不動産投資
2025.10.30

賃貸経営で押さえるべきリスクとは?回避策と「やめどき」の判断基準

賃貸経営で押さえるべきリスクとは?回避策と「やめどき」の判断基準

賃貸経営は安定した家賃収入を得られる一方で、空室、家賃下落や修繕費の増大など思わぬリスクを抱えることがあります。最初は順調だった経営が、いつの間にか赤字に転じるケースも珍しくありません。

安定した賃貸経営を続けるためには、リスクの原因を正しく理解し、早めに対策を行うことが大切です。賃貸経営で失敗を防ぐためのポイントを詳しく解説します。

この記事の目次

賃貸経営で失敗しやすい6つのリスク

賃貸経営は副業の中でも比較的手間がかかるものの、安定した収入を得られる方法として人気です。

ただし、賃貸経営には注意すべきリスクが多く存在し、適切な対策をしなければかえって大きな損失を被る恐れもあります。賃貸経営で失敗の原因になり得る代表的なリスクについて見ていきましょう。

空室リスク(立地・老朽化)

賃貸経営で最も注意が必要なのは空室リスクです。賃貸経営では、入居者がいなければ収入を得られません。また、収入が得られなくてもローンの返済や管理費などの必要経費がかかるため、大きな損失となるおそれがあります。

空室が発生する主な原因として以下の3つが挙げられます。

  • 立地が悪い(土地が原因)
  • 老朽化により設備が古い(建物が原因)
  • 管理会社の対応が悪い(会社が原因)

空室の原因は立地や建物の老朽化、賃料設定や管理会社の対応など、複合的な要因によって発生します。そのため、土地や建物だけでなく運営面での見直しも大切です。

家賃下落のリスク

入居者がいても家賃を下げれば収入は減少してしまいます。また、家賃が下がったことで必要経費の支出が減るケースは稀です。すなわち、家賃下落によって最終的な利益も減ってしまうということです。

家賃が下落する主な原因として以下の2つが挙げられます。

  • 老朽化や災害による資産価値の減少
  • 競合物件との差別化で家賃を引き下げざる

築浅物件は初期の家賃設定が比較的高い傾向にあります。しかし、築年数が経過した際にも高い家賃を維持するのは難しいでしょう。現時点で高額の家賃収入を期待できる物件でも、いずれは家賃下落によって収入が下がるおそれがあるのです。

家賃滞納のリスク

入居者の家賃滞納によって家賃収入を得られない事態も起こり得ます。単純に支払いを忘れていただけであればすぐに解消されますが、意図的な滞納や支払い能力がないというケースもあるでしょう。

立ち退き訴訟をすることもできますが、短期の滞納では難しい上、訴訟費用や強制執行代は貸主負担です。保証会社を利用することで滞納時の家賃を立て替えてもらえるケースもあります。

ただし、保証会社を利用していても、原状回復費用や訴訟費用が全額補償されるとは限りません。

ローン返済負担のリスク

賃貸物件の購入には多額の資金が必要なため、ローンを利用するのが一般的です。

賃貸経営が順調であれば問題なく返済できますが、空室や家賃滞納により収入が減少すると、ローン返済が負担になるおそれがあります。毎月の返済額を高額に設定すると、ローン返済負担のリスクが高まるため注意が必要です。

また、変動金利型のローンを利用している場合は、金利上昇により返済額が増加するリスクがあります。

入居者トラブルのリスク

賃貸経営で起こり得る入居者トラブルとして以下のものが挙げられます。

  • 入居者間や周囲の騒音トラブル
  • ルールを守らない(ゴミ出し、ペット関連、喫煙など)
  • 部屋を著しく汚す
  • 無断で契約者以外を同居人として迎え入れる
  • 夜逃げ

前述した家賃滞納も入居者トラブルの1つです。入居者トラブルは対応にコストがかかるだけでなく、ほかの入居者に悪影響を及ぼす恐れもあります。

災害リスク

地震や台風などの自然災害による建物の損壊リスクもあります。一般的には賃貸経営では火災保険に加入するものの、修繕費の全額補償を受けられるとは限りません。

たとえば、火災保険では地震や津波による損壊は補償対象外のため、地震保険に加入しておく必要があります。

自然災害が原因のトラブルとして以下のような例が挙げられます。

  • 建物が倒壊して家賃収入が途絶える
  • 資産価値の下落により家賃の引き下げが必要になる
  • 建物に瑕疵があり、損壊が生じたとみなされた場合は賠償責任が生じる

災害によって水道やガスなどのインフラが止まってしまうと、直接の被害がなくても物件の価値が下がる可能性があります。

賃貸経営のリスクを回避する方法

賃貸経営のリスクをゼロにすることは難しいものの、少しの工夫や対策によって回避できる可能性はあります。この章では賃貸経営のリスクを回避する方法について詳しく解説します。

ターゲット層に合った設備・間取りにする

空室リスクを下げるために必ず行いたいことが、ターゲット層に合った設備・間取りにすることです。

たとえば、ファミリー層をターゲットにするのであれば、部屋数の多さや広さが求められるでしょう。外観が綺麗で設備が充実していても、1Rや1Kのような物件ではファミリー層の入居は難しいといえます。

反対に、単身者向けであれば広さの重要性は低いでしょう。宅配ボックスや独立洗面台、女性向けであればオートロックといった防犯設備の需要が高いと考えられます。

ターゲット層にとって魅力的な建物でなければ入居につながりません。ターゲット層に合う設備や間取りを実現することが大切です。

長期的な修繕計画を考える

老朽化など資産価値の減少による家賃下落、空室リスクを回避するためには、長期的な修繕計画を考える必要があります。

前述のリスクを抑えるには資産価値を維持するための適切な修繕が必要です。ただし、破損が生じてから修繕を行うと対応が遅く、リスクを回避できない恐れがあります。

修繕を計画的に行うためには、長期修繕計画の作成や修繕積立金の積み立てが有効です。突発的な支出にも速やかに対応することは、安定した運営につながります。

資金面の余裕をもたせる

賃貸経営のリスクを完全に回避できるのが理想ですが、リスクをゼロにすることは難しいでしょう。だからこそ、トラブルによる損失を最小限に抑えるため、資金面に余裕を持たせることが重要です。

資金面での余裕がなくなると実施できる選択肢が狭まります。そして、適切な対処ができないために収益がさらに減る、という悪循環に陥るおそれがあります。

迅速にトラブルの対応を行うには、キャッシュフローに余裕を持たせることが重要です。修繕費や突発的な支出に備え、家賃収入の一部を積み立てておくと安心です。

賃貸経営をやめるのに最適なタイミングとは?

リスク回避の方法を実践しても、経営状況が改善しないケースも有り得ます。改善の見込みがない状態で賃貸経営を続けても損失が大きくなる一方です。

リスク回避や改善自体が難しいと考えられる場合、賃貸経営をやめることも検討すべきでしょう。最後に賃貸経営をやめるのに適したタイミングを3つご紹介します。

空室の改善が見込めないとき

空室率の高い状態が長く続いており改善が見込めない場合、賃貸経営からやめるタイミングと考えられます。経営を続けるほど損失が大きくなるだけでなく、心理的な負担も重くなってしまうためです。

空室率を下げるための施策を一通り行なったものの効果を得られなかった場合、改善の見込みがないと考えた方がよいでしょう。

家賃収入より支出が上回り始めたとき

老朽化に伴う修繕費の増加や家賃下落などにより、家賃収入よりも支出の方が高額になるケースもあります。支出が家賃収入を上回り始めたら、賃貸経営の撤退を考えるべきタイミングです。

空室率の増加に伴う一時的な収入の減少であれば、入居率が上がることで改善される可能性が高いでしょう。一方、空室がほとんどないにもかかわらず支出の方が多い場合、改善は難しいといえます。

賃貸経営を続けるほど赤字になる恐れがあるため、早めに賃貸経営をやめるか物件を手放したほうがよいでしょう。

建物の修繕費が増え続けるとき

建物の修繕費が増加し続けている場合、空室率や収益額に関係なく出口戦略を考えるべきです。現時点では収益が出ているとしても、そのまま修繕費が増え続ければいずれ支出が家賃収入を上回り、将来的に赤字になる可能性があります。

実際のところ、物件の老朽化に伴う修繕費の増加は避けられません。老朽化を改善するには大規模な修繕が必要ですが、多額の支出が発生するため実施するのが難しい方は多いでしょう。

工事の内容によっては一時的に空室の確保が必要になり、収入が途絶えてしまう事態も起こり得ます。修繕費が増え続けるのであれば、将来の損失を回避するためにも早いうちに売却の検討をおすすめします。

この記事を書いた人

著者写真 TERAKO編集部
小田急不動産
横溝 浩由

誠実がモットー。これまでのお客様との出会いが投資不動産領域での私自身の見識を高めることに繋がっており、お客様への感謝を胸に、いかに皆様のお役に立てる情報を発信できるかが重要と思っております。こんなことをもっと知りたい等、お気軽にお声掛けいただけると嬉しいです。 著者の記事一覧はコチラ
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