賃貸中の物件も売却できる?オーナーチェンジと立ち退きの違いを徹底解説
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賃貸中の物件は、「オーナーチェンジ」もしくは「空室」により売却できます。
オーナーチェンジは家賃収入を得ながら売却できますが、相場より安くなることがあります。
一方、「空室」は立ち退き交渉や立ち退き料が発生する可能性がありますが、買主の幅が広がり、高値で売れる可能性があるのが特徴です。
それぞれのメリット・デメリットを比較し、最適な売却方法を解説します。
この記事の目次
賃貸中の物件でも売却は可能
マンションやアパートなど、不動産を所有しているオーナーの中には、その物件を売却しようと考えている方も少なくありません。
一方、その物件が賃貸中の場合、売却できるのか疑問に思う方もいるのではないでしょうか。
ここでは、賃貸中の物件の売却方法を3つご紹介します。
オーナーチェンジなら賃貸中でも売却できる
結論から申し上げると、賃貸中の物件でも売却は可能です。
入居者がいる状態で物件の売買を行うことを「オーナーチェンジ」と呼びます。2020年4月の民法改正(※)以前から、賃貸中の物件を売却・譲渡する際は入居者の承諾は不要でした。
民法改正ではこのルールが明文化され、入居者の権利がより明確になったのです。
参考:法務省|賃貸借契約に関するルールの見直し
入居者に退去してもらって売却する
2つ目は、入居者の退去後、空室の状態で物件を売却する方法です。
しかし、入居者がいつ退去するかわからない場合、売却をスムーズに進めることは難しいでしょう。では、入居者を退去させたら良いのでは?と考える方もいるかもしれませんが、オーナーは正当な事由がない限り入居者を退去させられません。
退去を要求できる正当な事由とは、
- 物件の老朽化により、建て替えをする場合
- オーナーまたは、その家族や親族が住むことになった場合
- 経済的な理由がありやむを得ない場合
- 入居者が一定期間以上、賃料を滞納している場合
などが挙げられます。
正当な事由があれば、賃貸物件のオーナーは入居者に退去を求めることができます。ただし、退去交渉を円滑に進めるために、実務上は立ち退き料を支払うケースが多いようです。
入居者に購入してもらう
3つ目は、入居者に物件を購入してもらう方法です。
入居者がその物件を気に入っていて購入の意思がある場合、購入してくれる可能性があります。この方法であれば、立ち退き料や賃貸契約の切り替えなどが必要なくなります。
また、内覧をする必要もなくなるため、3つの売却方法の中では比較的手間がかかりません。
賃貸中の物件はオーナーチェンジと立ち退きどちらがいい?
もし、入居者に購入の意思がなかった場合、賃貸物件の売却方法はオーナーチェンジか立ち退きのどちらかになります。
ここでは、オーナーチェンジと立ち退きのメリット・デメリットについて、それぞれ解説します。
どちらの方法がおすすめなのかも一緒に解説しますので、参考にしてみてください。
オーナーチェンジのメリット
オーナーチェンジのメリットについて詳しく見ていきましょう。
入居者に立ち退きを依頼する必要がない
オーナーチェンジのメリットとしてまず挙げられるのが、入居者に立ち退きを依頼する必要がないということです。
入居者が変わらないため設備を交換する必要がなく、立ち退き料などコストがかかりません。
家賃収入を得ながら売却できる
賃貸中の物件を売却する場合、買主が決まっても売買契約が完了するまでオーナーに家賃が入ります。
立ち退きの場合は、一時的に空室になるため家賃収入が発生しない月があります。
オーナーチェンジのデメリット
オーナーチェンジはメリットだけでなくデメリットもあるため、きちんと理解しておくことが大切です。
相場より売却価格が安くなる可能性がある
賃貸中の物件を売却する場合、買主は投資目的の人に絞られます。投資目的の買主は、購入価格(売買価格)にシビアになるため、相場より安い価格になる可能性があります。
投資用の物件は、収益や修繕履歴などの数値で判断されるため、一般住宅より安い価格で売却されることがあるからです。
賃貸中の物件なので買主が限定される
前述したように、賃貸中の物件の売却は買主が投資目的の人に限定されます。空室であれば投資目的の他に、自分が住む用の家として購入したいと考える方もいます。
しかし、入居者がいる場合、自分が住む用の家として買う人は多くないでしょう。
立ち退きのメリット
入居者がいる賃貸中の物件では、立ち退いてもらうことになります。
その場合、売主にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
空室の方が売れやすい
入居者に立ち退いてもらい、空室の物件を売却することで、買主の幅が広がります。特にファミリータイプの物件では、マイホームとして購入したいと考える人もいるでしょう。
そうなれば、投資目的の場合よりも高値の売却価格で取引できる可能性があります。
建物を解体して更地にすることができる
入居者がいない賃貸物件は、物件を解体して更地にすることも可能です。
更地にして売却することで、投資用物件を新たに建てたり、新築戸建てのマイホームを建てたりできます。土地を探している方にとっては、条件が合えば購入したいと思う人もいるでしょう。
立ち退きのデメリット
立ち退きにはデメリットもあるため詳しく見ていきましょう。
立ち退き料を支払う必要がある
オーナー都合で立ち退いてもらう場合、入居者へ立ち退き料を支払う必要があります。立ち退き料の相場は、賃料の約6〜10カ月分です。その程度の金額があれば、入居者の引っ越し費用をまかなえるでしょう。
これはオーナーにとっては痛い出費になりますが、退去してもらうためには必要な経費といえます。
強制退去はできないので売却まで時間がかかる
前述したように、オーナーは正当な事由がない限り入居者を退去させることはできません。
定期借家契約の場合は、オーナーは契約終了の6カ月〜1年前までの間に入居者へ通知を行う必要があります。ただし、最短でも6カ月はかかるので注意が必要です。
賃貸中の物件を売却するときの流れ
賃貸中の物件を売ろうと決めた際、どのような手順を踏めばいいかわからない方も多いと思います。
そのため、物件を売却する際の流れについて分かりやすく解説します。
それぞれの説明と、注意することもお伝えするので一緒に確認していきましょう。
①入居者の予定や退去の有無を確認する
まずは、入居者に購入の意思があるか、なければ退去できるかを確認します。オーナーチェンジの場合、入居者への確認は特に必要ありません。
立ち退きの場合は、入居者との契約が「普通借家契約」か「定期借家契約」かを事前に確認しておきましょう。
前述したように、定期借家契約であれば、6カ月〜1年前までにオーナーから入居者へ契約解除の通知をすることで契約を終了できます。しかし、普通借家契約の場合、オーナーからの契約解除の申し入れは正当な事由でない限り認められません。
正当な事由があったとしても、入居者への連絡は遅くとも6カ月前までに行っておきましょう。
②不動産会社に査定を依頼・契約をする
次に、不動産会社に査定を依頼します。
どのような売却方法であっても、売買価格を決めるために査定は必要です。入居者がいる物件の査定は訪問査定が難しいため、簡易査定してもらうとよいでしょう。
また、査定は複数の不動産会社に依頼するのがおすすめです。査定額を比較することで、価格の相場がわかります。
そして、担当者の対応力や営業力も考慮し、一番信用できる不動産会社と媒介契約を結びましょう。媒介契約とは不動産会社に依頼する仲介の契約のことです。
媒介契約は3種類あり、どの媒介契約を選ぶかは売主の自由です。
契約内容 | 一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 |
---|---|---|---|
他社との契約 | 可 | 不可 | 不可 |
自己発見取引(買い手を自分で見つけること) | 可 | 可 | 不可 |
不動産流通機構(レインズ)への登録義務 | 任意 | 7日以内に登録 | 5日以内に登録 |
依頼者への状況報告 | 任意 | 14日1回 | 7日1回 |
契約の有効期間の上限 | 特になし | 3カ月以内 | 3カ月以内 |
③物件の売却活動がスタートする
不動産会社と媒介契約が済んだら、賃貸物件の売却活動を始めていきます。賃貸中の物件の売却では内覧はほとんどありません。
購入希望者が投資目的の場合は、物件の状態よりも資産価値や利回りを重視する傾向です。修繕やリフォームをした履歴がある場合は、工事前後の写真などがあると参考資料になるのでおすすめです。
④買主と売買契約を締結する
売買価格や条件など、買主と合意できたら売買契約を締結します。
重要事項説明書や売買契約書は不動産会社が用意してくれますが、付帯設備表や物件状況報告書は売主が用意しなくてはいけません。
付帯設備表とは、設備の有無や、不具合の状況を示したものです。物件状況報告書は、雨漏りやシロアリの被害の有無など、建物の不具合を買主に報告するための書類です。
⑤決済・物件の引き渡しが完了
買主の代金支払いの準備が整ったら、日程を決め、司法書士立ち会いのもと決済・引き渡しを行います。同時に、所有権移転登記の手続きも行うとよいでしょう。
また、オーナーチェンジの場合は入居者から預かっている敷金を新しいオーナー(買主)へ渡し、日割り分の家賃の精算が必要です。
⑥入居者にオーナーの変更を通知する
所有権移転登記が完了したら、入居者へオーナー変更を通知します。入居者が家賃の支払先で迷わないように、新しいオーナーの支払先も合わせて通知しておきましょう。
また、通知する際は入居者から同意書をもらっておくと、後々のトラブル回避に繋がるのでおすすめです。
この記事を書いた人
TERAKO編集部
小田急不動産
横溝 浩由