不動産投資
2025.02.28

アパート1棟の売却にかかる税金を徹底解説!種類や計算方法、節税対策も紹介

アパート1棟の売却にかかる税金を徹底解説!種類や計算方法、節税対策も紹介

アパート1棟を売却すると、譲渡所得税や印紙税、登録免許税などの税金が発生します。

税金について正しく理解し、節税対策を行うことで納税額を大幅に抑えることが可能です。

売却時にかかる税金の種類や計算方法、できるだけ手元に残る利益を増やすためのポイントを解説します。

この記事の目次

アパート1棟を売却した場合にかかる税金の種類

アパート1棟を売却した場合に発生する税金として以下の4種類が挙げられます。

  • 消費税
  • 譲渡所得税
  • 印紙税
  • 登録免許税

それぞれの税金の概要や計算方法、納付方法について詳しく解説します。

消費税

1棟アパートの売却対象のうち、消費税の課税対象になるのは建物部分のみです。土地部分には消費税がかかりません。

1棟アパートの売却代金は建物部分と土地部分の合計額となりますが、消費税は建物部分のみにかかる点にご注意ください。

なお、アパート売却に際して発生する以下の手数料はすべて消費税の課税対象です。

  • 不動産業者に支払う仲介手数料
  • 司法書士に支払う報酬
  • 土地測量費
  • ローンの繰り上げ返済にかかる手数料

2025年2月時点で消費税率は10%です。消費税率は一律のため、取引価格(本体価格)が高額になるほど消費税も高額になります。

譲渡所得税

譲渡所得税とは、譲渡所得に対して課される所得税・復興特別所得税・住民税の総称です。

1棟アパートの売却における譲渡所得は以下のように計算します。

譲渡所得=収入金額-(取得費+譲渡費用)

それぞれの意味は以下の通りです。

  • 収入金額:資産の売却によって受け取った金額
  • 取得費:売却対象である資産の購入に際してかかった金額
  • 譲渡費用:仲介手数料や測量費など、資産を売却するためにかかった費用

譲渡所得税の税率は、売却対象となる不動産の所有期間によって以下のように異なります。

区分 所得税 住民税
長期譲渡所得
(所有期間5年超)
15% 5%
短期譲渡所得
(所有期間5年以下)
30% 19%

出典:国税庁「土地や建物を売ったとき
※復興特別所得税は、所得税額から税額控除を差し引いた額に2.1%を乗じて計算します。復興特別所得税の計算方法・税率は所有期間を問わず一律です。

印紙税

印紙税とは契約書や領収書などの課税文書を作成した際に課される税金です。課税対象の文書に税額分の収入印紙を貼付して納税します。

印紙税の金額は課税文書の種類や記載された契約金額ごとに定められています。

不動産譲渡に関する契約書にかかる印紙税の額は以下の通りです。
(平成26年4月1日から令和9年3月31日までの間に作成される場合)

記載された契約金額 印紙税の額
10万円超50万円以下 200円
50万円超100万円以下 500円
100万円超500万円以下 1,000円
500万円超1,000万円以下 5,000円
1,000万円超5,000万円以下 10,000円
5,000万円超1億円以下 30,000円

出典:国税庁「No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置

登録免許税

登録免許税とは、登記や登録、許認可などに際して発生する税金です。登録免許税の税率は当期の種類ごとに明確に定められています。

1棟アパートの売却に売主側が負担する登録免許税として、抵当権の抹消登記が挙げられます。抵当権は自動で消えるわけではないため、アパートに抵当権を設定している場合は、抹消手続きを行わなくてはいけません。

抵当権抹消登記にかかる登録免許税は申請件数1件につき1,000円です。なお、不動産の名義変更登記にかかる登録免許税は、買主側が負担するのが一般的とされています。

アパート1棟の売却で利用できる節税方法

アパート1棟の売却で発生する4種類の税金のうち、節税対策が可能なのは譲渡所得税です。

消費税の税率は一律ですし、印紙税や登録免許税も税額が決まっているため、納税者による節税対策はできません。

この章ではアパート1棟の売却で利用できる譲渡所得税の節税対策について解説します。

【前提】賃貸不動産の売却時に実施できる節税対策は少ない

前提として、アパート1棟の売却時に実施できる譲渡所得税の節税方法の選択肢は、非常に限られています。不動産売却に関する特例制度の多くは居住用不動産(自宅)の売却を対象としたものであり、賃貸用不動産の売却時には利用できないためです。

例えば、以下の制度はすべて居住用の不動産を売却した際に使える制度であり、賃貸用不動産の売却時は対象外となります。

  • 損益通算の特例
  • 最大3年間の繰越控除
  • 3,000万円の特別控除
  • 軽減税率の特例

詳しくは後述しますが、事業用資産の買い換え時に利用できる特例も存在します。ただし要件が厳しいため、初心者の方が利用するのは難しいでしょう。

また、損益通算は物件の売却で損失が発生した場合は原則利用できません。一方、賃貸経営で発生した赤字(不動産所得の赤字)は、他の所得と損益通算が可能です。

居住用不動産の売却時と賃貸不動産の売却時では、実施できる節税対策の選択肢が大きく異なる点に注意する必要があります。

計上できる経費を漏れなく計算する

譲渡所得税を抑えるために必ず実施するべきなのが、計上できる経費を漏れなく計算することです。

アパート売却における譲渡所得は「収入金額-(取得費+譲渡費用)」で計算します。

つまり、収入金額から差し引く額が増えるほど課税対象が少なくなり、税額を抑えられる仕組みです。

取得費に含まれる支出として以下の例が挙げられます。

  • 売却したアパート1棟の購入代金や建築費用(減価償却費相当額の控除が必要)
  • 不動産取得税
  • 印紙税
  • 登録免許税
  • アパート購入時にかかった仲介手数料

譲渡費用の例は以下の通りです。

  • 不動産業者に支払う仲介手数料
  • 測量費
  • 売却に際して支払った立退料
  • 取り壊し費用
  • 専門家報酬
  • 印紙税

なお、抵当権抹消にかかる費用は譲渡費用には含まれません。アパート売却に関連するものの譲渡費用とみなされない支出は他にも存在するため、経費計上の際は注意が必要です。

譲渡所得税が下がる5年以降に売却する

前述のように、譲渡所得税の税率は、長期譲渡所得と短期譲渡所得それぞれで以下のように異なります。

区分 所得税 住民税
長期譲渡所得
(所有期間5年超)
15% 5%
短期譲渡所得
(所有期間5年以下)
30% 19%

出典:国税庁「土地や建物を売ったとき

不動産を売却した年の1月1日時点で、対象の不動産の所有期間が5年を超える場合は長期譲渡所得に、そうでない場合は短期譲渡所得になります。

長期譲渡所得の税率は、短期譲渡所得の税率よりも20%近くも低いです。譲渡所得税を抑えるためには、長期所有の要件を満たしてから売却するのが良いでしょう。

事業用資産の買換えの特例を利用する

事業用資産の買換えの特例とは、以下の要件を満たす場合に譲渡益の一部に対する課税の繰り延べができる制度です。

  • 事業の用に供している特定の地域内にある土地建物等(譲渡資産)を譲渡した後、一定期間内に買換資産を取得する
  • 買換資産の取得の日から1年以内に、当該買換資産を事業の用に供する
  • 譲渡資産と買換資産が一定の組み合わせに該当する

事業用資産の買換えの特例は、すべての賃貸アパートに適用できるわけではありません。上記で挙げた以外にも細かな要件があるため、詳しくは国税庁の「No.3405 事業用の資産を買い換えたときの特例」をご確認ください。

課税の繰り延べは、譲渡益が非課税になるのではなく、あくまで課税のタイミングを遅らせる制度です。そのため厳密には節税とは少し異なりますが、アパート売却時の税負担を抑える方法としては効果的でしょう。

アパート1棟を売却した際にかかる税金以外の費用

アパート1棟の売却時には、税金以外にもさまざまな費用がかかります。

アパート売却の主な費用について詳しく見ていきましょう。

仲介手数料

アパート売却に際して不動産業者に仲介を依頼する場合に発生する手数料です。

宅地建物取引業法・国土交通省告示において、不動産売買における仲介手数料の上限は以下のように定められています。

不動産売却価格 仲介手数料の上限
200万円以下 売却価格 × 5%+税
200万円超400万円以下 売却価格 × 4%+2万円+税
400万円超 売却価格 × 3%+6万円+税

出典:国土交通省「建設産業・不動産業:<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ

繰上返済手数料

アパート購入時に利用したローンの残債がある場合は、アパート売却に際してローンの一括返済および抵当権の抹消が必要となります。

ローンの一括返済では繰上返済手数料(一括返済手数料)が発生するのが一般的です。手数料の額は金融機関によって異なるため、詳しく知りたい方は問い合わせてみてください。

抵当権抹消にかかる費用

前述のように、抵当権抹消登記にかかる登録免許税は申請件数1件につき1,000円です。

登記手続きは本人が行うことも可能ですが、専門家である司法書士に依頼するケースが多くみられます。抵当権抹消登記を依頼した際の報酬相場は1万円〜2万円程度です。

測量費

境界が確定していない場合、土地家屋調査士による確定測量が必要です。特に、隣の土地と境界が曖昧な場合や、売買契約時に測量図の提示を求められた場合には、測量が必要になります。

相場は35万円〜80万円程度とケースによって大きく異なります。

この記事を書いた人

著者写真 TERAKO編集部
小田急不動産
鈴木 和典

小田急グループの総合力を活かしながら、これまで幅広く不動産実務を経験して参りました。現在は、本社営業センターの責任者を務めております。私たちの発信が人生100年時代の選択肢を広げるきっかけになれれば大変うれしく思います。 著者の記事一覧はコチラ
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