アパート経営でかかる固定資産税は?計算方法や軽減措置について解説
アパート経営では、固定資産税や都市計画税などの税金がかかります。固定資産税は、不動産収入を得る上で直接必要な費用と認められるため、経費として計上できます。また住宅用地の課税標準の特例などを活用し、固定資産税の支払いを抑えることが可能です。
アパート経営における固定資産税の計算方法や、節税につながる軽減措置について紹介します。
この記事の目次
アパート経営でかかる固定資産税とは?
固定資産税とは、毎年1月1日の時点において、固定資産課税台帳に登録された土地や家屋、償却資産を所有する方に納税の義務がある地方税です。
固定資産の種類 | 例 |
---|---|
土地 | 田んぼ、畑、住宅地、池沼、山林、鉱泉地(温泉など)、牧場、原野などの土地 |
家屋 | 家、お店、工場(発電所や変電所を含む)、倉庫などの建物 |
償却資産 | 会社等(事業者)が所有する構築物(広告塔やフェンスなど)、飛行機、船、車両や運搬具(鉄道やトロッコなど)、備品(パソコンや工具など)など |
アパートを経営している方も、所有する土地と家屋それぞれについて、固定資産税額を合計したものを納める必要があります。固定資産税の納付先は、固定資産が所在する市町村です。ただし東京都23区内にアパートがある方は、東京都に対して納税することになります。
アパートのある地域によっては都市計画税もかかる
賃貸用アパートが市街化区域内にある場合、固定資産税に加えて都市計画税もかかります。市街化区域とは、“すでに市街地を形成している区域や、おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域”を指します。
令和5年4月1日の時点で、都市計画税を課税している市町村の比率は約1/3(1,719団体のうち642団体)です。固定資産税と同様に、都市計画税は土地や建物がある市町村(東京都23区内の場合は東京都)に対して納付する必要があります。
アパートの固定資産税は経費にできる?
賃貸用アパートにかかる固定資産税は、経費として計上できます。国税庁によると、経費にできるものは、“不動産収入を得るために直接必要な費用のうち家事上の経費と明確に区分できるもの”に限られます。
たとえば、以下のような支出を必要経費に算入することが可能です。
- 固定資産税
- 損害保険料
- 減価償却費(不動産の取得費用を使用可能期間に応じて分割し、計上するもの)
- 修繕費(建物や設備、備品などの維持管理や修理のために支出するもの)
固定資産税等清算金は経費として計上できない
固定資産税等清算金は、経費として計上できません。固定資産税等清算金とは、賃貸用アパートを購入した際に、売主が本来負担すべき固定資産税および都市計画税をかわりに清算した場合の費用を指します。
固定資産税等清算金は、当事者間の合意に基づいて、売主の納税義務を買主が肩代わりするものです。買主の納税義務に基づく支出ではないため、必要経費に算入することはできません。
※参考:国税庁「賃貸用アパートを購入した際に支払った固定資産税及び都市計画税相当額の清算金の取扱いについて」
アパート経営での固定資産税の計算方法
固定資産税および都市計画税は、基礎となる課税標準額に対し、以下の税率を掛けた額が税額です。
区分 | 税額 |
---|---|
固定資産税 | 土地または家屋の評価額×税率(1.4%) |
都市計画税 | 土地または家屋の評価額×税率(0.3%以下) ※税率は市町村の条例による |
課税標準額とは、固定資産評価基準に基づいて算定された土地や建物の評価額(固定資産税評価額)のことです。課税標準額は市町村の長により、以下のような方法で決定されます。
区分 | 評価方法 |
---|---|
土地 |
|
家屋 |
|
土地・家屋の評価額は、3年ごとに評価替えが行われています。地価の変動などにより、評価額が急激に上昇した場合は、負担調整措置が講じられます。そのため、税負担が一気に上昇することは原則としてありません。
実際の課税標準額や税率、土地・家屋を合わせた税額、納期限などは、毎年6月頃に送られてくる納税通知書で確認できます。
アパート経営なら固定資産税の軽減措置を利用できる
アパートやマンションを経営している方は、土地・建物それぞれについて、固定資産税の軽減措置を利用可能です。固定資産税の負担という面では、土地を更地のままにしておくよりも節税につながります。
ここでは、アパート経営者が利用できる固定資産税の軽減措置を2つ紹介します。
- 住宅用地の課税標準の特例(小規模住宅用地)
- 新築住宅にかかる税額の減額措置(新築住宅特例)
小規模住宅用地は固定資産税が1/6となる
まずは住宅用地の課税標準の特例です。
住宅用地とは、“居住の用に供する”土地のことで、小規模住宅用地と一般住宅用地の2つの区分があります。
小規模住宅用地では、200㎡以下の部分について課税標準額が1/6、一般住宅用地は1/3に減額されます。
区分 | 固定資産税の課税標準額 |
---|---|
小規模住宅用地(200㎡以下の部分) | 1/6に減額 |
一般住宅用地 | 1/3に減額 |
ただし、以下の例に当てはまる場合、住宅用地としては認められません。
- 構造上住宅と認められない状況にある場合
- 使用の見込みはなく取り壊しを予定している場合
- 居住の用に供するために必要な管理を怠っている場合で、今後人の居住の用に供される見込みがないと認められる場合
また令和5年12月13日に「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」が施行され、空き家に対する規制が強化されました。市区町村の長から、特定空家または管理不全空家として勧告を受けた場合、住宅用地特例の適用対象から除外されます。
区分 | 要件 |
---|---|
特定空家 | 以下のいずれかの状態にあると認められる空き家
|
管理不全空家 | 適切な管理が行われていないことにより、そのまま放置すれば特定空家に該当することとなるおそれのある空き家 |
新築した場合は固定資産税が3年間減額される
もうひとつ、新築の家にかかる税額の減額措置(新築住宅特例)です。
令和8年3月31日までの間に新築された家は、固定資産税が1/2に減額されます。固定資産税が減額される期間は、アパートの構造や設備によって変わります。
家の種別 | 期間 | 減額割合 | 対象床面積 |
---|---|---|---|
一般の住宅 | 3年間 | 1/2 | 居住部分の床面積のうち120㎡まで |
3階建て以上で耐火構造の住宅 | 5年間 | ||
一般の長期優良住宅 | 5年間 | ||
3階建て以上で耐火構造の長期優良住宅 | 7年間 |
アパートの経営状況が悪化した場合は売却の検討を
所有する土地にアパートを建築すれば、固定資産税の支払いを抑えられます。しかし、軽減措置の適用を受けられるといっても、固定資産税の負担は少なくありません。
たとえば、土地と建物を合わせた評価額が4,000万円とすると、小規模住宅用地の特例を適用したとしても、固定資産税と都市計画税の合計額は15万円を超えます。
- 【固定資産税】4,000万円×1/6×1.4%=約9.33万円
- 【都市計画税】4,000万円×1/3×0.3%=約4万円
※東京23区内の都市計画税は、小規模住宅用地の特例により1/2が減額(東京都主税局「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)」)
建物や設備が老朽化し、空室が目立つアパートは売却を検討するとよいでしょう。
この記事を書いた人
TERAKO編集部
小田急不動産
鳥塚 正人
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