アパート修繕の基礎知識|修繕費の目安や計画の立て方を紹介
アパート経営は、適切な修繕をして物件の資産価値を維持し、入居者を確保する必要があります。
アパートの修繕について、修繕計画や必要な修繕種類など、把握すべきポイントを解説します。
この記事の目次
アパート修繕の基礎知識
アパートの修繕でどのような部分に目を向けるべきなのかなどの基礎知識を紹介します。
アパート修繕の重要性
アパートなどの不動産は、年数の経過とともに劣化が進むものです。また、第三者である入居者が住むため、きれいに使ってくれないこともあります。そのため、アパートは定期的な修繕が必要です。
また、入居率を維持するためにも重要です。前の入居者が出て行ったあと、新しい入居希望者が部屋を見学する際、適切な修繕を行っていないと、入居を断られてしまうおそれがあります。
アパート経営におけるオーナーの収入は家賃収入が大半です。入居率が下がるとローンの返済が難しくなるなど、収支バランスが崩れるおそれがあります。
安定した経営を維持するためにも、修繕は重要だと理解しておきましょう。
修繕の種類
アパートの修繕には、以下のような修繕の種類があります。
補修工事
居室内や共用部分の不具合を、修繕する工事です。エアコンや給湯器などの設備機器、壁紙や床の修繕など、新しい入居者が快適に暮らせるように行います。
新しい入居者が入る際に、こまめに点検を行っておけば小規模の補修で済みます。費用は内容によって異なりますが、数万円から数十万円が目安です。
原状回復工事
入居者が退去する際は、壁紙や床が汚れていたり、設備機器が劣化していたりする可能性があります。そのため、入居前の状態へ戻すために行う修繕工事が、原状回復工事です。
ただし、原状回復工事は絶対に行うものではなく、必要な場合に行う工事です。そのため、居室内で何の問題もない場合は、美装工事のみを行います。
費用は退去者の敷金から差し引きますが、敷金で資金が足りない場合は、退去者に差額を支払ってもらうのが一般的です。
壁紙の補修や美装工事は数万円ほどであり、給湯器やエアコンなどの設備機器の修理や交換の場合は、数万円から数十万円がかかります。
大規模修繕工事
大規模修繕工事は、外壁塗装や外壁の張替え、屋根の張替えや塗装、内装の張替えなど、多額の費用がかかる大がかりな工事です。約10~15年の頻度で行うのが望ましいでしょう。
大規模修繕工事は、雨漏りや建物の耐久性の低下など、さまざまな不具合を防ぐ目的があります。
工事内容にもよりますが、費用は100㎡あたり約100万円が目安です。オーナーが負担するため、毎月受け取る家賃から積み立てて資金を準備しておきます。
修繕計画の考え方
アパートオーナーは、収支のバランスを保つためにも、綿密な修繕計画を立てる必要があります。
将来的に必要な修繕の内容や時期、費用を想定する
外壁工事や屋根工事、内装工事など、将来的に必要な修繕はたくさんあります。どんな修繕がいつ頃に必要になるのかをピックアップしましょう。
また、いくらくらいの費用がかかるのかも、あらかじめ把握しておくべきです。自分での確認が難しい場合は、専門家に相談するとよいでしょう。
修繕積立金の貯め方
アパートの修繕には多額の費用がかかるため、都度積立金として貯めておく必要があります。
一般的に、以下のような割合で毎年積立金額を貯めるのが一般的です。
築年数 | 積立金を貯める割合 |
---|---|
1~10年目 | アパート建設費の約0.3%を毎年 |
10~20年目 | アパート建設費の約0.5%を毎年 |
21年目以降 | アパート建設費の約1.0%を毎年 |
たとえば5,000万円のアパートの場合、修繕費は以下のように貯めていくのが理想です。
- 1~10年目:アパート建設費5,000万円 × 0.3%=毎年約15万円を貯める
- 10~20年目:アパート建設費5,000万円 × 0.5%=毎年約25万円を貯める
- 21年目以降:アパート建設費5,000万円 × 1.0%=毎年約50万円を貯める
アパートの修繕箇所と費用
アパートの修繕個所別に、費用の相場を紹介します。
外壁塗装
外壁塗装は、2階建てのアパートに普及品のシリコン塗料を塗装すると仮定すると、1㎡あたり約3,000円が目安です。
たとえば、外壁面積が300㎡だと、300㎡×約3,000円=約90万円がかかります。
その他、足場や養生などの仮設費用が塗装費用の約20%かかります。
外壁の張替え
アパートの外壁の張替えは、約100万〜400万円がかかります。費用の幅がある理由は、使う外壁材により費用が異なるためです。
たとえば、2階建てのアパートの外壁に窯業系サイディングを張替える場合は、約200万~400万円がかかります。
その他、足場などの仮設費用が塗装費用の約20%かかります。
屋根塗装
床面積が約60坪のアパートで普及品の塗料を使うと仮定すると、屋根塗装の費用は約120万円が目安です。
遮熱塗料などの屋根の機能性塗料を使うと、費用は高くなります。
その他、足場や高所作業車などの仮設工事の費用が工事費の約20%かかります。
屋根の葺き替え
アパートの屋根の葺き変えの費用は、床面積が約60坪のアパートでは、約200万~300万円が目安です。外壁の張り替えと同様に、使う屋根材によって費用に差があります。
その他、足場や高所作業車などの仮設工事の費用が工事費の20%ほどかかります。
排水管の洗浄
アパートは不特定多数の人が使っているため、排水詰まりが発生するケースがあります。そのため、定期的な排水管や排水枡の洗浄が大切です。
洗浄にかかる費用は、約5,000円なので安価に洗浄ができます。
壁紙や床の張替え
壁紙や床も経年劣化するので、張替えが必要です。
張替え費用は、壁紙の場合は1㎡あたり約1,000~1,500円、床はクッションフロアの場合は1㎡あたり約3,000~5,000円が目安です。
エアコンの清掃や交換
オーナー負担でエアコンを取り付けている場合は、オーナーのほうで清掃や必要な場合は交換を行います。
エアコンの清掃は、8,000~1万円の依頼費用がかかります。交換の場合は機種によって異なりますが、3万~10万円です。
給湯器の点検や交換
給湯器は経年劣化するものであり、第三者が使っているので故障しやすい傾向があります。故障していなくても、定期的な点検が必要です。
給湯器の点検および清掃は約2万円かかり、交換の場合は約10万~30万円です。
アパートの修繕と出口戦略の関係性
アパートは築年数の経過に伴い、劣化が進み、修繕費が高くなっていく傾向にあります。そのため、古いアパートは持ち続けるのではなく、手放す時期を考えるのも大切です。
収入と修繕費のバランスを考える
アパートが築年数の経過に伴い劣化が進むと、さまざまな部分で同時に修繕のタイミングが来るようになります。その場合、修繕費だけでも多額の資金を捻出しないといけません。
家賃収入と見合わない大規模改修となってしまい、オーナーが費用を多く捻出する必要に迫られるおそれもあります。このような状態になった場合は、手放すタイミングといえます。
古いアパートは購入者からも敬遠される
アパートは、築20年程度までが売却しやすいといわれています。
アパート経営では、物件を手放して収支を確定させる出口戦略が重要です。これまで安定した収入を得られていたとしても、ローンの支払いや物件の売却価格を考慮したトータルの収支がマイナスになってしまえば意味がありません。
しかし、あまりに古くなりすぎてしまうと、建物の傷みがひどく、購入したあとに多額の修繕費がかかります。いざ売却しようとしても、購入希望者から敬遠される傾向にあります。
そのため、思い切って早めにアパートを手放す決断も大切です。
アパート売却は得意な不動産会社に相談を!
アパート経営では、物件の劣化状況を把握したうえで、売却のタイミングを見極めるのが重要です。
多額の修繕費をかけたうえ、最終的にはアパートが売れないような状況になってしまっては手遅れです。
まずは、アパート売却が得意な不動産会社に相談してみましょう。修繕の必要性なども含めて、売却のタイミングや戦略の立て方などの的確なアドバイスがもらえます。
この記事を書いた人
TERAKO編集部
小田急不動産
鈴木 和典
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