不動産投資のシミュレーション 必要情報やメリット、注意点まで徹底解説
不動産投資を行う上で必要不可欠なのが収支の予測、つまり「シミュレーション」です。
今やスマホアプリなどでも手軽に行える「不動産投資シミュレーション」ですが、気をつけるべきデメリットやリスクもあります。
表面利回りと実質利回りの違いは?シミュレーションを行うために必要な情報とは何か?
この記事では、不動産シミュレーションの基本から、知っておきたいメリット・注意点について解説します。
この記事の目次
不動産投資をはじめるにあたって、どのくらいの収益が得られるのかは誰しも気になるものです。気になる投資用物件を見つけたら、まずはシミュレーションを行い、収益が得られるのか検証しましょう。シミュレーションには、不動産に関するさまざまな情報が必要です。不動産投資初心者にとって、聞き馴染みのない専門用語も出てくるため、不安に思う方も多いでしょう。
この記事では、不動産投資のシミュレーションについて紹介します。正しい知識を身につけ、正確なシミュレーションを行うことは、不動産投資の成功につながります。ぜひ参考にしてください。
不動産投資のシミュレーションとは
不動産投資におけるシミュレーションとは、その投資で得られる収支(キャッシュフロー)の見積もりを行うことです。収益が出る物件かどうかを検証できるだけでなく、不動産投資で考えられるリスクについても把握できます。
不動産投資における利回りの種類
不動産投資のシミュレーションで必要となるのが「利回り」です。利回りとは、物件への投資額に対する1年間の家賃収入の割合を示す数字です。利回りには、「表面利回り」と「実質利回り」の2種類があります。どちらも不動産投資では基礎的な用語です。それぞれの言葉の意味を正しく理解しておきましょう。
表面利回り
「表面利回り」は、1年あたりの表面的な収益率を表す数字です。物件価格に対して、どの程度の家賃収入が得られるかを示す指標となります。表面利回りは、下記の計算式で算出できます。
表面利回り=(年間の収入÷物件の購入費用)×100
表面利回りを求める計算式で必要な数字は、年間の家賃収入と物件購入額のみと実にシンプルです。表面利回りには、不動産投資に必要な管理費や固定資産税など、変動する可能性がある諸経費は含まれていないことを覚えておきましょう。
実質利回り
不動産を運営するには、管理費や固定資産税など、年間を通してさまざまな経費がかかります。家賃収入だけでなく、投資にかかる諸経費を考慮して算出するのが「実質利回り」です。実質利回りは、下記の計算式で算出できます。
実質利回り=(年間の収入ー管理費などの諸費用)÷(物件の購入価格+登録免許税などの諸費用)×100
表面利回りよりも複雑な計算式になりますが、諸経費を計算に加えることで、具体的かつ現実的な収益性を把握できます。
不動産投資の「利回り」計算方法とシミュレーション。表面利回りと実質利回りとは?
不動産投資シミュレーションをするメリット
シミュレーションにより、不動産投資の収益性を検証ができることは、大きなメリットと言えるでしょう。しかし、シミュレーションで得られるメリットは、それだけではありません。ここでは、不動産投資のシミュレーションで得られるさまざまなメリットについて解説します。
不動産投資におけるコストを可視化できる
不動産投資にかかるコストには、大きく分けて2つあります。1つは物件購入時に必要となる初期コスト、もう1つは管理を維持するためのランニングコストです。コストは運用する物件や市場環境などによって異なりますが、大切なのはシミュレーションによってコストを可視化することです。どのようなコストがかかるのかを把握しておくことは、不動産投資を成功させる鍵となります。
融資判断を予測できる
初期費用として多額の資金が必要となる不動産投資では、金融機関から融資を受ける人がほとんどです。多額の融資を受ける際には「融資の返済ができるのか」という不安を抱えている人も多いでしょう。そのような人にもシミュレーションはおすすめです。
シミュレーションを行うことで、無理なく返済ができるかどうかの融資判断を予測できます。融資の金利や返済期間などの、融資条件が適切でなければ、融資先の変更を検討したり物件の見直しを検討したりすることも可能です。
リスクを回避できる
どのような投資でもリスクは付き物ですが、不動産投資でのリスクはある程度の予測ができます。例えば、空室リスクや入居者トラブル、金利上昇による返済額の増加といったリスクです。生じうるリスクをシミュレーションで想定しておくことで、回避したり対策を立てたりすることができ、被る被害を最小限に抑えられます。回避できない大きなリスクが想定される場合は、物件の購入を再検討すると良いでしょう。
キャッシュフローを予測できる
現金(キャッシュ)が入り、出ていく流れを「キャッシュフロー」と呼びます。不動産投資におけるキャッシュフローとは、家賃収入から支出を差し引き、手元に残る残額のことです。もし、空室となってしまった場合は家賃収入がゼロとなり、収支はマイナスとなります。その場合は、自己資産などでマイナスを補填する必要があり、大きな負担となりかねません。
シミュレーションでキャッシュフローを予測することにより、もしもに備えて資金を手元に残しておくなどの対策が可能となります。また、返済額に無理がないかなど、投資計画に無理がないかも確認できるでしょう。
購入を検討している物件について投資判断できる
投資用として物件を購入するにあたり、まずはじめに気になるのが利回りです。しかし、この利回りは諸経費を含まない表面利回りの場合が多く、現実的な収益性を表す数字ではありません。
管理費や修繕費などの諸経費を加味した実質利回りを用い、正しいシミュレーションを行うことによって、物件の現実的な収益性が明らかとなります。表面利回りではわからなかった収益性を知ることにより、購入を検討している物件に投資すべきか否かの判断ができるようになります。
売却のタイミングを予測できる
物件は経年劣化するものです。築年数が古くなればなるほど修繕費は増加する傾向にあり、家賃は下落する傾向があります。収支が逆転してしまうなどマイナスが予測されるのであれば、早めに売却してしまった方が良いでしょう。このように、経年劣化を想定したシミュレーションを行うことで、売却のタイミングも予測できます。
不動産投資シミュレーションの方法
不動産投資のシミュレーションには多くのメリットがあり、成功のために欠かせないステップです。では、不動産投資シミュレーションはどのように行えば良いのでしょうか。不動産投資のシミュレーション方法についてみていきましょう。
シミュレーションに必要な情報を集める
不動産投資のシミュレーションには、情報収集が必要不可欠です。ここでは、必ず集めておきたい情報について紹介します。物件に関するできるだけ詳細な情報を集めることで、より現実的なシミュレーションが可能になります。
物件の購入価格・基本情報
購入を検討している物件の購入価格は、シミュレーションの軸となる情報です。加えて、購入価格以外の基本情報も集めておく必要があります。物件の面積や構造、間取りなどが、物件の基本情報にあたります。中古物件の場合は、築年数や修繕履歴などの情報も集めましょう。住人の入居期間から空室リスクを予測できるなど、過去の情報は今後起こり得るリスクの予測に役立ちます。
年間家賃収入
年間家賃収入とは、1年間の家賃収入のことです。基本的には、1か月の家賃×12で求められます。年間家賃収入は、あくまでも入居者がいて、家賃が支払われている場合の数字です。空室であれば家賃収入はゼロになります。また、入居者がいても家賃滞納が発生している場合、家賃収入は得られません。年間家賃収入は、確定した収益ではないことを覚えておきましょう。
物件の維持管理費
不動産を適切に運用するためには、物件を維持する費用と管理する費用が必要です。例えば、入居者募集や清掃などを管理会社に委託する場合にかかる「管理費用」や、入居者が退去した際の原状回復にかかる「修繕費」などです。実際にかかる維持管理費は状況によって異なります。維持管理費にはどのようなものがあるかを把握しておきましょう。
利回り
利回りには、表面利回りと実質利回りの2種類があります。シミュレーションでは、より正確で現実的な収益を知りたいため、諸経費を加味した実質利回りが必要です。一般的に、物件情報では表面利回りが使用されています。利回りの高さで物件を選んだものの、経費を加味した実質利回りを算出すると「思っていたよりも利回りが低い」というケースもめずらしくありません。現実的な収益を知りたい場合は、必ず実質利回りを把握しましょう。
諸費用
物件購入時にはさまざまな諸費用がかかるため、物件価格だけシミュレーションを行うとズレが生じます。主な諸費用には、所有権の登記手続きに必要な「不動産登記費用」や不動産会社(仲介会社)に支払う「仲介手数料」が挙げられます。「不動産取得税」や「固定資産税」などの税金も諸費用に含めましょう。
自己資金や借入額
不動産投資をはじめる前には、自己資金がいくらあるのかについても明確にしておく必要があります。また、借入額についても把握しておきましょう。自己資金に余裕があれば、ローンの返済比率を低くしたり不測の事態に対応したりすることもできます。収支のマイナスを防ぎ、安定した黒字運用を目指すのであれば、自己資金と借入額を明確にしておくことが欠かせません。
周辺物件の売買価格
投資用として購入したい物件を見つけた場合、周辺エリアにある物件の売買価格もチェックしましょう。駅からの距離や間取りなど、購入したい物件と条件が似ている物件をリサーチすることで、購入時の価格が適切かどうかを確認できます。また、売却時の価格も知ることができ、長期にわたる具体的なシミュレーションが行えます。
利用可能な融資先を選ぶ
シミュレーションに必要な情報が揃ったら、次は融資先を選びましょう。金融機関から融資を受けるには、まず審査に通らなくてはなりません。金融機関ごとに、融資可能かを判断する基準が異なります。借主の年齢や年収などの個人の属性や、購入する物件の所在地によっては利用できない融資先もあるため、複数の金融機関に相談してみると良いでしょう。
毎月のローン返済額を計算する
毎月のローン返済額は、不動産投資の収支を左右する重要な項目です。金融機関にもよりますが、多くの場合、融資可能な金額や金利、返済期間などは本審査を通るまではわかりません。一般的には、融資を申し込んでから1週間〜1か月程度で可否通知がきます。無事に本審査に通過し、具体的な融資の条件が明確となったら、月々の返済額を算出しましょう。
毎月の収支を計算する
物件の基本情報と毎月のローン返済額が揃った時点で、毎月の収支シミュレーションが行えるようになります。毎月の収支は以下の数式で算出できます。
家賃収入ー経費ーローン返済額=毎月の収支
不動産投資は長期的であるため、ざっくりとした概算をしがちです。しかし、できるだけ具体的な数字を用いることで、より現実的なシミュレーションが行えます。年単位で発生する固定資産税などの経費は12で割り、毎月の経費に組み込むと計算しやすくなります。
不動産投資シミュレーションに便利なツール
不動産投資のシミュレーションには多くの情報が必要です。細かい数字も多く、自分で計算してシミュレーションを行うには時間がかかってしまうでしょう。不動産投資のシミュレーションは、便利なツールがおすすめです。
スマホアプリ
スマートフォンの普及に伴い、簡単に不動産投資の収益を計算してくれる、便利なスマホアプリが登場しています。スマートフォンなら通勤時間や休憩時間など、ちょっとした隙間時間にシミュレーションが可能です。気軽にシミュレーションをしてみたい方におすすめです。
不動産投資の簡易シミュレーションサイト
より具体的なシミュレーション結果を知りたい場合は、不動産投資の簡易シミュレーションサイトを活用しましょう。キャッシュフローだけでなく、売却時の最終損益までをグラフで確認できるものもあります。入力する項目内容や項目数はサイトによって異なるため、物件の情報収集状況に見合ったサイトを選びましょう。
Excel(エクセル)テンプレート
日頃からExcelを使用している方は、不動産投資のシミュレーションもExcelで行ってみてはいかがでしょうか。無料で使用できるExcelテンプレートを活用すると便利です。5年後や10年後、30年後などをシートで確認でき、長期的なシミュレーションを可視化できます。
不動産投資シミュレーションにおける注意点
具体的な収支を把握できたりリスク回避ができたりと、不動産投資の成功にはシミュレーションが欠かせません。ですが、シミュレーションにも注意すべき点があります。シミュレーションを正しく活用するためにも、メリットだけでなく注意点も確認しておきましょう。
あらゆるケースを想定する
いくら準備万端で不動産投資をスタートしても、残念ながら想定外な出来事が起こる可能性はあります。不測の事態が起こった際にあわてることがないよう、シミュレーションではあらゆるケースを想定しておきましょう。「想定以上に空室期間が長くなってしまった」「想定していたよりも早く設備の修繕費が必要になった」といったケースを想定することにより、経費を備えておくなどの対策が可能となります。
長期的な目線でシミュレーションする
不動産投資は、長期にわたり保有することで利益を得る投資方法です。半年後や1年後などの短期的な収支だけでなく、5年後や10年後といった長期的な目線でシミュレーションをすることも大切です。長期的な目線でのシミュレーションにより、物件をいつまで持ち続けるか、いつ売却をすべきかなど、出口戦略も見えてくるでしょう。
諸費用を含めて計算する
物件購入時には不動産登記費用や印紙代、物件を運用するための管理費や修繕費などが必要になるなど、不動産投資には実に多くの諸費用がかかります。これらすべての諸経費を把握することは難しく、計算し忘れるケースも多く見受けられます。諸費用が含まれていないと正しいシミュレーションができません。シミュレーションをする際は、必ず諸費用を含めて計算しましょう。
シミュレーション結果はあくまで目安
物件の情報を集め、さまざまリスクを想定したとしても、シミュレーション結果はあくまでも目安です。確定した収益ではないことを心得ておきましょう。現実とシミュレーション結果が異なる可能性はあります。ですが、シミュレーション結果とは異なる状況になったとしても、不動産投資が失敗したわけではありません。不動産投資は長期的なものなので、途中で修正や見直しをしながら運用することが大切です。
判断に迷う場合はプロに相談しよう
不動産投資には専門用語も度々登場するため、ある程度の知識を身につけておく必要があります。いくら勉強をしたとしても、経験値のない投資初心者では、判断に迷うこともあるでしょう。素人による自己判断は、時に大きな損害となる可能性があります。シミュレーションで疑問点や不明点が出てきた場合、不動産会社などのプロに相談してみましょう。経験値の高いプロから的確なアドバイスをもらうことは、不動産投資の成功への近道となるでしょう。
まとめ
投資額が多く運用も長期にわたる不動産投資は、慎重に検討しなくてはなりません。不動産投資を成功させるためには、与えられた情報に頼るのではなく、積極的に情報収集をして現実的なシミュレーションを行うことが大切です。「投資に適した物件なのか」「どれくらいの利益が得られるのか」といった疑問や不安は、シミュレーションで解決できる場合があります。現実的なシミュレーションを行い、不動産投資の成功を目指しましょう。
この記事を書いた人
TERAKO編集部
小田急不動産
飯野一久
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