不動産投資は自己資金がいくらあれば可能?さまざまな角度から徹底解説

不動産投資を検討している方が、まず用意すべきものの一つに「自己資金」があります。
生活に必要な買い物や嗜好品と異なり、不動産投資は大きな額の買い物です。自己資金をどのくらい用意できれば十分なのか、そもそもどのように調達すればいいのかわからない方も多いでしょう。
この記事では、自己資金を用意する段階から、投下するまでの方法やポイントを紹介しています。
この記事の目次
不動産投資を始めようとするとき、最初に考えるのは「自己資金がいくらあればいいのか」ということでしょう。物件は日用品やファッションアイテムとは異なり高額なため、不動産投資をするのに相当な自己資金を用意する必要があると思いがちです。しかし、実はさまざまな要素により不動産投資に必要な自己資金額は異なります。自身に自己資金がいくら必要なのか学び、不動産投資への不安を解消していきましょう。
不動産投資において重要な自己資金
不動産投資だけでなく、さまざまな投資には自己資金、つまり、元手となるお金が必要です。株式投資であれば、基本的には自己資金の金額によって投資額と得られるリターンは決まってきます。しかし、不動産投資は、ほかの投資とは異なり、自己資金のボリュームだけではなく不動産投資用のローンを利用することによって、元手以上の不動産投資物件を保有し、大きなリターンを得ることが可能です。
しかし、自己資金があったほうがローンの限度額が大きくなる傾向にあるため、不動産投資で選択できる物件の幅が広がります。不動産投資において自己資金は、ローンと密接な関係にあるため、その金額は重要であるといえます。
自己資金とは
自己資金とは、投資を始める際に用意できる自分のお金のことをいいます。不動産投資で1,000万円の物件を購入しようとする場合、自分が用意できるのが1,000万円なら自己資金は1,000万円です。用意できる金額が300万円であれば自己資金は300万円で、残り700万円は金融機関でローンを組むなどしてまかない、不動産投資を行います。
自己資金でまかなうおもな費用
不動産投資をする場合、自己資金の多くは物件購入のための頭金と購入時にかかる諸費用に充てられます。いざ物件を購入する時に困らないよう、自己資金でまかなうことの多い頭金と諸費用について用途と相場を知っておくことをおすすめします。頭金と7つの諸費用についてこれから解説します。
頭金
頭金という言葉は、自宅や自動車などのローンを組んだことがある方ならご存じかもしれません。ローンを組んで物件などを購入する際に、本体価格の一部を支払うために用意する現金のことです。頭金の分の自己資金を用意しなくても、融資を受ける人の社会的信用などによってローンを組める場合もありますが、物件価格の10%から20%程度の現金を用意しておくと融資の審査が通りやすくなるといわれています。
不動産仲介手数料
不動産投資に向けて物件を購入する際は、恐らく不動産業者が仲介することがほとんどでしょう。仲介してもらった場合、物件の契約が成立したら、仲介した不動産業者に不動産仲介手数料を支払う必要があります。不動産仲介手数料は、国の法律で以下のように上限が定められているので安心してください。
【不動産業者への仲介手数料の上限】
- 200万円以下の物件を購入する場合:物件代金×5%+消費税
- 200万円超え、400万円未満の物件を購入する場合:物件代金×4%+2万円+消費税
- 400万円超えの物件を購入する場合:物件代金×3%+6万円+消費税
当然ですが、不動産業者を介さずに売主から直接購入する場合は、仲介手数料はかかりません。
不動産登記費用
不動産登記費用は、不動産の権利関係について法務局で登記するために司法書士などに依頼する費用です。不動産事業者に仲介してもらった場合や、金融機関で融資を受けた場合などは、関係のある司法書士を紹介されることが多いです。不動産登記費用は、10万円から15万円程度が相場です。
売主から直接、物件を購入した場合には、司法書士を探す必要があります。自分で登記をすることもできますが、それ相応の苦労をする可能性があるでしょう。不動産投資をすることが目的のはずですので、どの部分に自分の知力や体力を注いでいくかを考えて判断しましょう。
登録免許税
法務局に不動産登記をする際に課される税金です。固定資産税評価額の約2%程度が必要となり、所有権保存や抵当権設定などの登記をする場合には、さらに0.4%程度の税金がかかる場合があります。
不動産取得税
物件を購入後、不動産取得税という税金を都道府県に納める必要があります。不動産取得税の税率は、固定資産税評価額に対しておおむね4%程度ですが、住宅など人が住む場合と、店舗や工場などの場合で変動しますので、あらかじめ購入する物件の所在する都道府県のホームページなどで調べておきましょう。
火災保険
不動産投資用の物件を購入したら、火災保険に加入しましょう。ローンを組む金融機関によっては火災保険の加入を義務付けられている場合もあります。物件の購入後、所有者となれば、物件が引き起こす火災について責任を取らなくてはならなくなるだけでなく、せっかくの不動産投資用の物件が火災により焼失してしまうようなことも起こりえます。
火災だけでなく、地震なども含めて、その物件を取り巻く環境を想定し、さまざまなリスクに備えて保険に加入しておきましょう。
事務手数料
金融機関でローンを組む際には手数料がかかります。この金額は、ローンを利用する金融機関によって異なりますが、おおむね数10万円程度です。諸費用の中でも、具体的に作業を依頼するわけでも、物を購入するわけでもないため、忘れがちな費用です。
印紙税
不動産のように高額な者を購入する際の契約書や領収書などには印紙を貼る必要があります。
印紙税は以下のように国で金額が定められています(2022年1月現在)。
- 物件価格が500万円以上、1,000万円以下は5,000円
- 物件価格が1,000万円以上、5,000万円以下は10,000円
- 物件価格が5,000万円以上、1億円以下は30,000円
不動産投資に自己資金はいくら必要?
頭金や諸費用の支払いに必要な自己資金ではありますが、結局はいくらあればまかなえるのでしょうか。ここからは、不動産投資に必要な自己資金額について、具体的に検討してみましょう。
自己資金の目安は物件価格によって変わる
自己資金は、頭金や諸費用の支払いに充てるため、物件価格のおおむね20%から30%を用意しておくといいといわれています。その根拠は、頭金と諸費用の合計額が物件価格の20%から30%程度となるからです。具体的には、頭金は物件価格によって異なり、諸費用については新築物件は物件価格の4%から7%程度、中古物件は仲介手数料も加えて物件価格の7%から10%程度となります。
不動産投資ローンの融資における審査の通りやすさは、借り入れをする方の勤務先や年収、年齢など、個人の属性や、購入しようとする物件の担保的な価値によっても異なります。また、頭金の金額によって、ローン金利が優遇されることもあります。ただし、物件価格のおおむね20%から30%の自己資金が必ずいるというわけではありません。その辺りは後述します。
ちなみに、不動産の消費税は建物にはかかりますが、土地にはかかりません。不動産物件は高額なので消費税も見落とさないようにしたいですが、商習慣としては不動産の物件価格は消費税込みで表示していますので安心してください。消費税を別に表示している物件の場合は、建物の価格のみ消費税を加えて計算します。
自己資金は多いほうがいいのか
自己資金の目安を示しましたが、多く準備しておけばメリットもあります。まずは、ローンの頭金を多く入れて借り入れ金額やローンの返済年数が減らせることです。ほかにも、不動産投資におけるさまざまなリスクに対応することが可能となるでしょう。例えば、物件が空室となって家賃収入が入らなくなった場合でも、自己資金を頭金や諸費用に全額投入せずに手元に持っておけば、ローン返済に充てることができます。
不動産投資で資金を調達する方法
不動産投資に投入する資金は、自己資金以外にも金融機関等で調達可能です。ローンなどを利用すれば、レバレッジを効かせて効率よく投資ができるでしょう。さまざまな金融機関でローンを組むことができますが、それぞれに得意な融資があります。特徴を学んでおきましょう。
都市銀行
都市銀行は、テレビCMなどでもおなじみの、大都市圏に本店があり全国に展開している銀行のことです。ローンの金利は低めの傾向ですが、物件の資産価値や個人の属性などの審査が厳しく、不動産投資資金の融資を受けるハードルは高めです。築古物件などは資産価値が低いため、都市銀行から資金を調達するのは難しいといえるでしょう。
地方銀行
地方銀行は、第二地方銀行とも呼ばれる銀行です。都道府県に本店を置き、本店のあるエリアや地方に営業展開している銀行です。営業エリアに居住する人や所在する物件に対して、物件の資産価値や個人の属性を審査し融資を行っています。
信用金庫
信用金庫は、利用者が出資者となり、地域に根づいた金融機関です。融資の対象や審査内容は地方銀行と似た条件が設定されていることが多いです。不動産投資で融資を受けたい方は、地域の不動産会社からの紹介を経て金融機関に相談するほうが、話がスムーズに進むためおすすめです。不動産事業者金融機関が提携している場合もあります。
自己資金がなくても不動産投資ができる
自己資金は多いに越したことはないですが、現金を貯めるまで不動産投資ができないのでは投資機会を逸してしまうかもしれません。しかし、実は、自己資金がなくても不動産投資を始められます。購入する物件の担保的な価値やローンを借り入れる方の個人属性が高ければ、自己資金なしで、全額ローンで不動産投資物件を購入することは可能なのです。
自己資金がなくても不動産投資をする方法として、フルローンとオーバーローンがありますので、紹介します。
フルローンで不動産投資
フルローンとは頭金なしでローン借入金額が物件価格と同じとなるような融資のことです。ただし、先述した物件購入にかかる諸費用分は、自己資金を用意する必要があります。自己資金を諸費用に支払う分だけ用意して臨めるフルローンは大変魅力的です。
オーバーローンで不動産投資
オーバーローンとはフルローンよりもさらに自己資金を用意せずに融資を受けることです。物件購入にかかる諸費用の分まで融資でまかなうのです。自己資金がなくても不動産投資を始めたいと思ったときにオーバーローンで融資を受ければすぐにスタートできるというメリットがあります。
不動産投資を自己資金なしで行うリスク
自己資金を用意しなくても不動産投資を始めることはできますが、同時にさまざまなリスクを抱えることになります。直面するリスクについて、主に2つの場合を紹介します。
毎月の返済金額が高額に
自己資金なしでローンを組んだ場合、頭金などを入れていないため、当然、借入金額は多くなり、毎月の返済金額が高額になります。金利も元本の金額に上乗せされるため、返済金額も多くなりがちです。空室などで家賃収入が得られなくなり、ローンの返済が滞ってしまった場合には金融機関から一括返済を求められることもあります。
出口戦略にも支障が出る
投資用物件から家賃収入を得て、その後、適切なタイミングで売却するまでが不動産投資の一連の流れです。売却のことを出口と呼び、不動産投資においては出口戦略と呼ばれるほど、そのタイミングも重要視されています。
フルローンやオーバーローンなどを組み、返済期間が長い場合、自分の資産になるまで時間がかかってしまうと、売却をしたいタイミングを逸してしまう可能性があります。タイミングよく売却し、売却益を得られれば、次の物件を購入するための自己資金に充てられます。そのようなチャンスを逃してしまうかもしれないのです。
自己資金のみで不動産投資をするとどうなる
金融機関から融資を受けている状況を窮屈に感じる方や、全て自己資金で不動産投資をしたほうが安全だと思っている方もいるかもしれません。しかし、不動産投資ではローンを利用すると投資効率は格段に上がります。
例えば、自己資金が2,000万円ある場合、全額投入して2,000万円の物件を購入するよりも、2,000万円を頭金や諸費用に回してローンを組み、1億円の物件を購入する方が、家賃収入の額も非常に大きくなります。ローンを組むと、金利によりキャッシュフローは低下しますが、自己資金の投資効率は大幅にアップします。
少ない自己資金で不動産投資の利益を出すヒント
自己資金が多いほうが安定的に不動産投資の運用に臨めますし、自己資金がなくてもローンを組み不動産投資に参入できますが、今ある元手を最大限生かし、不動産投資で効率よく利益を出す方法を考えてみましょう。
不動産を選ぶときは資産価値に注目
金融機関から不動産投資用の融資を受ける際、物件の担保的な価値も考慮されます。購入する物件を担保にする場合には、その資産価値によって融資の条件も変わる傾向にあるため、資産価値の高い物件の購入をするのがおすすめです。
資産価値が高い物件とは、具体的には家賃収入を安定的に得られる見込みがあること、売却できる可能性が高いもののことです。つまり、不動産投資における価値の高い物件のことですので、物件選びをしっかり行うことが、融資の面でも大切ということでしょう。
不動産投資にかかる諸費用を低く抑える
自己資金は、物件購入時の頭金や諸費用に充てられることが多いことから、諸費用を安価に抑えることができれば、自己資金を少なくできるといえます。諸費用のうち、仲介手数料と司法書士報酬は安価に抑えられる可能性があります。仲介手数料は不動産業者への仲介に対する成功報酬として支払うものですが、売主が不動産業者の場合は直接取引となり、仲介手数料がかかりません。不動産業者が売主となる物件を探してみるのもいいでしょう。
司法書士に支払う所有権移転登記報酬の相場は、3万円から10万円程度と開きがあります。金融機関や不動産業者から指定がある場合は難しいですが、指定のない場合は、報酬の安い司法書士を探してみましょう。
個人属性を利用する
物件の資産価値に加えて、不動産投資用ローンの融資時に審査されるのは借り入れ希望者の個人の属性です。年収が高い方や大手企業勤務の方などはローン審査が通りやすいと先述しました。金融機関が個人の属性が高い方を優遇する理由は、返済が滞る可能性が低く、さらなる融資も期待できるからです。個人の属性が高く、融資対象の物件価値が高い場合には、フルローンやオーバーローンなどを組みやすくなります。
まとめ
自己資金が多くても少なくても、また、フルローンやオーバーローンなどを利用すれば、自己資金がなくても不動産投資を始められます。どのような運用計画で不動産投資を行うかということが大切だといえます。まずは、現在の元手を確認しながら、どのような不動産投資を行いたいのかイメージを描いてみましょう。
この記事を書いた人
TERAKO編集部
小田急不動産
横溝 浩由
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