老朽化したアパートの売却方法!最適なタイミングや売却の手続きを解説
築古アパートを売却する際、「老朽化していてなかなか買い手が見つからない」「どうやって売ったらいいか分からない」といった悩みを抱えているオーナーは多いでしょう。
アパートが売れにくい理由や、スムーズに売却をするためのポイントを具体的に解説します。さらに、できるだけ高値で売却するための戦略もお伝えしますので、ぜひ最後までご覧ください。
この記事の目次
築古のアパートが売れない理由や原因
築古アパートがなかなか売れないのは、買主にとってリスクがあったり魅力が低かったりするからです。築古の物件が売れにくい主な理由や要因を5つ挙げ、それぞれについて詳しく解説していきます。
アパート自体の価値が低いから
不動産は新築のときが最も価値が高く、経年によって価値が低くなるのが一般的です。例えば、木造アパートの場合は国税庁が耐用年数を築22年と定めています。
耐用年数は、税金を計算するために設定された建物や機械の価値を表すもので、期間を過ぎると残存簿価(帳簿上の資産価値)はゼロになります。おおむね築30年を超えると、建物の価値はゼロに近くなると考えてよいでしょう。そのため、アパートの買主になりうる投資家も同様の判断をする傾向があります。
日頃から適切にメンテナンスしていない場合、建物の見た目の古さや設備面の不安から売れないのかもしれません。
参照:国税庁 | 主な減価償却資産の耐用年数表
大幅なリフォームが必要だから
売主がこまめにアパートを修繕していれば問題ありませんが、手入れをせずに放置していると大規模な修繕は免れません。規模にもよりますが、特に屋根の修繕・外壁塗装は15年に1度のリフォームでも200万~300万円はかかります。場合によっては建物の傾き、シロアリの発生、雨漏り、配管の老朽化による欠陥が潜んでいるかもしれません。
このような見えづらい欠陥を考慮し、買主は将来負担する修繕費用を見込んで物件の価値を考える傾向にあります。そのため、アパートの購入希望者が現れにくいことが考えられます。
耐震基準を満たしていないから
1981年6月1日以降に建築確認を受けたアパートは、新耐震基準で建てられているため一定の耐震性が備わっています。一方で、1981年5月31日以前に建てられたアパートは旧耐震基準で建てられているため、地震が発生すると被害が大きくなる可能性があるでしょう。
2025年1月時点では、築44年を超えるアパートは旧耐震基準で建てられたことになります。旧耐震基準で建てられた場合のリスクやデメリットとして、以下の点が挙げられます。
- 火災保険の賃料が高くなりがち
- 耐震性の不安さで入居者の需要が少なくなる
- 耐震補強しようにも費用が高額になる
- 結果として賃料を高く設定しにくい
- アパート購入希望者のローン審査で不利になる
建物が倒壊した場合、近所に住む方や偶然通りががった方がケガする恐れがあるため、買い手がつかないことが考えられます。
参照:国土交通省 | 建築:住宅・建築物の耐震化について
間取りや設備が古く空室率も高いから
アパートの築年数が古いと、当時流行った間取りが採用されていたり、設備が老朽化していたりする可能性があります。昨今、都会でも1R程度の広さを求められますし、ファミリータイプは3DKよりも2LDKタイプ、2DKよりも1LDKタイプの方が好まれています。また、築古の物件は整備が古く、浴槽がバランス釜(給湯器と浴槽が一体化しているお風呂)というケースも珍しくありません。そういった物件は空室率が高い可能性があり、売却しにくい原因になっています。
築古アパートは売却の選択肢が限られるから
築古アパートを買ってしまうと、将来売却しにくいことは簡単に予想できます。売却できない場合は建物を解体して更地にして売るか、新しく建て替えるかなど、選択肢が限られてしまいがちです。そのため、適切なタイミングで売却に踏み切ることにより、リスクを減らして利益を得ることができるでしょう。
築30年・40年のアパートを高く売るためのポイント
築古アパートとはいえ、できるだけ高く売却したいと考える方は多いでしょう。しかし、築30年・40年のアパートとなると建物部分の価値はほとんど無く、土地の価値で評価される傾向にあります。築30年・築40年の売れないアパートでもできるだけ高く売る方法を紹介します。
売り出し価格を相場より下げる
物件を高く売りたいのに、相場よりも価格を下げる=損と思う方もいるかもしれません。しかし、適切な価格設定にすることで、結果的に売却額を高くできることがあります。売却価格を相場より下げることで、購入希望の投資家が複数現れるかもしれません。これによって価格競争が起こり、買主の提示価格(指値)の幅が狭くなることで、希望に近い価格で売却できることがあります。
<h4>首都圏の築古アパートの買取相場</h4>
以下は首都圏における中古マンションのデータですが、築年数と売買価格ごとの相場について参考にできるでしょう。
首都圏マンション | ~築5年 | ~築10年 | ~築15年 | ~築20年 | ~築25年 | ~築30年 | 築30年~ |
---|---|---|---|---|---|---|---|
価格(万円) | 8,247 | 7,073 | 6,942 | 5,938 | 5,370 | 4,180 | 2,493 |
件数 | 657 | 1,027 | 796 | 1,145 | 1,014 | 840 | 2,849 |
㎡単価(万円) | 131.6 | 108.2 | 105.5 | 85 | 75.7 | 62.4 | 43 |
専有面積(㎡) | 62.7 | 65.3 | 65.8 | 69.8 | 70.9 | 67 | 58 |
上記の表から首都圏のマンション価格は、築年数の経過に伴い下落していることがわかるでしょう。たとえば、築5年以内の平均価格は8,247万円ですが、築30年以上になると2,493万円まで下落しています。しかし、成約件数は築30年を過ぎた物件でも2,849件もあるため、築古アパートでも売却することは十分可能です。
引用:公益財団法人東日本不動産流通機構 | 首都圏中古マンション・中古戸建住宅 地域別・築年帯別成約状況 【2024年07~09月】
できるだけ空室率を下げる
アパートの空室が少ない状態で売りに出すとスムーズに売却できるでしょう。買主は購入した当月から一定の家賃が見込めますし、新たに入居者募集をする手間も省けます。空室がある場合は以下のような施策を行い、できるだけ埋めてから売り出すのがポイントです。
- 敷金・礼金ゼロなど初期費用を低くする
- フリーレントを設定する
- 物件の魅力を高めるために修繕をする
- 高齢者や外国人の入居をOKにする
上記の方法は空室率を下げるためには効果的です。一方、家賃を下げて入居者を募集すると利回りが下がり、売却価格も下がる可能性があるため慎重に検討してください。
築古アパートの売却実績がある会社を探す
アパートの売却を不動産会社に依頼する際は、築古アパートの売却実績がある会社を探してください。不動産会社といっても賃貸専門、戸建売買専門、投資家向けなど得意分野はさまざまです。できればアパートの売却相場に精通した営業スタッフがいたり、アパートを多く扱って慣れていたりする会社に依頼するとよいでしょう。
投資家が納得しやすい情報の提供
アパートの買い手は基本的に投資家になるでしょう。そのため、投資家が購入判断をしやすい情報を提供し、物件のメリットに加えデメリットも開示することが重要です。以下は、投資家に伝えたほうがよいアパートの情報です。
- 嘘のないレントロール※個人情報を除く
- 路線価(道路ごとに設定される土地の評価額)、積算価格(建物と土地の評価を基に算出される不動産の目安価格)
- 再建築可/不可、接道など法令に基づく制限
- 詳細なリフォーム履歴、現在・将来の修繕計画
- 現状で発生している経費の一覧
- 家賃滞納や問題のある入居者の情報
投資家が重視するのは「リスクを把握した上で収益を見込める物件かどうか」です。築年数が古くてもアパートの情報を適切に開示することで信頼感を与えられますし、売却価格にも影響するかもしれません。
市場や融資の動向を確認する
アパートの価格は社会情勢によっても大きく変動します。つまり高く売れるタイミングがあるということですので、その機会を見極めることも大切です。アパート売却に強い不動産会社に査定をしてもらいつつ、ご自身でも市場動向を把握することをおすすめします。たとえば、融資がつきにくかったり金利が高くなったりすると、不動産を購入できる投資家が限られるため、アパートの価格が下落するかもしれません。
逆に融資が出やすいタイミングでは、購入者が増えるため売却価格が上がりやすいのです。このように市場が良くなれば、築古アパートでも高値で売れる可能性が出てきます。
築古アパートのオーナーにおすすめの出口戦略
「出口戦略」とは、不動産投資において最終的に物件を手放して利益を出す戦略のことです。築古アパートは保有しているとリスクや課題が増えるため、オーナーにおすすめの出口戦略を6つご紹介します。
アパートを解体して土地だけ売却する
入居率が悪くなり将来的に賃貸需要が見込みにくいと、売却やリフォームでは収益を確保するのが難しくなってきます。このような時はアパートを解体して更地にし、土地だけで売却した方が買い手がつくことがあります。しかし、アパートを更地にすると以下のようなデメリットがあります。
- 入居者がいる場合は交渉が必要なため、相当の期間と計画が必要
- 立退きを要求する場合は立退料が必要となる場合がある
- 建物の解体費用で少なくとも200万円以上はかかる
- 更地になると土地の固定資産税が最大6倍に増える
売却のしやすさだけでなく、手間や労力なども考えて選択しましょう。
アパートを新しく建て替える
土地の立地がよい場合は古いアパートを解体し、新築アパートを建て替えるのも有効です。新しく建て替えることで、以下のようなメリットが得られます。
- 周辺環境の変化に合わせたアパートができる
- 最新の設備、間取り、デザインで再スタートできる
- 新築なので人気が高く需要も多い
- 新築後はしばらく修繕が不要になる
ただし、建て替えには高額な費用がかかるため収支や現入居者との交渉などをふまえ、ハウスメーカーの担当者と相談しながら進めていく必要があります。
建て替えて自宅として使用する
築古のアパートを解体し、一戸建てを新築して自宅として使用するのも一つの方法です。解体することで物件の賃貸経営を終了させることができます。今までのアパート経営の心理的な負担、管理コストから開放されますし、入居者の安心・安全な生活を維持する責任もありません。
そして、新築した自宅は将来家族に残すことも可能ですし、売却するのもよいでしょう。
保有し続けて朽ちるまで使う
投資家の中には「築古アパートは朽ちるまで使う」という戦略の方もいます。築30年~40年にもなれば融資の返済も完了しているでしょうし、家賃から経費を引いた金額が利益として入ってきます。市場では、築50年~60年のアパートもまだ見られますので、保有し続けるのも手です。保有している間に、地価が上昇すれば恩恵を受けられる場合もあります。
ただし築古のアパートは建物の傷み、設備の劣化も多く、修繕費が利益を圧迫してくる可能性も否定できません。入居者が減り稼働率も維持できなければ、売却か解体か最終的な判断を迫られることになるでしょう。
築古アパートをそのまま売却する
最もシンプルな方法は、「築古のアパートをそのまま売却する」ということです。入居者がいる状態でもそのまま次のオーナーに引き継ぐことは可能ですし、入居率が高いと売れやすくなります。土地と建物をそのまま売却し、税金を支払えば現金が手元に残ります。手元に残った金額によっては、それを元手に次の投資を始めるのもよいでしょう。
アパートの買取を業者に依頼する
築年数が古すぎてアパートがなかなか売れない場合や、早く売却したい場合は「買取」を行っている業者に売却する方法もあります。ただし、買取の場合は相場が市場価格の60〜80%程度になります。買取業者は物件をリフォームして再販することにより利益を出しているため、一定の割引率があるからです。買取を依頼する際は複数の業者に査定を依頼することで、信頼できるところを見つけやすくなります。
この記事を書いた人
TERAKO編集部
小田急不動産
鈴木 和典
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