不動産投資
2026.03.25

アパートを売却したときに取得費にできるものとできないもの

アパートを売却したときに取得費にできるものとできないもの

アパートの売却後は確定申告が必要になるケースが多く、その際に必要になるのが取得費です。取得費を少なく申告すると、本来払う必要のない税金を納めてしまう可能性があります。

アパート売却において、取得費に該当するものとしないものをわかりやすく整理し、見落としやすいポイントを解説します。

この記事の目次

アパートを売却したときに取得費になる費用は?

取得費とは、売却するアパートを「取得するときにかかった費用の合計」です。簡単に説明すると、取得費は売却益(譲渡所得)から差し引ける費用のことで、正しく計上するほど確定申告での課税額を抑えられます。

まずは、売買益(譲渡所得)の計算方法を確認しておきましょう。

  • 譲渡所得 = 譲渡価額 -(取得費 + 譲渡費用)

取得費には購入代金や建築費のほか、取得する際に支払った費用が含まれます。

建物については、購入代金から所有期間中の減価償却費を差し引いた残額が取得費となるため注意が必要です。なお、土地は時間が経っても劣化しないため、減価償却は行いません。

減価償却とは「年数の経過とともに資産の価値は下がる」という考え方のもと、建物などの資産の取得にかかった金額を、資産の耐用年数に応じて少しずつ分けて費用計上する考え方です。分割して毎年計上する金額のことを減価償却費といいます。

アパート売却の場合は、建物の購入代金や建築費から、所有期間中の減価償却費を差し引いて建物の取得費を求めます。その取得費をもとに譲渡所得を計算し、利益が出た場合に税額を算出することになります。

売却時に取得費として含まれる費用一覧

投資用物件の売却時に取得費に含まれる費用として、以下のものが挙げられます。

費用の種類 取得費 備考・注意点
購入代金・建築費 建物の場合は減価償却費を差し引いた残額
購入時の仲介手数料 売却時の仲介手数料は譲渡費用に該当する
取得時の測量費 売却目的の測量費は譲渡費用に該当する
購入時の固定資産税清算金 購入代価の一部として取得費に算入
設備費・資本的支出(増改良費) 減価償却の残額(リフォームしてから売るまでの減価償却費)。修繕費は不可
土地の造成費用 埋立て・土盛り・地ならし・地盤改良などが該当
所有権確保のための訴訟費用 遺産分割のための訴訟費用は不可
使用開始前に支払った借入金の利子 使用開始後の利子は不動産所得の必要経費
立退料 × 売却のための立退料は譲渡費用に該当する
登録免許税 × 業務用は取得時に必要経費に算入済のため不可
不動産取得税 × 業務用は取得時に必要経費に算入済のため不可
印紙税 × 業務用は取得時に必要経費に算入済のため不可

投資用アパートでは賃貸経営の必要経費として処理するため、登録免許税・不動産取得税・印紙税は取得費に含めません。売却時に再度計上すると二重計上になるためです。

物件の購入代金・建築費

アパートの建物取得費は、購入代金または建築代金から、所有期間中の減価償却費の累計額を差し引いた金額です。

マイホームと異なり、投資用アパートは賃貸経営するなかで減価償却をおこなっているため、売却時はその所有期間中の減価償却費の累計額をもとに建物の取得費を計算します。

減価償却の計算式は、物件の取得時期によって異なります。

【平成19年4月1日以降取得】

  • 年間減価償却費=建物取得価額 x 償却率

【平成19年3月31日以前取得】

  • 年間減価償却費 = 建物取得価額 x 0.9 x 旧償却率

※0.9を掛けるのは、旧定額法で建物価格の90%をもとに減価償却を計算するためです。購入時期や取得価額によって未償却残高が変わるため、帳簿や減価償却台帳を確認しておきましょう。

【計算例:木造アパート(平成19年4月1日以降取得・耐用年数22年)の場合】

  • 建物取得価額:3,000万円
  • 構造:木造
  • 所有期間:15年
  • 定額法の償却率:0.046

年間減価償却費 = 3,000万円 x 0.046 = 138万円
減価償却累計額 = 138万円 x 15年 = 約2,070万円
建物の取得費 = 3,000万円 – 2,070万円 = 約930万円

土地については築年数による劣化がないため、減価償却は適用されません。購入代金がそのまま取得費になります。なお、平成19年3月31日以前に取得した古い物件の場合は、旧定額法(x0.9)が適用されます。

購入時に支払った仲介手数料

アパートを購入した際に不動産会社へ支払った仲介手数料は、取得費に含まれます。

一方で、売却時に支払う仲介手数料は取得費ではなく、譲渡費用として扱われるため注意しましょう。仲介手数料は、購入時・売却時でそれぞれの区分が異なります。

アパートを購入したときの税金

アパートの購入時に支払った登録免許税・不動産取得税・印紙税は、売却時の取得費には含めません。これらの費用は、賃貸経営の必要経費として処理するため、売却時に再度計上できないためです。

出典:国税庁|No.3252取得費となるもの

設備費・資本的支出

アパートの所有中にリフォームを行った際、「資産価値を高めたり、建物の耐久性を高めたりするための支出」は、資本的支出に分類されます。

資本的支出の一例は以下の通りです。

  • 電気容量のアップグレード
  • 耐震補強工事
  • バリアフリー改修
  • 太陽光発電システムの新設
  • 避難階段・外付け階段の新設

上記の費用は取得費に反映されますが、建物と同様に減価償却後の残額が計上対象となります。

一方で、壊れた設備の修理や外壁の塗り直しなど「原状回復を目的とした支出(修繕費)」は、収益的支出となるため取得費に含まれません。

土地の造成費用・測量費

土地の埋立・土盛・地ならし・地盤改良のために支払った造成費用や、土地を取得するために支払った測量費は取得費に含まれます。

売却時の測量と取得時の測量では区分が異なるため、混同しないよう注意しましょう。

アパートを売却するときに取得費に該当しない費用

アパートに関する支出であっても、取得費に計上できない費用は多くあります。誤って計上すると税務調査で指摘されるリスクがあるため、取得費に該当しない費用も正確に把握しておきましょう。

アパートの維持・管理にかかった費用

アパートの維持管理にかかった費用は、基本的に取得費の対象外です。

具体的には以下のような費用が該当します。

  • 原状回復目的の壁紙の張り替えや床材の交換
  • 給湯器・エアコンなどの設備修理・交換
  • 共用部の清掃・定期点検費用
  • 火災・地震保険料
  • 管理会社への管理委託費

上記はあくまでアパートを「維持管理する費用」なので、取得費には含まれません。

すでに経費として処理した修繕費

アパート経営中に行ったリフォームや修繕などの費用で、経費として計上済みの費用は、売却時に再度取得費として計上できません。

アパート経営中に不動産所得の必要経費として申告した費用を、取得費として再度計上すると、「二重計上」にあたります。税務調査で否認されると追徴課税が科されるおそれがあるため、取得費として計上する際は、過去の申告内容をしっかりと確認しましょう。

国税庁でも「事業所得などの必要経費に算入されたものは含まれません」と明記されているため、特に注意が必要です。

出典:国税庁|No.3252取得費となるもの

その他、取得費として間違えやすい費用

以下の費用も「アパートに関係するコスト」に思えますが、取得費に該当しません。

  • 固定資産税・都市計画税
  • 融資手数料・ローンの利息
  • 退去時の原状回復工事費
  • 引越し費用
  • 広告・チラシ作成費

誤って取得費を多く計上してしまうと、譲渡所得の過少申告となり、税務調査で指摘を受けた場合に追徴課税や加算税が課されるリスクがあります。

意外な取得費でさらに節税ができる

取得費の基本を押さえたところで、アパート売却ならではの見落としやすいポイントを紹介します。これらを正しく計上するかどうかで、確定申告の税負担が大きく変わることがあるため、きちんと理解しておきましょう。

見落としがちな「固定資産税清算金」

不動産の売買では、引渡し日を基準に固定資産税・都市計画税を日割り計算し、引渡し日以降の分を買主が売主に支払うのが一般的です。

「買主が売主に支払う日割りの固定資産税相当額」のことを固定資産税清算金と呼び、「購入代価の一部」として取得費に算入できます。

出典:国税庁|賃貸用アパートを購入した際に支払った固定資産税及び都市計画税相当額の清算金の取扱いについて

なお、アパートを売却する際に買主から受け取った固定資産税清算金は、売主側では譲渡収入に加算される点には注意が必要です。毎年支払っていた固定資産税や都市計画税は、不動産所得の必要経費として処理するため、混同しないようにしましょう。

出典:国税庁|未経過固定資産税等に相当する額の支払を受けた場合

「修繕」ではなく「改装」なら取得費にできる

不動産に対して行った工事のうち、「建物の耐久性を向上させる、または資産価値を高める工事」は資本的支出として取得費に算入できます。

一方、「建物を維持するための工事や原状回復を目的とした修繕」は収益的支出となるため、取得費に含まれません。この境界線を知っておくことが節税のポイントです。

また、資本的支出であっても過去の確定申告で修繕費として計上していた場合は、取得費に算入できません。二重計上になるため、取得費として計上する際は必ず過去の申告内容を確認しましょう。

「概算取得費(5%)」との使い分け

確定申告では、実際の取得費と概算取得費はどちらか有利なほうを選択できます。概算取得費とは、当時の売買契約書や領収書が手元にない場合や、実際の取得費が譲渡価額の5%相当額を下回る場合に使用できる計算方法です。

売却価格の5%相当額を取得費とみなして計算できます。売却価格5,000万円のアパートの場合、取得費と概算取得費を比較すると以下のようになります。

  • 概算取得費:5,000万円 x 5% = 250万円
  • 実際取得費が300万円(書類あり)の場合→実額のほうが有利
  • 実際取得費が200万円(書類あり)の場合→概算のほうが有利

つまり、概算取得費は取得費が大きいほど損をする方法といえます。当時の通帳の履歴など、実額がわかっている場合は、概算と実額をしっかりと見定めてから判断しましょう。

出典:国税庁|No.3258 取得費が分からないとき

アパート売却の取得費を正しく把握して、確定申告の税負担を軽減しよう

アパート売却時の確定申告において、取得費を正確に把握することは、基本的な節税対策のひとつです。

取得費には購入代金や建築費、購入時の仲介手数料、固定資産税清算金、資本的支出などが含まれます。一方で、必要経費として処理済みの費用や維持・管理費用は含められないため注意が必要です。

また、購入時の書類が残っていないときや取得費が不明なときは、概算取得費として売却価格の5%で計算することも可能です。取得費の計上漏れは税負担の増加につながり、過大計上は否認のリスクがあるため、売買契約書や領収書などは大切に保管しておきましょう。

この記事を書いた人

著者写真 TERAKO編集部
小田急不動産
飯野一久

「一期一会」がモットーです。これまでの投資不動産の売却・購入・資産の入れ替えの実務を通じて得られた知見を、少しでも、皆様に、わかりやく、丁寧にお伝え出来たらと思っております。 著者の記事一覧はコチラ
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