アパートの売却査定|査定額を上げるポイントを解説
アパートの売却を検討したとき、まずは不動産会社に査定依頼をし、どのくらいで売却できるのかを確認します。
不動産会社が提示する査定額が高いと、アパートの価値が高いということになりますが、アパート査定はどのように行われるのでしょうか。通常の不動産査定との違いや査定額を上げるポイントについて解説します。
この記事の目次
アパートの査定方法と通常の不動産査定の違い
アパートの査定方法について、通常の不動産査定との違いに触れながら解説します。
ここで解説するアパートとは、建物内が複数に区切られ、それぞれ部屋が独立した賃貸物件を指します。アパートの構造は、木造や軽量鉄骨造、鉄骨造となっています。
通常の不動産の査定方法
自用の土地や戸建などの不動産の査定は、主に取引事例法や原価法を用います。取引事例法とは、査定する不動産と条件が近い不動産の成約事例を数多く収集し、各取引事例の個別要因や取引時期、地域要因や個別要因を勘案して不動産を評価する方法です。
原価法(積算価格)は、査定対象を再度建築や造成した場合の再調達価格を算出し、その再調達価格から築年等の減価修正を行い、対象物件を評価する方法です。
アパートの査定方法
賃貸物件のアパートの査定の場合、原価法による「積算価格」と収益還元法による「収益価格」を重視します。収益還元法とは、査定する不動産がこれから将来に生み出すと想定される収益を求めて、その収益の現在価値の総和が査定額となります。
収益還元法を求める方法として、直接還元法とDCF法があります。
- 直接還元法
- 通常1年間の得られる純収益を想定し、還元利回りで割る方法で、アパートの査定で最も用いられる方法で、簡単に収益価格を算出できる
- DCF法
- 「Discounted Cash-Flow」の略で、5~10年程度の期間で賃料の下落や空室率などのリスクを織りこんだキャッシュフローに、将来の売却価格を想定し、それぞれを現在価値に割り引いて計算する方法
DCF法は直接還元法より計算方法は複雑ですが、精度は高いといわれており、オフィスや収益マンションなどを鑑定する場合に頻繁に用いられます。
アパートの積算価格
通常アパートに投資する場合、多くの投資家は銀行などの金融機関から借入を受けます。金融機関はアパートを査定する場合、収益価格以上に積算価格を重視する傾向があります。アパートの積算価格とは、土地価格と建物価格の合計です。
土地の積算価格は、色々な方法がありますが国税庁が公表している「相続税路線価」を用いることが多いです。土地の積算価格を相続税評価額とする場合、次のような計算式で求めます。
土地の積算価格= 路線価 ×地積 ×補正率
建物の積算価格は、新築建物の課税評価基準をベースに実際に建築するアパートの工事費(仕様により異なりますが概ね17万円/㎡〜25万円/㎡)を勘案して再調達価格を決定します。
算出した再調達価格に残価率を掛けますが、残価率は残耐用年数÷耐用年数で計算することができます。建物の耐用年数は、国税庁が公表している減価償却資産の耐用年数(木造アパートは22年、鉄骨は19〜34年)を参考にすることが一般的です。
建物の積算価格 = 再調達価格単価 ×延床面積 ×(残耐用年数÷耐用年数)
アパートの査定のケースステディ
以下条件のアパートについて、収益価格と積算価格を計算してみます。
- 年間収入:500万円
- 年間支出:200万円
- 土地面積:150㎡
- 相続税路線価:20万円/㎡
- 補正率:1.0
- 構造:木造(再調達価格20万円/㎡)
- 延床面積:200㎡
- 築年数:11年(残耐用年数11年)
【収益価格(直接還元法)】
- 年間純収益:500万円-200万円=300万円
- 還元利回り:周辺事例および築年数から還元利回りは6.0%とする
収益価格=300万円÷6%=5,000万円
【積算価格】
- 土地積算価格:路線価20万円×面積150㎡×補正率1.0=3,000万円
- 建物積算価格:再調達単価20万円×延床面積200㎡×(残耐用年数11年÷耐用年数22年)=2,000万円
積算価格=3,000万円+2,000万円=5,000万円
アパートの査定依頼は不動産会社へ
アパートの査定はこれまで説明した通り、多くの査定方法があり、それらを組み合わせ分析する必要があるため、自分で正確に算出することは困難です。そのため、アパートの売却査定は不動産会社に依頼するのが一般的です。
アパートの査定は無料
不動産会社にアパート査定を依頼するときに費用はかかりません。また、査定を依頼したからといって売却活動を進めないといけないわけでもありません。査定額を見てから売却の判断ができるため、気軽に査定依頼しましょう。
また、アパートをよりよい条件で売却するには、売買マーケットを把握することがカギになります。マーケットを理解するために、複数の不動産会社に査定依頼するのもおすすめです。
アパート売却の実績がある不動産会社を選ぶ
アパートを確実に売却するためには、プロの不動産仲介会社を選定する必要があります。
仲介会社の選定は、売却プロセスの大きなポイントになるため慎重に行いましょう。仲介手数料など目先の利益にとらわれず、実績や信頼性を重視しましょう。
また、アパートの査定や売却方法はマンションや戸建てとは異なります。トラブルに巻き込まれないためにも、アパートの査定や売却の実績が豊富な不動産会社を選びましょう。
アパートの査定額を上げるポイント
アパートを売却するうえで、オーナーの努力で査定額を上げられるポイントを解説します。以下のポイントを理解して運営・管理すれば、売却時の査定を上げられる可能性があります。
- 純収益を向上させる
- 賃借人の質を向上させる
- 適切な管理、修繕を実行する
- 売却に必要な書類を整理する
- 売却のタイミングを意識する
純収益を向上させる
査定額を向上させるため、アパートの純収益に着目しましょう。
単純に賃料や共益費を上げるだけではなく、アパートの空室を減らす、駐車場や自動販売機等による付帯収入を増やす、管理会社への委託費を減額するなどにより実現することができます。
賃借人の質を向上させる
アパートの査定額は、賃借人である入居者の属性や契約内容によって変化します。
たとえば、同じ賃料であってもフリーターの方と、大手企業勤務の方では信用が異なります。また、短期契約より長期契約のほうが収入の安定性が増します。
このように、優良な賃借人を選定することや安定的な賃貸借契約を締結することは重要です。
適切な管理、修繕を実行する
管理が行き届いたアパートは、買い手から高く評価されます。
また、適切に修繕や設備機器等の更新を行っているアパートは賃借人からの評価が上がり、純収益を向上させることにもつながります。
売却に必要な書類を整理する
アパートの売却には、賃貸借契約書(覚書などを含む)、登記事項証明書、建築確認済証、検査済証、登記済証(または登記識別情報)、固定資産評価証明書、建物図面など様々な書類が必要です。
建築確認がなかったり、検査済証を受けていないアパートは、遵法性が担保できないため売却が難しくなります。アパート取得時点から重要書類はしっかり管理しておくとよい査定を受けられることがあります。
売却のタイミングを意識する
不動産の価格は、住宅需給バランスや、周辺賃貸マーケットだけではなく、経済動向や金融市況などにも大きく影響を受けます。
アパートの価値が高くなるタイミングを見極められたら、より高い査定を得られるでしょう。不動産の価格形成には一定のサイクルがあります。価格上昇や価格高騰の時期を狙うと、予想以上の査定額が提示される可能性が高まります。
この記事を書いた人
TERAKO編集部
小田急不動産
横溝 浩由
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