収益物件の売り時はいつ?利益率が高いのは?売却するメリットと注意点も解説
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収益物件を所有していると、売却のタイミングに悩まされます。売り時を逃せば、利益を最大化できず後悔することになるかもしれません。
利益率が高くなる売却のタイミングを解説し、売却のメリットや注意点についても詳しく紹介します。
収益物件を賢く売却するためのポイントを知りたい方は、参考にしてください。
この記事の目次
収益物件を売却するメリット
収益物件は現物資産であり、家賃収入という形でインカムゲイン(運用益)を得られる点がメリットです。
しかし、その反面、一度に大きな収益は望めません。また、現物資産ならではの管理の手間やリスクがある点もデメリットです。
収益物件を売却し、現金化することで得られる具体的なメリットを見ていきましょう。
キャピタルゲインを得られる
収益物件を売却することで、キャピタルゲインである「売却益」を得られます。キャピタルゲインは生活費や住宅ローンの返済に充てる、新たな投資の資金源にするなど、自由に使えます。
ただし、収益物件は大きな財産ではありますが、流動性が低くすぐに現金化できません。そのため、まとまった資金が必要になったときに売却活動をしても間に合わないことがあります。
投資計画やライフスタイルによっては、早めに売却して現金化したほうがメリットは大きいといえるでしょう。
不動産管理の手間がかからない
不動産管理の手間がかからなくなる点も収益物件売却のメリットです。
不動産の管理はほぼ管理会社に任せられるとはいえ、建物管理、賃貸管理の面でオーナー自身の判断が必要なシーンは数多くあります。
物件が古くなるほどメンテナンスや入居者の確保が難しくなり、心労負担が大きくなってしまいます。
また、運用計画の策定や、年度末に行う確定申告、税金の支払いなども収益物件のオーナーの仕事です。専門知識が必要な分野もあり、特に副業として収益物件を保有している人にとっては大変な手間になるでしょう。
収益物件を売却すれば、不動産管理に手間をかけることもなくなります。不動産管理が負担になっている場合は、売却を検討しても良いでしょう。
不動産投資のリスクを回避できる
不動産投資には現物資産ならではのリスクが数多くあります。
最も深刻なリスクは空室リスクです。入居者が見つからず空室の状態が続くと、経費ばかりがかかり赤字化してしまいます。
他にも、入居者が家賃を払わない「家賃滞納リスク」や、地震や火事などで物件の資産価値が急落する「災害リスク」など、不動産投資ならではのリスクが存在します。もちろん、投資にはリスクがつきものです。
しかし、不動産投資のリスクは多種多様で回避が難しいこと、リスク軽減のための対策が必要になることから、金銭的にも精神的にも大きな負担になってしまうことがあります。
収益不動産を売却すれば、リスクに悩まされることもなくなります。特に今後大きなリスクが大きくなると予想される物件は、早めに手放すと損失を抑えられるでしょう。
収益物件の売り時
収益物件を売却するときに注意したいのがタイミングです。
物件価格は物件の状態や立地、経済情勢によって大きく変動します。売り時を誤るとキャピタルゲインが小さくなり、赤字になってしまいかねません。
赤字になっても売却できればまだ良いのですが、買い手がつかず売却活動が長引いてしまう場合もあります。
売り時を狙って売却活動をすることで、物件を早期かつ好条件で売却できる確率を上げられます。
収益物件の主な売り時は以下のとおりです。
- リスクが高くなると予想されるとき
- 物件価格が上がっているとき
- 買い手がつきやすいとき
それぞれの理由と条件について詳しく紹介します。
リスクが高くなると予想されるとき
不動産投資におけるリスクが高くなると予想されるときは、早めに売却活動を始めましょう。
以下のようなタイミングで物件を売却できれば、不動産投資による損失を抑えられます。
大規模修繕を控えているとき
マンションやアパートを一室単位で所有する「区分投資」では、大規模修繕前に売却することでリスクを軽減できます。
大規模修繕とは、10~15年に一度行われる共有部分の修繕工事です。通常、工事費にはオーナーが毎月管理組合に支払う「修繕積立金」が充てられます。しかし、工事費が高額になる場合は一時金を請求されることがあります。
物件の劣化が激しく、修繕費がかさむと予想される場合は、大規模修繕前に物件を売却することで多額の出費を回避できます。
デッドクロスを迎えるとき
デッドクロスを迎える時も物件売却のタイミングです。
不動産投資におけるデッドクロスとは、ローンの元金返済額が減価償却費を上回るタイミングを指します。
減価償却費は経費として計上できますが、ローンの元金部分は経費扱いになりません。そのため、元金返済額が減価償却費を上回ると、帳簿上の利益が大きくなり所得税が増えてしまいます。
特に節税対策のため中古物件を購入した場合、減価償却期間が短いため、デッドクロスが起こりやすくなります。
デッドクロスは必ずしも赤字に直結するとは限りません。十分な利益を上げれば、不動産投資を続けることは可能です。
とはいえ、利益を下げる要因ですので、運用計画をしっかり立ててデッドクロスのタイミングをつかみ、売却すべきかどうかを判断することが重要です。
物件価格が上がっているとき
物件価格が上がっているときは、収益物件の売り時です。物件価格は市場の需要と供給のバランスで変動します。
例えば、所有している物件の近隣に新たにオフィスビルや大学が建設された場合、物件価格は大きく上昇します。また、建築資材や燃料費の高騰による新築物件の費用上昇は、中古物件の需要増につながります。
エリア情報や不動産市況をいち早くつかみ、需要が高まるタイミングで売却活動を行うことで、好条件で売却できる確率が高まるでしょう。
買い手がつきやすいとき
収益物件は株や投資信託とは異なり、買い手がつかない限り売却はできません。そのため、需要のない時に売却活動をしても成果が出ないこともあります。
以下のようなタイミングを狙うことで、買い手が見つかる可能性が高まります。
金利が下がっているとき
金利が下がっているときは収益物件の売り時です。住宅ローンや不動産投資ローンを低金利で利用できるため、物件購入の動きが活発になるためです。
金利が低い分、物件の購入費に予算を割けることから、高金利のときより物件価格を高く設定しても買い手がつく可能性があります。
満室のとき
満室の収益物件は投資家に人気があります。不動産投資の最大のリスクである「空室リスク」を回避できるためです。
また、入居実績は物件の信用性を推し量るうえで大切な指標になります。長期的に安定して入居者がいる物件は、今後も空室リスクが低いと判断されるため、収益物件としての評価が高くなります。
収益物件を売るときの注意点
収益物件を売却する時の注意点を紹介します。
所有期間5年未満の売却は利益が少なくなる
収益物件は築年数が浅いほど高値がつくため、早期に売却したほうが高利益になると思われるかもしれません。
しかし、所有期間5年未満で売却する際には注意が必要です。物件の売却益に課税される「譲渡所得税」は、短期(所有期間5年以下)、長期(所有期間5年超)の2種類あります。
【 所有期間別、売却益に課税される税率】
譲渡所得税の別 | 所有期間※1 | 税率 | |||
---|---|---|---|---|---|
所得税 | 住民税 | 復興特別所得税※2 | 計 | ||
短期譲渡所得税 | 5年以下 | 30% | 9% | 0.63% | 39.63% |
長期譲渡所得税 | 5年超 | 15% | 5% | 0.315% | 20.315% |
※1 所有期間:売却した年の1月1日時点での経過年数
※2 復興特別所得税:復興のために必要な財源の確保を目的とした所得税。平成25年から令和19年まで申告・納付する
上の表のとおり短期譲渡所得税は長期の約2倍程度、売却額の4割近くにおよびます。早期に売却するとかえって利益が少なくなってしまいますので、所有期間5年を超えてから売却を検討したほうが良いでしょう。
物件売却にはさまざまな費用がかかる
上記の譲渡所得税の他にも、収益物件の売却にはさまざまな税金がかかります。さらに、各種手数料や報酬もかかるため、収益が小さくなるおそれがあります。
物件売却にかかる主な税金・費用は以下のとおりです。
【物件売却にかかる主な税金・費用】
名称 | 内容 | 税率/税額 |
---|---|---|
譲渡所得税 | 物件の売却益にかかる税金 | 短期:39.63% 長期:20.315% |
印紙税 | 不動産売買契約書に貼付する収入印紙の費用 | 契約金額により異なる 例:1,000万円超~5,000万円未満は2万円(軽減税率1万円) ※注1:令和9年3月31日までは軽減税率が適用される ※注2:電子契約書は印紙不要 |
登録免許税 (抵当権抹消登記) |
収益物件に抵当権がついている場合、抵当権抹消の登記のために必要になる税金 | 不動産1個につき1,000円 ※注1:土地、建物で2個となるため、一般的には2,000円となる ※注2:抵当権抹消のためにはローンを完済しなければならない |
【物件売却にかかる主な費用】
名称 | 内容 | 費用(目安) |
---|---|---|
仲介手数料物件 | 売買を仲介した不動産会社に支払う報酬 | 不動産会社によって異なる ※上限あり。例えば売却額1,000万円の場合、上限は39万6,000円 |
法書士に支払う報酬 | 司法書士に不動産登記を依頼する場合に支払う報酬 | 3万円~9万円 ※契約により異なる |
賃貸管理の解約手数料 | 賃貸管理会社との契約解除にかかる手数料 | 賃料の3カ月~6カ月分 ※注1:契約により異なる ※注2:加えて「解約事務手数料」が必要になる場合あり |
ローンの繰り上げ返済手数料 | ローンの残債がある場合、繰り上げ返済に必要な手数料 | 繰り上げ返済額の0.5~2%、もしくは1万円~5万円程度の固定額 ※契約により異なる |
このように、収益物件の売却にはさまざまな税金や費用がかかります。売却時の費用がかさむと収益を圧迫し、手残りが少額になってしまうことがあります。
また、少しでも費用が安くなるよう以下のような対策を行うことも重要です。
- 仲介手数料が安い不動産会社を選ぶ
- 司法書士に交渉し、報酬を安くしてもらう
- 解約予告期間内に賃貸管理会社に解約の意思を伝えることで、解約手数料の発生を防ぐ
- 不動産会社など専門家に相談する
不動産会社など専門家に相談する
先述のとおり、物件売却にはさまざまな税金や手数料がかかります。手残りを多くするためには、可能な限り高額で売却するとともに、売却にかかる諸費用を低く抑えなければなりません。
そこで重要なのが、信頼できる不動産会社に相談することです。特に収益物件の売却に強い不動産会社であれば、適切な査定と効果的な売却活動により、好条件で不動産を売却できる確率が高まります。
不動産売却時の手続きにも詳しいため、出費を抑える方法をアドバイスしてもらうこともできるでしょう。実績や得意分野、接客時の態度などに注目し、信頼できる不動産会社を見つけましょう。
この記事を書いた人
TERAKO編集部
小田急不動産
鳥塚 正人
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