中古アパートの購入で確認すべき注意点!経営感覚を持つことが成功のカギ

中古アパートの購入には、新築物件と異なる注意点があります。
中古アパートの購入で確認すべき注意点や物件選びのポイント、そして実際に失敗しやすいケースについて、具体的に解説します。
この記事の目次
中古アパートを購入する際の注意点と対策
「アパート経営を始める前」「経営時」「経営を辞める場合」の3つのタイミングに分けて、それぞれの注意点と対策を詳しく解説します。
アパート経営を始める前の注意点
アパート経営を始める前に知っておきたい注意点は以下の通りです。
- オーナーチェンジの場合は契約条件の変更が難しい
- 住宅ローンは利用できない
- 融資期間は、物件の耐用年数内で組むことになる
それぞれ順番に解説します。
オーナーチェンジの場合は契約条件の変更が難しい
中古アパートの場合、購入時にすでに入居者がいる場合があります。こうした物件を「オーナーチェンジ物件」と言います。
オーナーチェンジ物件は、購入後すぐに家賃収入が得られるというメリットがある一方、前オーナーが結んだ賃貸借契約がそのまま引き継がれるため、正当な理由なく一方的に契約内容を変更することはできません。
そして、オーナーが変わったことは家賃を上げる正当な理由にはなりません。家賃を変更したい場合は、現在の入居者が退去するまで待つのが最もスムーズです。
現在の家賃設定が近隣相場に比べて著しく低く、退去まで待てない場合は、契約更新時に交渉するとよいでしょう。
住宅ローンは利用できない
中古アパート購入のために融資を受ける場合、金利の低い「住宅ローン」は利用できません。なぜなら、住宅ローンは自分自身が住む住宅の購入を対象にした融資であるためです。
借入の内容が投資用物件の場合は、「不動産投資ローン(アパートローン)」が適用されます。投資ローンは住宅ローンに比べると金利が高く、物件の担保価値がより厳しく審査されます。
また、住宅ローン控除といった税制上の優遇措置もありません。融資の条件は金融機関によって異なるため、複数の金融機関を比較検討しましょう。
融資期間は、物件の耐用年数内で組むことになる
融資期間は、実際の状態の良し悪しではなく「法定耐用年数」をもとに決められるのが一般的です。
法定耐用年数とは、税法上で建物が使用に耐えると見なされる期間のことで、木造アパートでは22年、鉄骨の厚さが3mm〜4mmの軽量鉄骨造では27年と定められています。
築20年の木造アパートであれば、残された法定耐用年数は2年であることから、原理原則で言うと融資期間は2年となります。
多くの場合において融資期間が短く、毎月の返済額が大きくなる点には注意が必要です。また、法定耐用年数を過ぎた物件は担保価値が0と見なされることから、融資そのものが難しいです。
耐用年数を超えても融資が可能な金融機関もあります。複数の金融機関と提携する不動産会社に相談するのがおすすめです。
不動産会社の提携先の金融機関を利用すると、優遇条件が適用される場合があります。審査に通りやすくなったり、よりよい条件での融資を受けられる可能性があるため、多くの金融機関と提携する不動産会社への相談をおすすめします。
アパート経営時の注意点
アパート経営時の注意点は以下の3つです。
- 空室や家賃の下落
- 管理コストや修繕費の発生
- 入居者トラブルのリスク
1つずつ解説します。
空室や家賃の下落
アパート経営において最も心配なのは、物件に入居者がつかないことです。
空室が続くと収入が減ってしまう上、ローン返済や固定費の支出は変わらないため、金銭的負担が大きくなります。また、近隣に新築物件が建つことで自身の物件の競争力が下がり、家賃を引き下げざるを得ないこともあります。
購入前に、空室や家賃の値下げも織り込んだ現実的な収支計画を立てておきましょう。
管理コストや修繕費の発生
アパートの所有中は、維持管理コストや将来的な大規模修繕などの支出が継続的に発生します。
特に築年数の経過した物件では、給排水管や屋根・外壁など、目に見えにくい部分の劣化が進んでいることも多く、購入して間もないうちに突発的な出費が生じる可能性もあります。
購入後しばらくは、所有する金融資産の現金比率を高めておくと安心です。
また、あらかじめ長期修繕計画を立てておくことで大規模修繕が必要となる時期を見通せるため、それまでに資金を積み立てておきましょう。
入居者トラブルのリスク
中古アパートはすでに入居者がいるオーナーチェンジ物件であることが多いため、過去のトラブルに注意が必要です。「夜中の騒音」「ゴミ出しのマナー違反」「家賃滞納」といった問題まで引き継いでしまうケースも珍しくありません。
こうしたトラブル対応でオーナー自身がストレスを抱えてしまうだけでなく、ちょっとした言葉の行き違いから話がこじれ、地域に悪い評判が立てられてしまう恐れもあります。
入居者トラブルを最小限に抑えるために、購入前に管理会社や仲介業者を通じて過去のトラブル履歴を確認しておきましょう。また、購入後はトラブル対応に定評のある管理会社に委託することも有効な方法です。
国土交通省のデータによると、オーナーが自主管理ではなく管理委託を選ぶ理由は、以下の通りです。
「契約更新・終了時のトラブルをなくしたいから」
「入居者とのトラブル発生時に、第三者として間に入って調整してほしいから」
主にトラブル関連の理由が上位に上がっています。それだけ、入居者トラブルをオーナー個人で解決するのは困難であるといえるでしょう。
参考:国土交通省|2019年賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査(家主)
アパート経営を辞める場合の注意点
将来的な売却についても、早めに考えておく必要があります。
アパート経営を辞める場合の注意点は以下の2つです。
- 修繕履歴を明示できるよう、記録を残しておく
- 仲介・買取の両方を検討する
順番に解説します。
修繕履歴を明示できるよう、記録を残しておく
買い手が中古アパートの購入を検討する際、知りたいのは「これまでどのような修繕・メンテナンスがされてきたか」という点です。
そのため、これまで実施した修繕内容(工事の内容・時期・費用など)を記録としてきちんと残しておきましょう。
定期的な修繕の記録を提示できれば、物件の管理状況が良好であることの証明にもなり、売買交渉もスムーズに進みやすくなります。
仲介・買取の両方を検討する
アパートの売却には「仲介」と「買取」の2つの選択肢があります。仲介は、不動産会社を通じて一般の買主を探す方法で、相場に近い金額での売却が可能です。
一方、買取は不動産会社が直接アパートを買い取る方法です。売却までのスピードが早いことと、確実に現金化できることが大きなメリットです。ただし、購入する会社も適正な利益を得る必要があるため、仲介よりも売却金額が下がるのが一般的です。
売却の目的や物件の状態をふまえて、仲介と買取のどちらがより適しているかを検討しましょう。
中古アパート選びのポイント
中古アパートの購入は、新築と比べて価格を抑えられる一方、空室や修繕コストのリスクを抱える可能性もあります。
ここでは、購入前にチェックしておきたい代表的なポイントを解説します。
立地条件
中古アパートを購入するうえで、最も重要なのが「立地」です。駅からの距離や、周辺にスーパー・コンビニ・ドラッグストア・病院があるかといった環境によって、入居希望者の数は大きく変わります。
たとえば単身者向けなら、駅から徒歩圏の物件に人気が集中します。
一方、ファミリー向けの物件なら「治安がよい」「校区の評判がよい」といった条件も重視されます。
また、その地域の今後の人口予測や再開発の計画があるのかどうかも、将来の空室リスクを見極める上で確認しておきたいポイントです。
築年数と構造
中古アパートを選ぶ際は、「築年数」と「建物の構造」にも注目してください。築年数と構造は、金融機関からどの程度の融資が受けられるかに影響するからです。
築年数が経過するほど担保価値が下がり、融資金額が少なくなります。
また、築年数と構造から計算される法定耐用年数をもとに、融資を受けられる期間が決定されます。
付帯設備の状況
室内や共用スペースの設備は、入居者の快適な暮らしに大きく影響します。たとえば、無料インターネットや宅配ボックスは、入居者が物件を選ぶ時に重視されるポイントです。
特に築年数が古いアパートの場合、時代と共に入居者が求める設備が変化していることから、購入後にリフォームが必要になることも。
購入前に、どれだけ初期費用が必要になるかを見積もっておくと、安心して購入を進められます。
利回り
中古アパートを選ぶ際に、「表面利回り」だけ見て購入を決断するのは危険です。
不動産会社のチラシなどによく掲載されている「表面利回り」は、満室を前提とした家賃収入をもとに計算されていますが、現実には修繕費や維持管理費などの支出も発生します。そこで大切なのが、発生した支出分を反映した「実質利回り」です。
- 表面利回り(%)=年間家賃収入÷物件価格×100
- 実質利回り(%)=(年間家賃収入-修繕費・維持管理費・税金などの諸経費)÷(物件価格+仲介手数料・不動産所得税など購入時の諸経費)×100
で計算できます。
物件選びにおいては、利回りは1つの情報として捉え、立地や築年数、構造、設備の状況を含めて総合的に判断しましょう。
価格
アパートの購入時は、物件価格だけでなくリフォーム費用・登記費用・仲介手数料・ローン手数料など、諸経費を含めた金額が予算内に収まっているかを確認してください。
また、中古物件は新築に比べて融資の条件が厳しくなるケースが多いため、借入可能な金額と自己資金とのバランスをふまえた無理のない資金計画を立てましょう。
【事例から学ぶ】中古アパート経営で失敗しやすい人
中古アパート経営は、資産形成において手堅い部類の手段ですが、誰もが成功するわけではありません。
実際には「思ったより儲からなかった」「トラブル続きで手放すことになった」といった失敗例もあります。
ここでは、よくある失敗事例をもとに、どんな人が失敗しやすいのか、そして成功する人にはどのような共通点があるのかを解説します。
失敗しやすい人の特徴
中古アパート経営で失敗しやすい人の特徴は以下の通りです。
- 経営感覚がない人
- 少ない自己資金で始めてしまう人
- 信頼できない会社から購入してしまう人
それぞれ1つずつ解説していきます。
経営感覚がない人
アパートのオーナーになれば、自動的に入居者が集まって家賃収入が得られると考えるのは間違いです。
たとえば、表面利回りの高さにつられて現地調査もせずに購入した結果、空室だらけの上に数少ない入居者のマナーが悪く、新たな入居者がつけられないといったこともあり得ます。
さらに、災害や家賃滞納といったリスクを軽く考えて、保険や保証の備えがないまま経営を始めてしまうと、万が一のトラブルで大きな損失を被ってしまいます。
収支管理やリスクヘッジ、物件のメンテナンスなど、安定経営のためには継続的な努力が欠かせないことから、「投資家」ではなく「経営者」としての視点を持つことが必要です。
少ない自己資金で始めてしまう人
自己資金がギリギリの状態でアパートを購入すると、予期せぬ修繕費や空室による収入減に対応できません。
築年数が経過した物件では、購入後間もないうちに緊急修繕が発生してしまうことも考えられます。最悪の場合、経営の継続が難しくなる可能性があります。
信頼できない会社から購入してしまう人
中古アパートはどの不動産会社を通して買うかが重要です。なぜなら、信頼できない会社から物件を購入してしまうと、誤った情報をもとに判断させられるリスクがあるからです。
たとえば「満室稼働中」と説明を受けたのに、実際には売却直前だけ一時的に入居者を入れていただけで、引渡し後に続々と退去が発生した事例もあります。
そこまで悪徳な会社は少ないものの、「アパート経営は儲かるらしい」といった漠然とした気持ちだけで相談に行くと、不動産会社側の売りたい物件を紹介されてしまうこともあり得ます。
多くの会社は誠実なビジネスをしていますが、中には販売ノルマ優先で動く担当者や、売れ残った物件を優先的に紹介してくる担当者もいるかもしれません。
後になって「思っていたのと違う」と後悔しないためにも、自身の希望条件を明確にした上で物件選びを進めることが大切です。
中古アパート経営に向いている人
中古アパート経営に向いている人の特徴は、以下の通りです。
- 負担や空室リスクを減らしたい人
- 年収が高い人
順番に解説します。
負担や空室リスクを減らしたい人
できるだけ負担が少ない形で安定した家賃収入を得たい人には、中古アパートの経営が向いています。なぜなら、新築物件に比べて物件価格が抑えられているため、初期費用の負担が軽く済むからです。
また、物件によっては満室に近い状態で引き継げるものもあり、最初から安定収入を手に入れられることも。
経営開始までにかかる準備の手間も少ないため、本業が忙しい人にも向いています。
年収が高い人
年収が高い人はローン返済能力が高いと見なされるため、金融機関からの融資を受けやすい傾向があります。さらに、有利な融資条件を得られる可能性も高いでしょう。
また、「節税」という面でも年収の高い人にはメリットがあります。
築年数が経ったアパートは法定耐用年数が残りわずかなため、「減価償却」という仕組みを使って、短期間で多くの費用を経費として計上できます。(減価償却とは、建物のように時間がたつごとに価値が下がっていく資産について、その価値の目減り分を毎年経費にできる会計上の仕組みのことです)。
減価償却によって不動産所得が赤字になると、給与所得などから赤字を相殺できるため、特に高所得の人ほど節税効果を実感しやすくなります。
ただし、減価償却は下記のように状況によって計算式が異なります。
- 築年数が法定耐用年数内の場合
- 法定耐用年数を超えている場合
やや複雑な部分もあるため、アパート購入の際は、税理士や税理士と提携する不動産会社に相談すると安心です。
この記事を書いた人
TERAKO編集部
小田急不動産
飯野一久
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