不動産投資で複数所有するメリットは?デメリットや失敗しないための注意点も
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「不動産投資で物件を複数所有すると、収益が増えやすい」「リスク分散ができる」そんなメリットを耳にしたことがあるかもしれません。しかし、実際に複数の物件を持つと、管理の負担や空室リスクなどの課題も発生します。
では、不動産を複数所有することで得られるメリットとは具体的にどんなものでしょうか。反対に、どんなデメリットがあり、どのような失敗例があるでしょうか。
複数物件を持つことで成功するためのポイントまで詳しく解説します。投資を拡大しようと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
この記事の目次
不動産投資で複数所有するメリット
不動産投資では、複数の物件を所有することに多くの利点があります。収益の増加だけでなく、リスクの分散や税務上の優遇、そして資産形成に大いに役立ちます。
ここでは、複数の物件を所有することで得られる具体的なメリットを詳しく説明します。
家賃収入を増やせる
複数の物件を所有することで、総収入を増やせます。単純に総収入が増えるだけではなく、複利式に収入を増やせるため、1棟のみ所有し続けているよりも収益を大きく増やせます。
例えば、年間12万円の利益を出すアパート1棟を20年間所有した場合と、アパートから利益を得た利益を頭金にして5年に1棟ずつ増やしていった比較をします。
【1棟のみ】
経過年数 | 所有棟数 | 単年度利益 | 累計利益 |
---|---|---|---|
20年 | 1棟 | 12万円 | 240万円 |
【複数所有】
経過年数 | 所有棟数 | 単年度利益 | 累計利益 |
---|---|---|---|
1~5年 | 1棟 | 12万円 | 60万円 |
6~10年 | 2棟 | 24万円 | 120万円 |
11~15年 | 3棟 | 36万円 | 180万円 |
16~20年 | 4棟 | 48万円 | 240万円 |
合計 | 600万円 |
このように、複数の物件を所有することで月々の収入が増加し、安定した収益を得ることが可能です。
収益が安定するだけではなく、収益が増えキャッシュフローがよくなり、余分なキャッシュ(自由に使えるお金)が生まれればローンの繰上げ返済に充てることで投資効率を上げることが可能です。
投資効率が上がり、より多くのキャッシュを生めれば、さらに追加物件の資金にもでき、資産の増大をスピードアップさせることが可能です。
資産を増やせる
複数の不動産を所有することで、資産価値を増やせます。
複数所有しているなかで、資産性の低い物件を資産性の高い物件に入れ替えることで、一棟あたりの資産価値を高めていくことも可能です。資産価値の高い物件を所有することで、将来的に物件を売却する際に得られる利益も増やせるでしょう。
例えば、購入時に比べて物件の価値が上昇している場合、売却時に大きなキャピタルゲイン(売却益)を得られます。
また、不動産は相続や贈与にも適しており、複数所有することで家族や子孫に財産を分ける手段としても利用できます。
リスクを分散できる
複数の物件を所有することで、リスクを分散できます。例えば、1部屋しか所有していない場合、空室になると収入は0になってしまいます。
しかし、10部屋所有していれば、1部屋空室になっても90%の家賃収入は残ります。複数所有しているほうがリスクが分散されるため、収益の安定性が保たれるのです。
また、異なるエリアに物件を所有することで、地域ごとのリスクも分散されます。例えば、あるエリアの経済状況が悪化した場合でも、他のエリアの物件が収益を生んでくれます。
さらには、異なるタイプの物件を所有することでも、リスク分散が図れます。例えばマンション、戸建て住宅、商業用物件など、さまざまなタイプの物件を組み合わせることで、リスクヘッジが可能です。
青色申告が利用できる
アパートやマンションは10戸以上、戸建て住宅は5棟以上の複数の物件を所有することで、青色申告を利用できるようになります。
青色申告を利用することで、最大65万円の特別控除や経費の計上ができ、節税効果が期待できます。青色申告を行うには帳簿の管理が必要ですが、帳簿管理を行うことで経営状況の把握が容易になり、効率的な運営が可能となります。
また、帳簿管理をしていることで金融機関からの信用度が向上し、追加の融資を受けやすくなるというメリットもあります。追加の融資が受けやすくなれば、さらなる投資機会を追求することも可能です。
融資の拡大が可能
複数の物件を所有していると、金融機関からの評価が高まり、追加の融資を受けやすくなります。これにより、さらに多くの物件を購入するための資金調達が容易になり、投資の拡大が可能です。
初めての投資物件を購入する際には、融資を受けるための審査が厳しい場合がありますが、複数物件を所有していることで、金融機関からの信頼を得て、より有利な条件で融資を受けられます。
追加の融資が受けやすくなることで、物件のリノベーションや修繕に必要な資金を確保でき、物件の価値を維持・向上させることも可能です。これにより、物件の収益性と資産価値を高められます。
流動性が向上する
複数の物件を所有することで、資産の流動性が向上します。資産の一部を売却して現金化するという選択肢が増え、急な資金需要にも柔軟に対応できるようになります。
緊急の資金が必要な場合、所有する物件の一部を売却することで、必要な資金を迅速に調達できます。
また、流動性の向上により、新たな投資機会にも迅速に対応できるようになります。例えば、古い物件や収益性の悪い物件を売却して、その売却で得た資金で、より投資効率の良い物件に買い替えることも可能です。
不動産投資で複数所有するときのデメリット
不動産投資で複数の物件を所有することには多くのメリットがありますが、同時にデメリットも存在します。
これらのデメリットを理解し、適切な対策を講じることが重要です。
修繕費や管理費が高額になる
複数の物件を所有すると、それぞれの物件に対する修繕費や管理費も増えます。複数所有すると、それだけ収益は増えますが、修繕費・管理費も大きな金額になります。
そのため、急な修繕の発生に備えてまとまった金額の修繕費や管理費を準備しておく必要があります。対策としては、事前に修繕費や管理費の見積もりを立て、予算内で管理を行うことが重要です。
また、修繕費や管理費を分散させるために、複数の物件の修繕時期をずらして行うことも効果的です。さらに、修繕費や管理費を抑えるには、物件の購入時に築浅の物件や大規模修繕が終わっている物件などを選ぶことも重要です。
空室が増えるおそれがある
複数の物件を所有することで、空室が発生するリスクも増加します。空室が増えると、収益が減少し、固定費やローンの返済が負担になる可能性があります。
対策としては、賃借人のニーズに合わせた物件の提供や適切なマーケティングを行い、空室率を低減させることが重要です。例えば、物件のリノベーションや設備の充実を図り、賃借人にとって魅力的な物件とすることが効果的です。
また、空室が目立ち始めた物件は買い替えを検討するのも重要です。将来性のない物件を長く所有していると、赤字が大きく膨らんでしまい全体の収益に悪影響を及ぼす可能性もあります。
融資の返済負担が増加する
複数の物件を所有することで、融資の返済負担が増加し、キャッシュフローが圧迫されることがあります。
特に、金利が上昇した場合や経済状況が悪化した場合には、返済が厳しくなることがあります。対策としては、返済計画を綿密に立て、余裕を持った資金管理を行うことが重要です。
また、金利変動に対応するために、固定金利のローンを利用することも検討すべきです。さらに、余裕があるときに繰り上げ返済を行い、返済期間や月々の返済額を圧縮していくことも効果的です。
管理の手間がかかる
複数の物件を管理するには、多くの時間や労力が必要となります。管理の手間が増えることで、他の業務やプライベートの時間が圧迫されることもあるでしょう。
特に、物件の維持管理や賃借人の対応にかかる手間は無視できません。
複数所有する場合は、管理会社を活用し、管理業務を外部委託することがおすすめです。管理の手間を軽減し、自分の時間を有効活用できます。
不動産投資で複数所有するに注意すべきポイント
物件を複数所有する際には、いくつかのポイントに注意する必要があります。
物件を購入するタイミングを見極める
物件を購入するタイミングは非常に重要です。市場の動向を把握し、適切なタイミングで購入することで、投資の成功率が高まります。
例えば、市場が高騰している時期に物件を購入すると、その後市場が下落した場合、物件の価値が下がり、投資が失敗に終わるリスクがあります。
行き当たりばったりで購入してしまうと、市場の下落や金利の上昇などのリスクが増加し、収益が減少する可能性があります。
また、自己資金に余裕がある時期に行わないと危険です。新しい物件の購入は、一時的に資金が圧迫するおそれがあります。
そのタイミングで急な出費が発生してしまうと、資金ショートに陥ることもあるので、自己資金には余裕を持たせておくことが重要です。
2軒目の購入は余裕のある返済計画を立てる
物件を複数所有する際には、返済計画を綿密に立てることが重要です。特に2軒目の購入時には、入念にシミュレーションしておくことが大切です。
2件目以降はローンの返済金額も大きくなるため、シミュレーションが甘いと返済が厳しくなる可能性があります。収入の変動や金利の変動も考慮し、無理のない返済計画を立てることで、安定した投資が可能となります。
また、繰り上げ返済やリファイナンスの検討も行い、返済負担を軽減するための対策を講じることが求められます。
同じエリアで物件を購入しない
リスクを分散するには、同じエリアで物件を購入しないことが重要です。異なるエリアに物件を所有することで、地域ごとのリスクを分散し、収益の安定性を高められます。
また、地域の特性や需要に合わせた物件を選ぶことも重要です。例えば、都市部と郊外の物件を組み合わせることで、異なる需要層に対応ができます。
都市部の物件は単身者向けのものが多く、郊外の物件は家賃が安く、ファミリー層に人気があります。このようにエリアや物件の種類を分散することで、異なる需要に対応し、収益の安定性を確保できます。
市場動向を常に把握する
不動産市場は常に変動しています。市場動向を常に把握し、適切な投資判断を行うことが重要です。市場動向を把握するには、定期的に市場レポートをチェックしたり、専門家の意見を聞いたりするとよいでしょう。
市場の変動には最新の情報を収集し、柔軟な対応を心がけることが求められます。また、地域ごとの市場動向を比較し、投資先の選定に役立てることも重要です。
専門家のアドバイスを活用する
不動産投資は特に専門知識が必要な分野です。専門家のアドバイスを活用することで、リスクを最小限に抑え、効率的な投資ができます。
プロの意見を取り入れることで、自分の投資戦略を見直し、より効果的な投資を実現することが可能です。信頼できる専門家を見つけ、自分に合った不動産投資ができるように心がけましょう。
この記事を書いた人
TERAKO編集部
小田急不動産
鳥塚 正人