アパートが老朽化したら建て替えるべき?リフォームや売却という選択肢もある
アパート経営を続けていると必ず直面する問題が、築年数の経過による建物の老朽化です。
老朽化問題は物件の資産価値が下がるだけでなく、収益性にも大きな影響を与えます。建て替えやリフォームをするのにも多額の費用が生じるため、対処に悩んでいるオーナーもいるでしょう。
老朽化したアパートが及ぼすリスクや具体的な対処法について詳しく解説します。
この記事の目次
アパートの老朽化が及ぼす影響
アパートが老朽化すると、空室が増えたり、建物の維持に多額の費用がかかったりします。さらに築年数が40年、50年を超えると、居室の傾きや倒壊の危険性も問題となります。
アパートの老朽化が及ぼす影響を詳しく解説します。
空室が増える
当然ですが、築年数が浅い物件のほうが入居者からの人気が高く、老朽化したアパートは空室が増える傾向にあります。
空室を埋めるために家賃を下げても、更新の際にまた空室が生じ、そのたびに家賃を下げざるを得ないという悪循環が発生してしまいます。
熊本地震や東北地方地震などの災害で一時的に老朽化した物件が満室になった事例もありますが、非常にまれなケースといえるでしょう。
倒壊の危険性が高まる
アパートには寿命があります。外観的には問題がなくても、劣化が進み構造にまで影響していると倒壊の危険性があるため注意が必要です。
国税庁より発表されている「法定耐用年数」は、ひとつの判断基準になります。法定耐用年数は、不動産などの資産を使用できる期間として定めたものです。
住宅の場合、建物の構造によって以下のように決められています。
建物の構造 | 法定耐用年数 | |
---|---|---|
木造・合成樹脂造 | 22 | |
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造 | 47 | |
金属造 | 骨格材の肉厚が4㎜を超える場合 | 34 |
骨格材の肉厚が3㎜を超え、4㎜以下の場合 | 27 | |
骨格材の肉厚が3㎜以下の場合 | 19 |
参考:国税庁「耐用年数(建物/建物附属設備)」
経年劣化による資産価値の低下を経費とする会計上の手続きで使われるもので、耐用年数を超えたからといってすぐに建物が使えなくなるわけではありません。しかし、アパートの寿命を判断する材料にはなるでしょう。
また、アパートのオーナーは耐震性にも目を向けなければいけません。特に、1981年5月31日以前に建てられた建物は旧耐震基準が適用されており、現行の耐震基準で建てられた建物よりも耐震性が低いため注意が必要です。
災害が発生した際にアパートの管理状況によっては、管理責任をオーナーが担う可能性があります。
維持費が上がる
アパートの老朽化に伴い、修繕の負担が増えていきます。居室内の原状回復だけでなく、共用部である階段の修繕や外壁の再塗装なども行う必要があるでしょう。
また、空室対策としてインターホンやアクセントクロスなどの設備投資、契約時のフリーレント交渉など、築年数が経過するにつれて費用もふくらんでしまうケースは非常に多いです。
結果として、資金が不足して老朽化の対策もできないという悪循環になってしまいます。
老朽化したアパートは建て替える?リフォームする?
アパートの老朽化によるリスクを回避するうえで、建て替えやリフォームを検討するオーナーは多いでしょう。どちらの場合も多額の費用がかかるため、アパートの収益性ともひもづけて検討することが重要です。
建て替えやリフォームについてさまざまな視点から解説します。
建て替えのメリットとデメリット
アパートの建て替えは、多くの資金を捻出可能な場合に検討できる方法です。
建て替えのメリット
土地の規模にもよりますが、現在の需要に合ったアパートを建築することで、入居率の向上が見込めます。家賃の見直しにより収益性アップも期待できるでしょう。
また、前述したような倒壊の危険性や維持費が上がるリスクをまとめて回避できます。
建て替え時には多額の資金が必要ですが、将来的に見ると、定期的に修繕を行うよりもトータルの費用を抑えられるかもしれません。
建て替えのデメリット
現在の入居者に対して立ち退き交渉を行う必要があります。
すべての入居者から同意を得る必要があるため、想定より同意を得るのに時間がかかり、入居者とトラブルになる可能性も懸念しなければいけません。
特に、立地を気に入っている方や行政の支援などを受けている方がいると、説明に納得してもらえないおそれがあります。
また、立退き料や立ち退きに伴う引っ越し先の確保や引っ越し費用などの負担が求められるケースが多いため注意しましょう。
リフォームのメリットとデメリット
リフォームは、経年劣化したアパートを新築時の状態にすることを目的としています。設備や共用部、外壁なども含まれます。
最近はリノベーションという言葉もよく聞きますが、リノベーションは新築時よりグレードアップする工事です。具体的には、以下のような違いがあります。
内容の例 | |
---|---|
リフォーム | トイレやキッチンなどの交換、外壁の再塗装 |
リノベーション | 間取りを2DKから1LDKに変更、玄関をオートロックに変更 |
リフォームのメリット
ピンポイントに老朽化した箇所を修繕するため、費用は安価に抑えられます。
また、工期が短いため、物件の成約率を上げるための交渉手段のひとつとしても用いられます。あえてそのままにしておいて契約時の特典として実施するのもおすすめです。
リフォームのデメリット
リノベーションと違い、アパートに付加価値をつけるわけではないため、競合物件と比較されたときに劣ってしまう場合があります。
また、アパートが老朽化していると、そもそも物件の内装を見てもらう段階まで進まないケースもあります。
施工のタイミングを誤ると、リフォームを実施したのに効果が得られないかもしれません。アパートの状況を把握して計画的に行いましょう。
費用対効果を検討する
建て替えやリフォームを行っても、費用を回収できなければいけません。
築年数が30年の物件を全面リフォームまたは取り壊して建て替えを実施し、何年でそれらにかかった費用を回収するかの綿密な資金計画が重要です。
アパートの維持費を把握して、法定耐用年数を目安に建て替えやリフォームを検討していくのをおすすめします。
検討した結果、リスクや手間を考えると、売却も視野に入れるのもよいでしょう。
コスト | 手間 | リスク | |
---|---|---|---|
建て替え | 高 | 高 | 高 |
リフォーム | 低 | 中 | 低 |
売却 | 低 | 低 | 低 |
なお、売却時は不動産会社に仲介を依頼することが多いため、仲介手数料などの費用がかかります。
建て替えやリフォームよりも売却がおすすめ
アパートを売却する場合は、売却することで得た代金で新しいアパートの購入も視野に入れられるほか、買い替えの特例などをうまく活用することで税金対策にもなります。
売却をおすすめする理由や売却を成功させるポイントを紹介します。
建て替えやリフォームでかけた費用を回収できるとは限らない
前述したとおり、建て替えもリフォームも費用の未回収リスクがあります。周辺の人口減少や競合アパートにより、今後の収益性を考えるとせっかく建て替えやリフォームを実施しても入居率に伸び悩む可能性が考えられます。
新しいアパートの購入費にできる
老朽化したアパートの売却代金を新しいアパートを購入するための資金とするのもよいでしょう。
現在所有しているアパートの立地や周辺環境次第では、売却してより入居率や今後発展が見込めるエリアでの購入をすることもおすすめです。
特例をうまく活用する
アパートを売却して新しいアパートを購入する場合、「特定事業資産の買替え特例」を利用できます。
この特例は、一定条件に当てはまる事業用の土地・建物を買い替えた場合は要件を満たせば税金を抑えられるものです。たとえば、以下のような条件があります。
- 売却する年の1月1日時点で所有期間が10年を超える
- 売却する年の前後1年以内に新しい事業用の物件を購入する
詳しい条件は、国税庁「No.3405 事業用の資産を買い換えたときの特例」を確認しましょう。
まずはアパートに詳しい不動産会社に相談しよう
老朽化したアパートについて、オーナー個人で対応するにも限界があります。
少しでも不安や疑問点がある方は、アパートの取り扱い実績が豊富な不動産会社に頼るとよいでしょう。
特に売却を視野に入れている場合は、地域の中でも実績の多い不動産会社または大手の不動産会社に相談することをおすすめします。
また、老朽化したアパートでも建物ごと収益物件として売却するのか、建物を解体して更地として売りに出すのかなど、選択肢はさまざまです。
信頼できる不動産会社に相談しながら、自身のアパートの資産価値などを改めて見直しましょう。
この記事を書いた人
TERAKO編集部
小田急不動産
飯野一久
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