アパート売却でかかる税金についてわかりやすく解説!計算方法や税金対策は?
アパート売却時には、譲渡所得税や住民税、登録免許税、印紙税などの税金がかかります。アパートの売却価格によって税額は異なるため、計算方法を理解しておく必要があります。
いざ売却したときに想定以上の税金がかかって手元に残るお金が少なくなってしまうかもしれません。少しでも税金を抑えるための対策も確認しておきましょう。
この記事の目次
アパート売却時にかかる譲渡所得税
アパート売却時にかかる譲渡所得税について解説します。
譲渡所得税は、売却の利益に応じて課税される
所有していたアパートを売却した場合、売れた額に対して税金が課されます。その税金の中で大きな割合を占めるのが所得税です。所得税は、得た利益に対して課される税金です。
所得税の課税対象となる所得は、どのような理由で得られたものかによって、十種類に分類されます。このうち、不動産など資産価値のあるものを売却して得た所得を「譲渡所得」といい、アパート売却で得た利益も譲渡所得にあたります。
十種類の所得は、所得税額を計算するうえで、合算して考える「総合課税」のグループと、合算せずに個別で税額を計算する「分離課税」のグループに分かれます。
不動産を売却して得た譲渡所得は分離課税となり、不動産を売却して得た譲渡所得にのみかかる税金の額が個別に算出されます。そのため、不動産売却に関して課された所得税を特に譲渡所得税と呼ぶこともあるようです。
ですが、譲渡所得税はあくまでも所得税の一部です。そのため、最終的には、ほかの所得に課された所得税と合わせて納めることになります。
譲渡所得の計算方法
アパート売却の譲渡所得税をどのように計算するのか、その手順を確認してみましょう。
まずは、売却によってどれだけの譲渡所得が生じたのかを次の計算式で求めます。
取得費とは、簡単にいうと、売却したアパートを購入した価格のことです。譲渡費用とは、仲介手数料など、売却のために必要な費用を指します。
譲渡費用を考慮したうえで、売却の金額が、買った額を上回った場合、その差額が譲渡所得になります。つまり「アパートを売ってもうけた額」ということです。
もしも、計算の結果がマイナスになってしまうようなら、それは「売っても赤字になった」ということであり、利益が生じていません。譲渡所得はゼロとして、譲渡所得税は課されません。
譲渡所得税の税率
譲渡所得に対して課される税額は、以下の式で計算します。
前述したとおり、所得は総合課税のものと分離課税のものに分類されます。
総合課税の所得に対しては、その所得を合算したうえで、税率を掛け、所得税額を求めます。このときの税率は累進税率といって、所得額が大きいほど税率も大きくなっていく仕組みです。
不動産の譲渡所得は、分離課税ですので、それとは別に税額計算を行います。
売却した不動産を所有していた期間によって「短期」「長期」のふたつに分かれ、それぞれが一律の税率です。
- 短期譲渡所得の税率:30%
- 長期譲渡所得の税率:15%
短期・長期の判別は、売却した年の1月1日時点での所有期間が5年を超えているかどうかで決まります。5年以下の短い期間で不動産を売却すると、税率が倍になってしまうということです。
また、「売却した年の1月1日時点」であることに注意してください。2018年4月1日に取得したアパートを2023年4月1日に売却したとしたら、期間としては5年ですが、譲渡所得の計算上、2023年1月1日時点では4年に達していないため、短期譲渡所得の税率が適用されます。
なお、相続や贈与によって取得したアパートの場合は、相続や贈与の時期からではなく、元の所有者の取得時期を引き継いで考えます。
アパート売却でかかるその他の税金
譲渡所得税以外にも、アパート売却では住民税や復興特別所得税、印紙税、登録免許税、消費税がかかります。条件によって課税されるかが変わるものもあるため、確認しておきましょう。
住民税
アパートを売却して得た譲渡所得には、所得税だけでなく、住民税も課されます。
住民税は、所得税と同じく所得に対して課される税金ですが、所得税が国に納める国税であるのに対して、住民税は都道府県に納める地方税です。
課税の仕組みは、所得税とほぼ同じと考えてかまいません。そのため、不動産の所有期間によって税率が変わります。具体的には次のとおりです。
- 短期譲渡所得の税率:9%
- 長期譲渡所得の税率:5%
復興特別所得税
令和19年まで、所得税が課税されたときには、そこに復興特別所得税を合わせて課税すると決められています。
そのため、譲渡所得税が生じた場合は、所得税額×2.1%の復興特別所得税が課されます。
印紙税
アパートの売買契約を行ったとき、収入印紙を購入して契約書に貼り付けるという形で印紙税を納税します。
税額は、契約書に記載される契約金額(売却価格)に応じて決まります。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
10万円を超え50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円を超え100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円を超え500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
5億円を超え10億円以下 | 20万円 | 16万円 |
10億円を超え50億円以下 | 40万円 | 32万円 |
50億円を超える | 60万円 | 48万円 |
参考:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」
本則税率が本来の税率に基づいた税額ですが、一定の時期までは軽減税率額が適用されます。
なお、売主が負担した印紙税は、譲渡所得を考える際の譲渡費用として計上ができます。
登録免許税
アパートを売却すると、売主から買主へと所有権が移ることになり、登記の手続きが必要です。登記の際には、登録免許税という税金が課されます。登記の手数料のようなものと考えるとよいでしょう。
売買の場合、税額は不動産価格の1,000分の20と決まっています。
登録免許税は登記について課税されますが、アパートの所有権が移転する登記を売主がするのか買主がするのかは、実は明確なルールがありません。
どちらかというと買主が行うことが多く、登録免許税についても買主負担となるケースが一般的ですが、売主が負担するケースもあり得ます。
消費税
アパートを売却したときに、消費税が生じるケースもあります。
消費税とは、何かを購入したときに、商品代金に一定の税率をかけて課される税金です。しかし、課税された人(=商品を購入した人)が自分で国に納めるのではなく、商品代金と一緒にいったん売り手(お店)が預かって、お店から納税されるという間接税の仕組みになっています。
そのため、不動産を売る立場になったときも、買い手の消費税を預かって納税しなければならないことがあるのです。
ただし、以下のような決まりがあります。
- 土地は非課税
- 居住用不動産の売却は対象外
そのため、消費税が生じる可能性があるのは、投資用不動産を売った場合の、建物の代金に対してだけです。
また、消費税を納める義務があるのは、課税事業者とみなされる場合だけです。アパート売却の場合は、2年前の消費税課税対象の収入が、1,000万円超であるなどの条件に当てはまるときだけとなります。
アパート売却時の税金対策
本来、税金対策には、税制上の特例を活用するのが定石です。しかし、不動産売却に関する特例は居住用不動産に限るものが多く、収益物件では有効な特例がそうありません。
アパート売却で課される税金を少しでも抑えたいと考えるなら、譲渡所得の額を抑えることがポイントです。取得費と譲渡費用が大きければ、それだけ譲渡所得を減らせて、結果的に税額も抑えられます。
取得費を正確に把握し、もれなく計上する
もし正確な取得費が不明な場合は、概算取得費として売却価格の5%を取得費とすることが認められています。
相続で取得した物件など、取得費がわからないケースに対応するための制度ではありますが、節税のためには概算取得費を使うべきではありません。売却価格の5%はかなり少ない数値のため、概算取得費を使って計算すると譲渡所得が大きく膨らんでしまう可能性が高いです。
できるだけ正確な取得費を把握して、計算しましょう。
また、純粋に物件を購入した額だけでなく、取得費として認められるものはもれなく加算し、取得費を多く計上することがポイントです。具体的には次のようなものです。
- 取得時の仲介手数料、印紙税、登録免許税、不動産取得税
- 取得時に司法書士へ支払った手数料
- 取得に際して支払った立退料・移転料
- リフォーム費用
- 相続で物件を取得し相続税を支払っていた場合の相続税(加算には売却時期などの条件あり)
譲渡費用も計上できるものはすべて計上する
譲渡費用についても考え方は同じで、計上可能なものはもれなく計上しましょう。仲介手数料や印紙税が計上できることはすでにお伝えしましたが、ほかにも次のようなものを計上できます。
- 売却のために広告を出した場合の広告料
- 売却のために測量をした場合の費用
- 売却のために不動産鑑定をした場合の費用
- 売却のために行った建物の補修費
- 借家人を立ち退かせるために支払った立ち退き料
- 買主との交渉のために要した交通費、通信費
不動産会社にもアドバイスをもらおう
前述したとおり、収益物件であるアパートの売却では、有効な特例がそうありません。しかし、中には条件によって使える制度もあるかもしれないので、税理士やファイナンシャルプランナーに相談してみるのもよいでしょう。
そうした専門家のほか、なにより、不動産会社から得られるアドバイスも頼りになります。
アパートなどの投資物件は、中小企業よりも信頼性の高い大手の不動産会社に相談するのがおすすめです。投資物件は、一般的な住宅よりも売却時に市場動向の把握や複雑な手続きが求められます。大手であれば実績やノウハウが豊富ですし、組織力を生かして円滑な売却を進めてくれます。
また、税金対策についてもよく知っているので、売却を進めるのと並行して、税金についても相談してみましょう。
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