アパート経営に築年数の限界はある?築古物件のリスクや処分方法を解説
アパート経営において、築年数に限界はあるのでしょうか。
建物には法定耐用年数が定められていますが、その年数を過ぎてしまったらアパート経営はできないのでしょうか。
築古物件に潜むリスクや対処法について紹介します。
この記事の目次
アパート経営には築年数に限界はある?
アパート経営を始める際、ひとつの判断基準となるのが物件の築年数です。物件の築年数が長ければ長いほど劣化や老朽化が進行し、修繕費用が増える可能性があるためです。
しかし、築年数が進むと必ずしも価値が下がるわけではなく、管理や修繕をきちんと行っていれば長く使用することも可能です。ここで重要な概念となるのが「法定耐用年数」です。
法定耐用年数とは何か?
法定耐用年数とは、国税庁が定める建物の経済的な寿命を指します。これは建物の構造や用途によって異なり、アパートの場合、鉄筋コンクリート造であれば47年、木造であれば22年と定められています。
種類 | 耐用年数(年) |
---|---|
木造 | 22 |
鉄骨造り(鉄の厚みが3㎜~4㎜) | 27 |
鉄骨造り(鉄の厚みが4㎜超) | 34 |
RC造り(鉄筋コンクリート) | 47 |
参考:e-Gov法令検索「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」
しかし、この法定耐用年数は税法上の規定であり、実際の物理的な寿命を保証するものではありません。法定耐用年数を超えたからといって必ずしも建物が使えなくなるわけではなく、適切なメンテナンスとリフォームを行えばさらに長く使用することも可能です。ただし、法定耐用年数を超えると建物の価値は減少し、売却価格や借地権の価格も下がる傾向にあります。
築年数とアパートの価値:古いとどうなる?
築年数が進むと、アパートの価値はいくつかの要素によって影響を受けます。その主な要素としては、建物の劣化、設備の古さ、耐震基準への適合性、そして築年数自体に対する市場の評価などが考えられます。
建物の劣化
アパートが築年数を重ねると、その建物の劣化は避けられません。外壁の色あせやひび割れ、内部の水回りの老朽化などが進行します。
このような物理的な劣化は、入居者の満足度を下げ、空室率を上げる原因となります。
設備の古さ
築年数が古いアパートでは、当時の最新設備が古くなっていることが多いです。たとえば、給湯器やエアコン、キッチンなどの設備が古いと、入居者からの不満が高まるおそれがあります。
耐震基準
アパートが建てられた年代によっては、現在の耐震基準に適合していない可能性があります。そのような物件は、地震のリスクが高い地域であればあるほど、その価値は低下します。
市場の評価
不動産市場では一般に、築年数が新しいほど価値が高いと評価されます。特にアパートの場合、新築時に比べて5年経過すると価値が20%下がり、10年で30%、15年で40%といわれています(※)。
また、法定耐用年数を超えた物件は、税法上の償却資産とならないため、投資物件としての価値が大きく低下します。
※注=あくまで、業界の一部で語られている通説で、明確な根拠はありません。個別具体的な物件の価値を評価する際には、専門家の意見を取り入れるなど、多角的な視点から判断することが重要です。
旧耐震基準と新耐震基準のアパートの違い
日本では、大地震の被害を最小限に抑えるため、建築物に対する耐震基準が定められています。この耐震基準は都度見直されてきました。その中でも特に重要な「旧耐震基準」と「新耐震基準」の違いと、それがアパート経営にどのような影響を及ぼすかを解説します。
旧耐震基準
旧耐震基準は、1950年に施行されていた基準で、構造計算上の強度だけを求めるものでした。この基準に基づく建築物は、震度5の地震に対して建物が倒壊しないことを目指して設計されていました。1981年5月末までに建築確認され、建てられた建物が旧耐震基準に該当します。
新耐震基準
1981年、新耐震基準が施行されました。これは、大地震時に建物が倒壊するだけでなく、居住者が安全に避難できるレベルの性能を確保することを求めるものです。具体的には、構造的には震度7クラスの地震に対して建物が倒壊しないだけでなく、内部の家具や設備が落下しないような配慮が求められています。
アパート経営者にとって、この耐震基準は重要な問題です。築年数の経過によってアパートの価値は下がりますが、新耐震基準に適合しているかどうかは、その価値を大きく左右します。新耐震基準に適合しているアパートは、旧耐震基準のものよりも価値が高いと評価されます。
築年数が経過したアパートが抱えるリスクとは
築年数が経過したアパートは一般的に建物の老朽化が進んでおり、それに伴うメンテナンス費用の増加、入居者の確保の難しさ、そして法令遵守に関連する問題を抱えています。
具体的なリスクについて詳しく解説します。
築古アパートの安全性:耐震性能の問題
築年数が経過すると、耐震性能に問題が出てきます。特に1981年以前に建てられた建物は旧耐震基準に基づいており、大きな地震が発生した際に倒壊する可能性もあります。
これはアパート経営者にとっては重大なリスクであり、経営の継続やテナントの安全を保証できない場合があります。
設備の劣化とメンテナンスコストの問題
築年数の経過と共に、アパートの設備は劣化します。水道、電気、ガスといった基本的な生活インフラはもちろん、防音設備や給湯器などの設備も寿命を迎え、故障や性能の低下が発生します。
修繕費用や交換費用が必要となり、運用コストが増大します。これらのコストは経営の収益性を直接的に下げる要因となります。
築年数の経過と空室率:テナントが集まりにくい理由
築古アパートは新築アパートと比較して設備が古く、室内のデザインが古臭いなど、魅力が低下します。これは、入居者を引きつける能力を低下させ、結果として空室率が上昇し、家賃収入が減少するというリスクにつながります。
特に若い世代の入居者は、設備やデザインを重視する傾向があるため、古臭いアパートに対する需要は限定的です。
これらのリスクは、築年数が経過するにつれて高まる傾向にあります。そのため、アパート経営者は築年数を意識し、適切な戦略を立てる必要があります。
築古アパートの対処法や処分の方法を解説
築年数が経過したアパート経営のリスクや問題について紹介しましたが、対策や処分方法にはどのようなものがあるのでしょうか。
リフォームや耐震補強によるアパートの再生、建て替え、そして売却といった方法について解説します。
リフォームや耐震補強で築古アパートを生かす方法
築古アパートを生かすひとつの方法は、リフォームや耐震補強工事を行うことです。築年数が経過したアパートの魅力を再度引き出し、新たな入居者を獲得することが可能となります。
特に、新築アパートにはないレトロな雰囲気や骨太な造りを活かしたリフォームは、一定のニーズを満たせるでしょう。
一方で、リフォームや耐震補強工事は相応の資金や再投資が必要となります。そのため、投資対効果をしっかりと評価し、そのアパートが長期的に見て賃貸ビジネスとして成り立つかどうかを検討しましょう。
取り壊して建て替えるときの注意点とメリット
古いアパートを取り壊して建て替えるという方法があります。古いアパートを完全に新築のアパートにすることで、最新の設備やデザインを取り入れ、賃貸市場で競争力を持つことが可能となります。
しかし、建て替えには以下のようなデメリットやリスクがあります。
- 高額なコストがかかる
- 建設期間中は賃料収入を得ることができない
- 入居者がいる場合は退去の交渉や退去費用が必要
建て替えには長期的な視点が必要で、地域の賃貸需要や将来的な市場環境を予測して慎重に行動することが求められます。
売却を検討する際のポイントと評価方法
もうひとつは、アパートを売却することです。重要なのは、適正な価格を把握し、売却時期を見極めることです。アパートの価格は立地や築年数、設備など多くの要素によって決まるため、専門家の意見を得ることもひとつの手段です。
また、アパートの売却には時間がかかることも覚えておきましょう。売却を急いでいる場合や手間を省きたい場合は、不動産投資専門の仲介業者に依頼するのも方法です。
どの方法を選択するにせよ、築年数の経過したアパートをどう処分または再生するかは、その物件の状況、周辺環境、そして経営者自身の経営戦略に大きく左右されます。それぞれのメリットとデメリットを理解し、自身のビジョンに最も合った選択をすることが重要です。
この記事を書いた人
TERAKO編集部
小田急不動産
横溝 浩由
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