アパート売却時の立ち退きの進め方を解説!トラブル回避や予防策も紹介
築古アパートを売却する目的で入居者に立ち退き請求する場合の注意点や解決方法について説明します。
オーナーにとって負担の少ない立ち退きを実現するために、事前にどのようなトラブルが発生するのか、その予防策にはどういったものがあるのかを把握しましょう。
この記事の目次
アパート売却における立ち退きの進め方
そもそもの話をすれば、アパートやマンションなどの賃貸物件は収益物件として投資家に好まれ、入居者ありきで売買がなされるのが一般的です(これをオーナーチェンジといいます)。
満室に近い状態であれば高利回り物件として評価されるので、築古物件が相場以上の高値で取引されるケースも珍しくありません。
また、借地借家法第28条により、入居者は「アパートを売却するから」などのオーナー都合で住む場所を奪われることがないよう法律で守られているため、売却したいからといって簡単に立ち退きの手続きが進めていけるわけではありません。
立ち退きを請求する上で「正当事由」として認められるのは次のようなケースです。
- 建物が著しく老朽化しており、このまま入居を継続させることで入居者に危険が伴う恐れがある場合
- 行政の都市計画などの絡みで建物を解体せざるを得なくなった場合
- オーナーがその土地を自用地として使用することになった場合
- 入居者側になんらかの契約違反行為がある場合
しかしこれらについても、ケースバイケースでの判断がなされることになっており、必ずしも正当事由と認められるわけでもなさそうです。このような背景があるなかでは、正当事由なく入居者に立ち退き請求することは非常に難しいといわざるを得ません。そのうえで入居者に立ち退き請求するのであれば、次のような手続きで進めていく必要があります。
6カ月前までに立ち退きの通知と理由の説明をする
立ち退き請求する場合、まずはオーナーが、契約終了の1年前から6カ月前までの間に契約更新を拒絶する旨を入居者に通知しなくてはなりません(借地借家法26条1項)。
その折には契約更新を拒絶する正当事由が必要になる(借地借家法28条)のですが、前述の通り、オーナー都合での売却は正当事由にはあてはまりません。ですからこの場合は、立ち退き料を支払って退去してもらいます。
立ち退き料の交渉と支払い
入居者側に賃貸借契約上の違反がなければ、オーナー側の理由で入居者に退去してもらうわけですから、入居者に与える損害をオーナーが補てんする意味で立ち退き費用を負担するのが通例です。一般的には現在の家賃の6カ月相当が目安と考えればいいでしょう。
内訳として、引っ越し費用のほか、転居先の部屋を確保するための費用(仲介手数料や敷金・礼金など)までが含まれるイメージです。それ以外では、引っ越し先の家賃のほうが高かった時の差額補填費用(2年分程度が目安)、これまでの生活環境から変化が起こることでかかるようになった負担(通勤通学上の交通費など)に対する迷惑料などを検討項目に含めておけば、よりスムーズに交渉が進められる可能性があります。
退去手続き
立ち退き請求を入居者が受け入れ、立ち退き料や退去日などが確定したら、立ち退き合意書を作成する必要があります。
立ち退き合意書はオーナーと入居者が立ち退きに関する条件に合意したことを証明する書面になるので必ず作成してください。いったん条件合意しても後日「やっぱり…」と別の条件を提示されるおそれもあります。条件に合意したらその場で簡易的な書面に双方が署名押印するくらいの準備をしておきましょう。立ち退きトラブルに発展しないように、早々に正式な合意書を交わすことが大切です。
アパート売却のベストなタイミング
立ち退き請求に関するトラブルをできるだけ減らすためにアパート売却のタイミングを見極めていくことも大切です。
売却のベストなタイミングとして次の3つがあげられますのでご参考にしてください。
- アパートの入居者が少なくなっているタイミングで売却(可能であれば売却時期をあらかじめ決めておき、新規入居者の募集を止めるか新規入居者に期限付きでの賃貸借契約となる
- ことを伝えたうえで入居してもらう)
- 入居者の転居先が確保しやすい春・秋のタイミングで売却
- 投資家が購入してくれる確率が上がる築20年以内に売却
アパートの立ち退きにおけるトラブル事例
アパートの立ち退き請求は非常に難しくなるケースが多く、トラブルは後を絶ちません。立ち退きに関して起こりがちなトラブルの事例として、次のようなものがあります。
- 入居者が多額の立ち退き料を請求してきた
- 入居者同士が結託して立ち退きに応じない
- 入居者と連絡が取れず、立ち退きの手続きが進められない
これらについて順に説明していきます。
入居者が多額の立ち退き料を請求してきた
ひと昔前であれば、立ち退きに関しての法的知識を持つ人は少なく、常識的範囲内で立ち退き請求をし、またそれに応じる、という関係性が成立していたかもしれません。しかしインターネットが普及した現代の情報社会においては、一般の人でも立ち退きに関する情報を収集し、知識を得ることが可能です。
入居者がネット検索などで過去の判例をチェックし、オーナーにとって想定外の立ち退き料を請求してくるなど、最近増えたトラブル事例といえるでしょう。
入居者同士が結託して立ち退きに応じない
築古物件で入居者同士に交流が有り、その交流を取り仕切っているリーダー格に当たる人がいる場合や、賃貸借契約に関して詳しい知識を持っている人がいる場合に、入居者同士が結託して立ち退きに応じないという状況に発展することがあります。
入居者同士の人間関係を把握しているのであれば、最初にリーダー格の人に話に行くなどの方法もありますが、その人が立ち退きを拒否するのであれば効果的ともいえず、トラブル回避が難しくなります。
入居者と連絡が取れず、立ち退きの手続きが進められない
築古アパートで特に注意したいのが不良入居者とよばれる入居者の存在です。
家賃を滞納する人や、勝手にペットを飼うなどの契約違反行為をする人ももちろん困るのですが、立ち退きの場面において本当に困るのが、入居者が不在もしくは消息不明で連絡が取れず、手続きが進められない場合です。遅くとも6カ月前には立ち退きの通知をしなければならないのに、本人不在ではその手続きを進めることができません。
上記のような事例はどれもオーナー自身での解決が難しく、心身ともに負担が大き過ぎるトラブル事例です。
最終的手段として裁判をする方法もないわけではありませんが、「建物明渡請求訴訟」と呼ばれるこの裁判では、オーナー側に正当事由があるかどうかが争点のひとつとなるため、オーナーに有利な解決方法を導き出すのは難しいとされています。
アパート売却における立ち退きは不動産会社に任せよう
結論からいえば、アパート売却における立ち退きは不動産会社に任せるのが一番です。オーナーが自身で立ち退き問題を解決するのは非常に困難だからです。立ち退き問題を解決してくれる不動産会社を選ぶ際の3つのポイントをご紹介します。
アパート売却における立ち退きの実績豊富な会社を選ぶ
アパート売却時の立ち退きについて、実績豊富な会社を選びましょう。
立ち退きには弁護士にしかできない交渉もあるため、交渉が可能な領域を把握したうえで、入居者と有効な交渉ができる会社を選ばないと法律違反になってしまうおそれもあります。
専門的な知識を持つスタッフがいる会社を選ぶ
不動産会社はその分野において専門的な知識や資格が必須となっており、専門的な知識を持って多くの経験を積んだスタッフがいるかどうかで立ち退きの成否が変わってしまいます。
オーナーとのコミュニケーションが良好な会社を選ぶ
いかに実績や知識が豊富でも、オーナーとの良好なコミュニケーションがとれない会社では信頼がおけなくなってしまうでしょう。
オーナーの話や希望条件をしっかりと聞き取り、状況をこまめに連絡してくれるなど、関係性を重視してくれる担当者がいる会社と付き合えれば、心の負担も軽くなるでしょう。
この記事を書いた人
TERAKO編集部
小田急不動産
鳥塚 正人
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