切です。相場を知らずに価格設定をすると、安く売りすぎたり、逆に高すぎて売れ残ったりするリスクがあります。
相場を調べる方法としては、大手の不動産情報サイトで売り出し中の物件を確認する方法があります。そのほか、国土交通省の不動産情報ライブラリでは、実際の成約価格を検索できるため、より実態に近い価格を把握することが可能です。
複数のサイトを活用して、所有するアパートの相場感を掴んでおきましょう。
空室率が低いときに売却する
アパートの売却は、できるだけ空室率が低い状態で行うことが、高く売るためにも重要なポイントです。
入居率が高いほど実質利回りが上がり、投資家にとって魅力的な物件となります。一方、空室が多い状態では、入居付け(客付け)するリスクを理由に値下げ交渉を受けやすくなるのです。
アパートの売却を検討している場合は、家賃の見直し・設備の更新・管理会社の変更など、入居率の改善に取り組み、満室またはそれに近い状態になってから売り出すのがよいでしょう。
アパート売却に強い不動産会社を探す
アパート売却に強い不動産会社に依頼するのも、高値で売却するには重要なポイントです。不動産会社の中には、賃貸管理に強い業者、特定エリアに強い業者、入居付けに強い業者とさまざまあります。
アパート売却の経験が豊富な業者であれば、買主候補の幅が広がり、高値で購入してくれる人を見つけやすいのです。さらに、適切な価格設定と効果的な販売戦略、投資家ネットワークを活用することで早期売却が期待できるでしょう。
不動産会社を選ぶ際は、3社ほどに査定を依頼して比較することをおすすめします。査定価格だけでなく「なぜその価格なのか」という根拠の説明が明確か、直近のアパート売却の実績も重要な判断基準です。
良い物件でも売却できなければ意味がないので、不動産会社の選定は慎重に行いましょう。
値下げ交渉を考慮した価格設定を行う
アパート売却では、買主から値下げ交渉があることを前提に価格設定することが重要です。表示価格どおりに成約するケースは多くなく、数%程度の値下げや端数の価格調整が行われることも珍しくありません。
そのため、最初から最低希望価格で売り出してしまうと、交渉によって希望より低い金額で成約してしまうおそれがあります。交渉されることも踏まえて、余裕のある価格設定を行いましょう。
ただし、相場とかけ離れた高値を設定すると問い合わせが集まらず、売却期間が長期化するリスクがあります。不動産会社と相談しながら、市場動向を踏まえた戦略的な価格設定を行うことが、高値売却につながるポイントです。
この記事を書いた人
TERAKO編集部
小田急不動産
鳥塚 正人
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