不動産投資
2023.04.03

不動産にかかる修繕費の目安と資本的支出との違いとは

不動産にかかる修繕費の目安と資本的支出との違いとは

不動産投資を始めるには物件が新築・中古に関わらず、修繕費の知識が必要です。修繕費の種類や費用の目安を確認しておきましょう。
また、物件に対して行った工事が修繕費として計上できない場合もあります。どのような場合に当てはまらないのか、確認してみましょう。

この記事の目次

なぜ不動産投資には修繕が必要なのか

賃貸物件を探している人は、どのような点に着目して物件を選ぶのでしょうか。「外観がきれいな物件」「コンロが2口以上の物件」「バス・トイレが別の物件」など、個人のこだわりによってさまざまな条件を示すでしょう。不動産投資をするには、このような入居者目線が欠かせません。多くの入居者は、快適に生活できる物件を求めます。
入居者のこだわりの中には「駅から徒歩5分の物件」などのように、物件の立地条件によってはクリアできない条件もあります。しかし、先述したような物件の清潔さや設備についての条件であれば、修繕することによって入居者目線の物件にすることが可能です。もちろん、不動産を快適な状態にするには修繕費がかかります。
しかし、修繕費を削って、あまりいい住環境を整えられない場合、さまざまなリスクが生じます。例えば、入居者に選ばれないため空室の期間が長くなり家賃収入を得られないことや、家賃を下げないと入居者が決まらないといったことも生じるでしょう。空室のリスクを回避するために、多くの人に選んでもらえる住環境を整える必要があるのです。不動産投資をする上で、修繕費は必要な経費といえるでしょう。

不動産投資にかかる修繕費の目安を知っておきたい理由

修繕費が何にどのくらいかかるかといった情報は、不動産投資をする上でとても重要です。不動産投資には不可避ともいえる費用のため、修繕費の目安を把握しておきましょう。
修繕費は、当たり前のことではありますが、築年数が浅い物件は、手を加える部分が少くないため低く抑えられるでしょう。逆に、築年数がある程度経過した物件は、物件自体の経年劣化が避けられないため高くなる傾向にあります。
修繕費が大きくかかってくる目安としては、建築後、約10年から15年といわれています。建物の構造や日頃からの手入れの状況によって費用は異なるでしょう。
不動産投資に関わる経費には修繕費のほかにも減価償却費、固定資産税・都市計画税、管理会社へ支払う委託費用などが挙げられます。このうち、経年で大きく変化していくのは、修繕費と減価償却費の2つです。
減価償却費は、経費として計上できる年数が、建物の構造により法律で定められています。鉄骨鉄筋コンクリート造や鉄筋コンクリート造であれば47年、木造は22年です。減価償却費は、実際には金銭を支払っていなくても経費として計上できるため、節税効果が高くなります。
家賃収入については、新築の状態が最も高く、年月を経るにつれて下落していきます。不動産投資にかかる修繕費などの経費と家賃収入の金額を比較して、修繕費を含む経費が家賃収入を超えてしまうと、赤字状態になってしまいます。このような場合は、不動産投資を続けずに物件を売却した方がいいでしょう。
不動産投資とは家賃収入を得て、適切なタイミングに物件を売却するのが一般的な流れです。経費と家賃収入の変化についてシミュレーションを行い、赤字に転換する時期を見極めて売却をすることで、さらなる投資効果を生み出せるでしょう。

不動産にかかる修繕費の目安

不動産投資にかかる修繕費は、建物自体の機能や性能を維持するために行うものと、快適な住環境を整備するものがあります。
建物自体の修繕としては、屋根や外壁、廊下や階段の塗装や防水加工、住環境の整備として給湯器やエアコン、風呂やトイレの設備の交換などです。

まずは不動産の耐用年数をチェック

賃貸経営をしている人に向けて、国土交通省は「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」を発行しています。一般的に修繕を行う目安として、以下を示しています。

修繕計画の目安

  • 【屋根】塗装や補修:11年から15年目/防水・葺き替え:21年から25年目
  • 【外壁】塗装:11年から15年目、21年から25年目
  • 【給湯器・エアコン】交換:11年から15年目
  • 【階段・廊下】鉄部塗装:5年から10年目/塗装・防水:11年から15年目
  • 【給排水管】高圧洗浄:5年から10年目、以降5年から10年ごと

ほかにも、キッチンや浴室などの室内設備の交換も必要になってきます。さまざまなメーカーから賃貸物件用の多様な商品が販売されています。どれを選ぶかによって、住環境に大きく影響しますので、検討しておきましょう。

不動産の物件別修繕費

不動産にかかる修繕費は、物件の構造によっても異なります。国土交通省発行の「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」には(公財)日本賃貸住宅管理協会「賃貸住宅版長期修繕計画案作成マニュアル(改訂版)」を参考に作成した、修繕時期と費用のイメージが示されています。
不動産投資を始める際に検討に上がりやすい、1K物件で木造とRC構造の修繕費について比較してみましょう。

木造10室(1K)にかかる修繕費

まずは、木造10室の不動産の修繕時期や費用のイメージを確認しましょう。

  • 5年から10年目:1戸あたり約7万円
  • 11年から15年目:1戸あたり約52万円
  • 16年から20年目:1戸あたり約18万円
  • 21年から25年目:1戸あたり 約80万円
  • 26年から30年目:1戸あたり約18万円
  • 合計:1戸あたり約174万円/1棟あたり約1740万円

21年から25年目の修繕費が最高額で、次いで11年から15年目の修繕費が高額となっています。なぜなら、この2つの期間には外壁の塗装や、屋根の塗装、葺き替えが含まれているからです。
高所作業が伴う場合、塗装にかかる修繕費だけでなく、足場を組むための費用もかかるため、高額となりがちです。

RC造10室(1K)にかかる修繕費

次に、RC造10室(1K)にかかる修繕費を紹介します。

  • 5年から10年目:1戸あたり約7万円
  • 11年から15年目:1戸あたり約46万円
  • 16年から20年目:1戸あたり約18万円
  • 21年から25年目:1戸あたり 約90万円
  • 26年から30年目:1戸あたり約18万円
  • 合計:1戸あたり約177万円/1棟あたり約1770万円

木造と同様に、屋根や外壁のメンテナンスを行うため、21年から25年目の修繕費が最高額で、次いで11年から15年目の修繕費が高額です。どのような構造の建物でも、建築から10年目以降は修繕費が多くかかる傾向にあります。
なお、修繕費は、30年目以降も必要となります。長期的な修繕計画を考える場合は、30年目以降も修繕費がかかることを念頭に置いておきましょう。

不動産の修繕計画と収支をシミュレーションしておこう

木造とRC構造の新築物件にかかる修繕費について紹介しましたが、マンションで不動産投資を行う場合は、大規模修繕計画に気を付けましょう。自ら立てた修繕計画が大幅に狂ってしまう可能性があります。
また、戸建て物件の場合は、物件の状態を細かくチェックし修繕計画を立てましょう。中古物件の場合は、運用前から屋根や床などの修理や改良のために高額な修繕費がかかる場合があります。物件の購入前に十分チェックしたとしても、季節によって風雨や害虫などのトラブルが発生することもあります。このような場合に備えて、修繕費を蓄えておきましょう。
不動産の修繕計画を立てれば、維持費が多く必要になるタイミングも把握できます。家賃収入や敷金・礼金を修繕費としてストックしておくことをおすすめします。

不動産の修繕にまつわる3つの支出

不動産投資をするのであれば、不動産の修繕にまつわる3つの支出についても知識を深めておきましょう。賃貸物件の建物や設備を修理した場合「固定資産の取得」にあたるのか、それとも「修繕費として経費処理できる」のか、あるいは「資本的支出として資産計上する」のかという判断が必要になります。
修繕費であれば、その事業年度の費用として計上しますが、不動産の「取得」「資本的支出」の場合は、法定耐用年数の間、減価償却費として計上します。この3つの支出について簡単に解説しましょう。

取得

不動産投資用として購入した建物の増築など、量的な増加をもたらした支出は「取得」と考えます。原則、取得価格が10万円以上となれば固定資産として計上します。

修繕費

不動産物件の外壁の塗装をはじめ、壁紙や床板の貼り替え、設備のメンテナンスや更新など、修理内容が通常の維持管理や原状回復であれば、修繕費として計上できます。

資本的支出

不動産物件の設備を高性能化することで、法定耐用年数が延びる場合があります。このように、固定資産の価値や性能、耐久性を向上させる修理や改良であれば、資本的支出となり、固定資産として計上します。

不動産にかかる修繕費と資本的支出の違い

不動産投資物件の修理や改良を行ったときに修繕費に該当するのか資本的支出に当たるのかの判断は「修繕費」「改良費」「修理費」などの建築会社の見積書や請求書の名目ではなく、その内容で判断されます。
不動産の通常の維持管理や原状回復費用である場合は修繕費として計上できます。あきらかに不動産価値を高めるものや耐久性を増すものなら資本的支出として処理します。
しかし、どちらで処理するのか、判断に迷う場合もあるでしょう。以下で、修繕費と資本的支出のどちらなのか判断する方法を確認してみましょう。

少額で短期的にかかる費用

修繕費と資本的支出のどちらなのか判断に迷う場合「少額で短期的にかかる費用か」を確認します。

具体的には、支出金額が20万円未満、または、おおむね3年以内の周期で行われているものに関する支出なのかという点に着目して判断します。

  • 修理や改良などの金額が1つ「20万円未満」の場合
  • おおむね3年以内の周期で行われる修理や改良などの場合

形式基準により修繕費と判断

「少額で短期的にかかる費用」であるかどうかの確認ができない場合は、金額が60万円未満、もしくは不動産取得価額に前年度までの資本的支出を加えた価格の約10%相当以下の金額である場合、修繕費として計上します。

【「少額で短期的にかかる費用か」確認できない場合】

  • 修理や改良などの金額が60万円未満
  • 不動産取得価額に前年度までの資本的支出を加えた価格の約10%相当以下の金額

修繕費と資本的支出の特例もある

修繕費か資本的支出かが明らかとならない場合、支出した金額のうち、次のいずれか少ない金額を修繕費として、残りの金額を資本的支出として計上できます。

ただし、この特例は、今後継続して適用しなければなりません。

  • 支出した金額の30%相当額
  • 不動産取得価額に前年度までの資本的支出を加えた価格の10%相当額

さらに、災害により被害を受けた物件の復旧のために支出した金額は、以下に該当する場合、修繕費として計上できます。

日本では自然災害が頻繁に発生しており、何らかの災害リスクが潜んでいますので、予備知識として備えておきましょう。

  • 被災した不動産を原状回復するために支出した金額
  • 不動産の被災前の効用を維持するために行う補強工事や排水工事、土砂崩れの防止工事などのために支出した金額を法人が修繕費として計上している場合
  • 上記2点の金額を除き、修繕費であるか資本的支出であるか不明なときは金額の30%相当額。ただし、その残額は、資本的支出として計上する

不動産の修繕費と資本的支出を事例で比較

不動産投資用物件に行った修理や改良が、修繕費もしくは資本的支出のどちらにあたるのか、具体的な事例を示します。これまでの2つの判断を思い出しながら確認していきましょう。

事例1.アパートの壁紙の張り替え費用

まずは、アパートの壁紙の張り替えをする場合について考えてみましょう。原状回復のために以前と同じ品質の壁紙に貼り替えて、費用が200万円かかったときは、修繕費と資本的支出、どちらと判断すればいいでしょうか。
答えは、修繕費です。物件の通常の維持管理もしくは原状回復をするための壁紙の貼り替えと判断できる場合は修繕費として計上します。

事例2.マンションのシステムキッチンの取り替え費用

次に、マンションの1室内のキッチンに加え、風呂設備も取り替えた場合。費用は既存設備の撤去と新しい設備設置の費用として約500万円かかったとき、修繕費と資本的支出のどちらにあたるでしょうか。
住宅を構成していたキッチンと風呂の廃棄と新設が同時に行われたと解釈されるため、修繕費とはならないと判断されます。また、これらを新設したことにより、建物価値の向上や耐久性を増すため資本的支出です。

事例3.蛍光灯の取り替え費用

最後に、蛍光灯の取り替え費用についてです。事務所に取り付けられている全ての蛍光灯を、特別な工事はせずに蛍光灯型LEDランプに取り替えたときにかかるLEDランプ代と取付工事費の110万円は、修繕費と資本的支出のどちらにあたるでしょうか。
答えは修繕費です。LEDランプへ取り替えたことで、節電効果や交換時期が延びるなど、その不動産の価値の向上またはその耐久性が増したということで、資本的支出と考えた方も多いことでしょう。しかし、蛍光灯は、建物の付属設備の一部品という扱いで、建物付属設備自体の価値までが向上したとは捉えられないため、修繕費と判断されます。

修繕費か資本的支出か判断が難しい場合は専門家に相談

不動産物件に行った修理や改良が、修繕費と資本的支出のどちらなのか、容易に判断できないケースもあるかもしれません。もし、どちらで処理するべきか分からない場合は、税理士や税務署にアドバイスを求めましょう。

まとめ

投資用物件の修繕費に関して詳しくなれば、不動産投資の支出の大きな部分を占める費用の検討が付けられるため、投資の成功に近づきます。ご自分の物件の修繕計画を立ててから不動産投資を始めましょう。

この記事を書いた人

著者写真 TERAKO編集部
小田急不動産
飯野一久

「一期一会」がモットーです。これまでの投資不動産の売却・購入・資産の入れ替えの実務を通じて得られた知見を、少しでも、皆様に、わかりやく、丁寧にお伝え出来たらと思っております。 著者の記事一覧はコチラ
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