不動産投資
2024.05.31

アパート経営が赤字になったら? 要因や対策について解説

アパート経営が赤字になったら? 要因や対策について解説

アパート経営はマンションと比べて戸数が少ないので賃貸経営の中でも管理の負担が少なく、比較的赤字になりにくいともいわれています。ただし、適切な運用をしないと赤字に苦しんでしまう恐れもあるので、きちんとリスクを理解した上で始めることが大切です。

アパート経営の赤字に関する基礎知識を紹介します。赤字の主な原因や、アパート経営が赤字になってしまった場合の対策も解説します。

この記事の目次

【アパート経営における基礎知識】会計上の赤字とキャッシュフロー上の赤字の違い

アパート経営では「赤字」といっても、会計上の赤字とキャッシュフローの赤字があり、それぞれ意味が異なります。もちろんどちらも黒字であるに越したことはありませんが、赤字になったからといって必ずしも焦る必要がない場合があることも理解しておきましょう。

まずは、会計上の赤字とキャッシュフロー上の赤字の違いを解説します。

会計上の赤字(マイナス)とは?

会計上の赤字(マイナス)とは、確定申告の対象となる不動産所得が赤字になることです。

アパート経営で得た収入から管理委託費や建物の損害保険料、軽微な修繕費、減価償却費などの必要経費を差し引いた金額が帳簿上でマイナスになるのが、会計上の赤字の状態です。必要経費のうち減価償却費は実際の現金支出ではありませんが、帳簿上は支出として記載することになります。そのため実際は黒字でも、会計上は赤字になってしまうケースも少なくありません。

キャッシュフロー上の赤字(マイナス)とは?

キャッシュフロー上の赤字(マイナス)とは、手元の現金がマイナスになっている状態のことです。

キャッシュフロー上の赤字になると、アパート経営で得た収入から現金で支払うべき必要経費を差し引いた金額がマイナスになってしまうため、補填(ほてん)費用を捻出しなければなりません。会計上の赤字と異なり実際に収支がマイナスになっているため、キャッシュフロー上の赤字になっている場合は、早急に改善する対策を取る必要があります。

アパート経営では損益分岐点の把握が重要

アパート経営をする上では、財務状況の指標となる損益分岐点を把握しておきましょう。

損益分岐点とは収入と支出が一致するポイントのことです。損益分岐点では利益が発生しない代わりに、損失も発生しません。損益分岐点よりも利益を出すか支出を抑えられれば、黒字経営が目指せます。

以下の計算式を使って、投資しているアパートの損益分岐点となる入居率を算出してみましょう。

(毎月の諸経費+毎月のローンの元本返済額)÷ 家賃収入

この場合の毎月の諸経費は、年間にかかる諸経費を月額に換算した金額と、10〜15年で実施する必要のある大規模修繕にかかる費用を月額に換算した金額を合算した金額です。

たとえば、10戸のアパートで1カ月の1戸当たりの家賃収入6万円、共益費1万円、アパート全体の毎月の諸経費が15万円、毎月のローンの元本返済額が20万円の場合の損益分岐点は以下のようになります。

(15万円+20万円)÷{(6万円+1万円)×10部屋}=0.5

この場合、入居率50%が損益分岐点になり、50%以上の入居率を維持し続ければアパート経営による利益が得られる計算です。

アパート経営で赤字になってしまう主な原因

アパート経営で赤字になってしまう場合、どのような要因が考えられるのでしょうか。主な原因を6つご紹介します。

賃料が適正ではない

賃料が適正ではないことは、アパート経営が赤字になる要因の一つです。

アパート経営で赤字を回避するには、地域の市場調査を行い、周辺の相場や同じような間取りの物件の相場を踏まえて家賃を決めなければなりません。相場よりも家賃が高過ぎると入居者が集まらず、安過ぎると期待する家賃収入が得られなくなってしまいます。

ローン返済額が家賃収入を上回っている

ローン返済額が家賃収入を上回ってしまうことも、アパート経営が赤字になる要因です。

基本的にアパート経営では、家賃収入から月々のローンを返済します。しかし期待した家賃収入が得られなかったり現実的ではない収支計画を立ててしまったりすると、ローン返済額が家賃収入を上回ってしまうため、赤字になってしまいます。

青色申告の節税を活用できていない

確定申告は青色申告と白色申告の2種類がありますが、白色申告をしていて青色申告の節税を利用できていない場合も、アパート経営で赤字になってしまう可能性が高いです。

青色申告には複式帳簿で帳簿付けをしなければならないというデメリットはありますが、最大65万円の青色申告特別控除や赤字の3年繰越、減価償却の特例などがあるため、高い節税効果が期待できます。現在白色申告の場合は、青色申告での申告を検討するとよいでしょう。

※参考:国税庁「青色申告制度

減価償却が終了し、節税効果が弱まっている

減価償却が終了して節税効果が弱まっている場合も、赤字になりやすいです。

アパート経営では減価償却費を必要経費にできますが、減価償却が終了すると必要経費が減ってしまうため、節税効果が落ちて税金が高くなってしまいます。減価償却期間は建物の構造によって決まっており、一般的に木造アパートの法定耐用年数は22年、鉄筋コンクリート造の場合は47年です。

※参考:国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表

空室が多い

空室が多いことも、アパート経営が赤字になる要因の一つです。

地域ニーズや相場に合わない物件や入居者にとって魅力が感じられない物件の場合、なかなか入居者が決まらなかったり長期入居者を確保できなかったりします。すると空室が増えて、期待する家賃収入が得られなくなるでしょう。そのため、損益分岐点を上回る入居率の維持が大切です。

効果的なリーシングが行われていない

効果的なリーシングが行われていないと、アパート経営が赤字になりやすくなります。

リーシングとは、賃貸管理会社が行う賃貸不動産物件の支援業務のことです。賃貸管理会社が適切な入居者募集を行っていなかったり適正なリーシング戦略を立てていなかったりすると、思うように入居者が集められません。その結果、空室が増えて赤字になってしまいます。

アパート経営が赤字になってしまった場合の対策

アパート経営が赤字になってしまった場合、具体的にどのような対策を取ればよいのでしょうか。ここでは、5つの対策をご紹介します。

空室対策をする

アパート経営が赤字になってしまった際、まず取り組みたいのが空室対策です。

空室が多い場合、賃料や初期費用の高さ、住宅設備、募集条件、集客方法などさまざまな改善要因が考えられます。賃貸管理会社や不動産会社からヒアリングし、何が空室の要因となっているのかを分析した上で、それに沿った空室対策を講じましょう。

ローンの返済比率や期間を見直す

ローンの返済比率や期間を見直すことも、アパート経営の赤字対策に効果的です。

借入先の金融機関や専門家に相談し、金利条件や借入期間を見直しましょう。月々の返済額を抑えれば、キャッシュフローの改善を目指しやすくなります。

賃貸管理会社を見直す

賃貸管理会社の見直しも、アパート経営の赤字対策です。

賃貸管理会社を見直せば、月々発生する管理委託料を抑えられるかもしれません。また現在委託している賃貸管理会社が適切なリーシングを行っていない場合、賃貸管理会社を変えることでより効果的な集客ができる可能性もあります。

損益通算で確定申告する

アパート経営の赤字対策を行うには、損益通算で確定申告しましょう。

損益通算とは、給与所得や事業所得とアパート経営の赤字を合算して申告することで、課税所得を抑える方法のことです。課税所得を抑えられれば、所得税や住民税の節税につながります。税理士などの専門家に相談し、正しく申告しましょう。

アパートを売却する

アパート経営が赤字ならば、売却するのも一つの選択です。

空室が多い状況が続いたり減価償却が終了したりしている場合、赤字の改善が難しいケースもあるでしょう。売却を有利に進めるには、売却に関する知識が豊富な専門家に相談するのがおすすめです。

この記事を書いた人

著者写真 TERAKO編集部
小田急不動産
鈴木 和典

小田急グループの総合力を活かしながら、これまで幅広く不動産実務を経験して参りました。現在は、本社営業センターの責任者を務めております。私たちの発信が人生100年時代の選択肢を広げるきっかけになれれば大変うれしく思います。 著者の記事一覧はコチラ
お問い合わせ

メモアイコン Other Articles その他の記事を見る

一覧はコチラ
不動産投資の拡大戦略が必要なタイミングは?やってはいけない注意点も紹介
不動産投資 2024.09.30
不動産投資の拡大戦略が必要なタイミングは?やってはいけない注意点も紹介

TERAKO編集部 小田急不動産 鳥塚 正人

不動産投資で2棟目の融資は受けられる?融資審査に通るポイントを解説
不動産投資 2024.09.30
不動産投資で2棟目の融資は受けられる?融資審査に通るポイントを解説

TERAKO編集部 小田急不動産 飯野一久

不動産投資で買い増しのタイミングを見極めるポイント。投資を拡大するメリット
不動産投資 2024.09.30
不動産投資で買い増しのタイミングを見極めるポイント。投資を拡大するメリット

TERAKO編集部 小田急不動産 鈴木 和典

本コラムに関する注意事項

本コラムは一般的な情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘することを目的とするものではありません。本コラムは、その正確性や確実性を保証するものではありません。その内容は執筆者本人の見解等に基づくものであり、当社の見解等を示すものではありません。いかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。本コラムの記載内容は、予告なしに変更されることがあります。