不動産投資
2025.09.29

アパートの建築費はいくら?費用の内訳や建てる以外の選択肢を解説

アパートの建築費はいくら?費用の内訳や建てる以外の選択肢を解説

アパートの建築費は建物の構造や階数、使用する建材や設備のグレードによって大きく変動します。さらに人件費や資材高騰の影響もあり、近年は全体的に値上がりしている傾向です。

建築費にかかる費用の目安や内訳を把握しておけば、無理のない資金計画が立てられるでしょう。アパート経営を検討する上で知っておきたい、建築費の相場と内訳について詳しく解説します。

この記事の目次

アパート建築費の目安と相場

国土交通省の「建築着工統計調査」によると、東京都内におけるアパート建築費の平均額は1平方メートルあたり約33.6万円です。そのため、坪単価(1坪=3.306㎡)に換算すると約111万円となります。

しかし、アパート建築費は面積以外の様々な要素によっても変動するため一概にはいえません。目安となる金額を押さえつつも、状況によっては相場を外れる可能性がある点にご注意ください。

まずはアパート建築費が高くなる要因や、アパート建築費の目安について解説します。

アパートの建築費が高くなる要因

アパートの建築費が高くなる要因は以下の5点です。

  1. アパートの構造
    例えば、木造と鉄骨鉄筋コンクリート造では2倍ほどの違いがあります
  2. 部屋の規模
    部屋の規模が小さい(床面積が狭い)ほど建築費が割高になる傾向です
  3. 階数
    階数が増えるほど建築費が高くなりやすいです
  4. 建材のグレード
    グレードの高い建材を使えばその分建築費も高額になります
  5. 設備の内容やグレード
    床面積あたりの単価が安価でも付帯工事費が高額であれば、トータルの建築費も高額になります

建築費への影響が特に大きいのは1の「アパートの構造」です。「建築着工統計調査」によると、建物の構造によって1平方メートルあたりの単価が以下のように異なります。

構造 1平方メートルあたりの単価 【目安】坪単価
(1平方メートルあたりの単価×3.36)
木造 約22.7万円 約75万円
鉄骨鉄筋コンクリート造 約45.8万円 約151万円
鉄筋コンクリート造 約36.8万円 約122万円
鉄骨造 約33.7万円 約111万円
コンクリートブロック造 約25.5万円 約84万円

また、近年は以下のような理由から建築費が全体的に値上がり傾向です。

  • 人手不足
  • 木材価格の高騰(ウッドショック)
  • 円安による光熱費やガソリン代などエネルギーコストの増大

特に、コロナ禍による木材価格の急騰により建築費が大幅に上昇したため、2021年の前と後で建築費が大きく異なります。

アパートの建築費の目安

前述したように、東京都内におけるアパート建築費の平均は1平方メートルあたり約33.6万円、坪単価では約111万円です。延床面積と単価がわかる場合、アパート建築費の目安も簡単に計算できます。

例えば坪単価が111万円、延床面積が30坪(2戸想定)のアパートの建築費は以下の通りです。

111万円×30坪=3,330万円

アパートの建築費は階数や建材のグレードなどによって変動します。同じ30坪のアパートでも、木造と鉄骨鉄筋コンクリート造では建築費は以下のように差があります。

  • 木造:坪単価平均75万円×30坪=2,250万円
  • 鉄筋コンクリート造:坪単価平均151万円×30坪=4,530万円

なるべく正確な建築費目安を計算するためには、構造などの建築費を左右する要素についても考慮が必要です。

アパート建築費の内訳

アパート建築費は以下の3つの要素に分けることができます。

  • 本体工事費
  • 付帯工事費
  • 諸経費

それぞれに該当する項目の具体例や、アパート建築費の全体に占める割合について解説します。

本体工事費

本体工事費とはアパート本体部分の工事にかかる費用です。本体工事費に該当する項目として以下の例が挙げられます。

  • 基礎工事
  • 躯体
  • アパートの外装、内装

アパート建築費のうち本体工事費が占める割合は70%程度です。

付帯工事費

付帯工事費とはアパート本体以外にかかる工事費用です。付帯工事費の例を紹介します。

  • 給排水工事費
  • ガス引き込み工事費
  • 電気、空調工事費
  • 外構工事費(駐車場や塀など)
  • 地盤改良工事費
  • 解体工事費
  • 仮設工事費

建設会社によっては上記費用の一部を本体工事費に含めることもあります。付帯工事費の割合はアパート建築費のうち20%程度です。本体工事費が3,000万円程度の場合、付帯工事費の目安は600万円程度となります。

諸経費

本体工事費および付帯工事費以外の諸経費として以下の例が挙げられます。

項目 内容 金額目安
現況調査費 土地の形状を見たまま測量して図面化する作業のためにかかる費用 20~30万円
地盤調査費 土地の強度や支持地盤の深さを測るための費用 1箇所につき5~10万円程度
※スウェーデン式サウンディングの場合
不動産取得税 建物の取得時にかかる税金 固定資産税評価額×3%
登録免許税 不動産登記に際してかかる税金 固定資産税評価額×0.4%
印紙税 請負工事契約書に貼付する収入印紙代 契約書に記載された金額により異なる
ローン手数料 ローン手続きにかかる事務手数料や保証料など 5~10万円程度
司法書士への報酬 不動産登記を司法書士に依頼する場合に発生 6~7万円程度
水道分担金 水道を引き込む際にかかる費用 水道分担金×戸数が目安。100~500万円程度

諸経費の割合はアパート建築費の10%程度が目安です。たとえば、建築費が3,000万円の場合は諸経費に300万円かかる計算です。決して安い金額ではありませんので、運営資金には余裕を持たせておきましょう。

新築する以外にアパートを経営する方法

アパートを新築で取得するためには、アパートを建設するための土地が必要です。しかし、土地の取得には高額の費用がかかる上、理想に合う土地を探すには多大な時間がかかる恐れもあります。

土地を所有していない場合、新築以外の方法を検討するのがおすすめです。土地を所有していない場合でも、アパート経営をするための方法を3つご紹介します。

中古アパートを購入する

最も金銭的・時間的な負担を抑えられる方法が中古アパートの購入です。中古アパートを購入して賃貸経営をするメリットとして以下の3つが挙げられます。

  • 新たに土地を探す・購入する必要がない
  • アパートの建築を待つ必要がなく、すぐに賃貸経営を始められる
  • 過去の賃貸経営の実績を把握した上で始められる

新たにアパートを建てて賃貸経営を始めるよりも、中古アパートを購入する方がハードルは低いといえるでしょう。

実際のところ、すでに所有している土地を活用するという理由以外で、新たにアパートを建築するメリットは多くありません。アパートの賃貸経営のみが目的であれば、中古アパートの購入でも問題なく達成できます。

オーナーチェンジ物件を購入する

オーナーチェンジ物件とは、入居者がいる状態で売りに出される賃貸物件です。入居者はそのままにオーナーのみが変わるため、オーナーチェンジと呼ばれています。

オーナーチェンジ物件を購入するメリットは、購入直後から家賃収入を得られるのが確実な点です。購入直後に新規入居者を募集する手間もかかりません。また、一概にはいえませんが周辺の物件と比較して割安なケースも多くみられます。

ただし、オーナーチェンジ物件は入居者がいるため室内の状況を正確に把握するのが困難です。また、オーナーチェンジ物件の購入後に退去される恐れもゼロではありません。賃貸経営を始める上でのハードルが低い一方で、事前にトラブルの把握や予測を行うのが難しい点に注意する必要があります。

土地を借りてアパートを建てる

地主などから土地を借り、その上に自分でアパートを建てる方法です。契約で定められた土地の使用目的に反しなければ、借地で賃貸経営をしても問題ありません。

借地にアパートを建てて賃貸経営をするメリットは、新たに土地を取得する場合よりも初期費用を抑えられる点です。また、土地の所有権は地主のままになるため、土地部分の固定資産税を支払う必要がありません。

デメリットとして、土地の所有者に地代を支払う必要がある点が挙げられます。初期費用は抑えられるものの、土地にかかるトータルの費用は高額になる恐れがある点に注意が必要です。

また、借地権は所有権よりも担保としての価値が低いため、融資審査に通りにくい傾向があります。土地にかかる初期費用が少ないとはいえ、アパート建築費の融資を受けられず、結果として多額の自己資金が必要になる可能性があります。

資金に余裕がない方や不動産投資の経験がない人は、中古アパートを購入して運営を始めるのがおすすめです。

この記事を書いた人

著者写真 TERAKO編集部
小田急不動産
鈴木 和典

小田急グループの総合力を活かしながら、これまで幅広く不動産実務を経験して参りました。現在は、本社営業センターの責任者を務めております。私たちの発信が人生100年時代の選択肢を広げるきっかけになれれば大変うれしく思います。 著者の記事一覧はコチラ
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