5階建てマンションの建築費はいくら?構造別の坪単価と費用を抑える方法
マンション経営を始める際に、新築で建てたいと考える方は少なくありません。特に5階建てのマンションは、規模もコストも中間に位置するため「最も気になるライン」といえます。
建築費は、構造や戸数、設備のグレードによって数千万円単位の差が出ることもあります。効率よく収益を上げるためにも、マンションの建築費と利回りの目安を押さえておきましょう。
この記事の目次
5階建てマンションの建築費の相場
前提として、マンションの建築費はマンションの構造によって大きく異なります。坪単価が高価な構造であればマンション建築費の総額も高くなります。
マンションの主な構造は、鉄骨造(S造)、鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の3種類です。5階建てのマンションの場合は、S造とRC造が多くみられます。
最初に構造別のマンション建築の坪単価や、マンション建築費用の内訳についてわかりやすく解説します。
【構造別】マンション建築の坪単価
構造別および建築目的別の坪単価は、国土交通省が実施・公表する「建築着工統計調査」で確認ができます。
以下は国土交通省「建築着工統計調査(2024年)」の東京都における平均値です。地域や立地条件によって坪単価は変動するため、あくまで目安として参考にしてください。
| 構造 | 1㎡あたり工事費予定額 | 1坪(約3.3㎡)あたり工事費予定額 |
|---|---|---|
| 木造 | 26万円 | 約85.8万円 |
| 鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造) | 45万円 | 約148.8万円 |
| 鉄筋コンクリート造(RC造) | 42万円 | 約138.6万円 |
| 鉄骨造(S造) | 37万円 | 約122.1万円 |
参照:政府統計の総合窓口|建築着工統計調査-住宅着工統計 2024年分
上記の金額を用いると、50坪、80坪、100坪のマンション建築費はそれぞれ以下のようになります。
| 坪数 | 鉄骨造(S造) | 鉄筋コンクリート造(RC造) | 鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造) |
|---|---|---|---|
| 50坪 | 6,105万円 | 6,930万円 | 7,440万円 |
| 80坪 | 9,768万円 | 1億1,088万円 | 1億1,904万円 |
| 100坪 | 1億2,210万円 | 1億3,860万円 | 1億4,880万円 |
上記のデータによると、東京都の貸家における1㎡あたり工事費は、木造が26万円、鉄骨造が37万円、RC造が42万円、SRC造が45万円と構造により差がみられます。そのため、建物の規模や用途、求める性能に応じて最適な構造を選択することにより、コストバランスの取れたマンション建築が可能です。
マンション建築費用の内訳
マンション建築費用は「本体工事費」「付帯工事費」「諸費用」の3つに分類できます。
本体工事費は名前の通り、マンションの本体部分の工事にかかる費用です。該当する費用として以下の例が挙げられます。
- 基礎工事
- 躯体(骨組み部分)
- 外装・内装
付帯工事費はマンション本体以外の工事にかかる費用です。付帯工事費の例を紹介します。
- 地盤改良工事費
- 外構工事費(門、駐車場、塀、造園など)
- 解体工事費
- 仮設工事費
- 給排水工事費
- ガス引き込み工事費
- 電気、空調工事費
付帯工事費の目安は本体工事費の15〜20%程度といわれています。
マンション建築にかかった費用のうち工事費以外はすべて諸費用として扱われます。諸費用の例は以下の通りです。
- 現況調査費
- 地盤調査費
- 水道分担金
- 不動産取得税
- 登録免許税
- 司法書士報酬(登記を司法書士に依頼する場合)
- 印紙税
- ローン手数料
本体工事費の10〜15%程度が諸費用の目安となります。
5階建てマンションの建築費・利回りシミュレーション
5階建てマンションの建築費や利回りがどのようになるか、具体例を用いてシミュレーションをしましょう。
- 構造:鉄筋コンクリート造(RC造)
- 坪単価:135万円
- 延べ床面積:150坪
- 戸数:15戸
- 付帯工事費:本体工事費の20%
- 諸費用:本体工事費の10%
- 家賃収入:月11万円/戸 年間1,980万円
- 賃貸経営における経費:495万円(家賃収入の25%)
今回は、共同住宅の戸数が多い「RC造(鉄筋コンクリート造)」で建てることを想定し、上記の条件で計算しています。
建築費シミュレーション
まずは建築費のシミュレーションです。
本体工事費は延べ床面積と坪単価を用いることで簡単に計算できます。今回の条件の場合、本体工事費は以下のようになります。
- 135万円 × 150坪=2億2,500万円
今回は、付帯工事費と諸費用は本体工事費の20%と10%に設定しているため、それぞれの数値を当てはめて計算しましょう。計算結果は以下のようになりました。
- 付帯工事費:2億2,500万円 × 20%=4,500万円
- 諸費用:2億2,500万円 × 10%=2,250万円
本体工事費、付帯工事費、諸費用を合計した建築費は以下のとおりです。
- 2億2,500万円 + 4,500万円 + 2,250万円=2億9,250万円
したがって、今回設定した条件における建築費総額は2億9,250万円となります。
利回りシミュレーション
続いて利回りのシミュレーションです。諸経費を加味した利回り(実質利回り)は以下のように計算します。
- 実質利回り(%)=(年間の家賃収入-年間の諸経費)÷ 物件の取得価額
建築費および設定した前提条件の金額を当てはめると、計算式は以下のようになります。
- (1,980万円 − 495万円)÷ 2億9,250万円=約5.08%
したがって、今回の例における実質利回りは約5.08%です。首都圏では実質利回りの目安が3〜4%程度といわれているため、理想的な数値といえるでしょう。
5階建てマンションの建築費を抑えるポイント
5階建てマンションは延べ床面積が大きくなるため、建築費の総額が高額になりがちです。しかし、動く金額が大きいからこそ、少しの工夫で建築費の総額を大幅に抑えられる可能性もあります。
この章では5階建てマンションの建築費を抑えるポイントを紹介します。
共用部分をコンパクトに設計する
マンションの建築費を抑える方法として効果的なのが、共用部分をコンパクトに設計することです。
マンションの本体工事費は延べ床面積が増えるほど高額になります。そのため、費用を抑えるのであれば面積を狭くするのが効果的です。ただし、専有面積を狭くしすぎると住みにくくなるうえ、間取りや設備配置の制約があると、かえって費用が割高になるケースもあります。
一方、共用部分は最低限の設備と空間があれば面積が狭くても問題は起こりにくいのです。専有部分のグレードを落とさずに、共用部分をコンパクトに設計すれば建築費を抑えられます。
資材や設備のグレードを下げる
建築費を抑えるには、使用する資材や設備のグレードを調整する方法が有効です。特に空調設備や水回りなど、各部屋に設置する設備は戸数分必要になるため、グレードによって総額が大きく変わります。
ただし、あまりにもグレードを落としすぎるのは危険です。競合物件よりも設備が大きく劣っていると、空室率を上げる原因となります。価格だけでなく、ターゲット層の需要も考慮することが大切です。
戸数を減らし1戸あたりの専有面積を広くする
戸数を減らすことで建築費を抑えられる可能性が高くなります。前述したように、住宅用の設備は各部屋に導入する必要があるため、戸数が増えるほど費用の総額も高額になるからです。
また、戸数が多いと骨組み部分として用いる資材の量も多くなります。戸数を減らせば設備や資材を減らせるため、建築費を抑えることにつながります。
ただし、戸数が減ることで収入が減る点には注意が必要です。そのため、1戸あたりの専有面積を広く取り、高単価の家賃設定が可能なエリアであれば有効な戦略といえます。
特に、ファミリー向けマンションを探す層は、専有面積の広さや設備の充実度を重視する傾向です。多少賃料が高くてもニーズを満たす物件であれば高い入居率が期待できるでしょう。
中古マンションの購入を検討する
マンションの建築費をなるべく抑えたい場合は、5階建てマンションを新築するのではなく、中古マンションを購入する方法がおすすめです。
中古マンションで賃貸経営を始める最大のメリットは初期費用を抑えられる点です。5階建てマンションを新築すると、総額数億円になることも珍しくありません。
一方、中古マンションの取得費用は新築の7〜8割程度が目安となります。築年数が経過したマンションであれば、さらに安価で取得できるでしょう。
もう1つのメリットは、賃貸経営による収益を早く得られる点です。マンションを新築する場合、建築の着手から家賃収益を得られるまでに、数カ月〜数年程度はかかります。
中古マンションであれば完成を待つ時間がかからないため、収益を早く得られます。取得価格を抑え、なるべく早く収益を獲得したいと考える方は、中古マンションの購入を検討してみるとよいでしょう。
この記事を書いた人
TERAKO編集部
小田急不動産
横溝 浩由
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