不動産投資における収益物件売却の重要なポイント

集積物件の売却価格や手取り額は、事前の準備や売却方法によって大きく変わります。
売却の基本から税金、手続きの流れまで、収益物件を上手に売るための重要ポイントをわかりやすく解説します。
この記事の目次
収益物件を高く売却するにはどうすればよいのか
収益物件とは、入居者からの家賃収入を得ることを目的とした不動産を指します。アパート・マンション・戸建ての賃貸住宅に加え、店舗やオフィス、駐車場なども収益物件に該当します。
購入後は、運用を通じて「インカムゲイン(家賃収入)」を得ることが基本となり、売却時には「キャピタルゲイン(売却益)」を期待できます。
以下では、収益物件売却の基本的な知識として、メリット・デメリット、売却方法、価格の算出方法などを順に解説していきます。
収益物件を売却するメリット
収益物件の売却は、単に不動産を手放すだけでなく、運用益から売却益へと資産構成を変える大きな判断となります。ここでは、売却に踏み切る前に押さえておきたいメリットとデメリットを整理しておきましょう。
収益物件を売却するメリットは以下の3点です。
- まとまった資金を得られる
- 管理の手間から解放される
- 相続・資産整理の一環として使える
詳しく解説します。
まとまった資金を得られる
収益物件は、運用を続けて家賃収入を得るのが基本ですが、売却によって一括で大きな現金を手にすることができます。ローンを完済していれば、売却益をそのまま次の投資や生活資金に充てることも可能です。
管理の手間から解放される
物件の運用を続けるには、空室対応や修繕、入居者トラブルなどへの対応がつきものです。売却することで、こうした手間や精神的なストレスから解放されます。
相続・資産整理の一環として使える
親から相続した収益物件を売却することで、相続税の支払いや兄弟間の分配をスムーズに行えるケースもあります。資産整理の手段としても有効です。
収益物件を売却するデメリット
収益物件を売却するデメリットは以下の3点です。
- 継続的な家賃収入を失う
- 譲渡所得税などの課税対象になる
- 売却タイミングを誤ると損をする
継続的な家賃収入を失う
売却後は当然ながら家賃収入が得られなくなるため、生活資金や老後資金に活用していた場合は、代替の収入源を考える必要があります。
譲渡所得税などの課税対象になる
収益物件を売却して利益を得た場合は、譲渡所得税(所得税・住民税・復興特別所得税)がかかります。思ったよりも手残りが少なくなる可能性があるため、事前に税額シミュレーションを行っておくと安心です。
売却タイミングを誤ると損をする
市場が下落傾向にある時期や、入居率が低い状態で売却すると、希望価格での成約が難しくなります。売却は「タイミング」が重要です。
収益物件の売却は仲介と買取がある
収益物件を売却する際の方法は、大きく分けて「仲介による売却」と「不動産会社による買取」の2種類があります。それぞれにメリット・デメリットがあり、物件の状況や売主の事情によって適した選択肢が異なります。
仲介での売却
不動産仲介会社を通じて買主を探す方法です。販売活動の期間中は広告掲載などを行い、売却価格が市場相場に近く、高く売れる可能性がある点がメリットです。
デメリットは成約までに時間がかかることがある点です。
仲介での売却は、以下のような人におすすめです。
- 少しでも高く売却したい
- 売却を急いでいない
不動産会社による買取
不動産会社が物件を直接買い取る方法です。仲介とは異なり、最短数日〜数週間で現金化できる点が特徴です。瑕疵担保責任(契約不適合責任)を免責できるため、売却後に不具合が発覚しても、回復のための費用を支払う必要もありません。
デメリットは、仲介に比べて売却価格は低くなりやすい点です(相場の7〜9割程度)。
不動産会社による買取は、以下のような人におすすめです。
- 早期に資金化したい事情がある(相続、借入返済など)
- 空室や築年数の古さで買主がつきにくい
収益物件の売却価格を算出するやり方
収益物件の売却価格は、「どれだけ利益を生み出せる物件か」という観点で評価されるため、一般的な居住用不動産の査定とは大きく異なります。投資家にとって重要なのは、「この物件をいくらで買えば、どの程度の利回りが得られるか」です。
そのため、価格算出には主に3つの評価手法が用いられます。それぞれの特性を理解し、複数の手法を組み合わせて査定を行うことで、より精度の高い売却価格が導き出されます。
収益還元法と取引事例比較法を用いる
主に投資家が用いる「収益還元法」は、将来的に得られる家賃収入をベースに物件の価値を算出する方法です。現在の価値が高くても、将来の収益性が悪いと損をします。収益性が高ければローンを返済できないリスクも減るでしょう。
収益還元法の査定方法には「直接還元法」と「DCF法(ディスカウント・キャッシュフロー法)」の2種類があります。
物件が1年間で得られる収益から売却価格を計算するのが「直接還元法」で、収益を現在の価値へと換算して計算するのが「DCF法」です。
「DCF法」は直接還元法より計算が複雑ですが、査定額を正確に割り出せます。リスクが高めな物件や、長期保有したい物件の査定に役立ちます。
一方、「取引事例比較法」は似た条件の物件の直近の取引価格を複数比較し不動産の価値を推定します。市場の動向や類似した条件を持つ物件を踏まえて価格を設定できる方法です。
原価法を用いる
主に金融期間が用いる「原価法」は、建物を建築した場合の価格(原価)から設備などの劣化分を差し引き、現在の価値に近い金額に近づけます。
金融期間においてローンの担保としての価値を評価できるメリットがあります。将来の収益性は不確実なため「返済できなくなった場合に回収できるか」を重要視するのです。
査定を依頼する前のチェックポイントと査定書の見方
収益物件の売却を成功させるには、正確な査定価格の把握が欠かせません。ただし、査定を受ける前にオーナー自身で確認・準備しておくべきポイントがいくつかあります。また、査定書の内容を正しく読み取る力も重要です。ここでは、査定前にチェックすべき事項と、査定書を受け取った後に注目すべき点を解説します。
【査定依頼前のチェックポイント】
- 重要書類を準備しておく
登記簿謄本、土地の測量図などがあると、査定がスムーズになります。 - 物件の状態を把握しておく
外壁や屋根、共用部などの劣化状況を事前に確認しておくとよいでしょう。必要に応じて簡易的な清掃や補修を行うだけでも、印象が大きく変わることがあります。 - 近隣の取引事例や相場を調べる
査定価格の妥当性を判断するために、類似物件の売出価格・成約事例を事前にリサーチしておくのもおすすめです。
査定書を受け取った際は、取引予想価格、費用が重要です。
複数社に査定を依頼して「比較検討」することが重要です。また、価格だけでなく査定の根拠や対応の丁寧さも、不動産会社選びの重要な判断材料となります。
査定価格はあくまで「予想される売却額」であり、実際の売買価格とは異なることもあります。
収益物件の売却でかかる費用や税金
収益物件を売却する際には、「売却益がそのまま手元に残る」とは限りません。実際には、さまざまな諸費用や税金が差し引かれ、手取り額は目減りします。特に譲渡所得にかかる税金や、売買に成功した際に不動産会社に支払う仲介手数料などは、売却前にしっかりと把握しておくべきポイントです。
収益物件を売って得られた利益には、譲渡所得税が課されます。ここでの「利益」は以下の計算式で算出されます。
譲渡所得 = 売却価格 −(取得費+譲渡費用)
取得費とは購入時の物件価格や登記費用などで、譲渡費用には仲介手数料や測量費などが含まれます。取得費の計算が難しい場合、「売却価格の5%」を概算で取得費とすることも可能です(概算取得費)。
税金は譲渡所得に税率を乗じることで計算されます。所有期間5年以下の短期譲渡所得と5年越えの長期譲渡所得では税率が2倍近く異なるため、売却タイミングの見極めが非常に重要です。
税金の控除や特例
マイホームと違い収益物件の売却は節税できる特例が少ないですが、一定の条件のもとで事業用不動産の買換え特例を利用できます。
事業用不動産の買換え特例とは、個人が2026年12月31日までに事業用の建物や土地を売却して、要件を満たした事業用資産に買い替えた場合、譲渡所得の一部を先送りできます。
売却利益が発生するかどうかを税理士または不動産会社の提携税理士に相談して、節税対策も検討しましょう。
収益物件を売却する流れ
収益物件の売却には、投資用ならではの注意点があります。特に、「どの不動産会社に依頼するか」「どの売却方法を選ぶか」といった初期判断が、売却価格とスピードを大きく左右します。以下に、基本的な売却の流れとポイントを整理してご紹介します。
ステップ1:売却の準備
まずは物件情報と必要書類を整理します。以下は準備項目の一例です。
- 登記簿謄本・建築確認済証・間取り図
- 賃貸借契約書(入居者情報)
- 固定資産税の納税通知書
あわせて、近隣相場の確認や売却希望価格の検討もしておくとスムーズです。
ステップ2:査定の依頼
不動産会社に査定を依頼します。 複数社へ依頼して価格や提案内容を比較することが重要です。収益物件に強い会社を中心に検討しましょう。
ステップ3:媒介契約を締結する
媒介契約は以下の3種類があり、それぞれ特徴があります。例えば一般媒介契約は、複数社と同時に契約でき、悪徳な不動産会社に騙されるリスクが減ります。
ただし不動産会社のモチベーションが低くなりやすいです。
種類 | 特徴 | 向いている人 |
---|---|---|
専属専任媒介 | 1社限定・自己発見NG・週1報告 | 手厚い売却活動を求めている人(物件の状態が悪い・高く売りたいなど) |
専任媒介 | 1社限定・自己発見OK・2週に1回報告 | 購入希望者と直接売買する可能性がある人 |
一般媒介 | 複数社に依頼可能・報告義務なし | 人気のある物件を売却したい人 |
ステップ4:売却活動
不動産会社が物件情報を公開し、販売活動を行います。
収益物件の売却活動は借主が存在しているため、内見は行われません。
ステップ5:契約・引き渡し
買主と条件が合えば、売買契約を締結します。契約後は登記手続きなどを経て、正式な引き渡しとなります。
不動産会社選びのポイント
収益物件に強い不動産会社を選ぶには、以下のポイントをチェックしましょう。
- 投資物件の売買実績がある
- 査定内容の根拠が明確
- 仲介と買取の両方に対応できる
仲介と買取の両方に対応できる会社なら、価格とスピードの両面で比較検討しやすくなります。
この記事を書いた人
TERAKO編集部
小田急不動産
飯野一久
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