マンション一棟買いで陥りがちな失敗とは?原因分析と成功するためのポイント

マンション一棟買いは高い収益性が魅力ですが、失敗すれば長期にわたる返済負担や空室リスクに悩む恐れがあります。
頭金不足や立地の選定ミス、表面利回りなどの落とし穴を回避し、実質利回りや耐震基準、ターゲット層の分析を押さえることで黒字化につながります。
失敗の原因から成功のポイントまでわかりやすく解説しますので、マンションの一棟買いで安定した収益を目指しましょう。
この記事の目次
マンション一棟買いでよくある失敗例と対処法
マンション一棟買いはうまくいけば大きな利益を生み出せますが、失敗事例が多いのも事実です。
マンション一棟買いにおける失敗は、事前に対処法を知っていれば避けられたケースも多く存在します。
マンション一棟買いでよくある失敗例とそれぞれの対処法を見ていきましょう。
頭金が少なくローン返済額が高額になった
マンション一棟買いは多額の資金が必要であり、一括払いはほぼ不可能です。そのため多くの場合はローンを組みますが、ローン総額は頭金が少ないほど高額になります。
ローンの審査さえ通過すれば、頭金が少なくても高額のローンを組めます。ただしローンが高額の場合は毎月の返済額も高くなりやすいのが難点です。
毎月の返済負担が重いほど資金繰りも悪化しやすく、結果として返済遅延や賃貸経営の破綻などが起こり得ます。
ローン返済額が高額になり過ぎないよう、なるべく頭金を多く用意するのが理想です。もしくはローン総額を抑えるために、無理のない購入価格のマンションを選ぶのも1つの手段といえます。
マンションの立地が良くなかった
空室率が高いと安定した家賃収入を得られず、賃貸経営で損失が出てしまう恐れがあります。空室になる原因はさまざまですが、多く挙げられるのは立地の悪さです。
例えば以下のようなマンションは立地が悪く、入居者が集まりにくい傾向にあります。
- 最寄り駅まで徒歩10分以上かかる
- 近所にスーパーやコンビニなど買い物できる場所がない
- 交通手段が少なくアクセスが悪い
- 高低差が激しく坂道や階段が多い場所にある
- 幹線道路や線路沿いで音がうるさい
空室リスクを避けるためには、立地が悪いマンションを避けるのが理想です。
もしくは設備を充実させる・外観をきれいにするといった付加価値をつけて、選ばれるような工夫をしましょう。
実質利回りを見落として購入してしまった
表面利回りのみに注目してしまい、実質利回りを見落としてマンションを購入してしまうこともあります。
表面利回りとは、年間の家賃収入をマンションの購入価格で割ることで、家賃収入の目安を割り出したものです。表面利回りの計算では各種経費を考慮しません。
一方で実質利回りは、購入時に発生する付随費用や賃貸経営で発生する経費などを考慮して計算します。
賃貸経営を始めなければ実際の経費は把握できません。また、実質利回りの計算に含める経費の範囲に定義はないため、不動産会社側で実質利回りを提示するのは困難です。
したがって物件情報に記載される利回りは原則として表面利回りであり、実質利回りは購入者が計算する必要があります。
実質利回りを考慮せずに購入してしまうと、想定を下回る利益となってしまう可能性が高いです。当初の計画よりも利益を得られず、マンション経営が赤字になるといった結果になってしまいます。
このような失敗を避けるため、購入時に表面利回りだけでなく実質利回りも計算し、考慮することが大切です。
ターゲット層の分析が甘く空室が長く続いた
ターゲット層の分析が甘く適切な集客ができなかったため、空室が長く続いてしまうケースもあります。
ターゲット層が違えば適切な広告宣伝の方法も異なります。例えば単身者向け物件をメインに扱うサイトでファミリー向けマンションの宣伝をしても、ターゲットであるファミリー層には情報が届かないでしょう。
また、ターゲット層によって求めている設備や重視する要素も異なります。ターゲット層に響くアピールポイントを強調しなければ魅力が伝わらず、選ばれない可能性が高くなってしまいます。
設定したターゲットへ確実に情報を届けるために、ターゲット層の分析を徹底しましょう。その上で、施策を展開することが大切です。
災害対策が不十分で損害が大きかった
一棟買いしたマンションの災害対策が不十分なために想定を上回る損害が発生し、大きな赤字になってしまうケースもあります。
特に、旧耐震基準で設計されているマンションは注意が必要です。新耐震基準と旧耐震基準の主な違いを紹介します。
旧耐震基準 | 新耐震基準 | |
---|---|---|
適用時期 | 1950年~ | 1981年6月1日~ |
耐震性能 | ・震度5程度の中規模の地震で倒壊しない | ・震度5程度の中規模地震は軽微な損傷で済む ・震度6~7の大地震でも倒壊しない |
なお、現行の新・新耐震基準(2000年基準)はさらに規制が強化されています。建築確認日が1981年6月1日よりも前の場合は、旧耐震基準が適用されている可能性があります。
旧耐震基準では大地震には耐えられず、地震により大きな損害が出てしまうかもしれません。倒壊は免れても、入居者対応や修繕で高額の支出が発生する恐れがあります。
災害による損害を最小限にするためには、耐震改修工事や老朽化部分の修繕などを徹底することが大切です。また、老朽化をすぐに見つけられるよう、定期的な点検も行う必要があります。
賃貸経営に関する知識が足りなかった
これまで紹介した以外にも、賃貸経営に関する知識不足が原因で失敗に陥るケースは多数見受けられます。
知識や情報が古いままアップデートされていないため、起こる失敗も少なくありません。
マンション一棟買いを行う前の基本的な不動産投資の勉強はもちろん、日々の情報収集や知識のアップデートが必要不可欠です。
マンション一棟買いで成功するためのポイント
マンション一棟買いで失敗しないように、成功するためのポイントを5つご紹介します。
頭金はできるだけ多く支払う
返済負担が原因での失敗を防ぐため、頭金はできるだけ多く支払うのが理想です。
マンション一棟買いではまとまった家賃収入が入ることもありますが、空室率が高く想定より収入が少ない事態も起こり得ます。満室を前提に収支計画を立ててしまうと失敗につながるリスクが高いです。
返済額が少ないほど毎月の経費率が下がり、多少の空室があっても赤字になるリスクを抑えられるでしょう。
返済計画は念入りに立てる
返済総額を少なくするため・完済までの期間を早めるために、返済期間を短くすることもあります。しかし、返済期間が短いと毎月の返済額が高額になり、経費率が高くなってしまいます。
結果として「頭金はできるだけ多く支払う」と同じように、返済負担が原因で賃貸経営が失敗に終わってしまう可能性が高いです。
返済総額を抑えることも大切ですが、多少の空室があっても無理なく返済を続ける方法を重視しましょう。
ターゲット層に合った間取りや設備にする
ターゲット層に合った間取りや設備にすることも大切です。ターゲット層のニーズを満たさないマンションは選択肢にすら入らず、契約に至る可能性は非常に低くなってしまいます。
購入する前に、エリアや利便性などを考慮してターゲットを設定し、徹底的に分析してニーズを把握しましょう。
その上で、現状の間取りや設備が合致していなかった場合は、改修工事を行うのも1つの方法です。
信頼できる不動産会社を選ぶ
仲介の依頼や相談先として、信頼できる不動産会社を選ぶことも大切です。
不動産会社選びで確認するべきポイントとして以下の3点が挙げられます。
- 不動産仲介や賃貸管理の豊富な実績があるか
- 口コミサイトなどの評判は良いか
- 物件のデメリットや懸念事項もしっかり共有してくれるか
1つの要素だけでなく、複数の要素を考慮して総合的に判断しましょう。
ニーズの高いマンションを選ぶ
マンション一棟買いを行う段階で、ニーズの高いマンションを選ぶのが理想です。
チェックするべきポイントを3つご紹介します。
- 物件の立地(前章「マンションの立地が良くなかった」参考)
- 液状化や洪水などの災害リスク
- 開発計画の有無
マンションに対するニーズはターゲット層によって異なります。ターゲット層の分析をした上で、ニーズの高そうなマンションを選びましょう。
マンション一棟買いで失敗を回避するためのコツ</h2>
マンション一棟買いでは成功するためのポイントだけでなく、失敗を回避するためのコツを押さえることも大切です。
今回はマンション一棟買いで失敗を回避するためのコツを5つご紹介します。
土地の借地権を確認する
マンション一棟買いの失敗を回避するため、土地の借地権は必ず確認しましょう。
借地の賃貸経営では以下のようなトラブルのリスクがあります。
- 地主から値上げを要求され、当初の家賃を維持できなくなる
- 借地権の譲渡を認められない(マンションの売却ができない)
- マンションの自由な修繕や建替えが認められない
地主とのトラブルを防ぐため、借地条件の確認は必須です。もし借地権に関するトラブルの懸念がある場合、別のマンションを選んだほうがよいでしょう。
マンション一棟の価格相場を調べる
相場と比較して高すぎたり安すぎたりするマンションは、何らかの懸念事項が存在する可能性が高いため注意が必要です。
相場を知らなければ、価格が高いもしくは安いということに気づけない恐れもあります。
価格関連のトラブルを回避するため、事前にマンション一棟の価格相場を調べた上でマンション選びをしましょう。
節税のためだけに購入しない
「賃貸経営は節税効果がある」と見聞きしたことのある人も多いでしょう。確かに、賃貸経営によって結果として節税になるケースがあるのは事実です。
しかし、所得税が少なくなるのは不動産所得が赤字かつ、ほかの所得と損益通算ができる場合です。つまり賃貸経営が赤字の場合に節税ができます。
賃貸経営を赤字にするためにマンション一棟買いをするのは本末転倒であり、トータルでは大きな損失です。
節税のためだけにマンションを購入するのは避けるべきといえます。
賃貸経営についての勉強や情報収集を続ける
マンション一棟買いの失敗原因として、「賃貸経営に関する知識が足りなかった」を挙げました。
知識不足による失敗を回避する方法は、賃貸経営についても勉強や情報収集を続けることです。
基礎を学ぶのはもちろん、知識のアップデートも必要です。トレンドの変化や法改正などに対応するためにも、賃貸経営に慣れてからも勉強や情報収集を続けましょう。
必要に応じてマンション売却を検討する
賃貸経営を続けても上手くいくと考えにくい場合や、賃貸経営が過剰な負担になっている場合は、マンションの売却を検討しましょう。
賃貸経営を続けるより辞める方がメリットが大きいと判断した場合は、所有している不動産を売却すべきといえます。
賃貸経営を無理に続けても負担が増える一方ですし、成功にはつながりにくいからです。時にはマンション売却も視野に入れて判断をするとよいでしょう。
この記事を書いた人
TERAKO編集部
小田急不動産
横溝 浩由
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