不動産投資
2024.12.24

収益物件の売却でかかる税金を解説。計算例や節税方法を紹介

収益物件の売却でかかる税金を解説。計算例や節税方法を紹介

収益物件を売却する際、税金がいくらぐらいかかるのかを把握することは重要です。

譲渡所得税や住民税、復興特別所得税など、収益物件売却にかかる税金の種類や計算方法、節税対策の具体例を交えて解説します。

税金の仕組みを理解し、収益物件での利益を最大化するための参考にしてみてください。

この記事の目次

収益物件を売却した際にかかる税金

まずは「収益物件を売却する際にかかる税金」について解説していきます。

収益物件に限らず不動産を売却すると、譲渡所得税、復興特別所得税、住民税といった税金がかかります。

この中でも、特に譲渡所得税は売却益に対する大きな負担となります。

投資用不動産の売却では事前に税金計算を行い、投資期間のトータルでどれくらい利益が残るのか把握することは、投資を成功させる上での重要な指標です。

それでは、収益物件を売却する際にかかる税金について一つずつ見ていきましょう。

譲渡所得税

不動産を売却することで得られる利益のことを「譲渡所得」と呼びます。

売却によって利益が出なかった、つまり譲渡所得がマイナスになった場合には、税金をかける所得そのものがありませんからこの税金は発生しません。

不動産売却時の譲渡所得に課税されるこの税金は、給与所得や事業所得など他の所得とは別に計算される「分離課税」という方法が適用されます。

法人の場合は、法人全体の損益に譲渡所得も足し込まれたトータルで課税されます。

一方、個人の場合は損益通算されず、不動産の譲渡所得は独立して計算されるため、他の所得の影響を受けずに税額が確定します。

譲渡所得 = 売却価格 – (取得費 + 譲渡費用)

譲渡所得は上記の計算式で決定します。売却価格から差し引ける取得費には、物件購入時の価格や登記費用、不動産取得税、仲介手数料などが含まれます。

譲渡所得税の取得費

それ以外に差し引ける取得費としては、次のようなものがあります。

  • 借主の立退き費用(立退料):借主がいる土地や建物を購入する際に支払う費用。
  • 造成費用(土地の埋立、土盛り、地ならしにかかった費用)
  • 土地の測量費(土地取得時にかかった測量のための費用)
  • 所有権確保に伴う訴訟費用(紛争解決のために必要だった訴訟費用)※ただし遺産分割訴訟費用は対象外
  • 建物の取り壊し費用(土地の利用が目的で建物付の土地を購入し、1年以内に建物を取り壊す際の費用)
  • 購入資金の借入利子(土地や建物を使用開始するまでの期間に対応する利子)
  • 契約解除による違約金(他の物件を取得するために既存契約を解除した場合の支出)

譲渡所得税の譲渡費用

同じように売却価格から差し引ける譲渡費用には次のようなものがあります。

  • 仲介手数料
  • 売買契約書の印紙税
  • 立退料(貸家売却時、借家人に明け渡しを依頼する際の売却に必要な経費)
  • 取壊し費用および建物の損失額(売却準備で発生した、土地売却のために建物を取り壊した際の費用と、その建物の価値の損失額)
  • 違約金(有利な条件で売却するため、既契約を解除する際に支払う金額)
  • 名義書換料(借地権を売却する際に地主から承諾を得るための費用)

譲渡所得を抑えるためには、売却価格からできるだけ取得費と譲渡費用を差し引いたほうが、納税額を少なくできるため、漏れがないかチェックすることが重要です。

また、譲渡所得税における所得税の税率は不動産を所有している期間で異なり、短期譲渡(所有期間5年以下)30%と長期譲渡(所有期間5年を超える)15%となります。

復興特別所得税

復興特別所得税とは、東日本大震災の復興財源を確保するために、所得税額に2.1%を上乗せして課される税金のことです。

復興財源の具体例を挙げると、復興支援活動やインフラ整備などの財源に充てられています。

また震災復興のため、全ての納税者の所得税に対して課税される税金です。

復興特別所得税は物件の所有期間で短期、長期の差はなく、全て一律で計算されます。

住民税

住民税は譲渡所得に対して課税されており、主に地方自治体の財源となっています。

短期譲渡または長期譲渡で適用される住民税の税率は以下の通りです。

  • 短期譲渡(5年以下):9%
  • 長期譲渡(5年を超える):5%

その他の関連税金

収益物件を売却した場合、建物部分には消費税が課されますので、事前に確認しておくとよいでしょう。

土地部分は非課税ですが、取引全体に関連する税額に注意が必要です。

収益物件を売却した場合の税金シミュレーション

それでは、収益物件売却時の税金シミュレーションを行い、短期譲渡と長期譲渡のケースをそれぞれ見ていきましょう。

譲渡所得が3,000万だった場合、税額は以下で説明する通りです。

短期譲渡で売却したケース

短期譲渡所得では、以下の税率が適用されます。

  • 所得税:30%
  • 復興特別所得税:0.63%(30%×2.1%)
  • 住民税:9%

例)譲渡所得3000万円の場合の税額
3,000万円 × (30% + 0.63% + 9%) = 約1,188万円

長期譲渡で売却したケース

長期譲渡所得では、以下の税率が適用されます。

  • 所得税:15%
  • 復興特別所得税:0.315%
  • 住民税:5%

例)譲渡所得3,000万円の税額
3,000万円 × (15% + 0.315% + 5%) = 約609万円

税金シミュレーションでもわかるように、短期譲渡は長期譲渡のほぼ2倍の所得税額です。

そのため、収益物件の売却は長期譲渡所得(不動産の所有期間が5年以上)となってからのほうが、支払う税金額を抑えられます。

収益物件の売却で利用できる節税対策

収益物件を売却するとき「できるだけ手元に利益を残したい」「効率よく節税したい」と考える方は多いでしょう。

ここでは、収益物件の売却時における税金のシミュレーションを行い、具体的な節税の方法、売却時の負担を軽減するためのポイントを解説していきます。

損益通算

損益通算とは、不動産投資や事業所得による赤字を給与所得などのほかの所得から差し引くことです。

土地や建物の貸付けによる所得や譲渡所得が対象となっており、一般的な退職所得や雑所得など対応していない所得もあります。

1年間の中で不動産売却により発生した損失を他の所得と相殺することで、税金の負担を軽減できます。

収益物件を1棟だけ売却した場合は基本的に利益となるため利用できませんが、複数の物件を売却して損失が出た場合などに利用可能です。

たとえば、2棟を売却した際にAの物件で800万円の利益が出たものの、Bの物件で200万円の売却損があったとします。

その場合、800万円-200万円=600万円が課税対象となるため、税金を減らせるというわけです。

低未利用土地等の100万円特別控除

令和7年12月31日までの間に、都市計画区域内(国や自治体が都市を整備するために指定したエリア)にある土地を売却すると、一定の条件を満たす場合に最大100万円が控除されます。

この控除の対象は、都市計画区域内にあることが第一条件であり、次に住宅や事業などで使われていない、周辺と比べて利用が著しく劣っている低未利用土地が対象です。

そのような土地に建てられた物件を500万円以下(条件に応じて800万円でも可)で売却した場合、売却によって得た所得から100万円が差し引かれます。

売却後に適切に土地が活用されることも条件に含まれるため、買主が住宅や事業のためにその土地を適切に利用する計画がある場合は利用してみるとよいでしょう。

取得費と譲渡費用を計算する

節税を効果的に行うためには、取得費や譲渡費用を最大限利用し、差し引ける経費をきちんと計算することが重要です。

取得費がわからない場合は、不動産会社に売買契約書のコピーをもらうとよいでしょう。

譲渡費用は売却時の仲介手数料や印紙代、登記費用なども含まれるため、一つずつ確認するのは大変かも取れませんが、節税するためにはできるだけ多くの費用を計算してください。

収益物件の売却後に行う確定申告のポイント

収益物件を売却した後に避けて通れないのが確定申告です。

「何を準備すればいいのか分からない」「申告ミスが心配」といった疑問を解決するため、必要な書類や具体的な手順を分かりやすく説明します。

確定申告で必要になる書類一覧

収益物件の売却後に確定申告をする際、必要になる書類は以下の通りです

  • 売買契約書
  • 登記簿謄本
  • 仲介手数料などの領収書
  • 確定申告書
  • 住民票
  • 譲渡所得の内訳書

場合によっては、上記以外の書類を用意することになります。

確定申告のやり方はインターネットで検索したり、自治体の相談会に参加したりする方法もありますが、自分で対応する時間がない方は税理士にお願いするとよいでしょう。

確定申告書の提出方法は主に3種類

確定申告の対応方法は以下の3種類です。

  1. 税務署への持参:対面で疑問点を相談できるので、初めて物件売却する方にはお勧めです。
  2. e-TAXによるオンライン申請:手軽でスピーディーな方法です。
  3. 郵送での申請:必要書類を同封して送るだけなので便利です。

収益物件の売却時は、自分に合ったやり方で確定申告を行いましょう。

まとめ

本記事では、収益物件を売却した際の税金と節税するときのポイントについて解説しました。

収益物件を売却する際は、譲渡所得税や住民税、復興特別所得税が課税されるため、売却タイミングを計画的に検討する必要があります。

売却することで最終的に黒字になるのかどうか慎重に判断しましょう。

また、取得費や譲渡費用を正確に把握し、損益通算や特別控除などを活用することで、税金を軽減することも可能です。

この記事を書いた人

著者写真 TERAKO編集部
小田急不動産
横溝 浩由

誠実がモットー。これまでのお客様との出会いが投資不動産領域での私自身の見識を高めることに繋がっており、お客様への感謝を胸に、いかに皆様のお役に立てる情報を発信できるかが重要と思っております。こんなことをもっと知りたい等、お気軽にお声掛けいただけると嬉しいです。 著者の記事一覧はコチラ
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