不動産投資
2024.07.31

築50年のアパートを相続したらどうする? 考えられるリスクと選択肢について解説

築50年のアパートを相続したらどうする? 考えられるリスクと選択肢について解説

築年数が経過した賃貸住宅は、なかなか借り手が見つかりません。修繕費や維持管理費ばかりかかることから、不動産ではなく「負動産」といわれることもあります。

もし築50年以上のアパートを相続することになったら、どのように対処すべきでしょうか。収益性が見込めない場合や、相続税を負担したくない場合は、売却を検討するとよいでしょう。
築50年のアパートを相続した際のリスクや、アパートを相続した後の選択肢について解説します。

この記事の目次

築50年のアパートを相続した際のリスク

相続したアパートが老朽化している場合に起こり得る、5つのリスクについて解説します。

修繕費・維持管理費がかさむ

1つ目は、築50年のアパートを維持管理するためのコストです。老朽化した物件は、築浅の物件と比較して、設備の修繕やメンテナンスにかかるコストが増える傾向にあります。

特にアパートやマンションなどの集合住宅では、12年~15年を目安とした周期で、大規模修繕を実施するのが一般的です(※)。大規模修繕では、屋根の防水工事、外壁の補修や塗り替え、建具の点検・調整など、さまざまな箇所の修繕工事を行うため、多額の資金を準備しなければなりません。

相続したアパートの築年数が経っているほど、こうした修繕費や維持管理費がかさみ、相続人の経済的負担が大きくなります。

※参考:住宅金融支援機構.「大規模修繕の手引き

空室が増える

2つ目は、アパートの空室が増えるリスクです。

築年数が50年を超えるアパートは、一般的に空室が増加し、入居率が低下しやすいといわれます。周辺の賃貸住宅と比べて、設備や仕様の面で劣る物件は、入居者にとって魅力が低く、市場における競争力に欠けるからです。

築年数が古くても、大規模なリフォームやリノベーションを実施すれば、空室の増加を食い止められるケースもあります。しかし、その場合も相続人が多額の工事費用を負担する必要があります。

相続税が高くなる可能性がある

3つ目は、相続税が高くなるリスクです。

アパートをはじめとした賃貸住宅では、相続税の評価額を計算する際に「賃貸割合」を考慮します。賃貸割合とは、その建物の床面積の合計のうち、実際に入居者に貸し出されている部分のことです。

一般的に賃貸割合が高いアパートほど、土地や建物の相続税額が低くなります。逆に、築年数が50年を超えるアパートは入居率が伸び悩みやすいため、満室のアパートよりも相続税が高くなりやすいです。

相続税の評価額は、築年数が経過するにつれて低下するため、「築50年のアパートだから、ほとんど価値はない」と考える方もいるかもしれません。しかし、木造の建物は築27年以上、非木造の建物は築45年以上経つと、それ以上評価額が減価補正できなくなくなります(※)。

築50年のアパートの場合、相続税の評価額が下げ止まりになるため、賃貸割合の影響の方が大きくなるでしょうす。

※参考:法務局.「経年減価補正率表

アパートの相続税を計算する方法

アパートの相続税額を知りたい場合は、土地(貸家建付地)と建物(貸家)の相続税評価額をそれぞれ計算し、相続税率を乗じて求めましょう。

【土地(貸家建付地)の相続税評価額】

  • 相続税評価額=自用地の評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

最新の借地権割合は、国税庁ホームページの「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認できます。借家権割合は、全国一律30%です。賃貸割合を算出する際は、部屋数ではなく入居者がいる部屋の床面積を基にしてください。

【建物(貸家)の相続税評価額】

  • 相続税評価額=家屋の評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)

※家屋の評価額とは、固定資産税評価額のことを指し、築年数に応じて経年減点補正率を乗じます

自用地の評価額が3,000万円、家屋の評価額が1,000万円のアパートを例に挙げてみましょう。借地権割合が60%、借家権割合が30%、賃貸割合が20%とすると、土地と建物の評価額はそれぞれ以下のとおりです。

  • 土地の評価額=3,000万円×(1-60%×30%×20%)=2,892万円
  • 建物の評価額=1,000万円×(1-30%×20%)=940万円

上記の計算例では、賃貸割合が20%と非常に低いため、相続税の評価額も高くなってしまっています。

災害によって倒壊する可能性がある

4つ目は、自然災害によってアパートが損害を受けるリスクです。

近年は気候変動などの影響により、暴風や豪雨、洪水、土砂災害、高潮などの自然災害が毎年のように発生しています。令和2年7月豪雨では、全国で多大な住家被害(全壊が1,620棟、半壊・一部損壊が8,103棟、床上・床下浸水が6,825棟)が生じました(※)。

老朽化したアパートは、防災対策や耐震対策が十分でないことも多く、大規模な自然災害が発生した場合、以下のようなリスクが生じます。

  • 自然災害によって建物が倒壊し、多大な修繕費用がかかるリスク
  • 被災した入居者に対し、賃料の減額や賃貸契約の終了を迫られるリスク

※参考:内閣府.「令和3年版 防災白書

相続人同士でトラブルに発展する可能性がある

5つ目は、相続人同士でトラブルに発展するリスクです。

現金や預貯金などの財産と違って、不動産は1円単位で均等に分けることができません。そのため、アパートやマンションなどの遺産分割をめぐって、相続人の間でトラブルになる事例がよく見られます。

相続人同士の話し合いで解決できない場合は、弁護士や税理士などの専門家に相談するとよいでしょう。

築50年のアパートを相続した際の選択肢

もし築50年のアパートを相続したら、以下の4つの選択肢があります。

  1. アパートを経営する
  2. アパートを建て替える
  3. アパートを取り壊す
  4. アパートを売却する

ただし、老朽化したアパート経営は難易度が高く、一定の収益を得るにはノウハウを必要とします。不安な方は、アパートの売却や建て替えなどの選択肢をおすすめします。

1. アパートを経営する

1つ目は、相続したアパートをそのまま自分で経営する選択肢です。アパート経営が軌道に乗った場合、家賃収入を得られる可能性があります。

しかし、先述したとおさまざまなリスクが存在します。収入がわずかでも黒字経営できる場合や、アパートの立地が良くて十分な入居が期待できる場合を除いて、あまりおすすめできません。

2. アパートを建て替える

2つ目は、アパートを建て替えるという選択肢です。築年数が経過したアパートを解体し、新しくアパートを建てることで、集客力を高められるのがメリットです。

しかし、建て替えには多額の費用がかかるため、十分なメリットが得られるかどうか、不動産会社などの専門家に相談してから行ってください。新しくアパートを建てたものの、入居者が集まらずに多額の負債をかかえてしまった、ということにならないよう慎重に検討しましょう。

また入居者がまだ残っている場合は、入居者との立ち退き交渉が必要になるため、トラブルに発展するリスクもあります。

3. アパートを取り壊す

3つ目は、アパートを取り壊し、更地にするという選択肢です。相続した土地は、アパート以外にもさまざまな方法で活用できます。

  • 他の事業者に貸し出す(定期借地)
  • 駐車場やコインパーキングを建てる
  • トランクルームを設置する
  • 太陽光パネルを設置し、発電した電力を売る

アパート経営には適さない立地やエリアでも、他の方法で土地を活用することで、一定の収益が得られる可能性もあります。

しかし、アパートを取り壊して更地にすると、固定資産税や都市計画税の優遇措置がなくなり、翌年の税金が高くなる点に注意しましょう。

4. アパートを売却する

4つ目は、アパートを不動産会社に売却するという選択肢です。アパート経営のノウハウがない方や、取り壊すための解体費用が捻出できない方、相続税を支払いたくない方におすすめの方法です。

不動産を売却する方法は、大きく仲介と買取の2つに分けられます。

仲介 不動産会社が売買取引を仲介し、売主を探す方法
買取 不動産会社が直接不動産を買い取る方法

まずは仲介によってアパート売却の可能性を探ってから、売主が見つからない場合に買取を依頼するとよいでしょう。

不動産会社によっては、老朽化したアパートや、法定耐用年数を超えたアパートの買取にも対応しています。築50年を経過し、収益性が見込めないアパートでも、買取なら売却できる可能性があります。

この記事を書いた人

著者写真 TERAKO編集部
小田急不動産
鳥塚 正人

難解なイメージのある投資不動産の取引について、『わかりやすく』お伝えすることにこだわってます。不動産投資は、それぞれ置かれている状況、ご事情やご希望条件によりゴールへの道筋が異なります。皆様にとって最適な道標を描くヒントとなれるような情報発信を心がけます。 著者の記事一覧はコチラ
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