古いアパート売却のポイントを解説。売れない場合の対処法や税金なども解説
築年数がたって古くなったアパートを売却する際のポイントにはどのようなものがあるのでしょうか。
売れない場合の対処法や売却時にかかる税金についても解説します。
この記事の目次
古いアパートの売却が難しい理由
古いアパートは売却が難しいといわれていますが、それにはいくつかの理由があります。売却する際は、それらの理由を考慮して、売り出し価格を設定したり、販売戦略を立てたりすることが重要です。
新築や築浅の物件に比べて古いアパートの売却が難しい理由には、次のようなものが挙げられます。
- 建物の老朽化が進んでいるため、修繕費がかかる
- 設備が古いため、入居者が敬遠する可能性がある
- 立地条件が悪いため、需要が少ない
- 周辺に競合する物件が多いため、価格競争が激しい
また、古いアパートは、築年数が経過すると耐用年数や耐震基準に関する問題が生じるおそれがあります。特に昭和56年(1981年)5月31日以前に建てられたアパートは旧耐震基準のため、買主がローンを組みにくくなったり、建物の維持管理費が高くなったりすることもあります。
ユニットバスやバランス釜といった古くて不人気設備と呼ばれるような設備がある場合は、入居者のニーズに合わなくなると入居率や賃料が下がり、家賃収入が減少するリスクがあります。
また、周辺に新しい賃貸住宅が増えると、日本では築浅物件が好まれる傾向があるため、売却時に人気がなくなりやすいです。そのため、売却するタイミングや方法を見極める必要があります。
古いアパートを売却する方法
古いアパートは売却が難しいですが、工夫をすれば売却できる可能性が高くなります。具体的な売却方法や少しでも高く売却するコツを紹介します。
古いアパートを少しでも高く売るコツ
次のようなポイントを押さえれば、古いアパートでも、好条件で売却できる可能性があります。
- 相場よりも低めの売り出し価格を設定する
- 物件の状態を整えて、リフォームやリノベーションを行う
- 物件の魅力をアピールする広告を出す
- アパート売却に強い不動産会社に相談して、販売戦略を立ててもらう
また、オーナーチェンジ(入居者付き)で売却することを避けることで、買主の選択肢を狭めずに済みます。
不動産会社に物件を買い取ってもらう
古いアパートの売却方法には、不動産会社に直接買い取ってもらう「直接買取」や「買取保証付き仲介」などの方法もあります。
不動産会社は買い取った物件のリフォームなどを行って再販することを目的としているため、一般的な仲介よりも売れる可能性が高いです。買取の場合、仲介よりも売却価格が安くなる傾向がありますが、早期に現金化できるというメリットがあります。
特に築年数が40年を超える物件の場合は、売れないリスクが高いため、検討するとよいでしょう。
空き物件や更地にして売却する方法も検討する
古いアパートがなかなか売却できないときは、空室状態や更地で売却すると、買主の用途やローンの幅を広げられるため、売れる可能性があります。しかし、その場合は立ち退きや解体費用などの手続きや費用も考慮する必要があります。
解体費用は建物の構造や規模、立地などによって異なりますが、目安としては1坪あたり約6万〜10万円です。
解体のための手続きとしては、ライフラインの停止や工事の申請などがあります。また、空き家を更地にする場合は、固定資産税や都市計画税の優遇措置が適用されなくなるため、売却の時期や期間に注意する必要があります。
古いアパートを売却した際にかかる税金
古いアパートを売却した際にかかる税金や税金対策について解説します。
古いアパートを売却した際にかかる税金
古いアパートを売却した際にかかる税金は、次のとおりです。
- 譲渡所得税
- 印紙税
- 固定資産税
譲渡所得税
譲渡所得税は、アパートを売却した際の利益に対して課税される税金です。利益は、売却価格から取得費(購入価格)と必要経費(修繕費や減価償却費など)を差し引いて計算されます。
譲渡所得税の税率は、アパートの所有期間によって異なります。所有期間が5年以下の場合は短期譲渡、所有期間が5年超の場合は長期譲渡として扱われ、それぞれ以下のように税率が決まっています。
所得税(%) | 住民税(%) | 合計(%) | |
---|---|---|---|
短期譲渡所得 | 30.63 | 9 | 39.63 |
長期譲渡所得 | 15.315 | 5 | 20.315 |
ただし、平成25年から令和19年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と併せて申告・納付するため、注意しましょう。
譲渡所得税の申告は、原則アパートを売却した年の翌年の3月15日までに行う必要があります。
印紙税
印紙税は、アパートの売買契約書を作成する際に課税される税金です。税額は、契約書の金額に応じて異なります。
記載された契約金額 | 税額(円) | 軽減後の税額(円) |
---|---|---|
1万円未満のもの | 非課税 | 非課税 |
1万円以上10万円以下のもの | 200 | – |
10万円を超え50万円以下のもの | 400 | 200 |
50万円を超え100万円以下のもの | 1,000 | 500 |
100万円を超え500万円以下のもの | 2,000 | 1,000 |
500万円を超え1,000万円以下のもの | 1万 | 5,000 |
1,000万円を超え5,000万円以下のもの | 2万 | 1万 |
5,000万円を超え1億円以下のもの | 6万 | 3万 |
1億円を超え5億円以下のもの | 10万 | 6万 |
5億円を超え10億円以下のもの | 20万 | 16万 |
参考:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」
固定資産税
固定資産税は、毎年1月1日時点のアパートの所有者に課される税金です。1年の途中で売却する場合、売主は引渡日までの固定資産税を日割で負担することになります。
古いアパートを売却する際の税金対策
アパート売却における税金対策として、投資物件の買い替えの場合において利用できる特定事業用資産の買換え特例があります。
特定事業用資産の買換え特例
個人が事業として用いている土地や建物において、譲渡する資産と買い換えする資産それぞれが、要件を満たしている場合、譲渡税課税の繰り延べを受けることができます。
ただし、10年を超えて事業を営んでいる不動産が対象となり、遊休地などは対象外です。
詳しくは、国税庁「No.3405 事業用の資産を買い換えたときの特例」をご確認ください。
相続したアパートの譲渡所得税
相続したアパートを売却する場合には、亡くなった方の所有期間を引き継ぐことができます。つまり、相続で取得したのが1年前でも被相続人が5年間以上所有していれば長期譲渡所得としての税率が適用されます。
短期譲渡所得と長期譲渡所得では税率に大きな差があるため、被相続人が所有していた期間を事前に把握しておきましょう。
更地にする場合の税金
アパートが建っている土地には、住宅用地の軽減措置特例という制度が適用されます。この制度は、居住用に建てられた家屋に用いられる敷地(住宅用地)について、固定資産税・都市計画税それぞれの税負担を軽減するもので、空き家でも適用されます。
具体的には、次のように課税標準額が軽減されます。
敷地面積 | 固定資産税 | 都市計画税 |
---|---|---|
200平方メートル以下の部分 | 課税標準額×6分の1 | 課税標準額×3分の1 |
200平方メートルを超える部分 | 課税標準額×3分の1 | 課税標準額×3分の2 |
そのため、一般的にアパートが建っている土地を更地にすると、固定資産税や都市計画税が高くなります。
古いアパートを売却した際の買主の減価償却期間
耐用年数を経過しているときや間近になっているときは、買主が減価償却を行えないため、不利ではないかという点を懸念することがあります。しかし、このような物件でも、買主は減価償却が可能です。
中古のアパートを購入したときには、減価償却のために耐用年数を再計算しますが、一般的には再計算をするのは難しいため、次の簡易な方法によって耐用年数を求めます。
耐用年数の計算方法 | |
---|---|
法定耐用年数の全部を経過している場合 | 法定耐用年数×20% |
法定耐用年数の一部が経過している場合 | (法定耐用年数-経過年数)+(経過年数×20%) |
※1年未満の端数があるときは、その端数を切り捨てる。
※年数が2年に満たない場合は2年で計算
なかなか売れない築古アパートの原因と対処法
築古アパートが売れない原因として、次のようなことが考えられます。
- 売り出し価格が不適切である
- 物件自体に何らかのマイナスポイントがある
- 不動産会社選びに失敗している
売り出し価格が不適切である
売り出し価格は、不動産の売却で最も重要な要素です。売り出し価格に割安感があれば、早い段階で買主が見つかりますが、逆に物件の価値に対して価格が割高の場合、買主が見つからず、売却が長期化してしまいます。
周辺エリアで売りに出されている物件と比較しながら、需要と供給のバランスなどを見極めて、売り出し価格を決めるようにしましょう。
物件自体に何らかのマイナスポイントがある
物件自体に問題がある場合は、外壁や内装、水回りなどを中心にリフォームやリノベーションを施すことで、見た目の印象や設備の質を改善できます。
しかし、リフォーム費用をかけすぎると、その費用を回収できないおそれがあるため、注意が必要です。
不動産会社選びに失敗している
不動産会社はそれぞれの得意分野が異なるため、適切な不動産会社に販売を委託していない可能性が考えられます。
不動産会社と協力し、販売戦略や広告の出し方を見直したり、不動産会社との契約を見直したりすることで改善できるケースがあります。場合によっては、不動産会社そのものを変更することも必要になるでしょう。
この記事を書いた人
TERAKO編集部
小田急不動産
飯野一久
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