アパート一棟買いの利回り目安は?理想の数値や低下する原因をわかりやすく解説

アパート一棟投資は表面利回りだけで判断すると、諸経費や空室リスクなどを見落とし、安定した収益につながらない可能性があります。
満室を想定した利回りと実際の運用で変動する利回りの違いを押さえることが、長期的に堅実な投資成果を得るための第一歩です。
利回り計算の基礎知識や首都圏・地方別の利回り目安、低下する要因については具体例とともに詳しく解説します。
この記事の目次
アパート一棟買いの利回りとは?
はじめに利回りの概要や計算方法、アパート一棟買いにおける利回りの目安について解説します。
賃貸経営における利回りの概要
利回りとは投資した金額に対して得られる収益(リターン)の割合です。
アパート一棟買いによる賃貸経営の場合は、年間の家賃収入をアパートの購入にかかった費用で割った額が利回りとなります。
賃貸経営において利回り計算は欠かせません。利回りが重要といえる理由として以下の3つが挙げられます。
- 購入する不動産を選ぶ際の判断基準になる
- ほかの不動産を比較する際の指標になる
- 投資(不動産の購入)にかかった費用の回収にかかる年数を計算できる
また、利回りの活用によって、1年間に得られるリターンや投資金額の回収にかかる期間の見込みを計算できます。
利回りの種類
賃貸経営において重要視される利回りは以下の3種類です。
- 表面利回り
- 実質利回り
- 想定利回り
それぞれの概要や計算方法について解説します。
表面利回りの計算方法
表面利回りとは、賃貸経営による年間の家賃収入を不動産の購入価額で割った数値です。計算方法は単純で年間の家賃収入を物件の購入価格で割ります。
年間の家賃収入 ÷ 物件価格 × 100= 表面利回り
表面利回りの特徴として以下の3つが挙げられます。
- 3種類の利回りの中でも最も多く利用される
- 不動産購入時にかかった諸経費や賃貸経営で発生する費用を考慮しない
- 入居が1年間継続する前提での計算である
表面利回りは賃貸経営で最も多く利用されており、物件情報に記載されている利回りは表利回りだといわれています。
また、金融機関への融資申し込み時に作成する事業計画書に記入する金額も、表面利回りを用いて計算するケースが多くみられます。
実質利回りの計算方法
実質利回りとは年間の家賃収入から賃貸経営にかかる諸経費を差し引いた額を、不動産の購入にかかった金額で割った数値です。計算式を表すと以下のようになります。
(年間の家賃収入-年間の必要経費)÷(不動産の購入価額+購入時に発生した諸経費)×100=実質利回り(%)
実質利回りの特徴は以下の3点です。
- 諸経費を考慮して計算するため現実的な利回りを把握できる
- 考慮すべきコストについて明確な定義がされていない
- 賃貸経営を始めなけれコストを正確に把握できないため、購入時点では予測の部分が大きくなる
呼び名の通り、実質利回りはアパート一棟を運用した場合の利回りをより具体的に計算できます。
ただし、諸経費の定義が不明瞭かつ実際に運用を始めなければ把握できない情報を使うため、購入前に実質利回りを計算するのは難しいでしょう。
物件情報に記載されているのが表面利回りであるのも、不動産会社側で実質利回りを提示するのが難しいためといえます。
想定利回りの計算方法
想定利回りとは物件が満室の状態で計算する利回りです。1年を通して満室だと仮定し、年間の家賃収入を不動産の購入価額で割って計算します。
満室時の年間家賃収入 ÷ 不動産の購入価額 × 100 = 想定利回り(%)
表面利回りとの違いは、実際に空室があったとしても満室を想定して計算する点です。表面利回りの場合は空室を考慮して計算しますが、想定利回りは常に満室と考えて計算します。
ただし、表面利回り=満室想定時の利回りとして扱うケースも多く、表面利回りと想定利回りを同じ意味として使うこともあります。そのため、物件情報に記載される利回りは想定利回りと考えても差し支えないでしょう。
アパート一棟買いした場合の利回り目安
アパートを一棟買いした場合の利回りの目安は首都圏が8%弱、地方が9%程度のため、全国的には8%前後といわれています。
地方は都心よりも不動産の売買価額が低めの傾向にあるため、相対的に利回りが高くなります。ただし前述したように、物件情報に記載される利回りは一般的に満室と仮定した想定利回りです。
地方は流動性の確保が難しく人が集まりにくいエリアもあるため、エリアによっては空室リスクが高くなります。空室数が多いほど想定利回りとの差が大きくなる点にご注意ください。
アパート一棟買いした場合の理想の利回り
アパート一棟買いに際して、前述した利回りの目安である8%を超えるのが理想です。
ただし、新築で購入する場合は購入価額が高くなるため、必然的に利回りも下がる傾向にあります。
新築のアパート一棟買いであれば最低ラインが3%、理想のラインは5%超といえるでしょう。
表面利回りと実質利回りの数字の差について
前述のように、表面利回りは賃貸経営にかかる費用を考慮していません。そのため各種費用を考慮した実質利回りの方が低くなります。
この章では、表面利回りと実質利回りの差について具体例を用いて解説します。
一棟アパートの場合
まずは一棟アパートの場合です。今回は以下の例を用いて表面利回りと実質利回りそれぞれを計算します。
- 購入価額:8,000万円
- 購入時の諸経費:800万円(物件価格の10%)
- 年間の家賃収入:650万円
- 年間の諸経費:98万円(家賃収入の15.5%)
【表面利回り】
650万円÷8,000万円 × 100=8.125%
【実質利回り】
(650万円-98万円)÷(8,000万円+800万円)× 100=約6.273%
表面利回りと実質利回りの差は約1.85%となりました。
区分マンションの場合
区分マンションの場合は部屋数が少ない分、アパート一棟買いに比べて初期費用は抑えやすいでしょう。
ただし以下の理由から、区分マンションはアパート一棟買いよりも利回りは低めの傾向にあります。
- 資金規模が小さい分、高い収益につながりにくい
- 管理会社に支払う手数料が高め
特に重要なのが2の要素です。管理会社に支払う手数料が高額な分、賃貸経営の経費率がアパート一棟買いに比べて高めになります。
以上を踏まえた上で、以下の例を用いて表面利回りと実質利回りそれぞれを計算します。
- 購入価額:4,000万円
- 購入時の諸経費:400万円(物件価格の10%)
- 年間の家賃収入:320万円
- 年間の諸経費:64万円(家賃収入の20%)
【表面利回り】
320万円÷4,000万円 × 100=8%
【実質利回り】
(320万円-64万円)÷(4,000万円+400万円)=約5.82%
表面利回りと実質利回りの差は約2.18%です。アパート一棟買いに比べて経費の割合が高い分、表面利回りと実質利回りの差が大きくなる傾向です。
戸建て物件の場合
戸建て物件の初期費用は集合住宅に比べて安めの傾向にあります。
集合住宅のような共用部が存在しないため経理率が低い点や、長期的な入居を期待できる点もメリットです。ただし、空室リスクが高い形態でもあります。
以上を踏まえ、以下の例を用いて利回りを計算します。
- 購入価額:3,000万円
- 購入時の諸経費:300万円(物件価格の10%)
- 年間の家賃収入:240万円
- 年間の諸経費:31万円(家賃収入の約13%)
【表面利回り】
240万円÷3,000万円 × 100=8%
【実質利回り】
(240万円-31万円)÷(3,000万円+300万円)=約6.33%
表面利回りと実質利回りの差は約1.67%です。経費率が低い分、ほかの物件に比べて差が小さくなります。
アパート一棟買いで利回りが低下する原因
アパート一棟買いにあたり、利回りを含むさまざまな条件を考慮した上で物件を選ぶとよいでしょう。
しかし実際のところ、当初想定していた利回りより実際の利回りが低いケースが多々みられます。また、運用の途中で利回りが低下してしまうことも少なくありません。
アパート一棟買いで利回りが低下する原因を5つご紹介します。
アパートの空室が長く続いた
利回りは満室もしくは空室率を低めに計算するのが一般的です。そのため、アパートの空室が長く続くほど、想定していたよりも利回りは低くなってしまいます。
毎月の管理費や修繕費が高い
経費率が高いほど実質利回りは低くなります。経費の中でも、管理費や修繕費は変動しやすい支出です。
毎月の管理費や修繕費が想定よりも運用の負担になっている場合や、建物の老朽化などに伴い修理費が高額になった場合も、利回りは低下してしまいます。
消費税や固定資産税引き上げによるコスト増
消費税の増税や税法改正など、政府による税に関する施策によって利回りが下がることもあります。さらに、不動産投資では固定資産税や都市計画税の変動にも注意が必要です。
アパート需要の低下などに伴う家賃の下落
周辺エリアで賃貸需要が低下したり、競合物件との価格競争が激化したりすると、家賃を引き下げざるを得ない場合があります。
家賃が下がると年間の家賃収入も減少し、仮にアパートが満室でも利回りは低下してしまいます。
そのため利回りの目安だけで判断せず、実質利回りや低下要因を的確に見極めたうえで物件選びをすることが、アパート一棟投資を成功させるための鍵です。
この記事を書いた人
TERAKO編集部
小田急不動産
鈴木 和典
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