不動産投資
2022.11.15

不動産投資で大事な出口戦略のポイントとは?

不動産投資で大事な出口戦略のポイントとは?

不動産投資を行う上で「出口戦略」をしっかりと考えておくことは重要なポイントです。出口戦略」とは、運用後に不動産を処分する「売却」についてをいいます。投資用物件は、家賃収入で収益が出ていても、最後の出口である売却時に得られる収益が重要です。
こちらの記事では、不動産投資で大事になる「出口戦略」のポイントをご紹介していきます。これから不動産投資を始める方も「出口戦略」について、しっかり抑えていきましょう。

この記事の目次

不動産投資の出口戦略とは

「出口戦略」とは、元は軍事用語です。「いかに損失を少なく抑えて撤退するか」という作戦のことで、現在は経営や投資の分野で使われています。不動産投資における「出口戦略」とは、不動産はただ売却すれば良いのではなく「いかに物件を高く売却するか」ということです。そのため「出口戦略」は、購入前にすでに考えておく必要があります。

不動産投資の出口戦略 3パターン

個人投資家による不動産投資の「出口戦略」には、主に3パターンあります。物件種別や物件の状況によって、高値が付く条件は異なるためそれぞれご紹介していきましょう。

1.収益物件として売却

物件を貸し出して家賃収入(収益)が出ているものが「収益物件」です。収益性が高い物件にするためには、貸出時の家賃と入居率が高い必要があります。「収益性」で計算した場合に高値が付くと収益物件として売却できるので、一番高値で手放すことができます。

2.更地にして売却

まず更地にできるのは、戸建や一棟アパート・マンション投資の場合です。それらの物件で「資産性」で計算した場合に高値が付く物件は更地にして売却すると良いでしょう。他には、建物に問題があって買い手が見つからない場合も更地にして売却します。

当然ですが、更地にするためには空き物件であることも条件の一つです。また、更地にするためのコストがかかります。そのため「更地にしなければ買い手が見つからない」という状況の場合、この方法を選択しましょう。

3.居住用物件として売却

投資用としてではなく、居住用物件として売却する場合もあります。物件の立地や状態、設備にもよりますが、居住希望の買い手がいれば収益物件として売却するよりも高値が付くでしょう。住居中古販売のポータルサイトを見て、同様の物件ランクで売買成約事例が多ければ、居住用物件として売却できる可能性は十分にあります。

現在の居住者に買取を打診をしたり、居住者から買い取りたいと言ってくることもあります。戸建やマンション問わず、空室になってから買い手を探すと収益が途絶えてしまうので、売却先を探す時は早めに動き出しましょう。

収益物件の値段はどう決まるのか

不動産投資は「どのような計算方法が一番高値になるか」という収益を最初に考えることで、出口戦略も変わってきます。まずは、収益物件の値段の計算方法を知っておきましょう。その結果、買い手との交渉をスムーズに進めることにもつながります。

資産性

入居率が低い場合や、土地面積に比べ小さい物件で賃料が低く家賃収入が期待できない場合は、資産性で値段が決定します。例えば土地面積は広いが、家賃が低いケースでは以下のようになります。

土地の価格が1坪100万円×100坪の場合=1億円

年間の家賃収入500万円で期待利回り10%の場合=5,000万円

土地価格の1億円の方が価値があることがわかります。資産性と収益性の高い方が基準の価格となるため、更地にするコストがかかったとしても資産性の価格で決定します。

収益性

前項の資産性とは反対で、入居率が高く、家賃設定が高く収益がしっかりとある場合は収益性で価格が決定します。計算式は以下のようになります。
物件価格(円)= 年間家賃収入(円)÷ 期待利回り(%)

年間家賃収入

年間家賃収入とはアパート1棟の場合、7割以上入居していれば満室時の賃料想定で計算できます。7割未満の場合は入居の程度や物件にもよりますが、満室時の賃料想定から1割程度差し引いて計算しましょう。

期待利回り

期待利回りは物件の立地、築年数、建物構造、入居率、間取りなどの複合的な要素で決定します。自分の物件が売却時にどのくらいの築年数で、どのくらいの価値になるのかあらかじめ把握しておくことが出口戦略のポイントです。不動産投資のポータルサイトに掲載されている利回りは、売り手の希望利回りであることが多いので、実際にはもう少し高くなる場合もあります。

投資物件を売却するタイミングは?

投資用物件の売却はタイミングが大切です。定期的な家賃収入が得られている場合、ついつい手放すことをためらってしまう時もあるでしょう。しかし時期によって価格が変動するため、最適なタイミングを見極める必要があります。投資用物件を手放す際にポイントとなるタイミングについて、ご紹介していきます。

デッドクロスによりキャッシュフローがマイナスになる

デッドクロスとは「ローンの元金返済額が減価償却費を上回る状態」のことをいいます。不動産投資ではローンの利息は経費計上できますが、元金は計上できません。ローン返済中に、元金が減価償却を上回るタイミングが訪れます。「デッドクロス」になるキャッシュフローそのものに変化がなくても、経費が減少し、税額が増え、その結果手元に残るお金が少なくなってしまうのです。

それは赤字ということになり、投資用物件を持ち続けている意味はありません。つまり、売却するタイミングはデットクロスによりキャッシュフローがマイナスになる前ということになります。

減価償却期間が終了する

不動産用語の「減価償却」とは、年月とともに減少する資産としての価値を指します。そのため、減価償却期間が終了するタイミングで売却をするタイミングの一つです。不動産を取得した際にかかった費用は、定められた減価償却期間中に分割され、経費として計上できます。

減価償却期間は木造建築22年、鉄骨鉄筋コンクリートまたは鉄筋コンクリート造の住宅は47年です。築年数の高い物件は購入費用を抑えられますが、その分減価償却期間は短くなります。当然ですが減価償却期間が終わってしまうと、経費として減価償却費の計上ができなくなります。所得税や住民税といった税金が高くなってしまっては、実質的な利回りも下がってしまうので、その前に売却することがポイントです。

修繕や修復で多額の費用が発生しそうな時

当然のことですが、物件は居住者が居ても居なくても経年劣化で修繕や修復が必要になります。居住者が出ていくことになり、次の入居者を探す時も修復が必要です。古い設備のままだと新しい入居者が見つからない可能性もあるので、最新の設備に変更する場合もあるでしょう。

特に築10年を経過した物件は、修繕や修復の費用がかさむためコストがかかります。マンションの大規模修繕で費用が発生することもあります。しかし、修繕費にかかったコストが家賃収入だけでカバーできる確証はありません。築年数が上がるほどに、賃貸の家賃は下がる傾向にあるからです。そのため、修繕や修復で多額の費用が発生する前も売却を検討しましょう。

売却金額が購入金額より高い時

不動産投資は「安く買って高く売る」ことができれば、出口戦略として一番高い価格での取引となる可能性があります。中古住宅の価値が高いアメリカでは、このパターンが多いですが、日本では新築の価値の方が高く、築年数が上がるごとに価値は下がっていきます。不動産を取得してから10年経過していたら、ほぼ全ての物件の価値が購入時より低くなっています。

しかし、オリンピックや都市開発でその土地の需要が高まった時は、購入時よりも売却金額が高くなります。こういった価格が上昇したチャンスを逃さずに売却できるかが、不動産投資のポイントともいえるでしょう。売却によって1年後に発生する税引き後の賃貸収入の5倍から10倍の利益を得られるタイミングも売却のポイントです。

この時に重要視するのは「売却価格」そのものではなく、「売却によって得られる利益」です。売却時に発生する費用や税金も考慮して、売却するかどうかを考えましょう。

不動産投資で出口戦略をする際の注意点6つ

物件は少しでも高く、スムーズに売却できることがベストです。不動産投資で出口戦略をする際はの注意点を6つご紹介していきます。

不動産のローン残債を把握する

不動産投資をする場合、ローン残高をしっかりと把握しておく必要があります。なぜなら売却する物件に不動産ローンが残っていた場合、売却で得た資金を充ててもローンの返済ができない可能性も出てくるためです。ローンの返済が完了しないと、抵当権を抹消できないため売却できません。

それでも売却をしなければならない場合、手持ちがあればその資金を使って完済するか、ローン会社と相談して売却後も支払いを続ける必要があります。しかし、それでは損失が大きくなってしまいます。

このような状態にならないためにも出口戦略の注意点として、ローンを組む際は頭金を準備しましょう。また繰り上げ返済を行い、売却までの間になるべくローンを減らせるようにしておくこともオススメです。

見積もりを複数社に出す

不動産を売却する時は、仲介業者を利用することが一般的です。契約方法には3種類あります。一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約です。一般媒介契約は複数の会社に依頼ができますが、積極的に販売活動をしてもらえるかわからないという点があります。専任媒介契約は1社としか契約できませんが、2週間に1回以上の営業活動報告義務があります。専属専任媒介契約も1社のみの契約で、営業活動報告は1週間に1回以上という契約です。

どの契約をするにしても、複数社に見積もりを出すことで市場を把握することができます。仲介業者や担当者の雰囲気や力量を確認できるうえ、大きな金額を動かすので担当者との相性も確認しておきましょう。自分と合った仲介業者を選ぶことが大切なポイントの一つです。

入居者がいる状態で売却する

入居者がいる状態で売却される物件のことを「オーナーチェンジ物件」といいます。オーナーチェンジ物件は、家賃収入が安定して見込めるため、不動産投資では人気の物件です。そのため、高値で売却できる傾向があります。ワンルームや一人暮らし向けの物件を購入する層は投資家が多いため、入居者がいるうちに売却することがポイントです。

安易な修繕やリフォームをしない

売却時になかなか買い手が見つからず、古い設備のリフォームや修繕を行いキレイにしてから売りに出そうという考えは危険です。リフォームや修繕にかかった費用がかかったからといって、そのまま売値に上乗せはできません。

古くて買い手がつかないという事態になる前に、売却できるように購入段階から出口戦略をしっかりと考えて置く必要があります。

売却時の費用や税金を把握する

不動産を売却する際、税金や費用が発生します。それらを差し引いた額が利益となります。

仲介手数料

仲介業者に支払う手数料です。消費税もかかります。

印紙代

不動産売買契約書に貼る印紙代と印紙税がかかります。2024年3月31日までは軽減税率の対象となり、1億円以下であれば、本来の半額の税率となります。

抵当権抹消登記費用

抵当権とは、ローンの返済が滞った時に金融機関が土地・建物を担保するための権利のことです。ローンを完済すれば抵当権の権利はなくなりますが、「抹消」の手続きをする必要があります。所有者本人が手続きを行うこともできますが、複雑なため司法書士に依頼することが一般的です。その際は「抵当権抹消登記費用」に加え、司法書士に支払う報酬も発生します。
抵当権の抹消には「登録免許税」がかかります。「登録免許税」とは、不動産の所有者が変更になる際に発生する税金で、売買による所有権移転登記では以下の数式で費用が発生します。

固定資産税評価額(当該年度の価格)× 2%

この数式は土地・建物共通となりますが、土地に関しては2025年3月31日まで1.5%での計算となります。これは、租税特別措置法第72条の適用期間が2022年3月31日から2年延長されたことによるものです。

登記の手続きを司法書士に依頼する場合は、上記に加えて司法書士に支払う報酬が発生します。司法書士の手数料は各自で設定できるため、人によって異なりますが相場は60,000円前後といわれています。

売却する物件にローン残高がある場合は、抵当権を抹消するために登記費用が発生します。売主が負担することがほとんどです。抵当権を抹消するには、不動産1件につき1,000円かかります。土地と建物それぞれに付き1件とカウントされます。そのため、土地と建物それぞれを売却する時は2件とカウントされ2,000円が必要です。

ローン返済

ローン返済は前途した通りですが、残っていると基本的には売却ができないため完済する必要があります。売却利益から差し引いて完済する場合もあります。購入時にローンの返済が問題なくできるのかを考えることは、出口戦略の大事なポイントとなります。

譲渡益課税

土地や建物は、所有年数によって売却益にかかる税金が異なります。起算日を1月1日として、5年以上が5年未満で長期・短期を判断します。長期の場合、所得税は15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%で合計20.315%です。短期の場合は所得税30%、住民税9%、復興特別所得税0.63%で合計39.63%です。比べると2倍くらい異なるので、5年を過ぎたあたりで譲渡するのが出口戦略のポイントとなります。

売却までの期間やスケジュールを把握する

不動産は現物資産であるため、流動性が低く売却に動き出してから実際に売却できるため、想定しているより時間がかかります。だいたい3ヶ月から6ヶ月程度を見通すと良いでしょう。そのため、売却までの期間・スケジュールはしっかりと把握しておく必要があります。以下のような流れで進んで行きます。

売却までの流れ

  1. 仲介業者を選定して、決める
  2. 査定をしてもらい、価格を決める
  3. 物件を売り出す
  4. 仲介業者に営業をしてもらう
  5. 買い手候補が見つかったら、契約条件の交渉を行う
  6. 売却契約の締結
  7. 物件の引き渡し
  8. 仲介手数料の支払い
  9. 賃借人の地位継承通知の手続き
  10. 確定申告

営業が積極的でなかったり、時期や物件の価値によって買い手候補がなかなか見つからない場合もあります。出口戦略としては、いつまでに売却するかや売却価格を決めておくこともポイントの一つです。なかなか売れないからと値下げして損失を出してしまったり、適当な仲介業者や買い手にひっかかってしまい面倒なことが起きたりするかもしれません。余裕をもってスケジュールを組みましょう。

まとめ

出口戦略を考えることとは、不動産投資において大切なポイントということがおわかりいただけたかと思います。安定した家賃収入を得ることはもちろんですが、損のない価格とタイミングで売却することが大切です。入居者がいて家賃収入が発生していると、手放すのをためらってしまいがちですが、不動産の価値は持っているだけで年々減少していきます。 家賃も安く設定しなければならなかったり、修繕費もかかります。

購入時点で減価償却や修繕のタイミングはわかることなので、それにあわせてシュミレーションをしておくと良いでしょう。ただし、地価が上がる可能性のある場所では、事前に予測できるタイミングがベストでない時もあります。不動産投資も世の中の動向をしっかりと把握して、損のない運用をしていきましょう。

この記事を書いた人

著者写真 TERAKO編集部
小田急不動産
飯野一久

「一期一会」がモットーです。これまでの投資不動産の売却・購入・資産の入れ替えの実務を通じて得られた知見を、少しでも、皆様に、わかりやく、丁寧にお伝え出来たらと思っております。 著者の記事一覧はコチラ
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