アパート経営で青色申告はすべき?必要な手続きや忘れた場合のリスクを紹介

アパート経営において、青色申告には多くのメリットがあります。最高65万円の控除を受けたい方は、必要な申請や届出を把握しておきましょう。期限内に申告しない場合、特別控除が利用できないだけでなく、さまざまなペナルティが科される可能性があります。
アパート経営者が青色申告をすべき理由や、青色申告に必要な手続き、確定申告をしなかった場合のリスクについて紹介します。
この記事の目次
アパート経営では青色申告をすべき?
アパート経営において、青色申告をするメリットは4つあります。
青色申告の主な特典 | 内容 |
---|---|
青色申告特別控除 | 所得金額から最高65万円を差し引くことができる |
青色事業専従者給与 | 配偶者などに給与を支払う場合、必要経費として計上できる |
貸倒引当金 | 家賃が回収不能になった場合、損失(貸倒引当金)を経費計上できる |
純損失の繰越しと繰戻し | 赤字が発生した場合、前年や翌年の所得金額から控除できる |
特に青色申告特別控除を利用すると、その年の所得金額から最高65万円を差し引けるため、節税につながります。青色申告特別控除の主な適用要件と、それぞれの控除額は以下の通りです。
控除額/適用要件 | 複式簿記(正規の簿記の原則で記帳) | 貸借対照表と損益計算書を添付 | 期限内に申告 | e-Taxで申告または優良な電子帳簿保存 |
---|---|---|---|---|
65万円 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
55万円 | ◯ | ◯ | ◯ | – |
10万円 | (簡易な記帳) | – | – | – |
また青色申告特別控除を利用するには、不動産の貸付を「事業」として行っている必要があります。事業かどうかは、規模に基づいて判断されることが一般的です。
アパート経営の場合、入居者に貸し出す部屋数がおおむね10室以上であれば、事業としてみなされます。事業的規模の要件を満たしていない方は、複式簿記の作成やe-Taxでの申告などを行っても、10万円の控除しか受けられないため注意しましょう。
※参考:国税庁「はじめてみませんか?青色申告」
※参考:国税庁「No.1373 事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分」
アパート経営で青色申告をするときの手続き
青色申告をするために必要な手続きは、大きく分けて4つあります。
- 所得税の青色申告承認申請書を提出する
- 正規の簿記の原則に基づいて記帳する
- 帳簿書類を決められた期間保存する
- 貸借対照表および損益計算書を期限内に提出する
所得税の青色申告承認申請書を提出する
初めて青色申告をする方は、納税地を所轄する税務署長に対し、「所得税の青色申告承認申請書」を提出する必要があります。税務署の所在地は、国税庁の「税務署の所在地などを知りたい方」のページから調べられます。
青色申告承認申請書の提出期限は、青色申告をしようとする年の3月15日までです。ただしその年の1月16日以降にアパート経営を始めた方は、事業開始の日から2カ月以内が提出期限となります。
青色申告承認申請書は、書面での持参または送付のほか、e-Taxソフトを通じて作成・提出することも可能です。
正規の簿記の原則に基づいて記帳する
青色申告をする方は、原則として正規の簿記の原則(複式簿記)によって帳簿を作成する必要があります。たとえば複式簿記で作成する帳簿の例として、仕訳帳や総勘定元帳などが挙げられます。
複式簿記による帳簿の例 | 内容 |
---|---|
仕訳帳 | 取引の発生順に取引年月日、内容、勘定科目および金額を記載し、借方および貸方に仕訳するための帳簿 |
総勘定元帳 | 勘定科目ごとに取引年月日、相手方の勘定科目および金額を記載し、すべての取引を分類して整理するための帳簿 |
複式簿記の作成が難しい場合は、現金出納帳や売掛帳・買掛帳、経費帳、固定資産台帳などの簡易簿記で記帳できます。ただし、65万円の青色申告特別控除は利用できません。
帳簿書類を決められた期間保存する
青色申告をする場合、以下の帳簿書類を決められた期間保存する必要があります。
保存が必要なもの | 保存期間 | ||
---|---|---|---|
帳簿 | 仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳など | 7年 | |
書類 | 決算関係書類 | 損益計算書、貸借対照表、棚卸表など | 7年 |
現金預金取引等関係書類 | 領収書、小切手控、預金通帳、借用証など | 7年(注) | |
その他の書類 | 取引に関して作成し、または受領した上記以外の書類(請求書、見積書、契約書、納品書、送り状など) | 5年 |
※前々年の事業所得・不動産所得が300万円以下の場合、保存期間は5年
なお仕訳帳および総勘定元帳を電子帳簿保存法の要件を満たし、電子データで保存した場合は、65万円の青色申告特別控除を利用できます。
貸借対照表および損益計算書を期限内に提出する
55万円の青色申告特別控除の適用を受けるには、貸借対照表および損益計算書(青色申告決算書)を確定申告書に添付し、期限内に提出する必要があります。白色申告よりも提出しなければならない書類が多いため、スケジュールに余裕を持って準備しましょう。
またe-Taxを通じて申告書を提出する場合は、最高65万円までの青色申告特別控除を利用できます。e-Taxを利用すると、税務署への書類持参が不要になるほか、メンテナンス期間を除いて24時間申告できるというメリットもあります。
アパート経営で確定申告をしていない場合のリスク
確定申告の期限は、所得が発生した年の翌年2月16日から3月15日までの間です。決められた期限までに申告しなかった場合、65万円の青色申告特別控除は利用できません。
そのほかにも、確定申告を怠ると以下のようなリスクが発生します。
- 加算税や延滞税などのペナルティが科される
- 金融機関から追加の融資を受けにくくなる
加算税や延滞税などのペナルティが科される
確定申告を期限内にしなかった場合、加算税(無申告加算税)や延滞税などのペナルティが科される可能性があります。加算税および延滞税の税率は、以下の表の通りです。
ペナルティの例 | 税率 | ||
---|---|---|---|
加算税 | 税務署からの調査の事前通知の前に、自主的に申告した場合 | 5% | |
税務署からの調査の事前通知の後に申告した場合 | 50万円までの部分 | 10% | |
50万円を超え300万円までの部分 | 15% | ||
300万円を超える部分 | 25% | ||
税務署の調査を受けた後に申告した場合 | 15% | ||
延滞税 | 納期限の翌日から2カ月以内 | 年7.3%か、延滞税特例基準割合+1%のいずれか低い割合 | |
納期限の翌日から2カ月を経過した日以降 | 年14.6%か、延滞税特例基準割合+7.3%のいずれか低い割合 |
金融機関から追加の融資を受けにくくなる
金融機関の融資担当者は、確定申告書や貸借対照表、損益計算書などの書類の内容から、アパートの経営状況を判断しています。確定申告を行わない場合、金融機関からの信用が低下し、追加の融資を受けにくくなったり、既存の融資条件が悪化したりするリスクがあります。
確定申告書などの書類は、税務署だけでなく、融資を受ける金融機関に毎年提出しましょう。
確定申告が大変な場合は税理士などの専門家に相談しよう
通常の白色申告と比べて、青色申告には時間も手間もかかります。必要な申請や届出を把握したうえで、計画的に準備を進めていくことが大切です。
一人で確定申告を行うのが難しい場合は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。税理士なら申告書の作成はもちろん、複式簿記での記帳や帳簿書類の保存など、税務に関するさまざまな困りごとを相談することが可能です。
また毎年の確定申告に手間がかかり悩んでいる方や、特別控除を利用してもなかなか赤字が減らない方は、思い切ってアパートを売却するという選択肢もあります。税務以外の相談であれば、不動産会社に問い合わせてみるとよいでしょう。
この記事を書いた人
TERAKO編集部
小田急不動産
飯野一久
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