アパート修繕費の相場を修繕箇所別に紹介!築年数が古いと高額になる?
アパート経営では、建物の修理や保全を目的とした定期的な修繕が必要です。修繕にはさまざまな種類があり、その対象となる部分や規模、発生するタイミングなどがそれぞれ異なります。
オーナーは事前にどれくらいの費用がかかるかを想定して備えておくべきでしょう。
アパート修繕費の相場を修繕箇所別に紹介します。また、築年数が経過して老朽化が進み、高額な修繕費がかかる場合はどのように対処すべきか考えましょう。
この記事の目次
アパートの修繕費は何が対象?
まずは、アパート修繕費の概要を理解しておきましょう。
アパート修繕の種類
アパートの修繕には大きく分けて、以下2つの種類があります。
- 大規模修繕
- 小規模修繕
大規模修繕
大規模修繕とは、その名のとおり、大がかりな修繕のことを指します。屋根・外壁の修理、共用部(廊下、階段など)の修繕など、建物全体を対象とするものが含まれます。
大規模修繕は、通常10年に1度程度実施され、多額の費用がかかります。建物の寿命を延ばすために重要な修繕のため、適切に行われないと建物の価値が大きく下がるおそれがあります。
小規模修繕
小規模修繕とは、部屋の壁紙の張り替えや設備の更新など、部分的な修繕のことです。入居者の退去時や、設備の故障時などに発生します。
一度にかかる費用は少ないですが、頻繁に発生するため、資金を準備しておくことが求められます。
こまめな小規模修繕の実施は、新たな入居者を引きつけるためにも重要です。きちんと実施することで、アパートの価値が上昇します。
入居者負担とオーナー負担の違い
アパートの修繕費は、入居者が負担するケースとオーナーが負担するケースがあります。一般的には、大規模修繕はオーナー負担、退去時の原状回復と言った小規模なものは入居者負担とされます。
しかし、例外のケースもあり、明確な線引きは難しいところです。たとえば、ある程度規模の大きい修繕でも、入居者の不注意などが原因の場合は、入居者が修繕費を負担することもあります。
賃貸契約時には、修繕に関する項目をオーナーと入居者の双方でしっかりと確認し、理解しておくことが重要です。
修繕費が発生するタイミング
アパートの修繕費は定期的に発生します。
大規模修繕は、通常、築10年を超えたころから必要とされることが多く、以降は築年数によって頻度が増えていきます。そのため、建物の年数を考慮に入れ、修繕の計画を立てることが重要です。
一方、小規模な修繕は、入居者の退去時や設備の故障時などに発生します。これは、退去する入居者の使用状況や、設備の老朽化度合いによって異なります。
修繕のタイミングはアパートの競争力にも影響を及ぼすため、適時・適切に実施することが求められます。臨機応変に対応するためにも、十分な修繕費を確保できる、ゆとりのある資金計画を立てる必要があるでしょう。
箇所別!アパート修繕費の相場
具体的なアパート修繕費の相場を、箇所ごとに詳しく紹介します。
修繕箇所 | 修繕内容 | 修繕費の目安(円) |
---|---|---|
屋根・外壁 | 1坪あたり3万~5万 | |
共用部 | エントランスや廊下の床材の張り替え | 1坪あたり3万〜4万 |
照明器具の交換 | 1個あたり3,000〜5,000 | |
個々の部屋 | 1部屋あたり約50万〜100万 | |
壁紙の張り替え | 10万〜20万 | |
床材の張り替え | 20万〜30万 | |
設備の修理や交換 | 20万〜50万 |
ただし、建物の築年数や規模、状況だけでなく、使用する部材や依頼する業者によっても金額は変動するため、あくまでもひとつの例として参考にしましょう。
屋根・外壁
屋根・外壁の修繕は、大規模修繕の主な項目で、一般的には築15〜20年を超えたころから必要になります。建物の見た目を美しく保つためだけでなく、防水性や絶縁性を維持することも目的です。
1坪あたり約3万〜5万円が費用の目安とされていますが、建物の規模や状態、地域によって変わります。
共用部
共用部の修繕費は、エントランスや階段、廊下などを対象とします。これらは日常的に利用されるため、磨り減りや汚れが生じやすく、定期的なメンテナンスが必要です。
また、共用部は来客者に最初に見られる部分であり、見た目や清潔さはアパートの価値を左右します。
費用は、エントランスや廊下の床材の張り替えは1坪あたり3万〜4万円、照明器具の交換は1個あたり3,000〜5,000円が目安です。
個々の居室内
個々の居室内の修繕費については、入居者の退去時に発生します。壁紙の張り替えや、床材の張り替え、設備の修理や交換などが主な項目です。
平均的な修繕費は1部屋あたり約50万〜100万円とされていますが、入居者の使用状況や管理状況によって大きく変わります。
また、費用内訳の例としては、壁紙の張り替えに約10万〜20万円、床材の張り替えに約20万〜30万円、設備の修理や交換に約20万〜50万円がかかることが考えられるでしょう。
【具体例】木造アパート(10戸)の場合
木造アパート(10戸)と仮定し、修繕費の目安をまとめたものが以下の表です。
修繕箇所 | 修繕費の目安(円) |
---|---|
屋根・外壁の修繕 | 300万~500万 |
外構などの修繕 | 数十万 |
ベランダ・階段・廊下の修繕 | 10万~30万 |
排水管高圧洗浄 | 約10万 |
室内設備修理 | 数十万 |
浴室修理・交換 | 200万~400万 |
特に、屋根・外壁の修繕費は高額になるため、日ごろからこまめに水洗いなどのメンテナンスを行うのも大切です。
アパートの修繕費は築年数が経過するほど高額になる
アパートの修繕費は建物が新しくても必ず発生しますが、築年数が経過するとともにその額は増大する傾向にあります。これは、物理的な劣化や設備の経年変化が進行し、それに対応するための維持管理が必要になるためです。
特に、大規模修繕が必要となる年数は建物の築年数と密接に関連しており、アパートのオーナーとしてはその費用とタイミングを把握しておくことが重要です。
しかし、修繕費をかけても、アパート自体の価値は経年劣化や地域の市場状況により減少する傾向にあります。そのため、修繕費が一定の範囲を超えた場合、アパートの維持よりも売却を検討するほうが賢明かもしれません。
築年数と修繕費の関係
アパートの修繕費は、築年数が経過するとともに増加します。具体的には、築10年を超えたころから大規模修繕が必要になり、築20年を超えるとその頻度と費用はさらに増加します。これは、アパートの構造部分が経年劣化するためです。
大規模修繕の費用は、建物の規模や材料の選択、業者の選択などによって大きく変わるため、具体的な金額を出すのは難しいですが、一般的には数百万円から1,000万円以上に及ぶこともあります。
また、築年数が進むと、更新や修繕では対応しきれないほどの劣化が起こり、建物の全面的な建て替えが必要になる可能性があります。
さらに、小規模修繕の費用も築年数の経過とともに増加します。これは、設備の老朽化や内装の劣化が進むためです。たとえば、エアコンや給湯器、キッチン設備などは、使い続けることで性能が低下し、修理や交換が必要になります。
以下の表は、国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」をもとに、築年数別に必要となる修繕と修繕費をまとめたものです。なお、木造アパート(1K・10戸)を想定しています。
修繕内容 | 新築からの経過年数 | ||||
---|---|---|---|---|---|
5~10 | 11~15 | 16~20 | 21~25 | 26~30 | |
ベランダ・廊下・階段【塗装】 | 10 | 10 | 10 | ||
ベランダ・廊下・階段【塗装・防水】 | 20 | 20 | |||
排水管【高圧洗浄】 | 10 | 10 | 10 | ||
給排水管【高圧洗浄・交換】 | 60 | 60 | |||
屋根・外壁【塗装】 | 390 | ||||
屋根・外壁【塗装・張り替え】 | 470 | ||||
外構など【修繕】 | 60 | 60 | |||
室内設備【修理】 | 50 | 50 | 50 | ||
給湯器【交換】 | 100 | ||||
浴室【修理・交換】 | 300 | ||||
合計(一棟当たり) | 70 | 520 | 180 | 800 | 180 |
1件ごとの修繕費は少額ですが、頻繁に発生するため、全体として見ると大きな負担となることがわかります。
修繕費から考えるアパート売却のタイミング
築年数の経過で修繕費が増大していく一方で、建物の価値は経年劣化により減少していきます。特に、建物の寿命が近づくとその価値は急速に下がります。
そのため、修繕費がその後の運用で得られる収益を上回ることが予想される場合は、アパートの売却を検討することが賢明です。具体的には、築30年前後を売却の目安とすることが多いです。
大手の不動産会社に相談するのがおすすめ
修繕費をかけてアパートの維持を続けるのか、それともアパート売却を検討するのかを判断するには、不動産市場の動向や修繕費の見積もり、将来の運用計画など、多角的な視点からの情報収集と分析が必要です。
そのため、まずは信頼できる不動産会社を見つけて相談してみるとよいでしょう。
さらに、アパート売却は、買主を見つけるだけでなく、契約手続きや税金計算など、専門的な知識と経験が求められる複雑なプロセスをこなす必要があります。
不動産会社であれば、市場の最新動向を把握しているため、物件の評価や販売戦略の策定、契約手続きのサポートなど、売却に必要な一連の作業をサポートしてくれます。
特に、大手の不動産会社は多くの買主とのネットワークを持っており、適切な価格で迅速に売却できる可能性が高いです。
修繕費の増大を見越して、早めのアクションを起こすことで、無駄な経費を抑えるとともに、アパート運営のリスクを管理することが可能となります。いますぐの売却は決断できない場合でも、早い段階で相談しておくことをおすすめします。
この記事を書いた人
TERAKO編集部
小田急不動産
鳥塚 正人
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