不動産投資
2024.03.28

相続したアパートの売却にかかる税金や費用は?節税をするには

相続したアパートの売却にかかる税金や費用は?節税をするには

相続したアパートを売却するときには、譲渡所得税や印紙税、登録免許税などの税金や、仲介手数料、一括返済の手数料などの費用がかかります。これらの税金や費用を把握しておかないと、売却代金からいくら手元に残るのかがわかりません。

アパートの売却にかかる税金と費用について詳しく解説するとともに、節税のポイントも紹介します。相続したアパートを売却予定の方は、ぜひ参考にしてください。

この記事の目次

相続したアパートを売却するときには、譲渡所得税や印紙税、登録免許税などの税金や、仲介手数料、一括返済の手数料などの費用がかかります。これらの税金や費用を把握しておかないと、売却代金からいくら手元に残るのかがわかりません。

アパートの売却にかかる税金と費用について詳しく解説するとともに、節税のポイントも紹介します。相続したアパートを売却予定の方は、ぜひ参考にしてください。

相続したアパートの売却でかかる税金

相続した事業用のアパートを売却すると、税金がかかります。売却したあと手元にどれくらいの金額が残るのかを把握するには、売却時に課税される税金を理解する必要があります。アパートの売却時にかかる主な税金は以下の通りです。

  • 譲渡所得税
  • 印紙税
  • 登録免許税

ここでは、それぞれの税金について詳しく解説します。

譲渡所得税

不動産を売却して利益が出た場合、売却益に対して課税されるのが譲渡所得税です。譲渡所得税は所得税と住民税に分かれており、以下の計算式で算出できます。

譲渡所得税=(売却金額-取得費-譲渡費用)×税率

取得費とは、相続したアパートを購入した際の購入金額や建築代金と、手数料や測量費、設備費、改良費など購入にかかった諸費用を合わせた金額のことです。

建物の取得費は、所有期間中の減価償却費相当を差し引いた金額になります。購入時に納税した登録免許税や不動産取得税、印紙税などの税金は、事業用不動産だと取得費に含められません。取得費は、アパート購入時の契約書や、領収書などで金額を確認できます。購入金額や諸費用がわからない場合は、売却価格の5%を取得費として算出することが可能です。

譲渡所得税の税率は、不動産の所有期間により変わります。所有期間が5年以下の場合は短期譲渡所得、5年を超える場合は長期譲渡所得の税率が適用されます。税率は以下の表の通りです。

譲渡所得税
譲渡所得 所有期間 税率
短期譲渡所得 5年以下 39.63%
(内訳)
・所得税 30%
・住民税 9%
・復興特別所得税 0.63%
長期譲渡所得 5年超 20.315%
(内訳)
・所得税 15%
・住民税 5%
・復興特別所得税 0.315%

相続でアパートを取得した場合は、相続する前に親が所有していた期間を通算して所有期間とすることが可能です。たとえば、相続してから1年しか経っていなくても、親が6年住んでいれば、通算した所有期間が7年になるため長期譲渡所得になります。

なお、譲渡所得税は売却益に課税される税金です。たとえば、相続したアパートを売った売却金額より、親がアパートを購入した際の取得費や売却時にかかった諸費用の方が高額なら、売却益が出ないため譲渡所得税は課税されません。

印紙税

印紙税は、売買契約書に貼付することで納める税金です。税額は、以下の表のように、契約価格により決まります。令和6年3月31日までに締結された契約書に関しては、軽減措置が適用されます。軽減措置が適用された印紙税額は以下の通りです。

印紙税額(軽減措置適用)
契約金額 印紙税額
500万円を超え1,000万円以下 5,000円
1,000万円を超え5,000万円以下 1万円
5,000万円を超え1億円以下 3万円
1億円を超え5億円以下 6万円
5億円を超え10億円以下 16万円
10億円を超え50億円以下 32万円

参照元:国税庁「No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置

不動産の売買契約書は、原本を2部作成して売主と買主が1部ずつ保管するのが一般的です。そのため、印紙税も売主と買主が自身で保管する原本の印紙代を負担します。ただし、1部だけ作成して買主が原本を保管し売主が写しを保管する場合は、買主が印紙税を負担します。

登録免許税

登録免許税も、相続したアパートを売却する際にかかる税金のひとつです。登録免許税とは、不動産に関する登記を行う際に課税される税金です。

アパートの購入時に事業用ローンを組んでいると、アパートには借入した金融機関の抵当権が設定されています。事業用ローンの借入が残っているアパートを売却するには、ローンの残債を一括返済して、アパートに設定されている抵当権を抹消しなければなりません。抵当権を抹消する際には、登録免許税が課税されます。

登録免許税の税額は、登記の種類により異なります。抵当権抹消登記の登録免許税は、不動産1筆につき1,000円です。アパートが土地1筆と建物1筆だった場合、登録免許税は2,000円、土地2筆と建物1筆だった場合は3,000円の登録免許税が課税されます。

不動産の登記は自身で行うことも可能ですが、専門用語が多かったり書類や手続きがわかりにくかったりするため、司法書士に依頼するのが一般的です。司法書士に依頼すると、登記手続きの際に司法書士が登録免許税を納税してくれます。そのため、売主は、登録免許税や司法書士への報酬、交通費などを合計した金額をまとめて、決済時に司法書士に支払います。報酬は司法書士によって異なるため、依頼するときは見積もりを取って金額を確認しましょう。

なお、相続登記や売却時の所有権移転登記にも、登録免許税がかかります。売却時の所有権移転登記にかかる登録免許税は、買主が負担するのが一般的です。

アパート売却でかかる税金一覧

ここまで、相続したアパートを売却する際に課税される税金を解説しました。以下に、主な内容をまとめたので、参考にしてください。

アパート売却でかかる税金
税金 概要
譲渡所得税 アパートを売却して得た利益に課税される税金。所有期間により税率が異なる
印紙税 売却時に交わす売買契約書に印紙を貼付して納める税金。契約金額により税額が異なる
登録免許税 アパートに事業用ローンの抵当権が設定されている場合に、抵当権を抹消するためにかかる税金。抵当権が設定されていなければ不要

アパートを売却して売却益が出た場合は、譲渡諸島税の確定申告が必要です。「相続財産を売却した場合の取得費加算の特例」を受ける場合も、確定申告をしなければなりません。確定申告をしないと控除や特例を受けられないため、忘れずに申告しましょう。

アパートの売却にかかる費用

相続した事業用アパートを売却するときにかかる費用は、税金だけではありません。税金以外には、主に以下の費用がかかります。

  • 仲介手数料
  • 一括返済の手数料

以下に、項目ごとに詳しく解説します。

仲介手数料

仲介手数料とは、売却時に仲介した不動産会社に支払う手数料のことです。不動産の売却は専門的な知識が必要であるため、あとのトラブルを避けるためにも、不動産会社に仲介を依頼するのが一般的です。

仲介手数料は、宅地建物取引業法により、不動産会社が受け取れる金額の上限が定められています。不動産会社は仲介した売主と買主の両方から仲介手数料を受け取れますが、双方から受け取る手数料の合計が、定められた上限を超えてはいけません。上限の金額は以下の通りです。

仲介手数料の上限
売却価格 仲介手数料
200万円以下の部分 売却価格×5.5%
200万円を超え400万円以下の部分 売却価格×4.4%
400万円を超える部分 売却価格×3.3%

参照元:国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額

ただし、この計算方法は、売却代金を「200万円以下の部分」「200万円を超え400万円以下の部分」「400万円を超える部分」の3つに分けて計算したうえでそれぞれの金額を合計して算出するため、計算が複雑になります。そこで不動産会社では、以下のように、簡単に計算できる計算式に当てはめて算出することが一般的です。

仲介手数料の簡単な計算式

売却価格仲介手数料200万円以下の部分売却価格×5.5%200万円を超え400万円以下の部分売却価格×4.4%400万円を超える部分売却価格×3.3%

たとえば、売却価格が300万円だった場合の仲介手数料の上限は以下のように計算できます。

(300万円×4%+2万円)×1.1=15万4,000円

売却価格が1,500万円だった場合は、以下の通りです。

(1,500万円×3%+6万円)×1.1=56万1,000円

このように、仲介手数料は高額になる可能性があるため、いくら支払うことになるのかを把握しておくことが大切です。

また、仲介手数料の支払い時期には、2つのパターンがあります。

  • 決済時に全額を一括で支払う
  • 売買契約時に半額を支払い、残りの半額を決済時に支払う

決済時に支払う金額は、売却代金から支払うことが可能です。しかし、契約時に半額を支払う場合は、手元の現金で準備しなければなりません。どちらの時期に支払うかは不動産会社によって異なるため、仲介を依頼する際に確認して、現金の準備をしておきましょう。

一括返済の手数料

事業用としてアパートを購入する際は、購入金額が高額になるため、金融機関で事業用ローンを組むケースは多いでしょう。事業用ローンを借りているアパートを売却するには、ローンの残債を一括返済して、アパートに設定されている抵当権を抹消しなければなりません。

通常、一括返済するには手数料がかかります。金融機関によって金額は異なりますが、数万円程度かかる場合もあるため、前もって手数料の金額や手続きを金融機関に確認しておきましょう。

アパート売却にかかる費用一覧

相続したアパートを売却する際に、税金以外にかかる費用をまとめると以下の通りです。

アパート売却にかかる費用
費用 支払先 概要
仲介手数料 不動産会社 売却を仲介した不動産会社に支払う手数料。法律により金額の上限が決められている
一括返済の手数料 金融機関 借入している事業用ローンを一括返済する際にかかる手数料

仲介手数料もローンの一括返済手数料も、金額が大きくなることがあります。通常は、売却代金から支払います。どちらもローンではなく現金で支払うため、売却金額からいくら支払うことになるのかを把握しておくことが大切です。

なお、仲介手数料の半額を契約時に支払う場合は、売却益から支払えないため、手元の現金から支払わなければなりません。

アパート売却で節税をする方法

ここまで、相続したアパートを売却する際にかかる税金と費用を見てきました。売却金額が大きければ、かかる費用も高額になるため、できる限り費用を抑える工夫も必要です。

ここでは、アパート売却において、節税するポイントを解説します。

取得費、譲渡費用を残さず計上する

譲渡所得税は売却益に対して課税される税金です。そのため、できる限り売却益を少なくすることにより、税金を抑えられるでしょう。

売却益は、売却金額から取得費や諸費用を差し引いた金額のため、取得費や諸費用を残さず計上して売却益を少なくすることが大切です。アパートを購入した際の購入代金、建築費用、手数料に加えて、売却時の手数料、測量費など、諸費用として計上できる費用は少なくありません。

忘れずに計上できるように、確定申告までに余裕をもって金額を確認しておきましょう。

特に、親がアパートを購入してから何年も経っていると、購入当初の書類を紛失しているケースもあります。親が亡くなってしまい、書類がどこにあるのかわからないこともあるでしょう。

しかし、取得費や購入時の諸費用がわからないと、差し引く金額が少なくなって損をしてしまうことがあります。相続が発生する前から、購入時の書類がどこに保管されているのかを確認しておくことが必要です。

相続財産を譲渡した場合の取得費の特例を利用する

譲渡所得税において、売却益を算出する際に売却金額から取得費を差し引きます。相続したアパートを売却した場合は、相続時に納税した相続税を取得費に加算して、売却金額から差し引くことが可能です。これを「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」といいます。相続税を取得費に加算することにより、売却益を減らせるため、売却益を少なくして税金を抑えられるでしょう。

ただし、特例を利用するには、相続期限から3年以内つまり相続が開始されてから3年10カ月以内に売却しなければなりません。売却できるまでに想定以上の時間がかかってしまうこともあるため、相続から売却するまでの期間に注意しましょう。

相続したら早めに売却する

不動産は、所有しているだけで固定資産税が課税されます。相続してから売却するまでに時間がかかってしまうと、所有している期間は固定資産税を納税しなければなりません。賃料収入を得られたとしても、アパートにかかる固定資産税は高額になる場合もあるため、損をする可能性もあります。

節税のためにも、事業用アパートはできる限り早めに売却することをおすすめします。

この記事を書いた人

著者写真 TERAKO編集部
小田急不動産
横溝 浩由

誠実がモットー。これまでのお客様との出会いが投資不動産領域での私自身の見識を高めることに繋がっており、お客様への感謝を胸に、いかに皆様のお役に立てる情報を発信できるかが重要と思っております。こんなことをもっと知りたい等、お気軽にお声掛けいただけると嬉しいです。 著者の記事一覧はコチラ
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