不動産投資
2024.04.30

アパートの修繕費|耐用年数ごとに減価償却すべき?その利点と欠点とは

アパートの修繕費|耐用年数ごとに減価償却すべき?その利点と欠点とは

アパートの大規模修繕には、何百万円以上の費用が発生します。そのため、単年度で全額を必要経費にする「修繕費」として計上すると、場合によっては利益より出費が多くなり、金融機関からの評価が下がってしまいます。

一方で納税額を抑えられるという点では、メリットにもなりえます。また、全額を修繕費として計上する方法以外に、「資本的支出」として計上する方法があります。

資本的支出として計上する場合は、費用を複数年で案分する減価償却費や建物の耐用年数を算出する必要があり、少々面倒です。しかし、修繕費と資本的支出のどちらで計上するかの判断を誤ると、過少申告となり追徴課税のリスクがありますので、しっかり確認しておきましょう。

この記事の目次

アパートの大規模修繕にかかる費用

大規模修繕に該当する工事の部位や種類は次のとおりです。

大規模修繕に該当する工事の部位や種類
部位 工事の種類 工事の頻度 備考
外壁 外壁面の塗装、窓枠や外壁材のシーリング打ち替え 10~15年
外壁の張り替え、窓枠や外壁材のシーリング打ち替え 20~30年 外壁の劣化が激しく塗装では修繕不可能な場合
屋根・雨樋 屋根葺き材や雨樋の塗装 10~15年
屋根葺き材の葺き替え、雨樋の交換 20~30年 屋根葺き材や雨樋の劣化が激しい場合
階段・廊下・ベランダ 鉄部などの塗装 5~10年 外壁塗装時に行うことも多い
設備 給排水管の交換 25~30年 各住戸の設備は個々に行うことが多い

参考:国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック

大規模修繕の工事範囲は、1棟アパートすべての住戸や共用部分です。しかし、修繕費は工事の部位や種類によって異なりますので、劣化状況などによって、どのような工事を行うべきか判断する必要があります。

以下は上記の表をもとにした、総戸数10戸の木造アパートにかかる費用相場です。

総戸数10戸の木造アパートにかかる大規模修繕工事の費用
部位 10~15年目(万円) 25~30年目(万円)
外壁 120 120
屋根・雨樋 60 60
階段などの鉄部 60 60
設備 150
合計 240 390

*外壁・屋根の25~30年目は、塗装を前提としています。

10~15年目と25~30年目に工事を行った場合、25~30年目のほうが費用がかかる傾向にあります。

修繕内容によって会計処理は異なる

アパート経営による収入は「不動産所得」に該当し、収入から必要経費を控除した残額、つまり利益=所得に対して不動産所得税が課税されます。

アパートの修繕費は必要経費として計上できるので、1年間の家賃収入から大規模修繕工事費を控除すると赤字になる場合があります。赤字であれば所得は0になり税金はかかりません。

ところが修繕工事の内容によって全額が必要経費として認められず、建物の価値が上がる「資本的支出」とみなされる場合があります。資本的支出となった場合は「減価償却」により、毎年分割して必要経費に計上します。

修繕費

必要経費として計上できる修繕費について、もう少し詳しく解説していきます。

アパート経営では入居者の入退去により「原状回復工事」を行います。この工事は入居前の状態に戻す工事であり、ほとんどは床・壁・天井の内装などや照明器具・建具などで故障・破損したものの交換が該当します。

入退去時に「ハウスクリーニング」をするのも一般的です。ハウスクリーニング費用も修繕費や外注費、雑費として計上されます。いずれの場合も、必要経費となることに変わりはありません。

台風や大雨で屋根や外壁が破損した場合なども、修繕することにより元の状態に戻す工事となり修繕費となります。

大規模修繕工事は「資本的支出」とみなされる場合と必要経費である「修繕費」として認められる場合があり、会計処理において注意が必要です。

資本的支出(耐用年数ごとに減価償却)

大規模修繕工事が資本的支出になるか、収益的支出(経費計上できる修繕費)になるかの判断は次の手順で行います。

  1. 修繕費用が20万円未満であれば修繕費
  2. 20万円以上の費用がかかった工事でも、おおむね3年以内で繰り返し行うものは修繕費
  3. 20万円以上であり、かつ3年以内に繰り返す工事ではないが、維持管理のためや原状回復のための工事であれば修繕費

以上の条件にあてはまらないものは「資本的支出」に該当する可能性があるので、次の手順で判断を行います。

  1. 20万円以上の工事で、建物の価値を高める、あるいは性能を向上させるなどにより、建物の使用できる期間を延ばす工事は資本的支出に該当
  2. 原状回復のためのものか「資本的支出」に該当するか判断できない工事で、60万円以上であれば資本的支出
  3. 原状回復のためのものか「資本的支出」に該当するか判断できない工事で、工事費が前期末時点での取得価額の10%を超える場合は資本的支出

ここまでの手順で資本的支出に該当する場合、必要経費に算入できるのはその年の「減価償却」分です。しかし、減価償却できる金額は法定耐用年数により異なります。

耐用年数とその償却率一覧

アパートの減価償却は、法定耐用年数により償却率が決まっています。構造別の耐用年数と償却率は次のとおりです。

構造別の耐用年数と償却率
構造 摘要 耐用年数 償却率
木造 一般的な木造住宅 22 0.046
鉄骨鉄筋コンクリート・鉄筋コンクリート 住宅、マンション 47 0.022
ブロック造 38 0.027
金属造 鉄骨の肉厚が4ミリ以上、いわゆる重量鉄骨は6ミリ以上なので、ここに該当 34 0.030
鉄骨の厚みが3ミリ超4ミリ以下、いわゆる軽量鉄骨で型式適合認定の工業化住宅などはここに該当 27 0.038
鉄骨の厚みが3ミリ以下の軽量鉄骨造 19 0.053

参考:国税庁「No.2100 減価償却のあらまし

なお、建物の減価償却は定額法で行います。また、取得時期が平成19年以前か以後かで償却率は分かれますが大きな違いはありませんので、便宜上平成19年4月1日以後の取得建物の償却率を記載しています。

また建物用途は「住宅」のみを掲載しますので、ほかの用途の場合は国税庁のホームページでご確認ください。

取得した建物価格に償却率をかけると、1年間に減価償却できる費用がわかります。たとえば、5,000万円の木造アパートは、次のように計算します。

1年間に減価償却できる費用=5,000万円×0.046=230万円

1年間に減価償却できる費用は、230万円です。新築のアパートを取得し15年後に300万円で大規模修繕工事を行った場合は、新たに300万円の固定資産を取得したと考え減価償却します。その償却率は年間0.046%になります。

中古でアパートを取得した場合は、中古アパートの耐用年数にしたがって償却率を計算します。中古アパートの耐用年数は次のように計算します。

中古建物の耐用年数=(法定耐用年数-経過年数)+(経過年数×0.2)

たとえば築15年の木造アパートの耐用年数は次のように計算します。

耐用年数=(22-15)+(15×0.2)=10年

この場合の償却率は0.1となります。

減価償却する場合のメリットとデメリット

アパートの修繕費を「資本的支出」として減価償却する会計処理は、ルールにもとづき厳格に行いますので、本来メリットやデメリットがあるものではありません。

ただし、減価償却できるのにしないのは大きなデメリットになるおそれがあります。単年度で損金処理すべきものを多年度に分割するのは、会計ルールに適合しません。

ここでは「メリット」として減価償却によって得られる利益について説明し、減価償却を行うための事務処理上のデメリットについて解説します。

減価償却のメリット

減価償却のメリットは節税効果であるといわれています。

アパート経営による所得とは、年間家賃収入から必要経費を差引いた残りの利益のことであり、アパート取得時の費用は関係がないと考える方もいるでしょう。

ところが、アパートを取得した費用のうち建物の費用については、年数がたつと資産価値が下がっていきます。下がっていく価値が「減価償却」であり、減価償却費は「必要経費」として計上できるため「節税効果」があるといわれる理由になっています。

では、大規模修繕工事を行った場合の節税効果について考えてみましょう。

大規模修繕工事は事業継続中の支出のため、全額修繕費として計上すると必要経費が大きくなり所得を圧縮できます。ところが金額が大きくなると所得がマイナス、つまり赤字になる場合があります。

赤字になると所得税は課税されないので、節税効果としては最大になります。しかしこのような節税効果はメリットと捉えることもできれば、デメリットとなることもあります。

節税効果のデメリット

大規模修繕工事を必要経費に算入し最大の節税効果を得た場合のデメリットとは、次のようなものです。

  • 赤字経営となり金融機関の評価が下がる
  • 大規模修繕工事の費用が大きく単年度で償却しきれなかった場合は翌年に繰り越せず、減価償却と比べてトータルの節税効果が減少してしまう(青色申告の場合は3年間で償却しきれなかった場合)

上記のようなデメリットがあるため、一般的には大規模修繕工事費が減価償却できる「資本的支出」に該当するほうがメリットになると考えられます。

減価償却のデメリット

減価償却にデメリットといえるものは、あまりありません。強いてあげると「手間がかかる」ことです。

不動産所得を求めるには「家賃収入合計-必要経費合計」という単純な計算ですが、ここに減価償却費を加えることにより、耐用年数の確認や前期末時点での取得価額の計算などが必要です。

誤って減価償却費を多く計算して申告すると、過少申告になります。過少申告すると追徴課税を受けますので、注意しましょう。

減価償却する場合の注意点

減価償却をする場合に、判断のミスや計算のミスは「過少申告」のリスクが伴います。ここでは、減価償却の会計処理を行う際の注意点を解説します。

事前に税理士などの専門家に相談しておく

事前に税理士などの専門家に「資本的支出」になるかどうかの相談をしましょう。

仮に20万円の比較的小規模な工事でも、建物の耐久性を向上させる工事は「資本的支出」と見なされます。けっして金額で判断しないことが重要です。

また、60万円以上でも明らかに「原状回復」のための工事であれば修繕費になります。専門家に相談し判断してもらうことにより、適正な会計処理を目指しましょう。

資産計上と資産の減少

資本的支出に該当する大規模修繕を行った場合は、資産が増加します。アパートは固定資産になりますが、取得時の固定資産とは区別して資産として計上しなければなりません。

また、減価償却を行うとその分資産の金額が減少しますので、その分を毎年記帳する必要があります。

減価償却の仕訳方法には「直接法」と「間接法」がありますが、アパート経営の大家さんの場合は「直接法」がわかりやすいとされています。税理士などの助言を受けながら、適切な方法を採用するのがよいでしょう。

資本的支出を行った年の減価償却

年度の途中に大規模修繕を行った場合の減価償却は、年度中の減価償却費分として「月割」します。そのため適用する償却率を月割りで換算し、当年度中の減価償却分を計算します。

固定資産減少分も同様になりますが、翌年からは1年分となるため間違わないようにしましょう。月割りを間違えてしまうと、「過少申告」になるおそれがあります。

また、最初の年度が月割りの場合は最終年度も月割りです。減価償却を行うたびに、当期年度末の資産価格を正確に記録しておくと、最終年度の減価償却費を間違えにくいのでおすすめです。

この記事を書いた人

著者写真 TERAKO編集部
小田急不動産
鳥塚 正人

難解なイメージのある投資不動産の取引について、『わかりやすく』お伝えすることにこだわってます。不動産投資は、それぞれ置かれている状況、ご事情やご希望条件によりゴールへの道筋が異なります。皆様にとって最適な道標を描くヒントとなれるような情報発信を心がけます。 著者の記事一覧はコチラ
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