中古アパート購入で成功するポイント!注意点や失敗事例を徹底解説

中古アパートの購入は、新築物件と比較して初期費用を抑えられ、高い利回りが期待できるなど、魅力的な投資方法として注目されています。
法定耐用年数が短い木造アパートの場合は節税効果が大きく、資産形成を効率的に進めることが可能です。しかし、中古アパートは築年数の経過による修繕費の増加や空室リスク、耐震性の問題など、注意すべき点も少なくありません。
中古アパート購入のリスクやよくある失敗例、メリットを分かりやすく解説しますので、堅実な不動産投資に役立ててください。
この記事の目次
中古アパート購入の注意点やリスク
中古アパートは新築と比べて価格が安く、少ない資金で購入できるのが魅力です。しかし、見落としがちなリスクや注意点も数多く存在します。
- 築年数が古いと修繕費リスクがある
- 新築よりも空室率が高くなりやすい
- 災害により倒壊する危険性がある
- 長期的に投資を行う必要がある
- 中古アパートの一棟買いはまとまった資金が必要
中古アパートを購入する場合は、上記のポイントに注意しましょう。
各注意点について、詳しく解説していきます。
築年数が古いと修繕費リスクがある
築年数が古い中古アパートは、修繕費が高額になりやすいため注意が必要です。
特に築20年以上経過した物件では、配管の劣化や外壁の損傷など、目に見えない部分の老朽化や劣化が進んでいる可能性があります。具体的な修繕費の目安は以下の通りです。
項目 | 一般的な価格相場 | 備考 |
---|---|---|
外壁塗装 | 100~400万円(2~3階建てアパート) | 面積・階数・塗料の種類で価格が変動 |
屋根防水 | 4,000~9,000円/㎡ | 屋上防水の施工単価 |
共用部修繕 | 20~100万円 | 照明LED化など小規模修繕 |
給排水管の交換 | 40~100万円程度(戸当たり) | 専有部・共用部合わせて。内装工事を含むと増加傾向 |
エレベーター工事(改修・新設) | 改修:500〜800万円、新設:1,200〜1,800万円 | 工事規模により価格が幅広い。全撤去新設は高額になりやすい |
上記の修繕費は物件の規模によって大きく変わりますが、築年数が古いほど修繕のタイミングが早く訪れると考えてよいでしょう。
購入前に過去の修繕履歴を確認し、今後10年間の修繕計画を立てるなどあらかじめ対策をすることが大切です。
新築よりも空室率が高くなりやすい
中古アパートは新築物件と比較すると、空室リスクが高くなりやすい点に注意しましょう。
一般的に、入居希望者は新しい物件を好む傾向があります。中古アパートを購入して運用する場合は、空室率を抑えるための対策が必須です。
具体的には、以下のような対策をするとよいでしょう。
- 適切な家賃設定(相場より若干低めにする)
- 設備に投資する(温水洗浄便座、エアコン、インターネット環境の整備など)
- 共用部分の清潔感を維持する
- 入居者のニーズに合わせた改築を行う
中古アパートの購入では、購入前に地域の市場調査を行い、入居者のニーズに合わせた対策を行うことが大切です。
災害により倒壊する危険性がある
築年数の古い中古アパートは、災害により倒壊する危険性があります。特に、1981年以前に建てられた旧耐震基準の物件には注意してください。
国土交通省住宅局が公表しているデータでは、熊本地震(最大震度7)の際の旧耐震基準と新耐震基準の木造建築物の倒壊率が明記されています。
建築基準 | 年代 | 木造建築物の倒壊率 |
---|---|---|
旧耐震基準 | 1981年5月以前 | 28.2% |
新耐震基準 | 1981年6月~2000年5月 | 8.7% |
2000年基準以降 | 2000年6月以降 | 2.2% |
〈引用:「熊本地震における建築物被害の原因 分析を行う委員会」報告書のポイントより筆者作成〉
旧耐震基準の建物は、新耐震基準の建物と比較すると倒壊率が約3倍に上ります。
耐震性に問題がある場合は、将来的に大規模な補強工事が必要になるだけでなく、災害時など入居者の生命を危険にさらすかもしれません。
オーナーの責任問題に展開する可能性もあるため、中古アパートを購入する際は、建築された年代による耐震基準の違いも把握しておきましょう。
長期的に投資を行う必要がある
中古アパートの購入は初期費用を抑えられるのがメリットの一つです。
しかし、ローンの返済や修繕費用、空室のリスクなどを考慮すると、安定した成果を得るのには時間がかかります。
中古アパートを購入して行う投資は、短期的な利益を狙うのではなく、長期的な視野で計画的な運用が必要です。
中古アパートの一棟買いにはまとまった資金が必要
中古アパートの一棟買いは、まとまった資金が必要になる点に注意しましょう。
中古アパートの購入には、以下の諸費用を一括で支払う必要があります。
- 不動産取得税
- 印紙代
- 登録免許税(所有権移転登記)
- 仲介手数料
- 住宅ローン手数料
- 火災保険料など
銀行から融資を受けて中古アパートを購入する場合でも、物件価格の10〜30%の頭金が必要になるといわれています。また、購入する物件の築年数によっては、リフォームや改築などの修繕が必要です。
中古アパートの購入では、数百万円から数千万円の初期投資が必要になる可能性もあります。物件の取得費以外にもさまざまな費用がかかるため、計画的に投資資金を準備しましょう。
中古アパート購入でよくある失敗例
中古アパート投資では、適切な知識と準備をしていれば収益性の高い資産形成の手段になりますが、失敗してしまった投資家も少なくありません。
- 審査が厳しくローンを受けられなかった
- 立地が悪く空室率を下げられなかった
- 金利の変動により返済額が高額になった
- 管理会社選びを失敗し入居者トラブルが増加した
上記のような失敗事例を事前に把握し、対策を講じることで投資リスクを大幅に削減できます。
審査が厳しくローンを受けられなかった
アパートローンは一般的な住宅ローンと比較して審査が厳しく、希望通りに融資が下りないケースもあります。物件の売買契約ができても、銀行の審査に落ちてしまうと中古アパートの購入は難しくなるでしょう。
アパートローンの審査に落ちる主な原因とその対策方法を下記の表にまとめました。
原因 | 対策 |
---|---|
まとまった頭金が用意できない | 自己資金を増やしてから購入する |
勤務先や雇用形態の安定性が低い | 雇用形態を変更する、安定性のある勤務先に勤める |
物件の担保価値や収益性が低い | 投資先のアパートを探し直す |
信用情報に問題がある | 支払いを滞納しない、弁護士や司法書士に相談する |
年齢と融資期間のバランスが悪い | 複数の金融機関の利用を検討する |
全ての項目においても言えることですが、借入額の見直しもアパートローンの審査対策には有効です。審査に落ちた場合はきちんと原因を把握し、適切な対策を行いましょう。
立地が悪く空室率を下げられなかった
不動産投資において「立地」は最重要要素の一つです。魅力的な価格に惹かれて立地条件を軽視すると、長期的な空室に悩まされることになります。
駅からの距離やコンビニやスーパーの数、周辺の治安などの理由で入居者が集まらず、想定していた家賃収入が得られないケースも考えられます。
また、人口が年々減少している地域では、今後さらに空室リスクが高まる可能性があるので注意しましょう。
立地による失敗を回避するためには、以下のような対策が有効とされています。
- 駅からの距離、周辺環境、生活で重要な施設の充実度を確認する
- 地域の人口動態や将来的な開発計画を事前調査する
- 周辺にある競合物件の空室状況や家賃相場をリサーチする
- 物件周辺を実際に歩いて住環境を体感する
- 実際の空室率を考慮した現実的な収支計画を立てる
短期的な価格の安さに惑わされず、長期的な視点で物件の価値を見極めることが重要です。
金利の変動により返済額が高額になった
不動産投資ローンでは返済が長期に及ぶため、金利変動のリスク管理が重要です。変動金利を選択した場合、金利が上昇すると返済額が増加します。
金利上昇による失敗を避けるには、以下のような対策をしましょう。
- 家計の見直し
- 事前に余裕を持った返済計画を立てる
- 固定金利への借り換え
- 繰上げ返済の活用
シンプルな対策ですが、家計を見直して支出を抑えることも重要です。貯蓄に余裕を持つことで、金利変動の際でも柔軟に対応できます。
管理会社選びを失敗し入居者トラブルが増加した
中古アパート経営では、良質な管理会社の存在が重要です。管理会社の対応力次第で、空室やトラブルの発生状況は大きく左右されます。
そのため、管理コストだけを重視して安価な管理会社を選んでしまうと、以下のようなトラブルが発生する可能性があります。
- 入居者対応が不十分なことによる苦情の増加
- 入居者審査が甘いことによる家賃滞納やトラブルの頻発
トラブルが長期間解決できないと、最終的に良質な入居者の退去に発展してしまうでしょう。
管理会社選びの失敗を避けるために、以下のポイントを満たしているか確認してみてください。
- 複数の管理会社から見積もりを取る
- 管理会社ごとにサービス内容を比較する
- 事前に管理会社の入居審査基準を確認する
- 24時間対応の緊急連絡体制があるかチェックする
- 実際に管理している物件の状態を見学する
- 地域特性を理解した管理会社を選定する
- 管理費用の安さではなく、サービス、質、実績を重視する
アパート投資で安定した収益確保をするためには、管理会社の選定が重要です。長期的な視点で、信頼できるパートナーを選びましょう。
中古アパートを購入した場合のメリット
これまで中古アパートのリスクや注意点について解説しましたが、中古アパート投資には多くのメリットも存在します。
中古アパートを購入する場合のメリットは以下の5つです。
- 所得税と住民税を減税できる
- 比較的高い利回りが期待できる
- 新築物件よりも初期費用安い
- 資産価値が下がりにくい
- 自分の裁量で物件価値を向上させられる
それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。
所得税と住民税を減税できる
中古アパートを購入して運用することで、所得税や住民税の負担を軽減できるというメリットがあります。
不動産は、建物の購入価格を法定耐用年数に基づいて分割し、減価償却費として計上することが認められています。減価償却費は経費として計上できるため、毎年の不動産所得を軽減する効果があるのです。
また、中古アパートは法定耐用年数が短いため、1年あたりの減価償却費が新築物件と比較して大きくなります。
たとえば、法定耐用年数が22年の木造アパートを築10年で購入した場合、あと12年分の価値が残っていると見なされます。12年間で建物の価値を分割して経費として計上するため、1年あたりの経費額が大きくなり、節税効果が高まります。
所得税や住民税は、家賃収入から減価償却費などの経費を差し引いた不動産所得に対して課税されます。そのため、減価償却費を多く計上することで課税所得が減り、結果的に所得税や住民税の負担が軽くなるのです。
比較的高い利回りが期待できる
中古アパートは、新築物件と比較して利回りが高くなる傾向があります。利回りが高くなる一番の要因は、物件価格が安いことです。
下記の表を参考に、中古アパート以外の主な不動産投資の形態と利回りの違いを確認してみてください。
投資形態 | 利回り目安(表面利回り) |
---|---|
区分マンション | 3~4%(都市部の場合) |
新築アパート | 6〜8% |
中古アパート | 7~10% |
一戸建て | 10%前後 |
上記の表からも、中古アパートはその他の不動産投資と比較して利回りが高いことがわかります。
ただし、利回りを計算する際は、表面利回り(年間家賃収入/物件価格)以外に、実質利回り(諸経費や空室率を考慮した実際の収益率)を計算することが重要です。
中古アパートは修繕費などのコストが高くなる傾向があるため、収支計画は慎重に立てる必要があります。
新築物件よりも初期費用が安い
中古アパートの購入は、新築物件と比較すると初期費用を抑えることができます。
新築物件と比較して物件価格が安価なことで、必要な自己資金が少なくなるからです。融資を受ける場合も、借入額と返済負担が軽減される点は大きなメリットだといえるでしょう。
マンションのデータになりますが国土交通省「不動産価格指数(住宅)」によると、2023年時点で中古住宅の価格指数(不動産の価格動向)は新築に比べて約15〜20%低く、中古マンションは約80%前後です。
収益物件である木造アパートでは、これより大きな価格差が生じるケースもあります。
しかしながら、限られた資金で不動産投資を始める場合、中古アパートの低い初期費用は大きなメリットであり、投資への参入障壁を大幅に下げてくれます。
資産価値が下がりにくい
中古アパートは新築物件と比較して、将来的な資産価値の下落幅が小さくなります。なぜなら、中古アパートは購入時点ですでにある程度価格が下落しているからです。
特に立地の良い中古物件や都心部の物件では、将来的な需要も期待できます。
そのため、土地価格も維持されやすく、経年劣化を考慮しても資産価値が保たれやすい点は大きな魅力です。
資産価値の安定性は、不動産投資における出口戦略(将来的な売却計画)において非常に重要です。価値が大きく下落しにくい中古物件は、長期投資の安定性と将来の売却時の選択肢を広げてくれます。
自分の裁量で物件価値を向上させられる
中古アパートは、自分のアイデアとセンスを生かして、物件価値を高められることが大きな魅力です。
戦略的なリノベーションや差別化されたサービス提供により、競争力を向上させることができます。競争力を向上させると、家賃アップや空室率低下を実現できる点は、中古アパートの大きな魅力の一つだといえるでしょう。
付加価値を向上させる工事の一例は以下のとおりです。
- キッチンや浴室の設備交換
- 入居者のニーズに合わせた差別化(インターネット無料・宅配ボックスの設置など)
- 外観や共用部分のデザイン刷新
自分の裁量で物件の個性を生かした運営ができることは、中古アパート投資の魅力の一つといえるでしょう。
この記事を書いた人
TERAKO編集部
小田急不動産
横溝 浩由
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