不動産投資でオーナーチェンジ物件を選ぶ理由と失敗しないポイント
「オーナーチェンジ物件」という言葉を知っていますか? 「耳にしたことはあるが、くわしいことはよくわからない…」という方もいるのではないでしょうか。オーナーチェンジ物件は、一般的な不動産物件から一歩踏み込んだ特殊な物件といえます。
この記事の目次
今回の記事では、オーナーチェンジ物件に関する以下の5点をくわしく紹介します。
- オーナーチェンジ物件の仕組み
- オーナーチェンジ物件を選ぶ理由
- 初心者にもおすすめな理由
- 注意すべき点
- 失敗しないポイント
オーナーチェンジ物件の仕組み
「オーナーチェンジ物件」とは、不動産物件に入居者がいる状態のまま、オーナー(所有者)だけを変更する物件のことです。新築物件やリノベーション物件など、入居者をゼロから募集するタイプの不動産とは取引形態が異なります。
オーナーチェンジ物件は物件の形態を問いません。分譲マンションやアパート、戸建てなどどのような物件でもオーナーチェンジ物件になり得るのです。複数の部屋がある物件においては、1部屋のみに入居者がいる場合でもオーナーチェンジ物件に該当します。
オーナーチェンジをすると、買主は賃貸借契約書に記載される権利や義務などを、売主から引き継ぐことになります。オーナーチェンジによって入居者から家賃を受け取る権利を得ますが、同時に、入居者の退出時に敷金を返還する義務も果たさなくてはなりません。
不動産投資でオーナーチェンジ物件を選ぶ理由
オーナーチェンジ物件において魅力的なのは、物件を購入した時点から入居者が存在することです。最初から入居者がいることにはさまざまなメリットがあり、そのことがオーナーチェンジ物件を選ぶことをおすすめする理由につながっています。
ここでは以下の3つの理由を紹介します。
- 当月から家賃収入が見込める
- 収支の予測が立てやすい
- 入居者の傾向を把握できる
ひとつずつ解説していきましょう。
当月から家賃収入が見込める
オーナーチェンジ物件をおすすめする理由は「購入した時点から家賃収入が見込めるから」です。オーナーチェンジ物件には最初から入居者がいるので、すぐに家賃収入を得られます。この点は、新築物件やリノベーション物件などを活用して不動産投資をおこなう場合と比較し、大きな魅力といえるでしょう。
収支の予測が立てやすい
オーナーチェンジ物件をおすすめするのは、「収支の予測が立てやすいから」という理由もあります。物件購入時から収入の見込みが立つため、収支の予測が立てやすくなります。新築物件やリノベーション物件などでは、入居者が決まるまで収入はありません。
入居者がなかなか決まらない場合、家賃の設定を変更したり、募集を掲載する広告を増やしたりするなどいろいろな施策が必要になるでしょう。このような場合、収入がないにもかかわらず支出のみがかさんでしまいます。一方オーナーチェンジ物件は、入居者との賃貸契約を継続した状態で不動産経営をスタートできるため、このようなリスクがありません。
入居者の傾向を把握できる
オーナーチェンジ物件をおすすめするのは、「入居者の傾向を把握できるから」という理由もあります。オーナーチェンジ物件では、オーナーになった時点ですでに入居者が存在するため、その傾向を早い段階で把握できます。現在入居している人の年齢層・性別・家族構成などの情報は、今後新たに入居者を募集する際の参考になるでしょう。
またオーナーチェンジ物件では、入居者がベランダや廊下、自転車置き場などの共用スペースをどのように使っているのかをチェックできます。共用スペースの使い方をチェックすることで、入居者が物件をどのように扱っているのかが推測できるため、いわゆる「ゴミ屋敷化」などのリスクを回避できるでしょう。
オーナーチェンジ物件では入居者の属性や物件の扱い方に加え、今までのトラブルについても確認できます。早い段階でトラブルの芽を摘めるため、どのような人が入居するかわからない新築物件やリノベーション物件に比べ、入居者とトラブルになるリスクを抑えられます。
オーナーチェンジ物件は不動産投資初心者にもおすすめ
あらかじめ入居者がいる状態で経営をスタートできるオーナーチェンジ物件は、不動産投資の初心者にもおすすめです。
オーナーチェンジ物件を不動産投資初心者におすすめするポイントは以下の3点です。
- 前のオーナーから経営管理を引き継げる
- 収益化の実績があり融資を受けやすい
- 初期費用を抑えられる
ひとつずつみていきましょう。
前のオーナーから経営管理を引き継げる
不動産投資初心者にオーナーチェンジ物件をおすすめするポイントのひとつが「前のオーナーから経営管理を引き継げること」です。オーナーチェンジ物件では物件のオーナーだけを変更し、賃貸借契約書や管理体制はそのまま引き継ぎます。新たに契約書を作成したり管理会社を選定したりする必要がなく、経営をはじめる際の手間がかかりません。
またオーナーチェンジ物件を経営する場合、過去の資料を参考にできます。物件を購入する前に、空室期間や入居期間など経営に必要なさまざまなデータを共有してもらえます。資料をしっかりと確認しておけば、不動産投資初心者でもスムーズに経営をはじめられるでしょう。前のオーナーという先輩がいるため、わからないことや不安なことを事前に確認しておくことも可能です。
収益化の実績があり融資を受けやすい
不動産投資初心者にオーナーチェンジ物件をおすすめするポイントには「収益化の実績があり融資を受けやすいこと」も挙げられます。不動産投資をはじめる際ローンを組む人は多いです。
一般的に不動産投資の融資は審査が厳しいといわれていますが、オーナーチェンジ物件を購入する場合は審査が通りやすくなっています。これは、すでに収益化の実績があることが考慮され、物件評価が高くなるためです。「金融機関から融資を受けられるか不安…」と感じている不動産投資初心者の方は、オーナーチェンジ物件も検討してみるとよいでしょう。
初期費用を抑えられる
「初期費用を抑えられること」も不動産投資初心者にオーナーチェンジ物件をおすすめするポイントです。入居者に対して賃借権が発生しているオーナーチェンジ物件は、売買時からオーナーの権利に制限があります。そのため、物件すべての部屋が空室となっている「空室物件」よりも、売却価格が安価に設定されているのが一般的です。
また不動産は経年劣化によって価値が減少する傾向があるため、オーナーチェンジ物件は新築物件を購入するよりも価格を抑えられます。さらに入居者がいる状態で購入するため、物件全体のリフォームや修繕などの必要がありません。このようにオーナーチェンジ物件には初期費用を抑えられるポイントが複数あります。「不動産投資をはじめたいが費用は抑えたい」と考えている初心者の方でもはじめやすいでしょう。
オーナーチェンジ物件で注意すべき点は?
ここまでオーナーチェンジ物件のよい点を紹介しましたが、もちろんメリットばかりではありません。
オーナーチェンジ物件で注意すべき点は以下の2点です。
- 入居者がいる部屋の現状確認ができない
- 契約内容の変更に時間がかかる
くわしく解説しますので、しっかりと頭に入れておきましょう。
入居者がいる部屋の現状確認ができない
オーナーチェンジ物件では、入居者が住んでいる部屋の現状確認ができません。そのため、内装の傷みがひどかったり水回りの状態が悪かったりすることもあるかもしれません。そのような状態からトラブルが発生するリスクもあるでしょう。もしトラブルが発生し補修依頼があった際には、迅速な対応が求められます。
さらに、入居者が退去するときにも注意が必要です。長年にわたり入居していた人が退去した際、内装も水回りもボロボロで大規模なリフォームが必要だった……という例も少なくありません。オーナーチェンジ物件に長年入居している人がいる場合は、退去後の修繕やリフォームに費用がかかると考えておいたほうがよいでしょう。オーナーチェンジ物件では、空室や共用スペースしか直接状態を確認できないことを理解しておきましょう。
契約内容の変更に時間がかかる
物件とともに入居者との契約内容も引き継ぐオーナーチェンジ物件では、契約内容の変更に時間がかかります。たとえ設定されている家賃が相場より低いと感じても、すぐに値上げをするのは困難です。
また、オーナー側に不利な契約内容になっている場合、内容を変更したいと考えることもあるでしょう。しかし契約内容は、賃借人の同意がないと変更できないことになっています。購入後に経営管理や契約内容で困らないよう、家賃設定や賃貸借契約書の内容は事前にしっかりと確認しておくことが大事です。
中には、保証人や保証契約が契約当時から更新されておらず、実質無効となっているケースもあります。具体的には、長年にわたり住み続けている入居者がこのケースにあたることが多いです。トラブルの種にならないよう、賃貸借契約書の保証期間なども忘れずにチェックしておきましょう。
オーナーチェンジ物件で失敗しないポイント
オーナーチェンジ物件で失敗しないためには、納得がいくまで徹底的に物件について確認することが大切です。
具体的には以下の4点が挙げられます。
- 過去のデータを念入りに確認する
- 管理会社の選定は慎重に
- 敷金の有無を確認する
- 前のオーナーが物件を手放す理由を確認する
ひとつずつ解説します。
過去のデータを念入りに確認する
オーナーチェンジ物件で失敗しないためには、過去のデータを念入りに確認することが大切です。オーナーチェンジ物件の場合、物件購入前に、過去のさまざまなデータを確認できます。たとえば、入居年数や契約書のほか、物件の管理記録や修繕履歴などのデータです。
契約書のデータからは、家賃の推移も読み取れます。あらかじめ周辺エリアの家賃相場の推移を確認し、購入を検討している物件の家賃の推移と比較してみましょう。周辺エリアの家賃相場よりも購入を検討している物件の家賃が著しく低く推移している場合は、「物件自体になんらかの問題があり、家賃を下げざるを得なかった」とも考えられます。このようにデータを参考に、物件の価値を多角的に判断してみましょう。
オーナーの中には、「物件を売りに出す前にサクラの入居者をわざと高い家賃で入居させ、利回りが高い物件に見せかける」「まもなく退去する予定の入居者がいるが、購入者にはその事実を伝えない」などの悪質な手口を使って購入させようとする人もいます。このようなトラブルを防ぐためにも、過去のデータが役に立ちます。特に以下の点は必ず確認しておきましょう。
入居者の過去のデータで確認したい点
- 家賃の設定
- 現入居者の入居年数
- 空室~次の入居者決定までの空白期間
- 家賃滞納の有無
- 苦情、トラブルの有無
- 売却前の不自然な入居の有無
- 退去を控えている入居者の有無
物件の管理記録で確認したい点と重要書類
- 重要事項調査報告書
- 設備・備品等の一覧表
- 物件の修繕履歴
- 物件の築年数
- 長期入居者がいる部屋の修繕状況
管理会社の選定は慎重に
オーナーチェンジ物件で失敗しないためには、管理会社を慎重に選定する必要があります。物件を購入する際は管理会社と賃貸管理契約を結びます。もちろんオーナーチェンジ物件も例外ではありません。ただし、オーナーチェンジ物件の場合は「自分で管理会社を探す」という選択肢のほかに「前のオーナーが契約していた管理会社に引き継いでもらう」という選択肢もあります。
空室が出てもすぐに新しい入居者が決定している実績があったり、入居者へ適切に対応している様子を伺えたりする管理会社であれば、引き継いでもらうのもよいでしょう。反対に空室を長期間そのままにしている様子が伺えたり、外観の汚れが目立つなどの懸念材料があったりする場合は、自分で管理会社を選定することをおすすめします。
敷金の有無を確認する
オーナーチェンジ物件で失敗しないためには、物件を購入する前に敷金の有無を確認することも大切です。売買契約が成立しオーナーの権利を引き継ぐ際には、敷金の支払い義務も引き継がれます。
オーナーチェンジ物件の敷金は、売買価格から敷金額を差し引くことで「敷金を清算した」とするケースが多いです。たとえば、売買価格3,000万円・敷金10万円の物件で4部屋入居中の場合の計算式は以下のとおりです。
3,000万円-(10万円×4部屋)=2,960万円
この場合、敷金を清算すると2,960万円で取り引きされることになります。購入後に敷金の存在が発覚し敷金の清算ができていなかったとしても、入居者が退去する際には敷金の支払い義務が発生します。この場合は自腹で敷金を支払わなくてはなりません。「知らなかった……」で不要な出費を増やさないためにも、敷金の有無は購入前に必ず確認しましょう。
前のオーナーが物件を手放す理由を確認する
オーナーチェンジ物件で失敗しないためには、前のオーナーが物件を手放す理由をできる限り明確にしてから、物件の購入を決めましょう。手放す事情によって、今後スムーズに経営できるかどうかが変わってくるからです。
たとえば「遠方への転居」「出産や介護などライフスタイルの変化」「別の物件を購入するための資金調達」といったオーナー側の理由なら、物件購入後も問題なく経営を引き継げる可能性が高いでしょう。
一方、「入居者同士のトラブル」「近隣住民とのトラブル」などが理由であれば、購入後トラブルに悩まされるかもしれません。トラブルが理由の場合は、前のオーナーが事実を隠蔽するケースも存在しますので、慎重にヒアリングできるとよいでしょう。手放す理由について少しでも疑問や不安を感じたときは、前のオーナーや仲介会社などに説明を求めるのがおすすめです。
まとめ
前のオーナーから賃貸経営を引き継ぐオーナーチェンジ物件は、不動産投資初心者でも経営をはじめやすいです。しかし、入居者がいる部屋を確認できなかったり、契約内容の変更に時間がかかったりするなど、入居者がいることによるリスクもあります。オーナーチェンジ物件のメリットとデメリットを正しく理解し、納得したうえで購入するようにしましょう。
この記事を書いた人
TERAKO編集部
小田急不動産
鳥塚 正人
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